ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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三井物産(8031)

 

※諸般の事情でレポートをしばらくお休みさせていただいておりましたが、今週から再開致します。

12年6月17日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  現在
3ヶ月以内株価予想 1100円〜1250円


要点

・資源価格の連動性が特に強い事業構造。鉄鉱石は中国の在庫が高止まっていることで、今後同国の成長が持続しないと再度価格下落圧力に見舞われる恐れ有り。
・各指標面では割安な印象。
・テクニカル的には1300円前後に各種抵抗帯があり、資源価格が急騰するなどのきっかけが無い限り、上値はその辺りが限界。
・利益が資源に偏重し過ぎており、足下のような景気減速時に大きなリスクとして顕在する。非資源事業の占める割合を増やして、リスク分散を図るべき。


【企業概要】
鉄鉱石や原油の権益では商社の中でトップ。鉄鉱石を中心に扱う。


【上場関連会社】

情報
三井情報(2665)
もしもしホットライン(4708)
日本ユニシス(8056)

プラント
東洋エンジニアリング(6330)

食料
三国コカ・コーラボトリング(2572)
三井製糖(2109)
日本配合飼料(2056)

など


【業績】
前期は増収増益。資源価格の上昇や、前の期に発生したメキシコ湾原油流出事故に絡む和解金の反動増により、最終利益は大幅増となった。

今期は減益の計画。足下で世界的な景気減速感から資源価格が下落。同社の場合は利益の9割を資源で稼いでいるため、その影響は特に大きい。またアメリカでのシェールガス権益取得による償却費の増加などで、利益水準が圧迫される見込み。

主力の鉄鉱石は足下130ドル/トンで下げ止まりつつあり、短期的には明るさが見え始めてきた。ただ最需要国の中国では鉄鉱石の在庫も高止まり。今後中国の成長鈍化が一段と強まれば、更なる下落も考慮しなければならない。

今後も引き続きガス・鉄鉱石の権益をしっかり確保し、金属資源・エネルギーで稼いでいく計画。それ以外にも新興国のインフラ整備や企業買収などで、収益基盤を固める。3年後には最終利益5000億円を目標に。


13年3月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   2568000
営業利益 90300
税前利益 129200
当期純益 142400
鉄鉱石1トン=140ドル、原油1バレル=110ドル
為替1ドル=80円、1豪ドル=85円前提



現時点で引き続き鉄鉱石の市況が安値圏で推移していること、為替の円高基調が保たれていることから急速な改善は見込めないものと見る。原油やLNGといったエネルギー資源も、世界的な景気減速やアメリカのシェールガス革命などの影響から上値が重い状況が続いている。

なお、原油価格の感応度が1ドルで12億円、鉄鉱石は19億円となっており、為替に関してはドル円が1円で16億円、豪ドルが19億円それぞれ最終利益に影響してくる。


有利子負債は3.6兆円で前期から2005億円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は135.5%
現預金は1.4兆円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は168.7%で前年の169.8%から横ばい。

総合商社の中では有利子負債率は最も低い。また三井グループということでバックボーンもしっかり。財務状況に関しては特段問題はなさそう。


フリーキャッシュフローは572億円の赤字

前の期はメキシコ湾原油流出事故における和解金の獲得、繰延税金などの一過性要因があって黒字だったものの、今期はそれらが剥落し、利益面は大幅に増加したものの赤字となった。


粗利率は8.4%で、前の期の8.6%から悪化。
予想ROAは4.2%で、前期の4.6%から悪化。

粗利は悪化し、今期も資源価格の下落から利益率の低下が気になるところ。


ファイナンスに関しては借入の余地も大きいことから、基本は行われないものと思われる。


【主なアナリストの評価】
三菱UFJモルガン 「アウトパフォーム」 目標株価1460円
中国の景気刺激策によって資源価格が反転。株価には資源価格の下落が概ね織り込まれた。

みずほ 「買い」 目標株価2140円
モザンビーク沖ガス田の潜在的価値は10〜60億ドルと見積もられ、株価上昇のカタリストと成り得る。


各アナリストの目標株価には差があるものの、総じて強気。資源価格の底打ち感や利回りの高さを指摘する向きが多い。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は4.2兆円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は4800億円であり、結果EV/EBITDA倍率は8.7倍となる。同業他社の平均値はおよそ9.9倍と見立てられ、それらを元に計算した理論株価は1424円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。


【株価推移】
07年に上場来高値を付けた後はリーマンショックの影響で下落。08年には1/5近くの水準にまで下落したが、その後は戻り歩調に。配当利回りの高さなどもあって底堅さはあるが、資源価格との連動性が高いため、今回のような世界的な景気減速懸念には敏感に反応してしまう性質がある。


【テクニカル】
長期的には10年4月、11年2月、今年3月の高値を結ぶ上値抵抗線が存在し、緩やかな下落トレンドの過程にあると言える。その延長線が現在1300円辺りに位置している。

一方下値はリーマンショック以後1000円が支持線として機能しているため、下値余地も限定的な印象。足下の株価推移はこの上下の抵抗線に挟まれた三角持ち合いの最中にあると言える。

短期的には日経平均などの指標同様に25日線の突破を試みている段階。ここを上放れれば75日線や200日線の位置する1250円辺りまで節らしい節が無い。5/7の急落時に開けた窓(1208円〜1232円)も意識されることから、ここまでの戻りが想定できる。

ただそこまで戻ると上述の上値抵抗線や、一目均衡表の雲上限、4月のもみ合い水準など1300円前後に多くの節があるため、これらの抵抗帯を全て突破するのは難儀しそう。地合の好転はもとより、金融緩和による資源価格の上昇やその他の好材料を含め、突破には何らかのきっかけが求められるだろう。


【需給】
6月上旬に一時割り込む場面もあったものの、5/10以降は1100円前半でのもみ合いが続いており、下値達成感は出てきている段階。現在は上放れのきっかけ待ちの状況である。

長期的には上述のようにゆるやかな下落トレンドとなっており、上値のしこりも意識されるが、一方で下値も固く、それ程需給が悪い印象は無い。信用買い残は差し引き1200万株で昨年11月以降の高水準にはなっているが、日々の出来高と比べると特段重石になるものでも無さそう。


【同業他社比較】
同社の予想PERは5.0倍。PBRは0.8倍
今期予想最終利益率は4.0%、予想ROEは15.1%
予想配当利回りは4.9%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


三菱商事(8058)
日本最大の商社で三菱グループの中核。金属・エネルギー、生活産業など各事業において満遍なく強みを持つ。

予想PERは5.0倍、PBRは0.7倍
今期予想最終利益率は2.4%、予想ROEは14.2%
有利子負債比率は144.8%
予想配当利回りは4.6%

株式価値は同社とほぼ同等。業態が大きいため同社と比べて利益率などは小さくなっているが、一方で財務的には安定しており、概ね妥当水準とも言える印象。


伊藤忠商事(8001)
総合商社で非財閥系では最大。金属・エネルギーを中心として、繊維・食料・情報など幅広い事業へ投資を行い取り扱う。鉄鉱石を中心として扱い、同社と最もタイプが近い。

予想PERは4.2倍、PBRは0.9倍
今期予想最終利益率は2.1%、予想ROEは20.5%
有利子負債比率は198.8%
予想配当利回りは5.0%

ROEや予想配当利回りの高さでは同社を上回るも、利益率や有利子負債比率では劣る。総じて妥当な水準。


住友商事(8053)
鋼管・鋼材に強み。また傘下のJCOMでテレビ通販などが好調。CSKを子会社化。またイギリスRBSの航空機リース事業を三井住友FG(8316)と共同買収。

予想PERは5.1倍、PBRは0.8倍
今期予想最終利益率は3.2%、予想ROEは15.4%
有利子負債比率は214%
予想配当利回りは4.8%

今回の航空機リース事業買収で50億ドル強の融資を受け、有利子負債は一段と増加するものの、バックにメガバンクが付いている安心感有り。それ以外はほぼ同社と同じような数値に。


丸紅(8002)
芙蓉グループの総合商社で5位。紙パルプ・穀物の取り扱いでトップ。アメリカ穀物取引大手のガビロンを36億ドルで買収し、穀物貿易で世界トップクラスに。

予想PERは4.1倍、PBRは1.0倍
今期予想最終利益率は1.9%、予想ROEは23.5%
有利子負債比率は305.5%
予想配当利回りは4.9%

財務体質は最も悪いが、ROEではトップ。利益率は最も小さいが、ガビロン買収による穀物分野での支配力強化で、今後の成長に期待。


PERやPBRで見た株式的な価値は各社共にほぼ同水準。全体的に横並びの印象であるが、強いていえば財務の健全性や利益率の面において若干割安な印象を持てる。


【課題】
最終利益の9割が資源による、という偏重は最大のリスク要因。中期経営計画でも投資の過半を引き続き資源関連に投じる予定になっており、非資源の育成を目指した直近までの事業戦略から逆戻りとなっている。計画の最終年度には5000億円の利益のうち7割は資源部門の予定。

資源価格は景気に大きく左右され、リスクは大きい。実際足下の世界的な景気減速感の中で、それでも他社は今期増益を見込む一方、資源価格の下落に対する抵抗力の小さい同社のみ減益予想。やはりリスク分散を意識する必要があるだろう。

他方、日本の資源確保に向けた公益的な意味合いもある、という同社の主張は日本人として評価すべき点である。であれば、特に海洋資源の開発に力を入れることで、日本を資源の「持つ国」に変貌させてもらいたい。それは同時に三井造船(7003)や三井海洋開発(6269)といったグループ企業の収益力にも寄与し、同社の潜在力強化に益々繋がるだろう。

その他、グループ企業の海外進出を手助けし、新興国でのインフラ整備や生産から消費までの一連の過程において一切の取りこぼしがないようにしていきたい。それがひいては収益力の多角化、グローバル化を一段と押し進めるものになる。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

 

 

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