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ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配)

 

※投資信託は専門外ですが、一応リクエストがありましたので取り上げました。投資信託なので短期的に見る方はおられないと思いますが、長期的な世界情勢も予測し辛いので、とりあえずは株と同様四半期単位のスパンで検証してみます。

3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  欧州債務問題が決着した後
3ヶ月以内基準価格予想 4500円〜5000円

要点

・ピクテ投資顧問が運用する人気ファンドの一つ。公益株のディフェンシブ性はあるが、実質的には株式一本で運用しているため相場下落局面での落ち込みは大きくなる。
・足下は欧州不安により株価の下落が不安材料に。投信残高は減少傾向が続き、旬は過ぎた印象。
・類似投信との比較では手数料などのコストが高い分、運用成績は良い。
・同ファンドにとって最も適している相場環境は「緩やかな景気停滞局面」。
・市場環境が落ち着けば、戻りは1月頃までに5000円程度まで。


【ファンド概要】
05年2月末に設定。残高ランキングでは8位の人気商品。ファンドオブファンズだが、実質的には株式のみで運用されている投信。

主に高配当利回りの世界の公益株(電力、ガス、水道、電話、通信、運輸、廃棄物処理、石油供給などの企業)に投資。安定的な収益分配を行い、長期的な元本の成長を目指して運用。基本的に上場企業へ分散投資。毎月10日決算。分配金はここ1年間50円を維持。


【人気の背景】
投資対象が生活に直結していてわかりやすいこと、公益株式の値動きが相対的に安定していることなどが投資家に受け入れられやすい。

また毎月分配型という点も人気の一つ。毎月安定した分配金がお小遣い感覚で入ってくることで個人投資家には受けが良い。

ただ一般的には毎月分配型は資産を毎月取り崩して分配金を確保し投資家に分配するので複利効果が出ない。またコストも当然余計にかかることになる。そのため、一般的には基準価額は横ばいや右肩下がりになるファンドが多い。

ところが同ファンドに関しては、分配金再投資の毎年決算型と比較すると、足下で実質的な基準価格は毎年分配型の方が良くなっている。それは年々運用成績が悪化していることも意味している。


【手数料・運用報酬】
購入時に約3.7%、また純資産総額に対して最大約年1.7%の実質的信託報酬がかかる。


【組み入れ比率】
株式(ピクテ・グローバル・セレクション・ファンド) 98.5%
(うち、国別組み入れ割合 アメリカ 34%、イギリス 16%、イタリア 8%、フランス 7%、スペイン 5%他)

その他(ユーロ建ての公社債で運営されるEURリクイディティ・ファンドや現金同等物など) 1.5%


【銘柄選定】
時価総額5億ドル以上の企業のうち、配当が3%以上の銘柄が対象。それで抽出された高配当公益株式約300銘柄のうち、株式の流動性・株価のボラティリティ・企業の財務面・経営体勢などの分析を行い、1/5程度にまで絞り込む。


【基準価格推移】
純資産額は運用開始後2年で残高が3兆円に迫る大人気商品となり、一時買い付けを停止したことも。しかし類似コンセプトのファンドが乱立したことや、同ファンドより分配金の高いファンドが出現したことで、人気は一巡。

またリーマンショックなどによる世界的な株安で08年には2ヶ月で40%近く基準価格が暴落すると、資金流出が止まらず、現在は7000億円弱の規模にまで減少。加えて基本海外の公益株に投資しているが、原則として為替ヘッジは行わないので、足下の円高により更に価格が低迷(注:今年5月から円、豪ドル、ブラジルレアルでヘッジを行う新コースが追加設定された)。

その後も基準価額は低位安定。ただし類似ファンドよりは運用成績が良く、分配金を加味した基準価格は設定当初比ほぼトントンだが、足下では更に欧州不安が大きく、基準価格の底が確認できていない状況でもある。

公益株対象のディフェンシブ株投資であり、緩やかな景気停滞局面では安定的な強みを持つ。しかしそうは言っても実質株式のみの運用であることから、リーマンショック時や今回のような世界的株安局面ではそれなりに下落幅が大きくなる。一方でリバウンド局面での戻りが鈍い印象は拭えない。


【ファンド間比較】

グローバル好配当株オープン

大和住銀が05年7月設定。北米、欧州、アジア・オセアニアの地域に1/3ずつ割り振り、食品株や通信株など高配当銘柄に投資。毎月分配型で直近の分配金は40円。為替ヘッジなし。購入時手数料は約3.2%、実質的信託報酬約1.2%。
手数料は安いものの、同ファンドに比べて運用成績は悪く、分配金も低い。残高も同ファンドの1/3程度に止まる。


世界好配当株投信(毎月分配型)

野村が07年1月設定。世界の高配当銘柄で安定的な配当を実施する企業に投資。直近の分配金は20円。為替ヘッジなし。購入時手数料は約3.2%、実質的信託報酬約1.2%。
手数料などはグローバル好配当株オープンと横並び。ただ運用成績は設定時期に恵まれなかったこともあってグローバル好配当株オープンよりも更に悪く、分配金も低い。残高も同ファンドの7%程度に止まる。


日興・CS世界高配当株F(毎月分配型)

日興が05年2月に設定し、クレディスイスが運用。世界の高配当銘柄に投資。直近の分配金は60円。為替ヘッジなし。購入時手数料は約3.2%、実質的信託報酬約1.2%。
手数料などはグローバル好配当株オープンと横並び。足下の分配金は同ファンドよりも高くなっているものの、基準価額の落ち込みは同ファンドよりも大きく、結果トータルリターンでは運用成績は劣っている。残高も同ファンドの7%程度。


他の類似ファンドに比べると手数料などのコストが高い分運用成績は良い。また公益企業を中心に投資している分、安定感もある。結果、規模も大きく人気面では優れている。ただファンドの「旬」の時期は過ぎている印象。


【評価】
同ファンドのリスクとしては金利の動向、政策、為替などが挙げられるが、特に金利動向には注意が必要。公益株は金利と比較されながら動く傾向があり、金利が上昇し公益株の配当利回りとの差が縮小すると公益株の魅力が薄れるため、下落しやすくなる。

足下欧州では一時利上げが続いていたものの、現在では利上げを続けられるような経済環境ではなくなった。他の先進国についても概ね同様の傾向があり、従って同ファンドにとっては追い風の状況とも言える。

しかしながら、株式市場そのものに対するリスク許容度が低下しており、公益株といえども安穏とはできず、結果としてファンドの基準価格が低下している。利上げが行われるほどの景気回復局面では相対的にディフェンシブ銘柄は敬遠されるため、同ファンドにとって都合の良い環境は「緩やかな景気停滞局面」であると言える。

また公益株の代表とも言える電力株は、この度の日本の原発事故による原子力エネルギー忌避の機運より、環境問題に対する意識がよりクローズアップされる中で太陽光・風力などの自然エネルギーに対する投資額が今後も増えていくことが予想される。従って、その分利回りは減少していくものと想定される。

ファンドの運用面では設定から一貫してファンドマネジャーに変更がない点やポートフォリオ構築過程が明確な点などは他のファンドと比較して優位性がある。チームの平均運用業務経験年数は13年と経験豊富で、グローバルにリサーチをしている公益株専門チームに運用を委託できる点は強みと言えよう。

足下では欧州不安の高まりから、最も基準価格が下押ししているタイミングとも言え、もし解約のタイミングを図っているのであれば、欧州問題の帰結を見極めてからでも遅くないのではないか。幸い同ファンドは株式投信の中でもディフェンシブ性が高いので、ここから株式市場が一段安となっても落ち込み方は比較的マイルドとも思われる。

例年為替が10月中旬までに底を打ち、それから1月頃にかけて円安に向かっていく傾向を見ても、欧州不安さえ今月中に目処が付けば来年早々には5000円を回復する局面が期待できるものと思われる。

※投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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