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防衛大学校物語 指導

 

防衛大学校物語 校友会からの続きです

 

 

ところでそもそも何故厳しく「指導」されるのか?勿論、上下関係をしっかりと叩き込むことで指揮系統をしっかりさせて、着実に上の命令が下に実行されるようにするためではあります。ただ、本質的には「自己の命の危険から回避するため」という部分が強いです。

例えば海上自衛隊の場合「絶対に索(船と港を結びつけるロープ)の上に乗ったり、足をかけてはダメだ」というものがあります。別に索が床に巻き付けられて置かれている時や、ピンと張られた時にちょっと足をかけても差し支えないではないか・・・と思われるかも知れません。

しかし護衛艦を港に係留するためのロープですから、そこにかかる張力は一本につき何百トンレベルの力が加わるわけです。もしそのロープがシュルシュルと伸びて足に絡みついた場合、間違い無く足はちぎれてしまいますピンと張った瞬間に海に放り出されるかも知れません自分の不注意で自分だけが被害を受けるならまだしも、全員に迷惑を与えたり危険に晒したりしかねません

そもそも私達が扱うのは非常に強力な殺傷能力を持つ武器。気持ちを緩めて扱えるものではありません。例えば小銃の小さな小さなバネ一つ、ピン一つ紛失しただけで、全員で見つかるまで昼夜問わず探し続けます草むらの中だろうが、本当に見つかるまで探し続けます理屈上、全ての部品を一つずつ無くせば、誰かが小銃を組み立てて不法所持することができますから

一つ一つの決まりには相応の理由があり、それを「なあなあ」にするととんでもない大事故に繋がります国民の命を守る前に自分の命すら守れないようではお話になりません。ですからシバかれるのもある程度は必要悪であり「愛のムチ」なのかも知れません。実際、自衛隊のみならず、警察学校、消防学校などでも同じような厳しさがあると聞きます。ジャンルは異なりますが、競艇選手の養成所は防衛大学校なんて比にならないくらい厳しいとのことです。

 

 

どこの誰であろうと厳しさには理由があるにせよ、その指導が相手を思って(変な意味ではなくて)「愛」があるのかどうかが重要です。明らかに「こいつ単なるドSだな」とか「機嫌悪かっただけじゃないか」「自己満足じゃないか」「単に好き嫌いでやってるんじゃ?」というような人が居るのも事実。人間だものまた今のハラスメントブーム同様、「愛」だとしても受け手がどう感じるか、はまた別問題ですが

そういうのが度を過ぎている人達を総評して「カスってる」と言います。下級生が陰口で言うのは勿論ですし、同期の中からも「あいつちょっとカスってるよな」というような目で見られます。この辺りは結局その人の人間性に因ります。

その度が過ぎているんじゃないかという実体験の一つとして、当時言動などから色々と「この人おかしい」と感じる変わり者の4学年が居ました。同期からもちょっと変人扱いされていましたが、そういう人が週番になると厄介です週番は見回りに来るので、室内の状況(整理整頓など)にも色々と関与してきますから。

一応、全く理由無くシバかれるわけではないのですが、さすがに「これくらいのことで?」と思うようなことで無茶苦茶シバかれたり、同じことでもある人は許されて、この人は許さない、という好き嫌いが激しい感じでした。「今週の週番○○さんかよ〜」となると、「あー、オレはハマってるから大丈夫」とか「いやー、オレは嫌われているからキツいわー」というような会話が同期内で行われます。

その○○さんが週番の時に、私が何をしでかしたかは覚えていません。ただ不出来な私は何らか週番に指摘されるようなことをしでかしたのは事実です。それで「報告書を書いて提出しろ」と言われたのですが、その日はバタバタと忙しくて間に合わず、結局そのまま消灯になってしまいました

消灯になると寝ないといけないので、すなわちタイムリミット消灯後に報告書を提出しに行くと逆にシバかれます。ですから内心ドキドキしながら、明日の朝早めに出しに行こうと思っていました

 

 

翌朝、掃除を終えると急いで報告書を週番のところに出しに行きますただ週番が朝食を食べに出かけているのか不在で空振りじゃあ自分もこの時間を利用して朝食を食べに行った方が良いのか、あるいは待った方が良いのか。つまらないことのように思えますが、我々にしてみれば重要な判断を瞬時に迫られる局面は多々あります

ともあれ週番が部屋に戻っていくのを確認し、後を追うように報告書を提出します。
「お前なんで昨日のうちに報告書を提出に来なかったんだ?」
「提出が間に合わず、消灯になってしまったため、翌朝一番に提出すれば良いと思いました

次に一体何を言われるのだろう?額に汗を浮かべ、覚悟し直立不動のままで相手の返答を待っていましたが・・・。
「そうか、次は注意しろよ」
と一言言われただけで、あっさり許された感じになりましたえ、なんか拍子抜け朝でバタバタしているから、私の相手をしている暇が無かったのかな?あるいは単に機嫌が良かったのか。これは超ラッキーとにかく相手の気が変わらないうちにさっさと退出し、課業行進の準備にかかりました

教場に着いて同期だけの時間でホッと一息ヤレヤレ・・・と思っていたら、隣の小隊の同期に声をかけられました。
「お前、昨日○○さんのトコに報告書の提出行かなかったの?」
「うん、でも今朝一番に出しに言ったら、特に何も咎められなかったよ
「なんか、お前が報告書提出に来るまでI君がずっと夜中腕立てさせられていたらしいぜ
「えぇそんな話全然聞いてないけど

別件のミスでI君もシバかれていたようなのですが、その際「あいつが報告書提出しに来るまで、ずっとお前の相手してやるからな」と、朝まで腕立てさせられていたのだとか

別に腕立ての発端が私ではないにせよ、何か私が逃げたせいでI君が私の罪まで背負ったスケープゴートになったような。そんな罪悪感を感じてI君に「そうなの?」と真相を聞いてみたのですが、I君は元気無く「ははっ」と笑ってみせるだけ。何故否定も肯定もしないのか。私をかばってくれたのか、心身疲れ果て応じる元気すら無いのか。未だに真相は不明です本当なの?

ただ確かにあの人ならやりかねないくらい「カスってる」人でした単に前日シバき過ぎて私を追加でシバく気力が残っていなかっただけなのか、サディズムを満足したのか。本当だとしたら、かなりI君に悪いコトをしましたちなみに昨年20年ぶりにI君に会いましたが、どこかの市会議員かと思うくらい貫禄のあるおっさんになっていました

 

 

「カスってる」人の大きな特徴は「ブレがある」こと。シバきの基準がブレているので、この時は大丈夫だったものがこの時は地雷であるとか。ある人はやっても大丈夫なのに、この人がやったらダメだとか。要は「気分屋だな」というのがあります

I君が捕まって私が許されたのも、たまたまその気分だったのでしょう。それからまた数日が過ぎて、結局私は○○さんに「再逮捕」されました何をしでかしたかは忘れてしまいましたが、「消灯後、オレの部屋に来い」と呼び出し。

消灯後に呼び出すというのは、この世界では「違法」です消灯後はきちんと就寝し、翌日のために鋭気を養い、万全な状態で業務をこなすのも責務だからです。しかしカスってる上級生に、そういった道理が通用するはずもありませんそれ故、消灯後の呼び出しは、より深刻で凶悪な懲罰を意味しました。普段以上に気合いを入れて挑むことになります

「入ります
普段通りに勢いよく入室要領の動作を行い、上級生の部屋に入ります。消灯後なので、室内は闇と静寂の支配下に置かれています外灯の光がわずかに部屋の中に入り込み、○○さんを背後から照らします。元々背の高い人でしたが、人型の輪郭がぼんやりと机のところで仁王立ちしている様が見えました。こういった恐怖心を過剰演出するのも、Sっ気のある人ならでは

深夜なので「声をおとせ」と言われ、普段よりも抑えた調子で一連の入室要領を終えます。○○さんの同部屋の方は普段大人しい常識人でもありますが、ちょっと気の弱そうな感じもある人。なので二人から責められることは無いと思っていましたが、一方でちょっと○○さんの暴走を抑えフォローしてくれないかなという淡い期待もありました。

ところがその同部屋の方は「あぁ、また始まったか」というような感じで黙って室外に出て行ってしまいました私としては唯一のセーフティーネットが切れてしまい、期待が霧散5月で比較的暖かい日が続いていましたが、氷室に心を閉じ込められたような薄ら寒さを背筋に覚えながら、これから起こる出来事の覚悟を決めていました

 

 

「お前、今日は何で呼び出されたかわかっているよな?
このセリフは呼び出された際の常套句で、素直に直接的に呼び出された原因となったミスを答えると→「それだけか?」と言われ→芋づる式に過去の別件も引き出され→結局どう答えてもあまり良い結果を生みません案の定、先般報告書の提出が遅れた件も糾弾されます

「今からオレが良いというまで姿勢をとれ
薄暗闇の中、腕組みして仁王立ちした○○さんがドスの利いた声で下令します。この「姿勢をとれ」の言葉の前に省略されているのは「腕立ての」という単語。今晩の懲罰は、どうやら腕立て伏せのようです。「はい」と応えると、指示された腕立て伏せの姿勢をとります。

私、元々あまり体力に自信がありません。腕立て伏せの姿勢をずっと続けているだけでもなかなかキツいものです。そこにゆっくりと数字が数えられます。「1、2、3、4・・・」その数字に合わせて腕立て伏せをしなければなりません。まずはウォーミングアップとばかりに10回

そしてミスに対しての詰問、今後の課題、それができなかったらどうする?今度ミスったら許さないぞ・・・。よくもまあこう次から次へと圧をかけられるものだと思いますけれど、そういった言葉を頭上から浴びせられます一々「はい」や「いいえ」で応じ、ひとしきり終わると「1、2、3、4・・・」とまたカウントが始まります。

途中「下」と言われます。その場合、腕を曲げた状態で身体は床に付けること無く、腕立ての格好でキープしないといけません。「上」と言われるとようやく上体を起こすことができます。続いてまた「下」と言われ腕を曲げた状態でキープ。これがかなりキツいただ暗闇に乗じてちょっと膝を付いたりズルをするのはご愛敬

なんだかんだで入校間も無い当時の私は50回は腕立て伏せが出来ましたが、それ以上はもう無理いよいよ腕がプルプル震え、腕が上がらなくなり身体を元の姿勢に戻せなくなってきました

 

 

本来腕立て伏せを下級生に要求したら、上級生も一緒にやらないといけません。しかし今回は消灯後に行われた完全にイリーガルなシバきで第三者に見られるわけでもなく、上級生はカス。となると一緒にやるはずもありませんただ人が腕立て伏せをやっている間に蹴ってきたりしないだけ、カス中のカスではなかったことは幸いです

いよいよ私の筋力は限界に達し、腕立ての姿勢を保つことすら叶わなくなってきました元々汗かきな体質もありましたが、腕立てによる発汗と緊張による発汗、それらが混じり合って滴り落ちて、床に汗の池を作りました。

すると汗で手のひらが滑って身体が支えきれず、床に身体をビターンと打ち付けてしまうのです腕立てでこんな事になるなんて、私も初めての体験再度腕立ての姿勢をとろうとしても、腕を曲げた途端に手のひらの摩擦が無くなり、再度ビターンと打ち付けられます「おい、ちゃんと姿勢をとれ」と言われ「はい」と応じますが、どうしても滑るのです

「お前演技しているだろう。演技が上手いな
と皮肉るのはカスらしい発言。演技でそのようなことができる程、私は器用では無いのですが、本当はちょっと場所をズラして汗の溜まりから外れれば、別に滑ることはないはずです。そうしようとしなかったのは私の意地もありました

そういったやりとりを経て、最終的に解放されたのが午前1時半。丸々二時間半拘束されていました。I君のように翌朝にならなかったのが不幸中の幸い対番のBさんと同部屋のC君は心配して「大丈夫か?」と起きて待っていてくれましたが、同部屋のD君は元々ドライなのでさっさと寝てました

あの後○○さんが私の汗でベチョベチョになっている部屋を見て「うわ〜」とでも思っていてくれれば、私としてはささやかな嫌がらせの反撃が出来て満足です

翌朝、目覚めて着替えた際に気付いたのですが、両膝、両肘に見事な青あざが何度も何度も床に打ち付けたことで出来たものでした。演技でここまで自分の身体を痛めつけるかっつーの

 

 

月日が過ぎ6月頃になると、2学年が1学年「シバき」の中心になってきますもうその頃になると諸々一巡しているので、対番の連帯責任も無く、2学年も上級生サイドに回るので「渡る世間は鬼ばかり」状態になりますというより、3学年、4学年共にシバく方も疲れるので、下っ端の2学年に「1学年を締めとけ」と下令し、実働的に2学年が1学年を直接シバく期間が長いです

まあ色々シバかれましたけど、またその中でも思い出に残っている件を一つ。2学年のシバきの中心は同小隊のJさんでした。Jさんは強面な上に留年しており、つまり実質3学年のような存在。故に最も恐れられていた存在でした

勿論私も警戒していましたが、私が可愛がってもらったカッター総長と仲が良かったこと、またバドミントン部の先輩の2学年Hさんと同部屋だったこともあり、結構私に対しての判定が甘い感じがあってJさんからの呼び出しを免れていました

・・・が、結局それも時間の問題で遂にロックオンされてしまいました何をやらかしたかは忘れましたが「夜の自習時間にオレの部屋まで来い」と逆鱗に触れてしまいました。

実はその頃既にHさんと私は不仲な感じになっていましたHさんは出来が悪くてバドミントンも下手な私と仲良くする気になれなかったようですし、私は私で性格的にHさんとは合わないと思っていました相思相憎という感じなお、浪人で入ってきた私とHさんは生年月日がたまたま完全一致というところも、心のどこかで気に入らない点だったかも知れません

そういったこともあり、普通は同じ校友会だったらちょっとは甘くするものですが(特に人数の少ない校友会だと顔合わせるのも気まずくなりますし)、HさんとJさん双方から同時にシバかれることになったのでした上級生とは上手く付き合わないといけませんね・・・

 

 

Jさん「ふざけてんのか、お前
Hさん「お前なぁ、何で何回注意されてもでけへんねん
「輩」のようにドスを利かせたJさんと、インテリや○ざのようなHさんに詰問され、直立不動のまま返事は「はい」「いいえ」の二択のみ。もし返答に正解があるならば、お金を払ってでも模範解答を買いたいですが、そんなものは存在しません。結局どちらを選んでも泥沼に落ちるというのはよくある話

最終的に私はJさんに胸ぐらを掴まれ、詰め寄られます。そして怒声を浴びながらそのまま壁ドンこの2学年の部屋は私の斜め向かいの部屋だったのですが、しょっちゅうそこから怒声と壁ドンの音が聞こえてきていました。けれど、遂に私が被験者になりました

ところが勢い余ったのか、私が思いの外フニャフニャだったのでバランスを崩してしまったのか、そのままドアに私を打ち付けると、ドアのガラスが衝撃で「ガシャン」と大きな音を立てて割れてしまいました。
Hさん、Jさん「あっ
時間が止まります。

ガラスが割れた音は、廊下で呼び出しの順番待ちの列を作っていた他の1学年と当事者さえもビビらせることになりました当直の指導官が音を聞きつけて「どうした?」とやって来ます。暴力による指導は禁止ですから、私の胸ぐらを掴んでドアに打ち付けたなんて言えません

HさんとJさんが咄嗟に私に「Jさんが転んでガラスを割ってしまったことにするから、口裏を合わせてくれ」と耳打ちしました。私はそれに抗えるはずもなく、指導官とJさんのやりとりを黙って見ていました

 

 

一通りJさんから事情聴取を終えた後、当直の指導官は私に「そうなのか?」と確認してきました。私は「はい」と一言。指導官は「そうか。後始末をきちんとしとけよ」と言い残し、戻っていきました。

まあ指導官も場の感じから真相はわかっていたでしょうけれど、深く追求したところで仕方無いでしょうしもし私がケガでもしていれば追求せざるを得なかったのでしょうが、幸い私は何とも無かったので。

私もそれならそれで都合が良かったです大きな貸しが出来ましたからその後なし崩し的に解放された私は、入室のため廊下に並べて置いていた短靴を履いた際にちょっと「痛っ」と思いましたが、気にせずそのまま自室に戻りました。同部屋に「ガラスが割れたようだけど何されたの?大丈夫だったか?」と心配されましたが、私はむしろ早々に解放されて内心ラッキーでした

同部屋にいきさつを話ながら何気なく靴下を見てみると、小さな穴が空いていて、ほんのわずかですが血が出ていましたどうも短靴の中に小さな小さなガラスの破片が入り込んでいて、それを踏んでしまったようなのですそれで靴下も切れて、足の裏を少し切ってしまいました

一段落してJさんが私の部屋にやってきて「さっきはすまんかったな。どこかケガしなかったか?」と聞かれ、私は「ガラスの破片を踏んで、足をちょっと切ってしまいました」と見せると、気まずそうに「すまんな」と言って去って行きました。

この件以来、Jさんにシバかれることなく1年間を過ごしました結構初期の段階でこの事件がありましたから、その後の平和な期間が長かったのですまあ本当は私も共犯ということで良くないんでしょうけれど、個人的にはもっけの幸いその後しばらくJさんとHさんの部屋のドアのガラスは段ボールで応急処置がされたままで過ごし、1ヶ月近くすきま風が入り込んでいたそうです(つづく)

 

 

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