皮膚病ミニ講座(3)

 薬疹                        

  薬剤の注射・内服などにより皮膚に発疹を生じたもの
薬疹といいます。薬剤開始後2週間頃までに 、全身
に発赤や赤みのあるブツブツした発疹が多発する場合
が典型的ですが、固定薬疹という、ごく一部にだけみら
れるものや蕁麻疹型 、紫斑型、にきび型、光線過敏型
など多彩です。   

 
発疹に肝障害や腎障害、血液障害などを伴う場合は
重症です。ことに、中毒性表皮壊死症(TEN)型や皮膚
粘膜眼症候群では失明の怖れがあり、生命の危険も伴
います。
  最近注目されているのは 、薬剤性過敏症症候群(DI
HS)というヘルペスウイルス関連の薬疹で、中止後も悪
化し、重症化が特徴です。


  乾   癬

  頭、肘、膝をはじめ全身各所に、赤みのつよい大小の
病変が多発します。隆起は少ないものの、表面には銀白
色の膜様物質や角質が付着し 、剥がれると点状に出血
することもあります。
  原因は不明ですが、遺伝的要因に種々の環境要因が
加わって発症すると考えられています。
  治療はステロイドやビタミンD3の外用剤とPUVA療法
( 前処置+長波紫外線 )や中波紫外線などの併用が基
本です。重症例ではビタミンA誘導体や免疫抑制剤の内
服もありますが、副作用には要注意です。なかには漢方
薬(駆於血剤+清熱剤)で高い効果のみられる方もあり、
リスクは少ないので試すことをお薦めします。



  円形脱毛症                     

  おもに被髪頭部に 、円形の脱毛斑が単発あるいは多
発し、ときには融合して全頭脱毛症になることや 、稀に
は頭髪以外の毛も脱落する汎発性脱毛症になることも
あります。
  原因としては最近遺伝的要因が重要視されています。
アトピー素因をもつ人に多く、自己免疫機序も重症例で
は考えられます。精神的ストレスの関与も、比較的多く
みられます。
  治療は解毒作用のある内服薬や、気滞を改善する漢
方薬の内服と 血行促進外用剤あるいはステロイド外用
剤の併用が一般的ですが、重症例では局所免疫療法、
冷凍療法、PUVA療法(上述)、局所注射などが行われ
ています。 
      


  白斑(しろなまず)

  境界明瞭な白色斑が各所に多発しますが、周辺部に
はむしろ
色素が増強するのが特徴です。 皮膚の神経支
配に一致して出
現するタイプと左右対称性あるいは全身
性にみられるタイプに
分けられます。
  前者は末梢神経の機能異常が原因とする考え
が有力
で、後者は甲状腺疾患などの合併が多い点で 、自己免
疫機序が考えられています。
  治療はステロイド外用剤、免疫抑制外用剤 、ビタミン
D3外用
剤と、PUVA療法(上述)あるいはナローバンド
UVB照射による
光線治療のいずれかか併用がよく行わ
れていますが、長期経過
例では難治な場合も少なくあり
ません。



  肝斑(しみ)                  

  三十歳台以降の女性の顔面ことに頬部に、左右対称
性にみられる淡褐色斑で 、妊娠や出産あるいは経口避
妊薬が契機になって出現することから女性ホルモンとの
関連が考えられますが 、自律神経やストレスなどの要因
もあるようです。  
  悪化因子の最大のものは紫外線です。夏だけでなく、
年中外出時には日傘、帽子、日焼止めやUVカットの化
粧品を使用し、アルコールの過剰摂取やタバコも避けた
方がいいと思います。   
  現在肝斑の治療はいろいろ行われていますが 、悪化
要因を極力避けて 、その人の証に合った駆於血剤など
の漢方薬+ビタミンCなどの長期内服も、試す価値はあ
ると思います。   



 水痘(みずぼうそう)

  水痘・帯状疱疹ウイルスが気道を介して、初感染した
のち、約2週間の潜伏期を経て発症しますが 、おもな症
状は発熱と強いかゆみを伴う散在性の小水疱です 。個
々の水疱周囲には赤みもみられます。 水疱は全身にで
きますが 、とくに頭や顔にも生じるのが特徴的です 。水
疱の新生が止まって、すべてがかさぶたを付けて乾燥し
た状態になれば感染力はなくなります。
  治療は抗ウイルス剤やかゆみ止めの内服薬と解熱剤
に外用剤も使用します。二次感染にも注意が必要です。
きわめて稀に髄膜炎や脳炎が起こりますので、全身状態
に気をつけましょう。成人では重症化して、抗ウイルス剤
点滴が必要なことがあります。




 
熱傷(やけど)                    

 
やけどでは病変の深さと受傷面積が重要です。やけど
の病変の深さは、発赤だけの第1度、水疱形成の第2度、
白色〜黒色で知覚消失の第3度に分けられます。第2度
の浅い場合までは瘢痕を残さず治癒しますが 、第2度で
も深い場合は瘢痕を残し、第3度は植皮術が必要です。            
  やけどは第2度以下でも体表面積の10〜15% (小児
では 5%)以上では全身管理のため入院が必要です。
  治療は局所的には破れている水疱は除去し 、破れて
いない水疱は温存し 、患部の保護と二次感染防止のた
め軟膏治療を行います。また第2度以上では、抗菌剤の
内服も必要になります。




脂漏性皮膚炎(湿疹)

  乳児期と成人期に分けられます。 新生児〜乳児期は
脂腺の活動が活発で、頭部や顔面を中心に赤みを伴う
ブツブツした発疹と、皮脂の固まりのようなカサブタを多
数生じます。
  成人期では頭部のフケが多く 、部位的にも胸、背中、
脇の下に拡大することもあります。 しかしかゆみは強く
ないのがふつうです。
  原因は皮脂が細菌や真菌(カビ)の働きで変化したも
のが皮膚の刺激となるためと考えられていますが、最近
ではマラセチアという真菌が注目されています。
  治療は抗真菌剤の外用で炎症が改善する症例が多
数みられるため、それとステロイド外用剤の使い分けが
基本となります。


 皮膚病ミニ講座(1)には接触皮膚炎(かぶれ)、金属
 アレルギー、疣贅(イボ)、
伝染性膿痂疹(とびひ)、
 単純性疱疹(ヘルペス)、帯状疱疹(ヘルペス)、足と
 爪の白癬(水虫)、AGA(男性型脱毛症)を掲載して
 います。

 皮膚病ミニ講座(2)には蜂(ハチ)アレルギー、ラテッ
 クスアレルギー、皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)、
 手湿疹(手
あれ)、凍瘡(しもやけ)、 伝染性軟属腫
 (水イボ)、鶏眼(ウオノメ)、掌蹠膿疱症
(しょうせき
 のうほうしょう)
を掲載しています。


            

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