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JAL(9201)

 

12年10月7日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  強いて言えば現在
3ヶ月以内株価予想 3000円〜4200円


要点

・景気減速や反日デモにより下期減速懸念。
・月末にかけてTOPIX買い需要、また上場一ヶ月後にあたる今月下旬辺りから幹事証券による強気レポートが出てくる思惑。しかしそれらの好材料が一巡すると、月末をピークに株価は下降線。
・同業他社比では利益率の高さ、財務体質の良さが顕著
・海外航空会社との比較では人件費削減など依然コストカットの余地が大きい。


【企業概要】
国際線首位でANA(9202)と双璧。会社更生法から公的資金投入により復活。先般再上場。オーストラリアカンタス航空と格安航空LCC「ジェットスター・ジャパン」を合弁。


【業績】
今期は増収減益を見込む。各方面からの支援の下、高収益体質に生まれ変わってテイクオフ。経営不振の元凶となった大型ジャンボを売却し、中小型機の導入を推進。機体を需要に応じて流動的に融通できる体勢を整えコストカット。結果、破綻時には40%程度あった大型比率を20%程度に引き下げた。

第一四半期決算は増収増益。昨年は震災により、大幅な旅客需要の減少だったことから、回復の度合いは大きく出てきた。加えてLCC子会社の上乗せに期待。

主力の国際線は中型のボーイング787の特徴である長距離航行を生かし、直行便を増やした。その他アライアンス(海外航空会社との提携)の拡充や期間限定運賃など、一転積極的な攻勢を展開している。

ただ下期にかけて、長引く反日ムードが業績伸長期待に水を差す。また世界的な景気減速感も引き続き不安材料。アジア圏での航空会社間の競争激化も事業環境リスク。

更に世界的な金融緩和から商品市況に資金が流入。原油価格が先月一時再度100ドルに乗せてきた。更に長期的な為替のトレンドが円安に向かいつつある中で、燃料費の上昇によるコスト増リスクは次第に強まってきている。

通期に対する進捗率は売上ベースで23.5%と低い。ただ例年第一四半期はGWを挟むものの季節要因としては最も弱く、夏休みシーズンが最需要期。2Q→3Q→4Q→1Qの順に割合が大きく、概ね平年ペース並と言えそう。


12年9月中間期予想(ラディッシュリサーチ)単位:百万円
売上   615000
営業利益 72900
税前利益 69100
当期純益 63200


例年中間期は通期の売上の丁度半分を稼ぎ出す期間。今期は引き続き世界景気回復への道筋が遠いものの、第二四半期にことさら下押したわけでもないため、上半期の業績に関しては特に心配する必要はなさそうだ。

足下の反日デモを始めとする中韓との外交問題の影響はやや気がかりではあるが、時間をかけて沈静化の推移を見守る他無い。中国3路線に関して同社は既に11月までの減便を決定しており、ドル箱路線の停滞は手痛い。

一方、破綻前の繰り越し欠損金が多額であることから、当面税金の支払いを免れる点は大きい(09年の破綻以降9年間で推定4000億円の納税額免除の見込み)。


有利子負債は554.8億円で前期末から17.9億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は13.8%
現預金は2943.3億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は148.3%で前期末の156.9%から悪化。

総額5215億円の債権放棄を金融機関から受けた結果、有利子負債比率は新興航空会社並に改善。実質無借金の状態に。


フリーキャッシュフローは前期末1094億円の黒字

破綻直前は1017億円の赤字だったことから、破綻処理後の収益改善効果が大きい。


粗利率は24.2%で、前期の21.1%から改善。
予想ROAは12.7%で、前期の18.2%から悪化の見込み。

今期は売上増を見込むものの、下半期の厳しさから前期に比べてROAなどは大幅に悪化の見込み。

ファイナンスに関しては財務体質も良いし、上場間もないため当面なされないだろう。また常識的にも社会的な支援を受けて間もない現段階で増資を行えば、大きな非難を受けることは疑いようもない。


【アナリストの評価】
マッコーリーキャピタル証券 「アウトパフォーム」 目標株価5000円
公開価格はPER5倍前後で割安。

現状、上場間もないためアナリストレポートを発表している証券会社は少ない(上場一ヶ月後から幹事証券によるレポートが開始。恐らくはポジティブなものを出してきそう。)。ただアメリカ投資週刊誌「バロンズ」などでも指標面からの割安を指摘、高評価の声も高い。


【株価推移】
公開価格をわずかに上回る初値形成に成功すると、以後機関投資家の買いや各指数への組入期待から底堅く推移した。しかし3日目に初値を下回ると、短期筋の投げ売りが出て急落。更に反日デモの影響が長引くと伝わると、一段と上値を抑えられた。

その後は需給動向を巡る様々な思惑が交錯し、少しずつ値を戻しつつある。


【テクニカル】
上場間もないために見るべき指標も少ないが、さしあたって5日線を上回ってパラボリックは好転している状態。9/26に「差し込み線」が出ており、単純にテクニカルだけを当てはめると売られる流れになってもおかしくなかったが、実際には下値切り上がりの形となっている。足下はテクニカルよりも需給の思惑が強い証左であると言える。


【需給】
FTSEの組入は見送られ、MSCIの組入は2日に終了。最後は今月末に控えたTOPIXの算入になるが、5日引け後には東証により同社の浮動株比率(FFW)が75%と決定。月末の買い需要は概ね1028万株(※10/10 750万株→1028万株に訂正)と試算される。加えて新規売出リスクが当面無いこともプラス要因。

一方、3日から日証金の貸借銘柄に選定され、ここから空売りも本格的に入ってくる流れに(ただし、銘柄選定されたこと自体は流動性の向上から総合的にはプラスに作用するものである)。また現段階で公開価格を下回っており、差し引きの信用買い残もまだ70万株程度残っているものと推察されることから、足下の需給はやや悪い。

また外国人比率が38.6%と引き続き高い。航空法により日本の航空会社の外国人議決割合は1/3未満に抑える外資規制があり、次回3月末の権利落ちまでは1000万株以上の売りが出てくる計算になる。
(※越えた部分の外国人投資家は株主名簿に載せることができず、議決権や配当を一部失う恐れがある。一方、放送法規定の外国人保有制限割合20%を超えたまま推移しているテレビ局銘柄も存在し、必ずしも全てが解消されるわけでもない。貸株目的で大量に保有しているところもありそう。

ただ、越えていたフジ・メディアHD(4676)、日テレ(9404)共に今週大きく下落したことも併記しておく)

もし次第に月末高を意識してほぐれてくると、一度高値を更新する場面があってもおかしくはなさそうだが、TOPIXの買い需要は十分株価に織り込まれているものと考えられる。

なお資金調達を行わない大型IPOの類似として10年IPOの第一生命(8750)が挙げられる。第一生命もTOPIXの買い終了後に需給バランスを崩してその後長期下落トレンドが続いた。当然地合も業態も利益率も売出の方法も異なるが、短期資金や思惑の動きの参考程度にはなりそうだ。


【同業他社比較】
同社の予想PERは3.6倍、PBRは1.7倍
今期予想営業利益率は12.3%、予想ROEは31.0%
配当は未定
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


ANA(9202)
国内線首位で同社と双璧。ピーチ、エアアジアで格安航空(LCC)参入。 先般大型増資を実施した。

予想PERは13.3倍、PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は7.3%、予想ROEは6.5%
有利子負債比率は178.3%
予想配当利回りは2.5%

粗利益率などはJALよりも5%程度低い。PERも割高で、有利子負債の高さが重荷。一方で配当利回り、優待利回りは高い。


スカイマーク(9204)
新興航空会社の筆頭。ドル箱路線に絞って集中運行。LCCと大手の中間的な存在。売上規模は同社の1/13程度。

予想PERは3.8倍、PBRは0.8倍
今期予想営業利益率は15.8%、予想ROEは21.2%
無借金経営
配当は無配

昨年増資を実施し財務体質は良好。配当や株主優待は行っておらず、株主還元は無い。


スターフライヤー(9206)
北九州を拠点とした新興航空。LCCよりも高級感を出した座席がウリ。売上規模は同社の1/50程度。

予想PERは8.5倍、PBRは1.8倍
今期予想営業利益率は2.8%、予想ROEは22.3%
有利子負債比率は68.7%
配当は無配

営業利益率は低いが、資本効率は高い。財務体質もまあまあ。配当は実施していないが、株主優待はアリ。


サウスウエスト航空(LUV)
アメリカテキサス州に本拠地を置く。主に全米で短距離・高頻度の2点間直行便サービスを提供。運搬旅客数では世界2位。効率経営で黒字を出し続けている高収益体質。

予想PERは13.0倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は5.6%(※ただし日本と費用項目の属性が異なるため参考)、ROEは2.7%
有利子負債比率は54.5%
予想配当利回りは0.3%

直近の四半期決算でも売上と利益が過去最高を記録。利益率は同社に比べて低いものの、特に支援などが入ったわけでもないにも関わらず、財務体質は大手航空会社の中で極めて健全。なお時価総額は5200億円程度であり、同社より小さい。


スカイマークやスターフライヤーは規模も異なるので比較の対象として弱いものの、ANAとの比較では収益力から財務力まで全てにおいて勝る(公的資金が入って会社更生法があったため当然)。

一方、海外の航空会社との比較では、日本の航空会社は相対的に利益率が高いとされている。国際的な航空会社のポートフォリオを考えた場合は選好されやすいかも知れない。


【課題】
現段階で株主優待が年一回と、ANAに比べて少ない。個人株主が大部分を占める銘柄であるため、株主還元に力を入れていきたい。

自民党政権が誕生した場合は、同社に対して民主党と反対の立場を採っていることから、政治リスクが高まる恐れがある。

利益率は高くなったが、相変わらず高コストな体質は早急に改めるべきである。効率経営で有名なサウスウエスト航空は一人の乗客を一マイル運ぶための費用が10セントなのに対して、国内大手2社は20セント超と倍近い開き。パイロットを中心とする人件費への切り込みが生ぬるいガラパゴス化に対して、しっかりと決別するべきである。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

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