ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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HSBC中国株式ファンド(3ヶ月決算型)

 

※投資信託は専門外ですが、一応取り上げてみました。投資信託なので短期的に見る方はおられないと思いますが、長期的な世界情勢も予測し辛いので、とりあえずは株と同様四半期単位のスパンで検証してみます。

12年7月8日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  強いて言えば現在
3ヶ月以内基準価格予想 3800円〜5000円

要点

・中国の成長鈍化懸念。足下では利下げが繰り返し行われ、政府当局も景気浮揚策には必死であるが、先進国に不安定な動きが続くことで投資資金も流出が続く。
・他の類似ファンドとの比較では、特に優位性を感じられない。
・中国株に関しては今秋の党大会を見極めたい動きが出てきそう。ただA株投資(※原則中国本土の投資家のみが取引可能)が始まること、また為替の円安傾向が基準価格の向上に繋がる期待も。


【ファンド概要】
HSBC投信の運用で06年5月設定。中国の証券取引所に上場されている株式に投資。原則として為替ヘッジは行わない。オープン型で2、5、8、11月決算。分配金は0円。約款変更により8月からA株市場にも(ファンドを通じて)投資予定。


【手数料・運用報酬】
購入時に約3.2%、また純資産総額に対して実質約年2.1%の信託報酬等がかかる。


【中国情勢及び特徴】
世界的な景気減速懸念によって、中国の経済成長も鈍化懸念。13日に公表予定の4〜6月期の中国の実質成長率も約3年ぶりに8%を下回るとの見方が多い。6四半期連続で成長が鈍る見込みに。

それに対応する形で先月は3年半ぶりに利下げを実施したが、今月も連続で実施。しかし利下げが予想以上に弱い中国経済のサインと受け止められ、株式市場は一段と軟化する悪循環が続いている。

将来的な成長に対しても不安が残る。日本同様に人口構成は次第に高齢者を支える負担が大きくなってくる見込み。特に中国は一人っ子政策を打ち出していることで、支えるべき高齢者人口が一気に増大する予測が生じる。

また、ここまで同国の経済を爆発的に押し上げてきた海外からの投資資金の流入が細る懸念も。先進国の財政不安によって新興国からの資金引き上げが目立ち、また同国における人件費の高騰が、工場投資などの減少に繋がっている。一方で所得水準の向上から、世界の工場から世界の消費国へと様変わりしており、投資対象が変化する過渡期にあると言える。

一方で、中国自体が資金の出し手としての存在感を強めている。日本を含む先進国の債券買いを進め、外貨準備高も大きく積み上げている。更にアフリカなどの新興国に対する投資も膨らみ、資源確保や将来的なマーケット開拓にも余念が無い。

政府当局は、海外からの投資資金を呼び戻すため、金融市場の開放に躍起になっている。管理相場から自由相場への移行を促すことで、人民元安政策に対する批判をかわす狙いもある。その甲斐もあって、最近では批判は沈静化してきた。

結果、貿易収支は黒字を維持。同国の経済を支える輸出、また一部同国が独占状態にあるレアアースの価格維持などが奏功。外貨を吸い上げ続けている。

他方、国内では特に地方政府の財政破綻危機が深刻化。巨額のインフラ設備投資のツケが地方政府に回ってくることで、その額は11兆元を超えるとも。政府当局の統制によって、何とか綱渡りの状態が続いている状況。

今秋に控える第18回中国共産党党大会においては、指導部の大規模な入れ替え人事が行われる見込み。国内外に対して融和的な政策を打ち出すことで、安定的な政権委譲を実現しようとしている。

しかしながら先日の香港返還15周年においても大規模なデモが起こるなど、未だ情勢に不安定化懸念が残る。これら中国の抱える様々な問題は、かろうじて高成長が持続する上で抑えられているものの、もしストップすることになれば、一気に表面化するリスクが。いつまでも政府の圧力で統制が取れるとは考え辛い。


【直近の組み入れ比率などステータス】
※最新の週報等より


1位 中国移動 (CHINA MOBILE) 10.1%
2位 中国工商銀行        8.3%
3位 中国海洋石油        7.4%
4位 中国建設銀行        7.1%
5位 中国石油天然気(PETROCHINA) 5.0%

他、全49銘柄(全て香港市場)

上位5銘柄で38%を占める。


業種別組み入れランキング
1位 銀行       22.9%
2位 エネルギー    19.9%
3位 電気通信サービス 10.3%


足下では「国有銀行の稼ぎ過ぎ」との不満の高まりから、政府は4大国有銀行の力を弱めようとの方針を打ち出している。具体的には格差是正のため金利自由化を拡大、利ざやの縮小を試みている。また、目先の利下げ傾向を鑑みると、銀行セクターが弱く、不動産セクターが強い流れと見られる。ただし不動産への投機的な動きにも、政府当局は目を光らせている。

また、エネルギーについても世界的な景気減速懸念から、やや弱含む感のある一方で、電気通信サービスはまだまだ伸び余地がありそうであることから、強気で見られそう。6月のウエイト変更では、概ねそれらに沿った動きが見られている。


【基準価格推移】
北京オリンピックへの投資熱に湧く中国株のバブル化に合わせ、設定後1年半で基準価格は分配金再投資ベースで約3倍になった時期もあった(年間で分配金が6160円出たことも)。純資産総額も1000億円にまで積み上がった。

ただ、オリンピックが近づき、それが終わるとバブルも沈静化。足下は成長の鈍化、また先進国の財政危機による新興国への投資資金引き上げなどを受けて、基準価格は下落。純資産総額も143億円と、ピーク時の1/7にまで減少した。


【為替】
同ファンドは香港上場のH株への投資をメインに行っているため、香港ドルに連動する。そして香港ドルはカレンシーボード制によって1米ドル=7.75-7.85香港ドルにペッグ(固定)されている。つまり、究極的には香港ドルは米ドルの動きとほぼ一致する。結果、その米ドルが足下円高傾向が続いていることで、基準価格にはマイナスに作用している。


【ファンド間比較】
同ファンドの直近の基準価格は4296円であるが、他のファンドと比較してどうであろうか。


三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド

01年10月設定。中国国内で事業展開している企業の中から、各業種毎に競争力の強い企業に集中投資。また、中国を代表する企業の新規公開にも着目。原則為替ヘッジは行わない。10月決算。

直近の分配金は無し。
購入時手数料は約3.2%、実質的信託報酬約1.9%。
直近の基準価格9760円

純資産額は400億円超で、中国株ファンドの中では最大。また運用期間も長い。それだけに、21世紀に入ってからの中国の高成長を余すところ無く取り込んだ結果、分配金込みの基準価格も未だ2.3倍の水準を付けており、非常に運用成績の良いファンドとなっている。


野村 新中国A株投信

10年10月設定(20年8月償還予定)。中国元建ての中国A株、中国A株を対象としたスワップ取引またはオプション取引などのデリバティブ取引等、および上証50指数連動有価証券または株価連動有価証券に投資。原則為替ヘッジを行わない。8月決算。

直近の分配金は無し。
購入時手数料は約3.7%、実質的信託報酬約1.9%。
直近の基準価格7047円

純資産額は260億円超で、中国株ファンドでは2位規模。設定が最近で中国経済が下り坂のところで始まっているため、分配金も出ず、基準価格が減じられて良いところの無い状態。信託報酬は低いが、購入手数料は高い。


UBS 中国株式ファンド

07年5月設定(17年5月償還予定)。人民元建てのA株を含む中国株式が主要投資対象。原則為替ヘッジは行わない。5月決算。

直近の分配金は無し。
購入時手数料は約3.2%、実質的信託報酬約2.3%。
直近の基準価格6697円

純資産額は230億円超で、中国株ファンドでは3位規模。設定当初はオリンピック前で盛り上がったものの、分配金が出たのも最初のみ。信託報酬が高く、その分基準価格も減じられる形で運用成績もパッとしない。


HSBC チャイナオープン

02年1月設定。同ファンドと根本的には同じ商品であるが、違いは運用期間と年一回決算であること。

直近の分配金は700円。
購入時手数料は約3.2%、実質的信託報酬約2.1%。
直近の基準価格17615円

純資産額は210億円超で、中国株ファンドでは5位規模。直近でもしっかりと分配金を出しており、基準価格も未だ高水準をキープ。同ファンドより、設定日が古いことや決算回数の少なさで、基準価格や純資産額に大きな差がついている。


設定日に応じて勝ち組、負け組ファンドがはっきり分かれている感じではあるが、同じ頃に設定した「UBS 中国株式ファンド」と比べても運用成績が悪い印象。総合的に見ても、他の中国株投信の平均パフォーマンスを下回っており、優位性が感じられない。


【評価】
投資対象となる中国株はバブル期を過ぎて現在整理の段階に移行している。敢えて新興国投資でリスク要因の多い中国を選好する理由も見出せない中で、再度の反転には政治情勢や物価の安定など、対処すべき課題が多い。

また、中国株そのものの下落もあるが、中国に強いHSBC系の投信としてイマイチメリットを感じられない運用成績となっている。ETFの上場中国H株(1548)より少しマシな程度。

総合的に考えて、敢えて同ファンドを保有するメリットは現段階で見出せない印象。中国株への投資は、少なくとも今秋の党大会前後の情勢、見込みを捉えてからの方が無難である。新政権の指導力を推し量れない現在は、リスク回避の姿勢が強まるばかりだろう。

ただ、約款の変更を経てA株への投資がスタートする。H株市場と比べて既に割高で取引されている市場であり、また足下の人民元安の流れを鑑みると新規投資はその分リスクをはらむが、政府の株価維持策が期待できる。

またA株市場は、市場開放策(※今回の約款改定はそもそもこれに起因)によって資金流入が見込まれるため、基本的には株価にとってはプラスに寄与する。外国人投資家のA株保有比率は1.1%と、他のアジア域内の主要市場の30%前後を大きく下回っている。そのため、市場への入り方と出方を間違えなければ、一時的にも基準価格の向上に繋がる期待を持てる。

加えて為替もここから一段と円高に向かうことは想定し辛い。結果、緩やかな円安トレンドが続くことで、基準価格の押し上げに寄与しそうだ。


※投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。また同ファンドの中身に関して目論見書などを必ず再確認してください。

 

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