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関東の男声合唱事情


加 藤 良 一    2012年12月29日



 

 

 1990年、おかあさんコーラス大会の向こうを張って、埼玉で立ち上げた おとうさんコーラス大会」が、その後関東支部へと拡大、第19回から独立して「関東おとうさんコーラス大会」となり今年で通算23回を迎えました。移行期にはいろいろ紆余曲折があり、関東支部が主催に加わったのは第5回からでした。その間、第18回までは埼玉県連が中心となって運営してきました。
 初めて埼玉県から外に出たのが新潟県小出郷で行われた第7回(1996)のことでした。余談ですが、その後2002年にふたたび小出郷で開催されたときの懇親会での盛り上がりの中から、現在の男声合唱プロジェクトYARO会が発足しました。そして、200311月に第1回ジョイントコンサートに漕ぎつけました。

 さて、「おとうさんコーラス大会」は文字通り男声合唱の祭典です。しかし「ぼくはおとうさんじゃないんだけど」という独身の若者とかおじさんがいることはわかっています。たしかにそうです。でも、ここは今さら変えられない──ことはないかも知れませんが、取りあえず過半数はおとうさんですからご勘弁いただきましょう。それに、酒と歌といえば、おじさんですから

 今回は、関東支部9県の中でも最も北に位置する新潟県村上市で、728日に開催されました。村上市は新潟でも最北端の日本海に面したところですので、他県から参加する団体は泊りがけでないと辛いですね。上越新幹線で新潟まで行き、そこからさらに在来線で1時間ほど行ったところにあります。村上の名物は、鮭のほか村上牛などもありますが、なんといってもお酒でしょう。
 参加団体は、地元新潟(6)はじめ、山梨(2)、栃木(2)、茨城(4)、群馬(1)、埼玉(1)、千葉(3)、静岡(3)8県から計22団体が集まりました。神奈川からの参加はありませんでした。

 この大会の泣きどころは、昼から夕方までのあいだに演奏会から懇親会までをこなそうというのですから、いかにも時間が足りないことです。そこで、参加団体数の制限や演奏時間5分以内という縛りを付けざるを得ないのです。また、経費を抑える(要するにビアパーティの要領で簡単に安直に開催する)目的でピアノは用意せず、原則ア・カペラです。ただし、楽器を自前で持ち込むならばなんでもOKです。
 そんなわけで、お酒をあまり飲まない人や、5分間ではなくもっと歌う時間が欲しいと思う人などは、どうしても引いてしまうのでしょうか。私などは、ふだんなかなか会えない合唱仲間とお酒を酌み交わしたり、情報交換をする格好の場だと思っていますけれど

 第一部演奏会の出演順はくじ引きで決めます。男声合唱の定番、清水脩や多田武彦、ロシア民謡、日本民謡、ポップス、黒人霊歌などなどさまざまな曲が飛び出します。埼玉県連理事によるハゲマス会は、卒業式で全国的によく歌われている「旅立ちの日に」の男声合唱版を演奏しました。この曲は、元埼玉県連理事で秩父の影森中学校教師、坂本浩美さんが作曲したものです。それを若手の作曲家井川丹(あかし)さんに男声版に編曲して貰いました。とてもよい歌なので、埼玉では機会あるごとに歌い繋いでゆくつもりです。

 さて、お目当ての懇親会、梅山関東支部長はじめ大滝村上市長などによる、地元樽酒の鏡割りでキックオフ、男声合唱ならではのスタインソングで盛り上がりました。iichikoブランドで有名な大分県の三和酒類さんからは今回も本格焼酎「いいちこ日田全麹」を大量に提供して頂き、さらにお土産まで付けて頂きました。いつもホントにありがたいことです。みなさん、酒屋さんでは迷わずiichikoを買い求めましょう!

 いっぽう、埼玉ではこの関東おとうさんコーラス大会とは別に、埼玉県内の男声合唱団を対象にした「彩の国男声コーラスフェスティバル」というイベントもあります。
 今年は106日秩父ミューズパークにおいて賛助出演の女声合唱2団体を加えた19団体が参加して開かれました。第一部演奏会、第二部懇親会という形式は関東おとうさんと同じで、演奏時間は少し長い6分以内です。6分あれば何とか2曲は歌えます。しかし、持ち時間をオーバーすると係りが「時間です!」と書いたプラカードを持ってステージに踊り出て行きます。また、参加女性全員による人気投票で最高得点を獲った団体を表彰し、第二部のステージで再演してもらうという趣向もあります。表彰状も差し上げますが、副賞の連盟行事への年間無料パスポートが喜ばれています。

 関東おとうさんと彩の国男フェス、2か月足らずのあいだに似たような催しが続くので、私個人としては双方の位置づけが難しいと感じています。そもそも埼玉から発した催しが関東へ拡大するにつれ、規模が大きくなり過ぎないようにと出場制限があったり、遠距離での開催となるなど、埼玉県からの出場団体の足が遠のいているのが現状ではないかと思うからです。今年の関東おとうさんでは神奈川からの参加がなかったのもその辺りが足枷になっているのではないでしょうか。これからどのように発展させてゆくのか、皆で知恵を絞る必要があります。

 ことのついでに、目を現在の全日本合唱連盟における区域割り(支部)がどうなっているかに向けてみましょう。現在の関東支部は、北から新潟、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、山梨、神奈川、静岡の9県で構成し、東京は外れています。東京を関東から除外し単独の支部としているのは、その規模や歴史的なことや合唱力学的な要素が絡み合っているのでしょうが、とても不思議な様相を呈しています。コーラス地図で関東地方を見ていただいて分かるのは、辛うじてすべてが地続きだということです。ですからなんとか「関東支部」として括られていてもよいのかなという感じです。

 一方、別の見方をすれば、行政区分とはちがってどこで線引きしようが、よほど離れていなければたとえ飛び地であってもさほど問題ではないとも言えます。この点については、また別の機会に譲ることとします。この区分けを今さら変更しようという訳でもなく、現実的な対処として東西に長い支部を如何にしたら有機的に融合できるだろうか、何かうまい方法はないものだろうかと一人悩んでいる次第です。


 来年の第24関東おとうさんコーラス大会は、新潟からちょうど反対側に位置する静岡県伊豆の国市で開催されます、端と端の県は行き来も大変です。それを乗り越えて男声合唱の輪がつながり拡がることを期待してこの稿を閉じます。




  • このレポートは日本男声合唱協会「じゃむか通信」第58号(20121210日発行)に掲載されたものです。但し、「じゃむか通信」に掲載した記事では、男声合唱プロジェクトYARO会発足が1996年のように受け取れる書き方になっていましたが、実際は2002年発足ですので修正致しました。


関連情報<音楽/合唱 欄>
2012年12月「2回 全日本男声合唱フェスティバル in ふくしま トリオ・ザ・ケイイチ」(M-112
2012年9月「23 関東おとうさんコーラス大会 in にいがた」(M-111
2011年9月「22 関東おとうさんコーラス大会 in いばらき」(M-99
2010年8月「真夏の男の祭典 第21回関東おとうさんコーラス大会 in かながわ」(M-92
2009年8月「20回関東おとうさんコーラス大会 in ちば」(M-86
2008年8月「19回関東おとうさんコーラス大会 in ぐんま」(M-78
2005年8月「16回おとうさんコーラス大会」(M-62
20058月「夏の秩父」(M-60
2004年8月「渋滞は忘れたころにやってくる」(M-48
2003年8月「14回おとうさんコーラス大会 in 秩父」(M-33
2002年3月「秩父の山々に響け! 男声合唱」(M-2

(以下は、音楽/合唱欄の下のほうにあります)
200293日「関東おとうさんコーラス発祥の地 サッポロビール埼玉工場閉鎖
2002811日「関東おとうさんコーラス大会 in 小出郷」

 



      

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