ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

ご挨拶| 筆者紹介| Blog| 各種サービスのお申込| 過去のパフォーマンス| 銘柄レポート| FAQ| 掲載すべき事項|

日興アシュモア新興国財産3分法ファンド毎月分配型(ブラジルレアルコース)

 

※投資信託は専門外ですが、一応リクエストがありましたので取り上げました。投資信託なので短期的に見る方はおられないと思いますが、長期的な世界情勢も予測し辛いので、とりあえずは株と同様四半期単位のスパンで検証してみます。

3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  中国関連の組み入れ比率をもう少し引き下げた時
3ヶ月以内基準価格予想 8500円〜9500円

要点

・利回りの高さは注目に値する。ブラジルの成長性・金利水準が日本円の円高傾向と相殺されて、レアル円の推移は足下では安定感がある。
・3分法ファンドということで便宜上は債権・株・不動産に分けてリスクヘッジをしているような印象はあるが、狭義的な意味で不動産に直接投資されておらず、実質的には債権・株のみのファンドである。
・類似ファンドに比べてリスクが高い割には成果が上がっていない印象。
・新興国のエマージェンシーリスクは日に日に高まっている。食料品価格の高騰により、アラブの春のようなデモが起きた場合、国家の力でどこまで押さえ込めるのか。成長性の鈍化や投資家のリスク許容度低下など、抱える課題は大きい。
・中国の債務問題は当局の見方よりも重傷と見るべき。中国関連の組み入れ比率がもう少し下がらないのであれば、基準価格下落は続きそう。


【ファンド概要】
10年2月設定。新興国の債権、株式、不動産を対象に投資。分配金は毎月190円(7月現在)。人気の高い通貨選択型で、同コースの他には中国人民元、インドルピー、ネクストBRICs通貨がある。ファンドオブファンズではあるが、実質的には運用の97%を新興国債権運用で強みを持つアシュモアのファンドが担う。足下で日興一押しのファンド。


【通貨選択とは】
海外各国に投資している資産を、為替予約(ヘッジ)を用いて一つの通貨の変動に対するリスクに集約すること。例えば同コースの場合は、ヘッジ前は米ドル建て資産が7割弱を占めるが、ヘッジによってブラジルレアルの比率が8割弱へと置き換えられる(ただしG7以外の国の通貨はヘッジされない)。

アメリカより金利の高いブラジルレアルへのヘッジにより、為替ヘッジプレミアムが付加。他の通貨コースよりも利回りが高い一因となっている。結果、同ファンドが特に影響を受けるのはブラジルレアルと日本円との為替変動ということになる。


【人気の背景】
分配利回りが高く、足下で年率換算すると25%近い利回りとなる。新興国債権の高い利回りが背景にある(概ね米国債の3倍超)。ただし債権のうち95%は新興国の社債を組み入れているため、各企業レベルでのデフォルトには注意を要する。その場合、当然ながら基準価格、分配金の額に減少リスクが生じる。

また毎月分配型という点も人気の一つ。毎月安定した分配金がお小遣い感覚で入ってくることで個人投資家には受けが良い。ただし毎月分配型は資産を毎月取り崩して分配金を確保し投資家に分配するので複利効果が出ない。またコストも当然余計にかかることになる。そのため、一般的には基準価額は横ばいや右肩下がりになるファンドが多い。


【運用報酬】
純資産総額に対して年2.3%弱の実質的信託報酬がかかる。


【組み入れ比率】
債権:株式:不動産=5:3:2
※ただし不動産に対しては、直接不動産に投資しているという認識は違うようだ。REITなどでもなく、足下でも不動産関連株式2割、不動産関連債券8割であり、結果、実質的に全体の比率は債権:株式=6:4という感じ。

債権  ロシア、ブラジル、UAE・・・などの新興国における社債95%、国債など5%
株式  ブラジル、中国、ロシアで過半。投資先は金融に4割、エネルギー2割と突出。
不動産 中国、UAEで70%超。上位10銘柄中8銘柄が両国のいずれか。


【基準価格推移】
まず同ファンドの収益源は(1)投資対象資産の上昇による収益、(2)ヘッジ対象通貨の上昇による収益、(3)為替ヘッジプレミアム(投資対象資産の通貨とヘッジ対象通貨の短期金利差)による収益、の3つがある。そして、金利上昇は(3)による収益を、通貨上昇は(2)による収益を向上させる効果がある。

純資産額は2010年6月から増え始め、今年7月に最高を更新し4300億円規模に。レアルコースは最も為替ヘッジプレミアムがある通貨ということで、他の通貨コースと比べても圧倒的に大きく人気がある。

足下でギリシャ危機から欧州危機に発展し、またアメリカでも債務問題が懸念される中で、債券価格は世界的に下落。基準となる国債が下落するのであれば、社債もやはり下落するのが道理。

それを受けて同ファンドの基準価格も足下ではイマイチな推移が続いている。昨年末に基準価格が1万円を割り込むと、そのまま下落の流れが加速し、震災でレアルが一時47円を付けたこと、また当面の資金需要の確保のため換金売りが広がると、一時9000円を割り込む水準まで下落する。

ただその直後に介入や反動からレアルが今度は一気に円安に振れ、54円まで円安が進むと同時に基準価格は1万円を回復。荒っぽい値動きが出た。

そこまでは概ね日本国内の問題で動いていたが、以後は海外要因で動いている。欧米の債務問題による投資家のリスク回避姿勢、QE2終了による金余り症状の減退、新興国の成長減速がそれぞれマイナス材料となり、基準価格は再度9000円を下回る水準までジワジワと下がる流れになっている。

足下では基準価格の下落に伴って分配金の利回りが一段と高まっていること、また分配再投資で考えれば概ね1万円を保っていることから、何とか資金流入と解約のバランスは均衡を保っているものの、分配金の引き下げが行われるようなことになれば、一段と価格下落が意識されるような流れになってくるだろう。

新興国には足下で食料価格上昇による国民の不満の高まりから、格差問題、治安問題のリスクが一段と高まってきている。それは春先に中東で起きた大規模な反政府デモ「中東の春」を見ても明らかだ。

現段階で新興国は経済の高成長で国民の不満を何とか押さえ込んでいるが、一方で貧富の格差は日に日に増している状況でもある。一旦その歯車が逆回転し出すと大きな下落リスクになってくる点は注意が必要で、当然その分高い利回りを享受できていることを常に念頭に置いておくべきだ。ババを引いてからでは遅いだろう。


【ファンド間比較】
三菱UFJ 新興国債券ファンド 通貨選択シリーズ<ブラジルレアルコース>(毎月分配型)
09年4月設定。新興国債権に特化。昨年5月から分配金も増額され200円に。実質的信託報酬約2.2%。
基準価格は足下やはり世界的な債務問題を契機に下落しているものの、それでも11500円台と好調持続。分配金が高いところが人気。


エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)
大和住銀投信が09年7月設定。新興国債権、中でも国債に偏重。分配金は160円。実質的信託報酬約2.3%。
ソブリン債に対する投資が大きいことから分配金は低めながらも、安心感は強い。基準価格はやはり足下下落しているが、1万円は割り込まずにキープできている。


野村新エマージング債券投信(ブラジルレアルコース)毎月分配型
10年2月設定。新興国債権、中でも国債に偏重。分配金は140円。実質的信託報酬は約1.8%。
分配金は中では一番低いが、信託報酬も低い。基準価格はやはり他のファンドと同じような動きながらも1万円は維持。


他のファンドと比較すると、ソブリン債以外の商品に投資している分、分配金は大きい。ただ三菱UFJ新興国債券ファンドの分配金が最も高く、また同ファンドと同じく10年2月からの騰落率を比較してみると、三菱UFJの2%の下落に対して同ファンドは10%以上の下落となっていることから、トータルで見たリターンに差が付いている。


【評価】
足下の世界的な財政問題を背景にリスク回避の動きが鮮明化した結果、新興国の信用力の小さい企業の社債価格が下落。組み入れ比率の最も高い部分であることから大きく足を引っ張っている。

この辺りはアメリカの債務上限引き上げが8/2までに決着することから、次第に回復は鮮明になってくるものと思われ、目先は基準価格のリバウンドが期待できる。直近では景気鈍化が嫌気される中国の債権の組み入れ比率は小さいので、その点も安心感はある。

一方で、株式の方は中国の組み入れ比率が2位と高め。特に中国農業銀行、中国建設銀行で全体の7%を占めるが、この辺りは警戒が必要ではないか。中国の銀行の不良債権比率はムーディーズによると当局の推計と大きく隔たりがあり、国内銀行の不良債権比率は8─12%、ストレスケースでは最大18%にまで拡大すると見られている。

中でも農業銀行の不良債権比率の高さは注意が必要だ。ただ足下では組み入れ比率を減らしつつあるとのこと。不動産でも中国の不動産債権組み入れ比率が高いが、国策で不動産価格の抑制が行われている中で、リスクはやはり高いと言えよう。

ブラジルレアルは新興国という特性からも変動リスクが大きい通貨でもある。レアル円は02年や08年には数ヶ月で為替が一気に円高に向かい、為替レートは半減したこともある。ただしここ2年ほどは50円前後で安定している。

現状のような平常時は問題ないが、何らかのショックが発生した場合、一気に資産が通貨分だけで半減することを意味することに加え、資産価値も減少するであろうことから、株式以上の暴落を招く恐れがある。その辺りのボラティリティの高さには常に気を配っておかねばならない。


※投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

お問い合せ radi.res@gmail.com  北陸財務局長(金商)第23号 Copyright (C) radish-research. All Rights Reserved.