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フェローテック(6890)

 

12年5月20日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  当面無し
3ヶ月以内株価予想 480円〜700円


要点

・積極投資も裏目に出て業績はピークアウト。事業環境が悪く、業界全体先行きの見通し辛い状態に。減配リスクも。
・テクニカル面、需給面ではまだ底値探りの段階。投げ売りが出尽くして需給が反転するまでは手出し辛く、明確な底値目処も不透明。
・同業他社比では優位性があるものの、事業環境が好転してこない限り差別化の動きは出辛い。
・海外企業との提携に活路を見出し、景気変動の大きな事業リスクを分散する必要がある。


【企業概要】
太陽電池や半導体設備向け部品の製造。真空シールや石英坩堝など、半導体や太陽電池製造で欠かせない部品において世界No.1のシェアを持つ。主要取引先は東京エレクトロン(8035)や中国のシリコンウェハメーカーなど。


【関連市場テーマ】
太陽光、半導体、液晶、LED、自動車など


【業績】
前期は増収減益。主力の真空シールが顧客企業の投資抑制によって、年後半から伸び悩み。またもう一方の柱に育った太陽電池関連事業においても、シリコン価格の大幅下落から減益。結果、全事業において大幅な営業減益に。

今期は減収減益の見込み。引き続き顧客企業の投資意欲減衰が見込まれること、また太陽電池に関してもパネル価格下落が止まらず、各事業共に回復の兆しが見えてこない。

特に太陽電池関連事業の利益率が低いため、売上に占める同事業の割合が嵩上げされるほど、利益率が悪化する形となる。中国で工場を建設し、太陽電池関連商品の供給能力を高めたものの裏目に。加えて中国太陽光パネルメーカーにアメリカの反ダンピング関税が課される懸念が出てきており、中期経営計画は2年目以降の修正を余儀なくされそうだ。

半導体製造装置関連においても、主要顧客の東京エレクトロンも今期は減収減益見込み。ただ何とかスマホ・タブレット端末などによる需要増で、前1−3月期を底に受注回復の兆しが見える点が唯一の光明か。同社はこれまで繁忙により受注を断っていた真空チャンバーの請負で食いつなぐものの、あくまで一時しのぎ。利益率の高い同事業の復調に期待したい。

もしこのまま外部環境の好転が見えてこない状況が続くのであれば、生産能力調整のためのリストラや配置転換など、何らかの合理化策が必要になってこよう。


13年3月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   11700
営業利益 0
経常利益 −20
当期純益 −30
想定為替レート 78円


会社予想はやや保守的な傾向がある一方、四半期別で見た売上の推移は厳しい。売上高は11年1Qから翌12年1Qまで約1.8倍化と急速に伸びたものの、そこでピークアウト。最終四半期の売上は103億円と、過去2年の中で最低にまで急落。

特に生産能力を増強したことで、売上に占める太陽電池関連の割合が増えることもあり、利益率は一段と低下する見込み。他社の見通しなどを見ても改善の傾向は見えてこない。


有利子負債は210.7億円で前期から19.8億円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は63.1%
現預金は95.6億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は139.7%で前年の139.8%から横ばい。

昨年の大型公募もあり財務体質はそれほど悪くは無いが、良くも無いといったところ。


フリーキャッシュフローは78.5億円の赤字

前の期に比べて利益の減少により営業キャッシュフローが減少し、中国での工場建設などで投資キャッシュフローも悪化した。


粗利率は27.5%で、前の期の32.0%から悪化。
予想ROAは1.1%で、前期の4.5%から悪化。

粗利は悪化し、今期も改善の見込みは薄い。


ファイナンスに関しては昨年既に大規模な増資を行っていることから、目先は行われないものと思われる。太陽電池市況などが好転しない限り、積極的な投資計画も立たないだろう。


【株価推移】
業績はここまでしっかりしていたこともあり、新興市場の中では比較的高位の株価水準を維持できていた。太陽電池に注力という事業転換も奏功し、前々期は業績が急拡大。それに伴って、株価も出来高を伴って大いに盛り上がった。リーマンショック時や震災直後など、全体市況が大崩する中でも、まだしっかり値を保った方。

ただ、世界の太陽電池に供給過多懸念が生じると、推進力が一変。今期も事業環境の好転が見えない中で、底這いの動きが続きそう。


【テクニカル】
まず昨年9/16、10/13、今年の3/1の高値を結ぶ上値抵抗線と、昨年11/21、今年1/6、2/6の安値を結ぶ下値支持線で形成される三角持ち合いを、4月に下回ってしまったことで、当面下放れの売り圧力が続くものと思われる。各移動平均線も下回り、目先の下値目処が見え辛い。

MACDやパラボリックは暗転し、一目均衡表でも三役暗転の形に。下落トレンドは明確で、ストキャスも安値圏を示したまま反発の兆しが見えない。ボリンジャーバンドは−2σを11日に窓を開けて割り込んでしまい、以後−2σに沿った下落が続きそうな形に。週足においてもそれぞれ似たような状況。

下値の目処はまずは心理的な節目でかつ利回りが4%台になる500円が挙げられる。現時点で200日線との乖離は40%近くになっているが、同社の過去の推移を見ると50%乖離は十分あり得る。

3/1高値1065円→4/11安値711円までの下落幅354円を第二下落波動の起点4/23高値838円から当てはめると、484円と計算される。それらを考慮すると400円台後半が下値の目処か。そこまで到達して初めて横ばい推移に移行しそうな感じ。

ただ外部環境の好転が見えない中で、現在の配当水準が維持される信憑性に乏しい。大幅増資をした上で配当額も維持となると、相当に負担は重くなる。無配転落までは無いにしても、10円程度の減配は覚悟すべき。

一方の上値目処は14日に開けた窓を埋める700円まで。昨年11月以降の安値水準と重なるため、その辺りに抵抗力が強そう。越えるには太陽光関連での何らかのイベント、材料が必要と思われる。


【需給】
震災以後、太陽光関連銘柄が大きく盛り上がったことから、昨年3月以降の出来高は過去最大を記録。その後の下落で上値に大きなしこりを残しており、更に昨年7月の大型公募が追い打ち。結果、足下では年初来安値を付けており、03年6月以来の安値水準。過去9年内で同社株の買い持ちをしている投資家のほとんどが含み損を抱える状態に。

昨年11月以降の全体相場回復局面でも、10年に東京海上日動火災が引き受けたCBの未行使残高2億円(行使価格1010円)が警戒され、上値の重石要因に。本来規模は大きく無いが、それすら跳ね返すことができないという事実が需給の悪さを何より物語る。

信用買い残は200万株を越えており、4月以降は投げ売りも進んでいるものの未だ高水準。昨年震災以後に取得した投資家の投げが終わっていないことを示す。日々の出来高に比べてもまだまだ多く、これらが出尽くさないと需給反転のきっかけを掴むのは難しそうだ。

昨年公募増資をした直後で自社株買いなども期待し辛く、底値圏で出来高が連日100万株超に膨らんで、初めて反転の兆候を嗅ぎ取れると思われる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは41.6倍。PBRは0.6倍
今期予想営業利益率は2.4%
配当利回りは3.3%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。

アルバック(6728)
半導体などの製造に必要な真空技術に強み。FPD、太陽電池などへ展開。

今期は赤字予想でPBRは0.3倍
有利子負債比率は220.5%
配当は無配。

業績が悪く、財務体質も悪い。業界環境が悪い中で、来期の回復確度も不透明。


芝浦メカトロニクス(6590)
FPDや半導体の製造装置メーカー。太陽電池製造装置、真空技術なども売上の1割程度にまで伸びてきている。

予想PERは13.8倍、PBRは0.5倍
今期予想営業利益率は2.0%、予想ROAは1.5%
有利子負債比率は72.4%
配当は無配。

事業環境が悪い中で業績の回復見込みも弱い。株式価値的には同社よりも割安になっているが、その他の項目では内容は悪い。


エヌピーシー(6255)
太陽電池モジュール製造装置で世界首位。ドイツの同業大手マイヤー社を買収したが、その後の市況悪化で買収効果を出せずに苦しむ。

予想PERは17.2倍、PBRは0.9倍
今期予想営業利益率は0.4%、予想ROAは3.0%
有利子負債比率は103.8%
予想配当利回りは1.2%

やはり業績面では苦しさが見える。太陽電池一本槍の影響もあって、総合的に指標は悪い。配当もどこまで持続できるか疑問符。


フジプレアム(4237)
精密貼合技術を活用し液晶向けPDP用光学フィルターなどを製造。太陽電池モジュールの製造にも注力し、売上の1/4を越える規模になってきた。

予想PERは9.5倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は8.3%、予想ROAは7.3%
有利子負債比率は82.3%
配当は無配

利益率は他社比で最も高い数値を見込むものの、配当は無配転落としており、実現の確度は不透明。


同社と事業内容が完全に類似という企業は見あたらないものの、それぞれ太陽電池関連という括りの中で、株式市場において連動性が強い。

それらの比較の中では同社はまだ相対的に利益率、財務体質などでは優位性がある感じだが、事業環境の悪さは同じであり、相対比較で買われるという動きは期待し辛い。


【課題】
以前は様々な会社との業務提携を打ち出していたが、足下では事業環境も悪いため、新たな提携の進捗もままならない。国内が難しいのであれば、せめて海外企業などとの提携を模索し、海外市場を開拓するしかなさそうだ。

また同社が事業の軸足を置く中国の成長鈍化が気がかり。工場建設などで積極策に出るも、足下では人件費の上昇などが懸念される。太陽電池市場を牽引してきた欧州の混乱も、同社にとっては大きなマイナス材料である。

これら外部の環境頼みという事業構造自体にリスクがあり、景気変動を受け辛い事業を拡張してリスク分散に心がけるべきではないか。その点消耗品である石英坩堝などの拡大は評価できる。

ただ太陽電池関連事業は利益率が低いため、収益を改善させるためにはその他の事業を伸ばす必要がある。世界的に太陽電池メーカーの破綻が相次ぐ中でも価格下落は収まらず、残存者メリットを期待するにも相応の時間を要する恐れがある。

一方で製品性能で差別化・高付加価値化を維持するためにも、研究開発費は削れない。生産能力を抑えながら研究開発も怠らないことで、品質No.1を提供し続ける必要がある。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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