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ワイヤレスゲート(9419)

 

12年8月12日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  2311円、もしくは1811円での短期底値を確認後
3ヶ月以内株価予想 1200円〜3000円


要点

・積み上げ型のビジネスモデルであり、事業環境も高成長継続。外需にも左右されないため、業績見通しがつきやすい。キャッシュフロー、財務体質も極めて良好。
・決算後は売りが続いており、新規投資には短期底値を確認する要有り。
・何社も乗り入れているVCの動きが気になる。先に降りた者勝ちか。IPOセカンダリが短期資金を集め、夏枯れ相場時にもう一度火を付けることはありそうだが、チャンスは1度だけ。事業特性から長期で株価が上昇するような銘柄では無い。
・事業環境が良い分、競合他社の参入が今後も増えそう。早期に後ろ盾確保が必要。


【企業概要】
複数業者の無線LANを統合した高速インターネット接続サービス「ワイヤレスゲート」を提供。全国1万ヶ所以上でのWi-Fiスポットを有する国内最大級のサービス。また、全国主要都市を中心に高速データ通信サービスWiMAXも。筆頭株主はヨドバシカメラ。


【業績】
今期は大幅な増収増益を見込む。先日発表の中間決算は営業利益の進捗率で51.3%と順調。ただ第一四半期に比べ、上場関連費用分を差し引いてもやや利益率が落ち込む形となっている。

足下ではスマホやタブレット端末の益々の普及拡大から、同サービスの潜在的なユーザーは増え続ける見通しで、事業環境は良い。しばらくは安定的な成長が見込めそう。

売上構成は「WiMAX(基本の定額プランは月額4980円)」の方が「ワイヤレスゲート(月額380円〜)」より単価が高いため、会員数は後者の方が多いものの、売上に占める大部分はWiMAXサービスとなる。

ただ、WiMAXについては販売チャネルであるヨドバシカメラに支払う販売報酬や、通信キャリアに支払うインフラ使用料などがかかるため、利益率はワイヤレスゲートサービスに比べて低いだろう。実際に今期もWiMAXの伸びほど、利益の伸びは計画されていない。

また、現在はワイヤレスゲートサービスの新規契約の85%以上をヨドバシカメラ1社に販売依存している形ではあるが、今後は携帯販売会社などの新しい販路拡大に努め、シェアを拡げていく計画。


12年12月期第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   4000
営業利益 480
税前利益 470
当期純益 410


概ね会社計画通りの進捗となりそう。従業員は9人と人件費がほとんどかからず、また月額収入の積み上げ型ビジネスモデルのため、安定的な収益をあげることが可能。従ってスマホ・タブレット端末の伸びに応じて、会員数の増加もある程度予測がつき、イベントが発生しない限りは上にも下にも大きくぶれることは無さそう。


有利子負債は無し
現預金は11.3億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は218.2%で前期末の207.4%と比べて改善。

これに加えて第三四半期で株式公開による資金調達が出来たため、一段と資本の厚みを増してきた。財務体質は極めて良好と言える。


フリーキャッシュフローは3.8億円の黒字

投資も中間期段階でほとんど動きは無く、利益の積み上げにより着実に収入を増やしている。


粗利率は34.0%
予想ROAは25.3%で、前期の27.7%から悪化見込み。

ただしROAの悪化は新規公開により資本が増えることによるもの。実質的に問題は無い。


ファイナンスに関しては財務体質も良く、上場から日が浅いため行われない。


【株価推移】
7/19に新規上場し、公開価格1200円の2倍近い初値2311円を付けた後、初日は急激な売りを浴びる形でストップ安まで急落。ただIPOセカンダリをとる動きから2日目以降高値追いの動きが続き、30日には倍以上となる3670円の高値を付けた。

その後は反動や大口売りなどが響き、足下では再度初値水準まで調整が続いている。


【テクニカル】
上場間もないためテクニカル的にはあまり見るべきところが無いが、7/25に開けた窓(2255円〜2311円)を現在埋めに行く動きになっている。5日線や上場以来の終値の平均2707円も下回り、現在は初値2311円、もしくは上場初日安値1811円のいずれかでの下げ止まりを確認する必要がある。

さしあたり木曜は初値水準での下げ止まりを見せたものの、陰線が4日続いていることから、まだ下げ止まりが確認できたとは言い難い。陽線を出して明確に5日線を上抜けるまでは様子見が妥当である。


【需給】
初値2311円が最も商いの膨らんだ価格帯であり、直近その水準を上回って推移していることから、大きな需給不安は無い。高値でも極端に商いが膨らんだわけではない。

ロックアップに関しては大株主に半年かかっており、未行使のストックオプション(未行使残高446,500株)も役員に付与されているため、実質的に当面売却できない。

ただしVCのロックアップについては、公開価格の1.5倍の株価になった時点で外れた格好で、既に売却が可能の状態。総数は78万株弱にのぼり、上場時の流通株券以上の数字。特にVC7社の乗り合いになっているため、相互に早期売却の誘因が起きやすい。

現状はIPO間もなくでもあり、セカンダリの動きに期待した短期資金が入りやすい。大量保有報告書によると、レオス・キャピタルワークスの買いが上場後の急騰を演出。一転同社が売りに転じると天井を打った格好になっている。現状次の大口の買い手が仕掛けるまでは、上値の重い展開が続きそう。

一方で9月のJAL(9201)の大型IPOまではIPO空白期間であり、足下の売りが一巡したあとは、特に夏枯れ相場で物色材料難の中、再度短期資金を集めやすい素地が出来ている。

ただ、利益積み上げ型のビジネスモデルの銘柄は、安定した収益をあげる反面、高成長が期待し辛く、次第にバリュー株としての位置付けが強まってくることで人気が離散してしまうおそれがある。従って、短期的にはもう一度上げた場面がラストチャンスになる可能性がある。


【同業他社比較】
同社の予想PERは13.8倍。PBRは5.1倍
今期予想営業利益率は10.0%、予想ROEは42.2%
配当は無配
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


日本通信(9424)

同社と同じく通信回線網を借りてネットサービスを提供するMVNO。割安感のあるSIMカードを利用した無線データサービスが主力。ヨドバシカメラとも販売提携。接続料算定に関してドコモ(9437)と訴訟中。

予想PERは9.9倍、PBRは4.5倍
今期予想営業利益率は20.0%、予想ROEは44.5%
有利子負債比率は38.1%
配当は無配

PERやPBRでは同社に比べて割安感があるものの、第一四半期の業績が大きく落ち込んだことで会社計画達成に暗雲。市場は下方修正リスクを織り込んでいるものと見られる。同様に利益率なども高いが、果たして会社計画通り達成できるかどうかが焦点に。なお、新規回線出荷数は過去最高を記録。


イー・アクセス(9427)

イーモバイルを中核とした国内四番手の通信業者。Pocket WiFiなどデータ通信でシェア過半を握り存在感。MVNOの比率は足下で27%にまで低下し、利益率の高い自社ブランドの割合を増やしていく。今後はLTEに注力し、契約者数の増加を企図。配当は四半期配当(200円×4)を実施で高配当利回り。

予想PERは3.6倍、PBRは0.6倍
今期予想営業利益率は10.4%、予想ROEは15.6%
有利子負債比率は225.2%
配当利回りは5.8%

同社自体が通信キャリアになっており、MVNOの比率も低くなっているため参考。PERの割安感や配当利回りの高さは東証1部でも上位だが、有利子負債比率の高さが難点。今後のプラチナバンド獲得、またLTE拡大のための巨額な投資資金の必要性から、増資懸念が常につきまとう。


フリービット(3843)

法人向けを中心にクラウドなど各種ネットサービスを提供。ISP事業においては昨年よりMVNOサービス「YourNet MOBILE」を提供。

予想PERは14.0倍、PBRは1.3倍
今期予想営業利益率は7.8%、予想ROEは9.3%
有利子負債比率は103.8%
配当利回りは2.2%

MVNOはまだ事業規模が小さいため、同社と重なる点は少なく参考ではあるものの、積極的に拡張を押し進め、契約者数は伸びてきている。利益率などは小さいものの、M&Aなどにより確実に成長を続けている印象。


同社と大きく事業領域が重なるのは日本通信であるが、成長性や財務状況の良さで同社に一日の長あり。ただ足下はIPOによるご祝儀的な部分もあり、EV/EBITDA倍率などで比較すると同社はやや割高な水準に置かれているとも受け止められる。


【課題】
将来的には通信各社のLTEサービスの充実により、Wi-Fiの価値が低下する恐れも。また通信キャリア独自の無料Wi-Fiスポットが拡充されれば、相対的な魅力低下に繋がる。元々月額380円〜という低価格のため、その影響度合いは小さいとは見られるも、通信キャリアのARPU上昇、また独自エリア拡大は、付加料金の支払いに対する動機を失うことに繋がる。

また、MVNOについては新規参入が増えてきており、例えば昨年開始のフリービットを始めとして、プラザクリエイト(7502)も今年の3月より開始。スマホなどのモバイル端末の成長は、更に多くの事業者の参入を招くことになりそう。今後料金の低価格化を始めとして、競争激化の兆しがある。

そんな中で、なるべく早い段階で後ろ盾を充実させるべきである。色々な業者と手を組む素地はあるが、独立性を捨てて社長の出身繋がりでドコモ(9437)、WiMAX繋がりでKDDI(9433)などのキャリアとの握手も考えるべきか。また光通信(9435)など販売面においての提携で、携帯電話販売代理店を大株主に迎え入れるのも一考。

現行サービスが高成長を続けている間に、別のサービスを事業の柱として育てる必要がある。足下では動画などのコンテンツサービスを充実する、との社長の腹づもりらしいが、この辺りは他社でも収益黒字化が難しい分野であるため、自社開発はリスクを伴う。コンテンツの充実は他社との提携、もしくは出資などで補った方が良さそう。

どのようなコンテンツを提供するにしろ、ネットビジネスはアイデア次第で大きく変貌できるチャンスがある。動画にしても、ニコニコ動画のように字幕を入れられるだけで他社と差別化を図ることができる。こういったアイデアをとりあえずやってみるベンチャー精神が、会社の成長を期待させる一因となるだろう。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

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