M-112




会津さ来らんしょ!

トリオ・ザ・ケイイチ

加 藤 良 一    2012年12月8日



 


 今年で2回目を迎えた全日本男声合唱フェスティバルが、去る2012122日、福島県会津若松市の會津風雅堂で開催されました。
 この催しはとりあえず隔年ごとに行われることになっているもので、第1回目は2年前の2010宮崎県で開催、全国から計15団体が参加しました。とりあえずというのは、おかあさんコーラス全国大会に遅れること33年、このまま2年に1度のペースでやっていたのではまったく追いつけないから、この際年1回、いやもっと、四半期に1回開催すればそのうち追いつくとの願望があるからなのです。果たしてどうなることやら…。
 ステージ構成は前回とほぼ同じ、合同演奏の事前練習を大会前日の土曜午後に行い、夜は交流会で盛り上がり、その勢いで翌日本番を迎えるというもの。参加団体は、北海道3、岩手1、山形3、新潟1、福島7、東京4、静岡1、京都1、大阪2、岡山1、宮崎1と、初回より10団体も多い25団体となりました。これには多分に福島という地の利が影響したといえるかもしれません。さらに前回にはなかった個人参加も可能となり、参加しやすくなってきました。 

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 プログラムは各団の演奏のあいだに三つの合同演奏、それに加えて地元福島の安積黎明高校と葵高校の合同で女声合唱の特別演奏が盛り込まれていました。
 
本大会のキャッチコピーともなっている『トリオ・ザ・ケイイチ』は、合同演奏を振る三人の指揮者、清水敬一、浅井敬壹、須賀敬一の三氏が図らずも同じケイイチさんだったところから付けられました。25団体がそれぞれの合同演奏に別れて歌いますから、多い所では190人を超えていました。

<合同演奏>          

  1. 清水敬一: 信長貴富 男声合唱とピアノのための「新しい歌」から うたをうたうとき、きみ歌えよ、鎮魂歌へのリクエスト
  2. 浅井敬壹: 多田武彦 男声合唱組曲「富士山」から 作品第壹、作品第肆、作品第貳拾壹
  3. 須賀敬一: 高田三郎 男声合唱組曲「心の四季」から 風が、みずすまし、雪の日に、真昼の星

《前日の練習風景》

浅井敬壹氏



清水敬一氏                            須賀敬一氏



 さて、今回の大会ではどのような曲が歌われたでしょうか。今回会津に集った団体が全国の縮図になっているとは思えませんが、一応大学から老舗合唱団まで揃っていました。そんなことも前提として曲目を見てみましょう。

晴れの国男声合唱団「コラレーヤ」

多田武彦 「雨」から 武蔵野の雨、雨の日に見る、雨

男声合唱団コールM

信長貴富 「見よ、かの蒼空に」から 煙、少年、終曲

トンペイ・メモリアルズ12

多田武彦 「尾崎喜八の詩から」から 冬野、かけす

男声合唱団「音音」

メンデルスゾーン 死せる者は幸いなり、賢い者は輝き
黒人霊歌 ヨハネは数える

会津混声合唱団

多田武彦 「柳河風俗詩」から 柳河、かきつばた、梅雨の晴れ間

北海道大学合唱団

鈴木輝昭 満天の感情

男声合唱団「トリンクリート」

佐藤 眞 「土の歌」から 天地の祈り、地上の祈り

スターウィンド

黒人霊歌 Ride the Chariot
小林亜星曲、猪間道明編 ガッチャマンの歌
菅野よう子曲、朝川朋之編 花は咲く

合唱団京都エコー

清水 脩 智恵子抄巻末のうた六首

矢吹ヶ原グリークラブ

多田武彦 「柳河風俗詩」から 柳河、かきつばた、梅雨の晴れ間

どさんコラリアーズ

千原英喜 「どちりなきりしたん」から W、X

Qua-MEN

多田武彦 「縁深い故郷の村で」から 壽に
「草野心平の詩から・第三」から 宇宙線驟雨のなかで

南沼原男声合唱団

木下牧子「いつからか野に立つて」から 
山岸徹「五つの風景」から 

Belle Equipe

ロッシーニ曲、Runswick編 セビリアの理髪師序曲
ジョンレノン・ポールマッカートニー曲、Hart編 Honey Pie

男声合唱団いわきメンネルコール

清水 脩曲、福永陽一郎編 そうらん節、最上川舟唄
竹花秀昭編 斎太郎節

会津高校OB合唱団

石河 清 いのち
ワーグナー「タンホイザー」から 巡礼の合唱

大阪メールクワィアー

田三郎 「この地上」から 虎、白い馬

相馬男声合唱団

シューベルト 「Deutsche Messe」から Heilig
シュトラウス 美しく碧きドナウ

コール・ジョンダー米沢男声合唱団

松下 耕 「秋の瞳」から はらへたまつてゆくかなしみ、うつくしいもの

いそべとし記念男声合唱団

磯部 俶曲、須賀敬一編 「噴水のある風景」から 林の中、松の花

あんさんぶる逍遙男声会

田三郎曲、須賀敬一編「典礼聖歌 第二集」から しあわせなかたマリア
「ひとりの対話」から くちなし

北海道男声合唱団

浜頭瑛嗣編 「北海道賛歌メドレー」 雪の降る街を、宗谷岬、知床旅情、恋の街札幌
ジョンレノン・ポールマッカートニー曲、直江香世子編 Hey Jude

アンサンブル悠M

中山晋平曲、信長貴富編 「ノスタルジア」から 砂山
田三郎曲、須賀敬一編 「内なる遠さ」から 燃えるもの−蜘蛛

四ツ橋筋中年合唱隊(Y.M.A.C.

黒人霊歌 ジェリコの戦い、時には母の無い子のように、聖者が町にやってくる

いらか会合唱団

新実徳英 「決意」から 決意


 古い歌から新しい歌まで、シリアスな曲から思わず手拍子を誘う楽しい曲までさまざまです。男声合唱大会ですから当然のこととしてタダタケ人気は相変わらず根強いものがありますね。合同演奏を除いた58曲中13曲がタダタケ作品でした。全体の22%に当たります。これを多いとみるかそうでもないとみるか…、人によって感じ方はさまざまなことでしょう。

 演奏された曲の中からいくつか紹介しておきます。
 トンペイ・メモリアルズ12多田武彦「尾崎喜八の詩から」は、詩情溢れる表現で洗練された実力を感じさせる演奏でとても印象に残りました。この団は東京で活動する東北大OBのイベント合唱団で、毎年数字が一つずつ増えていきます。来年はメモリアルズ13と名前が変わります。また、同じく多田武彦「柳河風俗詩」を歌った会津混声合唱団の男声部門もしっかりした発声と丹念な音楽創りで共感が得られるものでした。
 宮崎から参加したスターウィンドは、若い人が中心のグループだけにポピュラーな曲を爽やかで勢いのある演奏で楽しませてくれました。指揮者が若い安藤真奈美さんだからなおさらなんでしょうか。東京から参加したBelle Equipe「セビリアの理髪師序曲」はヴォイス・パーカッションも駆使し、スピード感満点の演奏、素晴らしいテクニックも魅力的でした。
 地元会津高校OB合唱団には男声合唱プロジェクトYARO会の仲間が二人もいるのであまりほめたくはないのですが、ワーグナー「巡礼の合唱」はなかなか見事な演奏でした。さすが名門、盛大な拍手を受けていました。トリを務めたいらか会合唱団は、今年8月に委嘱初演した、和合亮一詩/新実徳英作曲「男声合唱とピアノのための《決意》」を歌いました。詩人の故郷への切なる想いを音に託し、多くの人たちが歌うことで東日本ひいては日本全体にエールを送りたいという願いが込められています。

  



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 安積黎明高校葵高校の合同演奏、前半はドッペルコーラスで歌われる「譚詩頌五花」からの「運命」でその歌唱力を如何なく発揮し、後半のポップスでは指揮者も女性に代わり、ステージ全体を使った動きのある振り付けで聴衆を惹きつけました。
 男一色のコンサートに一服の清涼剤──いや雑木林の草むらに咲く一輪の花にでもたとえたくなるような爽やかな歌声で会場を満たしてくれました。

  鈴木輝昭 「譚詩頌五花」から 運命                                 指揮:宍戸真市(安積黎明)
  信長貴富編 「恋ものがたり」から 恋のフーガ、恋のバカンス     指揮:瓶子美穂子(葵高校)
  平井夏美曲、源田俊一郎編 「瑠璃色の地球」                                      


 両校の合唱レベルの高さには定評がありますが、ともにその昔は女学校でした。それが時代とともに共学の道を歩み現在に至っています。とにかく合唱王国福島の名に恥じない素晴らしい演奏でした。

 安積黎明は、1911年福島県安積郡立安積実科高等女学校として創立群立安積高等女学校県立安積高等女学校県立安積女子高等学校→2001県立安積黎明高等学校と改称、共学となっています。いっぽうの葵高校は、1893年私立会津女学校として設立若松市立会津女子技芸学校県立会津高等女学校県立会津女子高等学校→2002県立葵高等学校と改称、同じく共学となりました。

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 本番とどっちが大切かといわれると(なんとも答えにくいのですが)やはりお楽しみの本命は何といっても前日の交流会です。地元会津のお酒がふんだんに振る舞われ、今回からスポンサーになっていただいたサントリー様からも大量のビールが届けられました。オトコはこういうのに弱いんです。おかあさんコーラス大会のスポンサーはキューピー様、おとうさんコーラス大会はサントリー様、うまく棲み分けていただきました。感謝!!














交流会は会津駅前のワシントンホテル。浅井理事長の乾杯の音頭で開幕しました。会場のあちこちで旧交を温めあうシーンが展開されさながら同窓会の様相を呈していましたが、お互いに仲間を紹介し合うなど男声合唱の輪がどんどん広がっていくのは楽しいものです。

 今大会のひとつの特長としてFacebookのお友だち同士がリアルにお会いする絶好の機会となったことは無視できないでしょう。初対面ではあっても毎日写真であいさつしているから、すぐに相手とわかり、何の隔てもなく打ち解けてしまい、アッという間に旧知の仲となってしまいます。Facebookなどのソーシャルネットワークの影響力の大きさにあらためて感心させられました。

 いざ、二次会へと同じホテルの最上階のレストランへ昇って行くと、そこにはすでに北海道+仙台組が陣取って呑んでおり、自然に合流。合唱談義に花が咲くにつれ時の経つのも忘れてしまいますが、翌日は(あろうことか)フェスティバルの本番ではありませんか。時間を気にしながら、本番のことも意識の片隅に微かにおきながら会津の夜は更けてゆくのでした。 

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 3回は、岡山県岡山市の岡山シンフォニーホールで、20141129(土)〜30日(日)に開かれる予定です。今回大いに広がった輪がもとになって、さらに輪が広がることを期待しています。

         またお会いしましょう


(なお、一部の写真はFacebookのお友だちがアップしたものを借用しました。乞う事後承諾。)


関連情報<音楽/合唱 欄>
2012年9月「23 関東おとうさんコーラス大会 in にいがた」(M-111
2011年9月「22 関東おとうさんコーラス大会 in いばらき」(M-99
2010年8月「真夏の男の祭典 第21回関東おとうさんコーラス大会 in かながわ」(M-92
2009年8月「20回関東おとうさんコーラス大会 in ちば」(M-86
2008年8月「19回関東おとうさんコーラス大会 in ぐんま」(M-78
2005年8月「16回おとうさんコーラス大会」(M-62
20058月「夏の秩父」(M-60
2004年8月「渋滞は忘れたころにやってくる」(M-48
2003年8月「14回おとうさんコーラス大会 in 秩父」(M-33
2002年3月「秩父の山々に響け! 男声合唱」(M-2

(以下は、音楽/合唱欄の下のほうにあります)
200293日「関東おとうさんコーラス発祥の地 サッポロビール埼玉工場閉鎖
2002811日「関東おとうさんコーラス大会 in 小出郷」

 



      

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