養育費の強制執行の実行に向けて

このページは、当事者が話し合いの末、今後、どのようになさるかをお決め頂くため、ご参考用のページとして掲載致します。

養育費の強制執行は、養育費の支払者の勤務先に対して、毎月の給料等、賃金を差し押さえることを前提にしています。

また、状況によっては話し合いにより円満に解決する場合もございますので、必ずしも表題通りの内容にはなりません。その旨ご了承下さい。

主な流れ

1.話し合い 2.離婚協議へ移行 3.離婚協議書公正証書の手続き 4.強制執行の申立書作成及び申立

1.話し合い

話し合いを行うには、当事者が向き合い、言いたいことを言い合いながらも、大人同士として、冷静に受け止め、話し合いを続けられる強力な忍耐力が求められます。

TV番組等の政治家同士が討論と称して討論を行えないものを、決してご参考になさらないで下さい。結論を出すことができず、当事者同士の関係を、より悪化させるだけです。

話し合いは、1回のみで終わらせる必要はありません。当事者間で、何らかの結論を導くため、冷静に話し合えなければ、二度三度行える機会を持つことが必要です。

むしろ、話し合いの機会を多く持つことで、事態を悪化させずに済み、頭の整理がしやすくなると思います。

話し合った結果、結論が出ましたら、大切なことは、『お互いのわだかまりを、極力、取り除くこと』です。そのために、大変な苦労をして、話し合いを行っているようなものです。機械的に精神がコントロールできるものではありませんが、『今まで気になって邪魔だった不愉快な物を、何らかの道具を使用して、道具ごと捨ててしまう最終段階の処理』です。結論を導いたら、少なくともこの段階で、当事者の悪い所を見る必要がありません。お互いに言い分はありますので。

嫌な思いを長く引きずらず、早く気を楽になさって下さい。但し、そのために、早く結論を出そうとはなさらないで下さい。

離婚しない結論に至った方は、以上で終了です。

2.離婚協議へ移行

離婚する結論に至った方は、きちんと相手方から養育費を支払ってもらい、極力、強制執行手続きが不要になるよう、大人としての振る舞いを心がけて、協議に臨んで下さい。強制執行の実行については、こちらに詳細を掲載しておりますが、頼り過ぎるのは、得策ではありません。当事者双方の意見を組み合わせて、離婚協議をまとめることを念頭に置いて下さい。

但し、次善の策として、強制執行に移行できる内容にしておく必要があります。上記に掲載の通り、頼り過ぎるべきではありませんが、基本的には、極めて強力な武器になります。しかし、相手方から恨みを買う可能性もあります。

離婚届及び強制執行の申立を行うための必須事項がありますので、その必須事項を離婚協議内容に取り入れた上、公正証書にして下さい。離婚届,強制執行の申立のどちらにも有効になります。

この時点で必要とされる書類はありませんが、公証人に離婚協議内容を伝えなければなりませんので、離婚協議書を作成しておくと伝えやすくなり、公正証書が作成しやすくなります。

また、第3章に、公正証書を作成する際に必要な書類等、持参物を掲載致しますが、事前に公証役場へお問い合わせ下さい。

ご参考までに、「厚生年金の分割制度」の概容(イメージ)を掲載致します。

平成20年4月以降の離婚の場合、平成20年4月以降の厚生年金の3号被保険者(専業主婦等)の期間分については、相手方の合意なく一方的に、社会保険事務所等での手続きを行い、厚生年金の2号被保険者(サラリーマン等)の同じ期間分の報酬総額を1/2ずつに按分(分け合う)し、2号被保険者の年金加入記録から3号被保険者の年金加入記録に移すことができます。

それ以外のケースでは、平成19年4月以降に離婚した場合、夫婦の婚姻時からの厚生年金加入期間分の夫婦の報酬総額に対して、夫婦間の合意により、妻から見て最大1/2を、妻自身の年金加入記録に移すことができます。

夫婦のうち、合計する前の対象期間分の報酬総額が少ない側は、合意による分割を行うことにより、合計する前の対象期間分の報酬総額を下回ることが、法律上認められず、同様に、相手側は合計する前の対象期間分の報酬総額を上回ることが、法律上認められません。

法律上、合意が認められるのは、合計する前の対象期間分の報酬総額が少ない側:その金額以上、多い側:その金額以下です。

但し、実際に合意して決めるのは金額ではなく、対象期間分の報酬総額を分割して、受け取る割合(以下、按分割合と表記。按分割合は分数ではなく、小数点で表記することになっています)です。同総額を半分ずつ分割する場合、按分割合を0.5にします。

例:夫の対象期間分の報酬総額 700,妻の対象期間分の報酬総額 300の場合、按分割合を0.5にすると、夫及び妻の対象期間分の報酬総額は、ともに500になります。

各自の年金額は、按分割合に応じて分割された対象期間分の報酬総額と、対象期間以外に各自が支払っていた報酬総額とを合算し、他に支払っていた年金保険料等を組み合わせて決まります。よって、対象期間以外に各自が支払っていた分が異なれば、按分割合が0.5でも、受け取る年金額は異なります。

合意による分割で決められた按分割合は、平成20年4月以降の離婚の期間分を含ませる(合意による分割のみ採用)こともできますし、含ませない(両方の分割とも採用)こともできます。

合意による分割は、社会保険事務所等へ情報提供の請求をしてから、年金分割手続きを行います。事前に下の表の「厚生年金分割」をご参照の上、社会保険事務所等へお問い合わせ下さい。

なお、各書類のダウンロード及び手続きの流れは社会保険庁ホームページに掲載されています。情報提供請求書は、日本年金機構へ電話で問い合わせて請求することもできますが、届くまで7〜10日かかります。

日本年金機構
電話番号 固定電話・携帯電話:0570-05-1165/03-6700-1165
IP電話・PHS:03-6700-1165
受付時間 火〜金 8:30〜17:15
月曜日含む休日明け8:30〜19:00
第2土曜日 9:30〜16:00
離婚協議の際、最低限必要と思われる内容(その他はこちらの表をご参照)
子の親権者名

子が複数の場合、それぞれの親権者名

支払い方法

養育費の支払者

金額

平成○年○月から平成○年○月まで毎月○日

金融機関口座等、具体的な支払場所の指定

財産分与・慰謝料
(取り決める場合)

支払者

金額

支払期限

支払場所の指定

遅延損害金または遅延損害金の利息(年○%等、この項目だけを取り決めない場合も可)

厚生年金分割

合意による分割の場合、公正証書または認証を受けた書類を添付書類として使用できる(公正証書または認証を受けた書類に「当事者の氏名・生年月日・各基礎年金番号」「厚生年金の分割(標準報酬改定請求)に合意した」こと、「妻の按分割合」が必要。社会保険事務所等へ必須事項の確認、公証役場へ持参物の確認が必要)。公証人手数料として、通常の公正証書の手数料以外に別途1万1000円、認証は5500円かかる。

年金分割の部分を切り離して公正証書にすることも、別に合意書を作り、認証を受けることも可。添付書類にする場合、年金分割の合意内容部分が証明できれば足りるため、情報保護を重視するのであれば、書類を分けた方が望ましい。

または離婚後、夫・妻の双方が、本人同士または本人と代理人、代理人同士のいずれかにより、社会保険事務所等へ直接行き、手続きを行うことも可能。(社会保険事務所等へ問い合わせが必要)

執行認諾約款
(公正証書の場合)

取り決めなければならない重大な内容。勝手にこの約款を付けても、公正証書作成時に債務者から「認諾していない」旨を伝えられると、無意味になる

養育費の金額,遅延損害金の利息については、当事者間の協議または法的に、最低限、妥当なレベルが求められます。遅延損害金の利率は、利息制限法が適用されるため、下記の範囲内にする必要があります。

なお、利息の定めがない場合は、利率は0%(利息なし)になり、利息を付ける旨の記載があって、利率の定めがない場合は、法定利率の年5%が適用されますが、支払者の混乱を招かないようにするため、利息を付ける場合は、なるべく利率を定めるべきだと思います。

利息制限法(遅延損害金利率の場合)
10万円未満 29.2%以下
10万円以上100万円未満 26.28%以下
100万円以上 21.9%以下

養育費の金額の妥当性については、ご自身の家庭において、親が子に対して考える「子の生活費」の金額であるべきです。

しかし、その金額が漠然としていて、判断できない場合は、当事務所の計算ページをご利用下さい。ページに掲載している生活費は、婚姻費用・養育費の支払(受取)後の金額をシミュレーションした金額ですので、当事者の生活費が想定しやすくなると思います。