ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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イー・アクセス(9427)


3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  中間決算などで好決算が確認された後
3ヶ月以内株価予想 13000円〜22000円

要点

・業績は実質的に今期横ばい見込み。いかにARPUを引き上げて、解約率を小さくできるか、また逆に少シェアの強みを生かせるかがカギ。
・有利子負債の大きさが目に付く。同業他社比でも最も大きく、今後の設備投資抑制やファイナンスリスクに繋がりそう。
・株式価値は割安に映るものも多くなってきたが、長期下落トレンドの終わりが見えないため、決算などで具体的な反転材料が出ない限りはこのまま下落が続く公算。
・安易な値下げ競争に飲み込まれないためにも、一層の独自色を出して、ニッチな層を狙っていくべき。


【企業概要】
イーモバイルを中核とした国内四番手の通信業者。Pocket WiFiなどデータ通信でシェア過半を握り存在感。ADSL事業は徐々に縮小へ。配当は四半期配当(200円×4)を実施。


【業績】
前期は大幅な増収だが営業減益。イーモバイルとの合併効果により、売上が大きく嵩上げされた。最終利益もイーモバイルの欠損金を繰り入れ税効果により節税できた結果、過去最高を記録。

今期は増収増益の見込み。ただ会計上は吸収合併の形となったイーアクセスの業績が通期寄与することで(前期は9ヶ月分のみ計上)嵩上げ。それ以外にも、前期計上した棚卸し資産評価損の計上94.5億円が消えることによる効果であるため、実質的にはほぼ横ばいを見込んでいる。

今第一四半期で、ネットブックとの抱き合わせ販売による2年契約期日通過のピークは過ぎたが、いかに解約率を抑えられるかが勝負になる。会社計画では月次の解約率を2年前の1.05%に対し、約1.4倍の1.45%を計画している。第一四半期は1.5%と、他社と比べても厳しい数字に。

ただ加入者数の少なさを逆手に取って、災害時に強い通信会社として官公庁への売り込みを強め、法人契約を主体に四半期ベースでは契約者純増数の伸びが1年ぶりの水準に回復。着実に加入者数を増やしている。9月末時点で360万人弱に達し、会社計画を上回って今期400万人突破も視野に。

またPocket WiFiがスマホの増大で品薄状態が続くほどの大人気。第二四半期からスマホ端末やタブレット端末のラインナップを充実させ、無料キャンペーンを積極的に展開。シェア拡大を目論む。

一方で同社のスマホに魅力が薄く、過大な期待はできそうにない。スマホが伸ばせればARPU(一人当たりの通信料負担)の伸びは期待できるが、そもそもネットブックとのモバイル通信がウリの同社としては、スマホで満足できないビジネスパーソンの需要とスマホ需要は相反するものとも言える。

現に第一四半期は加入者が増える一方でARPUが約20%近く減少しているということは、同社のスマホが伸びていないことの裏返しでもある。現在はそれを上回る加入者増で増益を確保しているが、当然今後はARPUの伸びを意識した販売を心がけなければ、成長持続が見込めないだろう。


11年9月中間期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   94000
営業利益 12000
経常利益 6700
当期純益 6600


中間期は四季報予想などは上回る見込みも、通期会社計画に対する進捗率ではやや弱い印象。下期の巻き返しに期待がかかるが、取り立てて下期にかけての目玉が見あたらないため、現状の成長ペースを持続する程度に止まりそう。

有利子負債は2204億円で前期比47.1億円の減少。現預金は381.3億円で有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は296.5%。流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)の方は172%とまあまあだが、有利子負債比率の極端な大きさが気になるところ。

フリーキャッシュフローは今第一四半期では過去最高の黒字52億円をマーク。ただ有利子負債が巨額で、利払いだけで26億、年間100億超の社外流出。今後設備投資負担なども考慮すると、これらの資金を調達するためにファイナンスを行うリスクは見ておくべき。


【第一四半期決算を受けたアナリストの評価】
シティ 投資判断「3M」(売り、中リスク) 目標株価22000円

競合企業がテザリング機能搭載端末の拡充を計画するなど競争激化を背景に、実質的な加入者獲得ペースは鈍化傾向とみており、今後の業績はコンセンサス比較での下振れ懸念が強い


上記シティの格下げによって株価が急落し、年初来安値を更新する流れに。ただその3ヶ月前には最上位に格上げしており、評価にはブレが大きい印象。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は2509億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は670億円であり、結果EV/EBITDA倍率は3.7倍となる。同業他社の平均値がおよそ4.0倍と見立てられるが、それらを元に計算した理論株価は24175円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。


【株価推移】
03年の上場後は通信業界の成長期待から株価はほぼ倍化したが、その後は一貫した右肩下がりの展開に。ただ景気の影響は受けにくい業種であるため、比較的緩やかな下落継続となっていた。

しかし震災直後の急落でにそれまでの安値39050円を更新すると、株式の需給バランスを大きく崩す形に。8/4の決算や上記シティの2段階格下げなどを受けて急速に値を崩すと、下げが止まらない流れに。足下でも下値切り下げの動きが続き、上場来安値更新が継続している。


【テクニカル】
昨年4月から長期的な下落トレンドは継続していたが、7月末に75日線と25日線の重なるところを突破できなかった上に、決算が重なり下落に勢いを付けた格好。その後上述のシティによる格下げが外資の売りに拍車をかけている。

日足で見る短期的なMACDは現状好転しているが、週足以上の長期のMACDは下落傾向が続いている。その他トレンド系の指標も週足ベースでは下落傾向が続いており、少なくともあと1ヶ月程度は下落が続きそうな公算。5日線を抜けても25日線が、25日線を抜けても75日線が・・・と上値重石要因が多い中で、積極的に買いに向かう状況ではない。

ここまでの下落で株価はPERや配当利回りなどで見る値頃感が出てきたが、市場の評価はまだそれに注目できるような素地が整っておらず、決算やアナリストの格上げなど需給を反転できるような材料が出ない限り、正当な評価を当てはめられない需給相場が続くだろう。


【需給】
直近の下落局面では特に外資の売りが目立っており、先月9月の月間出来高は過去最高を記録した。本来はそこで需給反転のきっかけができて、長期トレンド転換できるタイミングでもあったが、残念ながら足下の動きはトレンド転換失敗を確認。

約1年半下落トレンドが続いているため上値にしこりが多く残っているが、直近でも9月以降商いが特に膨らんで下落しているため、25000円辺りまでの価格帯出来高が重い印象。このラインを突破できるまで、需給バランスが改善したとは言い辛い。

信用買い残は足下で差し引き33000株残っており、7月以降も増加傾向にある。空売りのできない信用銘柄のため、買い残が溜まる一方であり、需給反転のきっかけが出来辛い。


【同業他社比較】
同社の予想PERは3.8倍、PBRは1.0倍。予想ROEは24.2%、予想営業利益率は15.0%。配当利回りは4.0%となっている。同業他社はどういう状況だろうか。


NTTドコモ(9437)
NTTグループで携帯電話国内最大手。
予想PERは12.3倍、PBRは1.2倍。予想ROEは10.4%。予想営業利益率は20.1%。配当利回りは3.9%。有利子負債比率は8.6%。
第一四半期時点でのARPUは4,960円。解約率は0.49%。

巨大なグループ力と通信品質で携帯シェアトップ。その強さでARPUを最も高く維持できており、他社を圧倒。有利子負債もほんど無く、安定力のある巨人株。

ただ高速通信サービス「Xi」はエリアも狭く、料金も割高であることからサービス開始から10ヶ月経過の今も加入者が伸び悩み。同社の契約数に占める割合はわずか0.3%程度であり、今後どこまで伸ばせるかは不透明。


KDDI(9433)
総合通信会社で国内2位。データ通信は関連会社のUQコミュニケーションズに集約。
予想PERは9.9倍、PBRは1.2倍。予想ROEは12.2%。営業利益率は13.7%。配当利回りは2.6%。有利子負債比率は44.7%。
第一四半期時点でのARPUは4,640円。解約率は0.66%。

二番手らしく、利益率や負債はドコモに比べてやや悪い。新型iPhoneの発売が業績にどのように影響してくるかを見極めたいところ。高速データ通信ではUQ WiMAXの評価が高く、この分野では一歩リード。


ソフトバンク(9984)
ソフトバンクモバイルを核とした持ち株会社。傘下にPHSのウィルコムを抱える。
予想PERは8.0倍、PBRは4.4倍。予想ROEは45.9%。四季報予想による営業利益率は21.5%。配当利回りは0.4%。有利子負債比率は254.3%。
第一四半期時点でのARPUは4,210円。解約率は1.08%。

iPhone効果でスマホではシェアトップ。割安戦術でARPUは低いが、それでも同社よりも高水準を維持。有利子負債比率は未だ高いが、急速に減少しており、一時囁かれた経営不安説も払拭。新型iPhoneの独占販売は崩されたものの、販売動向はauと互角と見られる。


同業他社との比較では、同社のARPUの低さ、解約率の高さが目に付くが、中でも一番の懸念材料は有利子負債比率の大きさ。PERや配当利回りなど株式的な価値では他社と比べて割安感があるが、利益率や成長性の面で劣り、買い材料とは見られにくい。


【課題】
最も得意とするデータ通信をいかに無理なく拡大していくか。会社側では得意とする30代、40代のビジネスパーソンから若年層の開拓を意識し、広告でもAKB48の板野友美をイメージキャラクターに起用したとのこと。

しかしながら若年層ほど可処分所得が少なく、またスマホで満足してしまうわけであり、例えばAppleのiPadのように同時に新しいライフスタイルの提案ができなければ、ごり押しも通用しないだろう。

iPhoneも国内ユーザーの過半が女性になったが、若い女性に選ばれやすいデザイン性やシンプルさといったコンセプトがしっかりしているから選ばれているわけで、トレンドを作るような商品提供ができるかにかかっていると言える。

株式的には外国人持ち株比率が46%と高く、外国人投資家の売りの影響を受けやすい。特に足下のように海外マーケットが不安定な状況になると、内需株であるにもかかわらず売られてしまう。もっと安定株主の獲得を目指すために、配当以外の株主還元策を考えて出していきたい。

LTEの普及は未知数。データ通信の強みが看板である同社がLTEを避けて通ることはできないが、ユーザーの満足度と費用対効果を秤にかけて慎重に進めるべきである。ドコモですら苦戦しているような状況下で、無理をする必要は無いのではないか。公衆無線LANなどの設置が進めば、たちまち駆逐されるような恐れもある。

さしあたっては現状の42Mbpsのカバー率を上げ、どれくらいの需要があるかを見定めるべきである。新しいもの好きのユーザーの需要だけでは、収益には結びつかないであろう。

同時に安易な値下げ競争に飲み込まれないためにも、一層の独自色を出して、ニッチな層を開拓すべきである。今回の災害時に強いという触れ込みは武器になるため、サブ回線としての利用呼びかけや、様々なポイントでアピールしていきたい。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

 

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