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オムロン(6645)

 

17年5月7日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  4200円以下の場面で
3ヶ月以内株価予想 4200円〜4900円


要点

・事業環境は良好も決算と同時に発表した次期中期経営計画での投資拡大方針がアナリストなどによる評判が悪い。
・チャート的には天井圏でアイランドリバーサルを形成しており、上昇トレンド終了サイン。ひとまず下値を探る場面に。
・優秀な人材確保するのが難しい環境にある。企業成長スピードとの折り合いが必要。


【企業概要】
京都本社で感知・制御装置主力。ヘルスケア分野にも強みがあり、血圧計では世界シェア50%。自社ヘルスケア製品が貰える優待も実施。


【業績】
前期は減収ながらも営業増益で着地。円高が重石となったが、有機ELパネル向け制御機器や血圧計の海外販売が好調。為替影響を除けば増収を確保し、調達比圧縮や生産性向上などによるコスト削減が寄与したことで粗利益率は向上した。一方、最終利益は不振のスマホ向けバックライト事業で設備減損を行ったことで減益に。


今期は増収増益を見込むも、ほぼ前期と横ばい水準。主力の制御機器事業は省力化投資の世界的な拡大を受けて伸びを見込み、粗利益率の向上も計画するが、開発投資や人材獲得コストなどが利益を圧迫。為替前提は前期とほぼ同水準を踏襲するも、営業利益率は低下を想定する。

同時に20年を最終年度とする中期経営計画を発表。売上1兆円、営業利益1,000億円を目指すと共に、これまで以上に設備投資やM&Aといった分野に資金を投じる見込み。特にM&Aでは過去3カ年実績の440億円に対し、最大2,000億円を準備。

成長のドライバーとしてはFA及びヘルスケアに重点。先月も産業用カメラ大手のセンテックを買収を発表。産業用品質検査装置分野を強化し、工場の自動化加速の流れに対応する。ヘルスケア分野においても得意とする血圧計分野で世界シェアの過半を目指すと共に、ウェアラブル端末を用いて他社との協業などを強めていく。

一方、これまでROE目標は13%以上だったところが10%以上となるなど、全般的に控えめな目標に。今後数年は投資により競争力を蓄える時期と考えている。


18年3月期第1四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   190500
営業利益 13600
経常利益 13700
当期純益 9900
1ドル=110円 1ユーロ=118円


例年期初計画からのブレが大きいものの、今期は事業環境の良さや足元での為替の落ち着きなどを背景にやや上ブレ程度の着地を想定。なお、各通貨共に1円の円高で営業利益を5億円分それぞれ引き下げに作用する。


有利子負債は無しの無借金経営。
現預金は1,260億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は253.3%で前々期の239.5%より改善。

後述のキャッシュフローも良好で現預金も増加傾向にあり、財務体質は良好。


フリーキャッシュフロー(FCF)は628.3億円の黒字

前々期に比べて売掛金や棚卸し資産が増えたことなどで営業CFは減少。一方、前々期に行われた事業買収が無くなったことなどで投資CFの赤字は縮小。結果トータルでFCFの黒字は拡大した。


粗利率は39.3%で、前々期の38.5%より改善。
予想ROAは9.4%で、前期の9.4%とほぼ同水準。

粗利の改善効果は投資の拡大によって打ち消される印象。


公募などの希薄化を伴うファイナンスに関しては、過去30年以上行われていないものの、今回の中期経営計画での投資意欲の高さから、M&A案件の大型化次第ではあり得る。


【主なアナリストの評価】
マッコリー 「ニュートラル」 目標株価 4500円

研究開発費等の増加が利益の重荷に。


ゴールドマンサックス 「買い」 目標株価 5250円


全般的に中期経営計画を受けて厳しめの評価が目立つ。


【株価推移】
リーマンショック後に940円の安値を付けて以後は震災なども乗り越えて持ち直しの動き。アベノミクスによる強烈な円安トレンドを背景に15年には上場来高値5900円をマーク。その後チャイナショックや昨年のオイルショックなどを経て一時2742円まで下落するも、そこから5000円を回復するまでに至る。ただ今回の決算を受けて改めて下放れの動きに。


【テクニカル】
上述のように最高値からの半値まで調整を終え、2742円→今年3月には5120円までのリバウンドを見せた。その後は5100円水準が強い抵抗線となっており、三尊天井を形成。今回改めて突破を試みるも失敗した格好。結果、75日線と25日線のデッドクロスを示現した。

特に4/26、4/27に窓を空けて上放れを見せたが、その後の決算を受けた急落で再度窓を空けて下落し「アイランドリバーサル」を形成。天井圏での示現により、トレンド転換を示唆する格好。

日足のMACDやパラボリックは暗転。一目均衡表も三役逆転の形に。ストキャスは割安感があるものの、ボリンジャーバンドは-2σの拡大に合わせて下値余地も拡大していく流れ。週足でもMACDやパラボリックといったトレンド系は暗転しており、下落基調が続く見込み。


【需給】
長期的には高値圏にあるものの、今回の下放れで4600円〜5000円辺りの今年の価格帯を下回った格好。続いて昨年12月〜今年1月に4500円前後での横ばい推移を続けた価格帯が位置しており、足元はその水準で踏ん張れるかどうかの正念場に。

短期的には先述のように決算を受けて窓を空けて急落しており、上方に窓(4760円〜4930円)が空いている分、戻った時は早いものの、更にその上の5000円の価格帯では戻り売り圧力はも強い公算。日足で陰線が3本並んでいることで、現状は見切り売りが続いている流れ。一旦は売り一巡感を見定める必要性がある。

信用買い残は差し引き33.6万株で昨年3月以来の高水準。ただ日々の出来高との比較では返済売りが重石に感じられるようなレベルではない。


【同業他社比較】
同社の予想PERは20.2倍、PBRは2.1倍
今期予想営業利益率は8.4%、予想ROEは10.3%
配当利回りは1.5%
時価総額は9,799億円
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


三菱電機(6503)
総合電機大手でFAが収益の柱。特に制御機器分野で同社と競合。

予想PERは16.1倍、PBRは1.7倍
今期予想営業利益率は6.5%、予想ROEは10.5%
有利子負債比率は17.3%
配当利回りは1.7%
時価総額は3.5兆円

同社に比べて営業利益率は低いが、それ以外は全般的に割安感がある。時価総額の大きさでも安定的。


安川電機(6506)
サーボモーターとインバーターでは世界首位。産業用ロボットでも世界首位級。

予想PERは23.2倍、PBRは2.9倍
今期予想営業利益率は8.9%、予想ROEは13.1%
有利子負債比率は18.0%
配当利回りは1.2%
時価総額は5,809億円

利益率は高いものの、全般的に割高感。なお、今期より2月期決算に変更され、20日間分営業日数は縮小する。


キーエンス(6861)
FAセンサーなど検出・計測制御機器大手。ファブレスメーカーで利益率は高い。傘下にジャストシステム(4686)。

予想PERは市場コンセンサスベースで31.9倍、PBRは4.7倍
今期予想営業利益率は53.8%、予想ROEは14.8%
無借金経営
配当利回りは0.2%
時価総額は5.5兆円

利益率が高い分、天井知らずの株価形成が続いており株式価値的には割高感。


他社との比較では総合的には若干割高感を感じる印象。


【課題】
世界的な人手不足感が高まる中で、特に同社が注力しようとするAI開発技術者の獲得は年収1000万円の提示でも難しくなってきているとされている。開発コストも継続的に膨らんでいくと見られ、企業の成長スピードを一層高めていかなければ、投資家の求めるリターンは提供し辛いと考えられる。


【総合評価】
世界的な省力化投資が進む中で事業環境は良好。中期経営計画で注力するとされるヘルスケア分野も、今後期待できるジャンルではある。加えて足元で為替も落ち着きを取り戻してきたことから、業績面での安定感は期待できる。

長期的な経営方針も総じて方向性は正しいとは思われるが、多くのアナリストが評価しているように、当面投資が優先されることで大きな利益成長は見込めず、一旦は踊り場を形成するようなイメージ。成長が見込め無いのであれば投資家の目線はバリュー株としての見方に変化してくるが、であればより高い利回りが求められるのではないか。

株価的にも5000円の壁が意識されており、チャート的にもひとまず4000円に向け下値を探る形に。

これらを総合して投資判断は「やや売り」とした。地合が良いことで大きな下落までは想定しないものの、為替動向や世界景気の動向次第では値を崩す場面も考慮しておく必要はある。同社のみの地力では200日線割れの場面も想定し、ひとまず第一四半期決算での着地を見るまで様子見としたい。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

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