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グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)



※投資信託は専門外ですが、一応リクエストがありましたので取り上げました。投資信託なので短期的に見る方はおられないと思いますが、長期的な世界情勢も予測し辛いので、とりあえずは株と同様四半期単位のスパンで検証してみます。

3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  欧州債務問題が決着した後
3ヶ月以内基準価格予想 4500円〜5000円

要点

・日本最大の残高を誇る超人気投信。債権運用の安定性がウリだが、現在の世界的な財政不安の中では大きな逆風が。
・一時5.7兆円の残高を擁したものの、足下では半分以下に。基準価格も下落傾向が続いている。
・同類のファンドの中では手数料も高く、成績がイマイチ。
・このような不透明な環境下では、一段とデュレーションを低くする必要があるのでは。


【ファンド概要】
国際投信の運用で1997年12月設定。先進主要国の国債や格付けA格以上の政府機関債などが投資対象。国ごとに金利・為替予測を行って、必要に応じて為替ヘッジを行う。国別予想収益率をベースに国別資産配分の最適組合せを決定。毎月17日決算。直近の分配金は35円。現在日本で最も残高の多い投信。


【人気の背景】
オープン型投信では珍しかった毎月分配型の先駆けであり、銀行の窓口販売で急成長。銀行側としても安定的で預金に近いポジションの投信を売りやすかったという背景がある。MMFなどの公社債投信を除いて残高が4兆円を超えた初めてのファンドとなった。

特に年金にプラスアルファの収入としたい高齢者の資産運用として人気があった。それを象徴するのが小豆島での人気。07年のデータになるが、人口3万人のうち高齢化率が33%と高いこの島の預かり残高が100億円を超え、一人当たりの残高ではトップと日本で一番グロソブが売れていると言われている。

特に毎月分配型の人気がダントツで、3ヶ月決算型は毎月型の残高の6%、1年型は同0.3%しか無く、その偏重ぶりが顕著である。

ただ一般的には毎月分配型は資産を毎月取り崩して分配金を確保し投資家に分配するので複利効果が出ない。またその月の利益から分配金を出すわけではなく、運用者が予め決めた分配金を出す形になっているため、余計に残高を食い潰しやすい。加えてコストも当然余計にかかることになる。そのため、一般的には基準価額は横ばいや右肩下がりになるファンドが多い。

債権で運用するため大きな値上がりは期待できないが、安定的な分配金を確保できるのが魅力的な商品。


【手数料・運用報酬】
(1億円未満の場合)購入時に約1.6%、また純資産総額に対して約年1.3%の信託報酬がかかる。


【直近の組み入れ比率などステータス】
北米      22.3%
日本       15.3%(内現金1.9%)
スウェーデン   8.9%
ベルギー     8.2%
イタリア     6.5%
その他ユーロ圏 14.3%


平均デュレーション(※広義的には債権の償還までの加重平均年数) 6.6年 
平均利回り 4.1%


足下では急速にユーロ圏の債権比率を落として日本国債の比率を上げてリスクヘッジを図っている。


【基準価格推移】
純資産額はサブプライムローン問題が表面化し出した08年に、安全資産への逃避から債権価格が上昇したこともあって最高の5.7兆円超を記録するお化けファンドに。ところがリーマンショックによる世界景気の低迷を契機に解約が進むと、現在に至るまで資金流出が止まらずに基準価格も下落傾向。

特に最近は円高に加えて欧米の債権信用不安が加速し、基準価格の低下には歯止めがかからず、足下では5000円割れを記録。残高は現在約2兆円と半分以下にまで落ち込んだが、それでも日本最大のファンドには変わりない。

運用成績はあまり良いとは言えず、ベンチマークとするシティ国債インデックスとのリターンを運用開始時点から比較してみると、課税前分配金再投資換算基準価格でもベンチマークを下回っている。

09年に初めてギリシャの国債に対する信用不安説が流れ出した頃に5%近くも買い込んだりした経緯もあり、高配当を維持しようとするために組み入れられる格付けの中で最もリスクの高い債権を買い入れたことが裏目に出たようだ。やはり毎月分配型の限界がここに垣間見られる。

今後も緩やかに解約が持続することでファンドの規模は縮小していくものと思われるが、直近での解約はいい加減ピークを越えそうだ。先進各国の財政不安は一朝一夕で解決するものではなく、今後も度々テレビや新聞などで債権問題が取り上げられる度に解約に対する動きは出てこようが、ここまで損切りしなかった投資家がここから敢えて損切りに動くような新鮮味も乏しく、次第に為替が落ち着きを取り戻すことで、基準価格も底堅くなってくるとは思われる。


【ファンド間比較】

ダイワ・グローバル債券ファンド(毎月)

大和投信が03年10月に設定。主要投資対象は外貨建ての公社債。投資対象の格付けは取得時においてAA格相当以上。北米、ユーロ、オセアニアの3地域に均等に投資。
直近の分配金は50円。購入時手数料は約2.1%、実質的信託報酬約1.3%。

購入時手数料は同ファンドよりも高いが、分配金も高く直近3年の成績も良い。残高は同ファンドの1/5程度。


高金利先進国債券オープン【愛称 月桂樹】(毎月分配型)

日興アセットが03年8月に設定。主要投資対象は、OECD加盟国のうち、信用力が高く相対的に金利が高い国の公社債。国別、通貨別、残存期間を考慮しながら分散投資し、安定した収益の確保を目指す。各国への投資比率は、相対的魅力度、流動性、信用力、金利の方向性等の分析をもとに決定。原則として、為替ヘッジを行わない。
直近の分配金は70円。購入時手数料は約2.1%、実質的信託報酬約1.3%。

購入時手数料は同ファンドよりも高いが、分配金は最も高い。残高は同ファンドの1/6程度。


ワールド・ソブリンインカム【愛称 十二単衣】

岡三アセットが02年3月に設定。日本を含む主要先進各国の国債及び政府保証債等に分散投資し、リスク分散を図ったうえで、長期的に安定した収益の確保を目指して運用。原則として為替ヘッジを行わない。
直近の分配金は38円。購入時手数料は約2.1%、実質的信託報酬約1.1%。

購入時手数料は同ファンドよりも高いが、分配金も高い。また信託報酬が中では一番低いことから、成績はこの中のファンド比較では最も高い。残高は同ファンドの1/10程度。


ニッセイ・パトナム・インカムオープン

ニッセイアセットが98年7月に同ファンドに対抗する形で設定。主として米ドル建ての米国国債、モーゲージ証券、社債、ハイイールド債および外国債を投資対象とし、業種・銘柄を厳選、ファンド全体の信用リスクを抑え、運用収益の安定化を図る。投資適格債の組入比率を85%以上、また組入債券の平均格付けは「A格」以上に保つ。原則として為替ヘッジなし。
直近の分配金は50円(ただし3ヶ月決算)。購入時手数料は約2.6%、実質的信託報酬約1.6%。

残念ながら手数料、分配金、運用成績のいずれをもってもファンドの中では最低で見るべきところがない。残高は同ファンドの1/10程度。


他の類似ファンドに比べると手数料などのコストが高く、また運用額が大きいせいもあって成績が悪い。


【評価】
デュレーションは昨今の債権不安から短くはなってきているものの、一層短くしてリスクに備えなければならないだろう。ここ10年の間では最も低いデュレーションになっているものの、100年に1度の債権不安はそう簡単に和らぐものではない。

おそらく残高減少が続く中で高配当を維持するためにギリギリの運用を続けているものと思われるが、このファンドを購入する投資家が求めているのは何より安定であるはずで、顧客ニーズとのギャップがこれ以上大きく拡がらないようにするべきではないか。

為替の基準価格に対する影響をもっとヘッジすべき。過去3年では債権価格が上昇しているにもかかわらず、円高によって基準価格が下落の憂き目に。特に足下では円高と債券安のダブルパンチとなっているが、リーマンショック以後最も基準価格の下落要因となっているのは為替による影響である。

足下欧州では一時利上げが続いていたものの、現在では利上げを続けられるような経済環境ではなくなった。他の先進国についても概ね同様の傾向があり、その分ここまで堅調だった債権価格は今後下落傾向が続くものと推察される。

ただ足下では欧州不安の高まりから、最も基準価格が下押ししているタイミングとも言え、もし解約のタイミングを図っているのであれば、欧州問題の帰結を見極めてからでも遅くないのではないか。最悪期は過ぎたような印象あるものの、戻りに関してはあまり期待できそうにはない。

※投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。また同ファンドの中身に関して目論見書などを必ず再確認してください。

 

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