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フルヤ金属(7826)

 

22年11月25日現在
3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  1万円を明確に上放れた時
3ヶ月以内株価予想 7000円〜11000円


要点

・業績は好調で利益率は高い。ただフリーキャッシュフローは4期連続の赤字。借入金も増える。
・チャート形状は反転期待感。ただし今年は下落トレンドで上値抵抗線が頭を抑え、年末にかけた損出し売りも懸念。
・株式分割やプライム市場昇格期待感はある。


【企業概要】
電子部品製造に使用するイリジウム製の結晶製造容器(ルツボ)、HDD用ターゲット材で世界シェア7割。プラチナグループメタル(PGM)と言われるプラチナ、イリジウムを使った金属加工に強み。有機ELディスプレーに必須の「高純度イリジウム化合物」世界シェア9割。


【業績】
前期は大幅増収増益で着地。主力のケミカル分野において、リサイクルの回収が好調。薄膜分野もデータセンター向けHDD需要の増加などで好調だった。

今期は増収増益を計画。1Qの段階では大幅増収も減益。各セグメントそれぞれ需要は高いものの、前期好調の反動や貴金属原材料のコスト増などが響いた。


PGMは希少価値があり腐食に強い金属類で、HDDやスマホ、半導体、有機EL、自動車の排ガスの浄化媒体などあらゆる分野で使われる。PGMはそのほとんどが南アフリカの鉱山で産出されることから、現地の大手の鉱山から安定した調達ルートを確保するため、11年にライバルだった田中貴金属と組んだ。現在田中貴金属は同社の筆頭株主に。

イリジウムはプラチナの製錬時に副産物として得られる希少金属で、硬い物質の単結晶を精製するためのルツボの原料として使われている。イリジウムルツボを使用して作られるタンタル酸リチウムはスマホのノイズを取り除く電波フィルターなどに用いられる。

ルツボは過酷な環境下で使われるため、1〜2年で取り替える必要がある。フルヤ金属は使用済みルツボを、1ヵ月半で新品同様によみがえらせる技術も確立。出荷分の2割程度が戻ってきて、精製・加工し、もう一度新製品として顧客に納入。採算性が高い。年間生産量を上回るリサイクル能力を備えており、全出荷量の7割が循環型ビジネス。

鉱山で産出されたイリジウムのパウダーを溶解・加工し製品化する技術とリサイクル技術の両方を持っているのは世界でも2?3社に限られており、参入障壁が高い。国内ではオンリーワン。

ルテニウムもプラチナの副産物として生成されるが、ルテニウムは主にHDD向けや、次世代メモリ向けとしての利用も期待されており、量産に向けた設備投資を行っている。


23年6月期中間期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   23500
営業利益 7500
経常利益 7800
当期純益 5100


例年3Q(1-3月)に売上が一番大きくなる季節性があり、下期にやや偏重する傾向がある。今期見通しは保守的であり、上ブレ余地は大きいと見られる。


有利子負債は210.0億円で前期末から38.1億円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)55.7%
現預金31.9億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は181.1%で前期末の187.0%より悪化。

財務面は悪くは無い印象。ただ後述の4期連続FCF赤字により、借入金は年々増加傾向。


フリーキャッシュフロー(FCF)は前期30.1億円の赤字

前期に比べて利益が拡大、棚卸資産の増加額が減少したことなどにより、営業CFの赤字縮小。一方、有形固定資産の取得額減少などで、投資CFの赤字も減少。結果、FCFの赤字は縮小した。ただし4期連続の赤字に。


粗利益率は39.9%で、前期の46.1%から悪化。
予想ROAは18.8%で、前期の18.3%から改善の見込み。

原材料価格の上昇などにより、粗利率は悪化。プラチナやイリジウムの価格が年々上昇していることなどから「原材料及び貯蔵品」も拡大。それでもROAは改善を見込む。


ファイナンスに関しては現状借り入れで対応できていることから目先実施される可能性は低いが、FCFの黒字転換が見えてこないと、株価位置も高いことで検討されるリスクはある。


【株価推移】
16年に最安値を形成した後、17年4月に有害物質を分解除去できる画期的な触媒「FT-eco触媒」の量産技術確立との発表から、同社の技術力に注目が集まり、株式的にも流動性が高まった。その後は株式市場環境の好転や、同社の業績自体も順調に推移したことで右肩上がりの推移に。ただ今年年初に実質上場来高値を付けた後は、地合の悪化もあって下落基調続く。


【テクニカル】
長期的には16年の安値形成以降、順調な下値切り上げの展開が続いている。10月にはその下値支持線を割り込むような動きを見せたが、足元では再度回復。一方、昨年10月から4月までは月足ベースで出来高が膨らんでおり、1万円以上の戻りは上値の重さが意識される。

週足で見ると、今年は逆に一貫した右肩下がりに。高値からの下落率は44.4%と半値近い下落を見せている。先週の戻りは4月と8月の高値を結ぶ上値抵抗線に接してきていることで、目先の達成感がある。

日足で見ると200日線までの主要平均線を全て上回っており、短期的には上値が軽くなっている。

MACDやパラボリックは好転。一目均衡表は三役好転も遅行線が雲上限トライの形。一方、ストキャスティックスは安値圏で好転。ボリンジャーバンドは+2σの拡大に合わせて上値余地が拡がっている。他方、週足でもMACDやパラボリックが好転し、ボリンジャーバンドは+2σが上昇していることから、上値は軽い印象。


【需給】
上述のように月足では長期的には良好。一方、中期的には今年に入って右肩下がりで、需給が悪化。最高値圏では出来高も膨らんでおり、年末にかけて損出し売りも出やすい流れに。

信用買い残は32.3万株で2月のピーク以降は整理売りが続く。一方、機関投資家による空売り計18.6万株が報告されている。日々の出来高との比較では返済売りがやや重石になる程度。


【同業他社比較】
同社の予想PER6.9倍、PBR1.8倍
今期予想営業利益率29.5%、予想ROE25.3%
配当利回りは2.7%
時価総額684億円
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


アサカ理研(5724)
独自技術を使った電子部品からの貴金属回収、精錬などが柱。

予想PER30.8倍、PBR2.1倍
今期予想営業利益率4.4%、予想ROE6.9%
有利子負債比率50.6%
配当利回りは0.5%
時価総額87億円

同社と業務的に重なっている部分が少ないため参考。株式価値的には割高感がある。


松田産業(7456)
電子部品スクラップから貴金属を回収。

予想PER6.5倍、PBR0.7倍
今期予想営業利益率3.9%、予想ROE11.8%
有利子負債比率35.4%
配当利回り2.2%
時価総額624億円

こちらも業態的に重なっている部分が少なく参考。株式価値的な割安感はあるが、利益率が低い。


他社との比較では利益率が高く、割安感が強い。


【課題】
FCFの早期黒字化。「業績が好調なときは、ある程度長期間の必要原材料を調達するため、キャッシュフローが赤字になる傾向があること」また前期は「税金の支払いが響いた」とはいえ、これだけ利益率が高い事業を営みながらも、借り入れが年々増えている点は課題。資源価格の上昇が続くと一層厳しくなることから、安定的にキャッシュを創出できる運営を心がけたい。


【総合評価】
業績的には好調。参入障壁が高いビジネスモデルであることから、高い利益率、価格支配力がある。プラチナ価格は主要算出国の南アフリカでの電力不足により生産停滞が続くとの見通しがあり、来年も供給難による価格高止まりが見込まれている。ただフリーキャッシュフローの赤字が続いており、財務的な安定感は無い。

チャート的には足元好転を示す指標が多いが、中期的には下値切り下げの展開から抜け出せていない。一方、株式的には分割期待感や、プライム市場指定替え期待感がある。

今年は下落基調だったことから、年末にかけて損出し売りが出やすいと見られる。長期的な上昇トレンド継続は十分見込めるものの、3ヶ月程度のスパンでは上値が重いと見られ、本格反転上昇にはもうしばらく時間が必要と考える。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

 

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