皮膚病ミニ講座(2)

  蜂アレルギー                   

  日本で蜂に刺されて死亡する人は年間20~30人で、アナ
フィラキシーショックによるものです。原因の大部分は蜂毒に
対するIgEを介するⅠ型アレルギーと考えられます。
  過去に蜂に刺された人、職業上蜂に刺されやすい人、刺さ
れて全身症状を起こした人は要注意です。アレルギーの有無
は蜂毒に対するIgE抗体測定やプリックテストなどで調べます。
  蜂アレルギーの人が刺されてショックを起こした場合に備え
エピペン(商品名)があります。つねに携帯して 、蜂に刺さ
れてショックを起こした場合に自分で注射します。処方はエピ
ペン登録医のみが可能です。        


  ラテックスアレルギー

 
天然ゴムの蛋白質に対する即時型アレルギーをラテックス
アレルギーといいます。症状は接触部に数分以内に生じるか
ゆみ、 発赤、蕁麻疹で 、重症では喘息症状、意識低下、血
圧低下などのアナフィラキシーショックで 、エピペンが必要な
場合もあります。
  医療従事者がラテックス製手袋でアレルギーを起こすこと
が多いのですが、子供がゴム風船をくわえて起こすこともあり
ます。
  検査は特異IgE抗体測定やプリックテスト 、使用テストで
行います。
  またラテックスアレルギーの方は栗、バナナ 、アボカド
などを食べて蕁麻疹やショックを起こすことがあります。
ラテックスとの交叉反応により起こり、ラテックス・フルーツ
症候群と呼ばれます。
 

 皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)           

  おもに冬季に 、中高年の方やときには若い方にも起こる
乾燥肌は強いかゆみを伴うのが特徴です。部位は下肢が多
く、背中などの躯幹や上肢にもみられることがあります。
  原因は皮膚の脂(あぶら)分の減少です。皮脂分泌の減少
と角質細胞間脂質のセラミドの減少のため皮膚が乾燥し 、
かゆみを生じて 、掻いて炎症を起こすようになると考えられ
ます。
  冬季にはこまめに保湿剤をぬるべきですが、炎症でかゆみ
が強ければ、ステロイド外用剤も必要になります。
  また入浴時熱いお湯に長く入ることは避け、石けんの使用
は控えめにして、上がったらただちに保湿剤を塗布しましょう



  手湿疹(手荒れ、手あれ)

  手あれは水仕事の多い女性によくみられます。利き手の第
1~第3指の指先に乾燥・角質化があり 、指紋も消失します。
とくに乾燥しやすい冬季に悪化します。
  お湯や洗剤の使用で手の皮脂膜が減少して角質層が乾燥
し 、はがれてバリアー機能が低下するのが原因です。刺激が
長期間続けば、非アレルギー性の炎症(湿疹)もみられ、と
きにはアレルギー性の強い炎症(接触皮膚炎)で小水疱やか
ゆみを生じます。
 治療は水仕事の際の手袋の二重使用 (内側に綿、外はゴ
ム)で保護し、亀裂部には抗生剤含有軟膏をぬり、保湿剤は
頻回使用すべきですが 、場合によりステロイド軟膏も必要に
なります。


凍瘡(しもやけ)                    

  冬とその前後の季節に 、手足ときには耳にも生じます。
寒冷刺激による血行障害が原因で 、起こりやすい体質の人
がいます。 一般的な症状は局所の赤紫色の「腫れ」で、患部
の皮膚温は冷たいのですが、暖めるとかゆみを起こします。
  それとは別に、多形紅斑型という、少し隆起した発赤が多
発するタイプもあります。ときに進行すれば潰瘍も生じます。
寒くない時期に起こればエリテマトーデスも疑われます。
  治療は局所の保温と入浴時などのマッサージや ビタミンE
などの内服や血行をよくする外用剤が一般的ですが、「冷え」
と「血行不良(於血)」を改善する漢方薬が効果的です。


  伝染性軟属腫(水イボ)

  軟属腫ウイルスによる皮膚の感染症です。接触により感染
し、プールなどでうつることが多いといわれます。おもに小児
の疾患ですが、ときに成人にもできることがあります。
  免疫ができれば自然消退するので 、取らないでいいという
意見もあります。しかし免疫ができるまでの期間は半年~3
年と個人差が大きく 、その間周囲の人にうつすことや本人が
プールに入れないなどの不利益を考慮すれば 、取った方が
いいと思います。
  ピンセットでつまみ取るのは確実ですが 、痛いので処置は
大変です。局所麻酔作用のあるテープを貼って、40分以上お
いて取ると、痛みがかなり鈍くなるので有用だと思います。

  

  鶏眼(ウオノメ)               

  ウオノメはありふれた疾患ですが 、痛みが強いことも多く、
そのために歩行にまで影響が出ている場合が少なくありませ
ん。放置していると、膝や腰にまで異常が拡大します。
  外からの圧迫や摩擦などの機械的な刺激が繰り返され、
防衛反応としての角質化が、誤った方向へ向かったものと思
われます。タコは角質が外方にだけ突出するので痛みは少な
いのですが、ウオノメは角質が内方に向かってクサビ状に突
出するので、小さくても痛みが強くなるのです。
  治療は、角質部のみを痛くないように切除することです
が、自分でするのは危険です。皮膚科受診をお勧めします。



  掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

  手のひらと足のうらに発赤と小さな水疱や膿疱が多発する
膚疾患です。かゆみは比較的強くないものの、角化や亀裂
を生じ
皮膚がはがれて、むしろ痛みが起こりま す。手だけのこ
とや足だ
けのこともあり、片側だけの場合もありますが、難治
性です。

  原因は不明の場合が多いのですが、一部は病巣感染が考
えら
れています。慢性扁桃炎や虫歯などを十分治療すること
で治った
り、かるくなることがあるからです。
  もう一つ原因と考えられるのは金属アレルギーです。パッチテ
トで陽性に出た歯科金属を除去することで 、治ることがあ
ります。

  治療はステロイドやビタミンD3の軟膏と光線治療が基本で
す。



  皮膚病ミニ講座(1) には接触皮膚炎(かぶれ) 、金属
 アレルギー、疣贅(イボ)、伝染性膿痂疹(とびひ)、単純
 性疱疹(ヘルペス) 、帯状疱疹(ヘルペス) 、足と爪の
 白癬(水虫)、AGA(男性型脱毛症)
を掲載しています。

 皮膚病ミニ講座(3)には薬疹、乾癬、円形脱毛症、白
 斑(しろなまず) 、肝斑 (しみ) 、水痘 (水疱瘡、みずぼ
 うそう) 、熱傷(やけど) 、脂漏性皮膚炎(湿疹)
を掲載
 しています。



         


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