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伊藤忠商事(8001)

 

12年1月22日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  790円辺り、もしくは820円の突破を確認した後で
3ヶ月以内株価予想 750円〜920円


要点

・業績は鉄鉱石の価格下落も織り込んで上ブレの公算。ただし大きな上ブレは見込めない。
・アナリストの評価では、目標株価を現値より上に置いているところが多い。
・テクニカル的には800円を大きく下回ることはなさそう。上値は800円前半でもみ合いの後突破できれば、まずは920円辺りまで見込める。
・同業他社比ではほぼ妥当な水準ではあるが、既に相対的には買われているため、株価の推移は弱くなりそう。
・足下の円高を利用して、積極的に海外の資源権益を取りに行くべき。


【企業概要】
総合商社で非財閥系では最大。金属・エネルギーを中心として、繊維・食料・情報など幅広い事業へ投資を行い取り扱う。海外は中国ビジネスに注力。資源価格の感応度が総合商社の中では高め。


【主な傘下上場企業】

機械・情報
CTC(4739)
エキサイト(3754)
アイ・ティー・シーネットワーク(9422)
東京センチュリーリース(8439)
ジャムコ(7408)
サンコール(5985)
スペースシャワーネットワーク(4838)

エネルギー
伊藤忠エネクス(8133)

住宅資材・化学品
大建工業(7905)
タキロン(4215)

食料
伊藤忠食品(2692)
ジャパンフーズ(2599)
プリマハム(2281)
ファミリーマート(8028)
不二製油(2607)

金融
オリコ(8585)
FXプライム(8711)
イー・ギャランティー(8771)


【業績】
前期は増収増益。主力の金属・エネルギーにおいて市況が上昇したこと、その他の化学品市況も好調だったことから、特に営業利益は前期比74%増と急回復した。

今期も増収増益の見込み。中間期時点でも増収増益を確保しているが、営業利益の進捗率は43%とやや弱含み。一方で最終利益の進捗率は66%と、総合商社の中では住友商事に次いで高い。鉄鉱石を中心とした資源に強みを持っているが、その鉄鉱石価格が歴史的な高値圏を付けていたことが背景。

しかし足下においては一転鉄鉱石を中心とした資源価格の下落が逆風で、特に鉄鉱石は秋口以降価格の行方を握る中国が粗鋼生産量の見通しを11、12年それぞれ0.2億トンずつ減らしたことから軟化。2ヶ月で3割以上下落した。

ただその環境下でも金属・エネルギー事業は増益を確保し、また機械・情報、化学品の各事業においても増益基調。下期においては金融・不動産といった事業も回復に転じてくるであろうことから、全体的にバランス良く成長を続けており、特に目立った弱点が無い。


12年3月期第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   8995000
営業利益 234200
税前利益 260100
当期純益 202000
為替1ドル=77円
金利0.46%前提


第三四半期では引き続き鉄鉱石の市況が安値圏で推移していることから、急速な改善は見込めないものと見たい。また、法人税率引き下げに伴う繰延税金資産の取り崩し100億円も考慮した。

ただ通期では情報部門の好調や、最近の中国の金融緩和策によって鉄鉱石価格の反発期待、またセグメント的にウエイトは小さいが一部事業は下期偏重の季節性があるため、利益面において上方修正は十分可能と見る。


有利子負債は2.5兆円で前期から1294億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は205%
現預金は4532億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は142.3%

財閥系商社に比べて有利子負債比率は高い傾向にあるが、総合商社の中では平均的な水準であり、特段問題視する必要は無さそう。

フリーキャッシュフローは1325億円の赤字。権益取得や海外投資が膨らんで赤字となった。

ファイナンスの可能性は0ではないが、現状低金利で借入ができる環境であることから、特段公募を行う必要性に迫られているとは考えにくい。


【決算を受けた主なアナリストの評価】
JPモルガン 「ニュートラル」 年内目標株価930円
堅調な業績は株価に織り込まれ済み。

みずほ証券 「Buy」 目標株価 1040円
鉄鉱石市況の下落が目先のマイナス要因も、回復期待から株価へのプラス要因に働きそう。


業績の先行きに関しては楽観的な見解が多く、上方修正は折り込み済み。現状の株価よりは上に見ている向きが強い。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は3.3兆円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は3942億円であり、結果EV/EBITDA倍率は8.5倍となる。同業他社の平均値はおよそ10.1倍と見立てられ、それらを元に計算した理論株価は1201円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。


【株価推移】
07年に上場来高値を付けた後はリーマンショックの影響で下落。08年には1/4の水準にまで下落したが、その後は戻り歩調に。概してディフェンシブ性が強く、昨年の震災や世界の債務不安に直面しても下落幅は限定的。資源価格の世界的な上昇に裏打ちされた業績の好調さが示されている。


【テクニカル】
株価は昨年8月の下落以降、上値は830円に抑えられた形となっている。一方で下値は10/4の安値から着実に切り上げの形を見せており、煮詰まり感が出てきている場面。足下では終値ベースで昨年11月以来の高値を付け、800円クリアにトライしている。

MACDやパラボリックは好転していることからトレンドは上向き、また一目均衡表でも遅行線が実線を明確に上抜けば三役好転が成ると言って良い。一方200日線やボリンジャーバンドでは+2σに達していることから、一旦調整する場面があると見られるも、目先800円を大きく下回る心配は無さそう。

ここからの株式市況や鉄鉱石を始めとする資源価格の上昇を考えると、景気敏感株としてのプラス面から上放れの動きに期待が持てる。ただし上値は2010年以降900円前半で何度も押し返されていることから、ひとまずはその辺りに強い抵抗帯があるものと考えられる。


【需給】
09年以降はほぼ右肩上がりの上昇を見せていることから、需給は概ね良好と言える。短期的にも9/26には出来高を伴って大陰線を付けたが、その水準を上回ってきている点は安心感。超短期的には1/20の上昇で窓を開けたが、基本は窓を着実に埋めて推移しているため、一旦は埋めに行く動きが出るものと見られ、新規の買いは790円辺りが妥当か。

一方で800円前後の水準は8月の急落場面から1ヶ月半の間もみ合った水準であり、10月以降も度々押し返されているところであるため、上値突破には市場の盛り上がりや決算などのきっかけが不可欠。

信用買い残は差し引き440万株で、11月以降は改善の傾向が見られる。日々の出来高では十分消化可能な水準であり、特に上値を抑える程のものではない印象。

昨年秋口以降は外国人投資家の売り圧力がここまで大きかった分、上値を抑えられたものと考えられる。逆にここから外国人が買いに戻ってくる分を考慮すると、ここからの需給は一段と改善してくる公算が大きい。


【同業他社比較】
同社の予想PERは4.7倍。PBRは1.0倍
今期予想最終利益率は2.0%、予想ROEは22.0%
予想配当利回りは4.1%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


三菱商事(8058)
日本最大の商社で三菱グループの中核。金属・エネルギー、生活産業など各事業において満遍なく強みを持つ。

予想PERは5.9倍、PBRは0.9倍
今期予想最終利益率は2.1%、予想ROEは15.0%
有利子負債比率は138%
予想配当利回りは3.8%

業態が大きいため同社と比べてROEは小さくなっているが、一方で財務的には安定しており、概ね妥当水準とも言える印象。


三井物産(8031)
鉄鉱石や原油の権益では商社の中でトップ。鉄鉱石を中心に扱うことで、同社と最もタイプが近い。

予想PERは5.2倍、PBRは1.0倍
今期予想最終利益率は3.7%、予想ROEは19.5%
有利子負債比率は153%
予想配当利回りは4.3%

最終利益率や予想配当利回りの高さ、また有利子負債比率が低いところを勘案すると、同社よりも割安な印象。


住友商事(8053)
鋼管・鋼材に強み。また傘下のJCOMでテレビ通販などが好調。CSKを子会社化。またイギリスRBSの航空機リース事業を三井住友FG(8316)と共同買収。

予想PERは5.2倍、PBRは0.8倍
今期予想最終利益率は2.9%、予想ROEは16.1%
有利子負債比率は233%
予想配当利回りは4.5%

財務体質は今回の航空機リース事業買収で一段と悪化しそうではあるが、バックにメガバンクが付いている安心感有り。また買収に対する積極性が評価されている。配当利回りは同業他社との比較では最も高い。


丸紅(8002)
芙蓉グループの総合商社で5位。紙パルプ・穀物の取り扱いでトップ。プラントや電力などのエネルギー分野で強み。

予想PERは4.7倍、PBRは1.1倍
今期予想最終利益率は1.7%、予想ROEは22.2%
有利子負債比率は302%
予想配当利回りは4.0%

財務体質は最も悪いが、ROEは同社と並んで高い。ただ最終利益率が最も小さく、業容が上述の同業の中で最も小さい分、苦戦が伺える。


PERやPBRで見た株式的な価値は各社共にほぼ同水準。資源価格の高止まりにより、中間期までの数字は他社に比べて良かったため、昨年4月以降の株価の相対比較では、同社が最も高い位置にある。

株式価値的な絶対水準は各社共に大差が無いものの、下期は他社の方が伸びしろがあり、また配当利回りなどで考えると、今後の株価の動きは他社に劣るような印象がある。


【課題】
世界的には景気最悪期を脱した感があり、今後資源価格の上昇が見込まれる。特にアメリカのQE3を始めとする世界各国の金融緩和策が拡大すれば、一段と資源価格の上昇に繋がってくるものと思われる。

そんな情勢の中では引き続き積極的に世界の資源権益を追っていく姿勢を打ち出したい。特に足下の円高局面はチャンスであり、投融資枠を更に拡大して攻めていく姿勢が欲しい。

ただ資源価格は当然世界的な市況に左右されるため、一方で比較的安定している繊維や食料などの事業への配分も忘れずに行いたい。資源に対するエクスポージャーが高いと、今回のような世界的な危機が発生した場合に経営バランスに歪みが生じてくることになる。

また新興国の企業が力を付けてくる中で、日の丸商社も規模の優位性が求められてくるものと思われる。聖域なき再編も視野に入れる必要があるだろう。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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