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ユニバーサルエンターテインメント(6425)

 

16年12月25日現在
3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  2800円以下、もしくは地合の安定を条件に3500円超えで
3ヶ月以内株価予想 2500円〜3500円


要点
・業績は好調で今期上ブレ期待感。一方足元の急激な円安は重石に。
・チャート形状は良好。他方、他社比較では割高感。
・国内市場→海外を含めたカジノへの転換は好感触。ただし政治的な思惑が絡み、一筋縄ではいかない業界背景。青写真通りに事が運ぶかは不透明感も。


【企業概要】
パチスロ大手。旧アルゼ。マニラにカジノを立ち上げるなど、国内では唯一のカジノ運営ノウハウのある企業。全上場企業中、岡田会長の役員報酬が5位と高額(日本人では2位)。毎回趣向を凝らした株主優待を実施。セガサミーHD(6460)と共同でパチンコ台などの遊技機を生産する会社を設立。来期以降本格化の見込み。


【アメリカWynn Resorts社との係争】
かつて資金難に陥っていたWynn社に対し、岡田会長が出資。その後マカオなどでのカジノ運営の成功によりWynn社は事業を立て直した経緯がある。ところが、岡田氏がフィリピンで独自のカジノホテル計画を打ち出したとし、フィリピンでの贈賄の疑義を指摘して対立。

12年2月には株主として不適切と断じられ、強制的に約2455万株(発行済株式総数の20%弱)の株式を当時の時価換算から31%低い約19億ドルの約束手形(10年間での支払)と交換させられた。

これらの件に関して現在もなお係争中。なお同社は25年3月期以降Wynn社株式を取得原価で計上しており、02年出資時の4.5億ドル程度との差額、及び年率2%の受取利息も考慮すると最終的に18億ドル超の含み益が生じる公算。


【業績】
前期は増収ながらも大幅な営業減益。主力のパチンコ・パチスロ事業において、パチスロ機の出荷台数が想定を下回った。その他事業も前期より赤字が拡大。


今期は大幅な増収を見込むものの減益を見込む。柱のパチスロの販売台数が前期を大幅に上回る計画も、フィリピンでのカジノ「オカダ マニラ」開業(12/21に一部施設先行開業)費用が先行し利益を圧迫する。

一方、第2四半期の時点では大幅な増収増益で着地。パチスロ機の新機種や復刻機の投入が好調だった他、円高による為替評価益約84億円の計上が寄与(同社はアメリカで622万ドル(年率12%)、及び今期新たに6億ドル(同8.5%)の私募債を発行しており、その金利負担が円建てで減少する分とみられる)。

40億ドルを費やした「オカダ マニラ」は年間売上を円換算で1500億円に設定。17年中に「オカダ マニラ」をフィリピン証券取引所に上場させる計画で、青写真通りに進めば2年で投資資金を回収できる算段。

今回の「オカダ マニラ」開業は、今後国内でのカジノ開業に向けた布石として、カジノ運営の実績作りといった先行投資的な面が強いものと見られる。一方、トランプ大統領の前職に近しいアメリカカジノ運営会社が関与してくることで、政治的な駆け引きの材料にされるという点も邪推される。

もし遊戯機器も提供するとなると、恐らく運営とは分離される可能性が濃厚と見られ、当初は(政府の面子として第1弾から失敗は許されないためにも)ノウハウの蓄積があるアメリカカジノ運営会社の後塵を拝すると予想される。従って運営側に入り込めるチャンスは、第2、第3のカジノ計画が持ち上がった際に巡ってくると考えられる。


17年3月期第3四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   74500
営業利益 16200
経常利益 15500
当期純益 9000
1ドル=117円


第3四半期も引き続きパチスロ機の販売が好調に推移するものの、為替が一転大幅な円安に転換(会社想定113円)。最終的には為替差損に転じる可能性も。また年内に規制による遊戯台回収対応が一巡することで、4Qより反動減が見込まれる。ただ例年下方修正の常習犯ではあるが、中間期までの貯金もあり、今期の営業利益に関しては実際には大幅に上ブレする公算は高いと考えられる。


有利子負債は1,442億円で前期から594億円増加。
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は62.7%
現預金は763億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は283.1%で前期の194.0%より改善。

足元では更に計6億ドルの私募債を発行したことで、更に有利子負債が増加している。ただし、上記係争中の約束手形を考慮すれば実質的には無借金とも。


フリーキャッシュフロー(FCF)は417.7億円の赤字

前期に比べて売掛金などが増えたことや為替差益の計上などから営業CFが減少。一方、有形固定資産の取得が増加したことで、投資CFも赤字が拡大。結果トータルでFCFの赤字は拡大した。


粗利率は58.6%で、前期の52.3%より改善。
予想ROAは4.1%で、前期の6.0%より悪化。

「オカダ マニラ」に関わる資産の増加や利益率の低下でROAは悪化。


公募などの希薄化を伴うファイナンスに関しては、オーナー色が強く2000年以降は実施されていないこと、私募債で資金調達が賄われているを鑑みると、基本は行われないと思われる。


【株価推移】
ITバブル時には14000円という高値を付けることもあったが、その後は国内需要の伸び悩みやリーマンショックの難局もあって09年には451円の安値を付けた。以後過去5年間概ね1500円〜3500円のボックス圏相場が続いている。


【テクニカル】
2月の安値以降下値切り上げが続いており、特に5月〜7月、11月及び12月の安値で形成される下値支持線が下支え。他方8月、10月、12月の各月の高値を結ぶ上値抵抗線とで三角持ち合いが形成されている。

今後上下放れた方向にトレンドが出やすく、12/22の出来高を伴った急騰で一気3300円水準を突破できれば、新たな上昇局面に入ったと言える。ただ年末は元々新興市場特有の強さがあり、例え上放れたとしても「騙し」となる可能性もあることから、来年以降3300円以上の株価水準を維持できているかどうかで判断すべき。

日足のMACDやパラボリックは好転。一目均衡表も三役好転の形に。ストキャスも好転し、ボリンジャーバンドも+2σを出来高を伴って上抜けたことで、上昇トレンド転換を示す。一方、週足はMACDが暗転ながらもパラボリックは好転。ボリンジャーバンドは+2σが収束してくるなど、まだら模様。


【需給】
目先は上述のように三角持ち合いを形成していることから煮詰まり感が強いところ。ただ中期的には8/23に中間期決算を上方修正した際にストップ高で残したしこり玉が尾を引く印象。年内この水準を上回って終われるかどうかが正念場。

信用買い残は差し引き139万株で11月以降は増加基調に。9月ピーク以降の整理売りが続き、日々の出来高との比較ではやや重石に感じられるレベル。浮動株比率は4%と低い。なお支配株主の関係上東証1部昇格は見込めないが、何らか経営上の悪材料が発生してもMBOによる離脱の可能性はある。


【同業他社比較】
同社の予想PERは25.4倍、PBRは1.1倍
今期予想営業利益率は15.3%、予想ROEは4.4%
配当は無配
時価総額は2,550億円
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


平和(6412)
遊技機大手。子会社でゴルフ場経営も。オーナー色が強い。

予想PERは8.8倍、PBRは1.3倍
今期予想営業利益率は19.0%、予想ROEは14.4%
有利子負債比率は60.8%
配当利回りは3.0%
時価総額は2,664億円

全般的に割安感があり、利益率も高い。


セガサミーHD(6460)
傘下にパチスロ大手のサミーとゲーム大手のセガ。比較的オーナー色が残る。

予想PERは13.6倍、PBRは1.3倍
今期予想営業利益率は7.5%、予想ROEは9.9%
有利子負債比率は33.2%
配当利回りは2.3%
時価総額は4,643億円

同社と比較すると全般的に割安感。


Wynn Resorts(WYNN)
アメリカのカジノ運営大手。NASDAQ上場。

予想PERは24.1倍、優先株発行のためPBR、ROE、有利子負債比率の算出は無し
営業利益率は12.1%
配当利回りは2.2%
時価総額は1.1兆円

株式価値的には割高感。足元では中国当局によるマカオでの引き出し制限策を受けて株価が下落。


他社との比較では株式価値的には割高感。ただ上記したような上方修正期待感や含み資産の存在を加味すると、随分差は縮まる可能性。


【課題】
IR法案の成立は国内カジノ解禁に繋がりプラス要因である反面、従前のギャンブルであるパチンコ・パチスロ業界には一層多方面の規制の導入(カジノとの差異を強調するため、射幸性や施設・設備面でのもの、税制など)が予想され、逆風と見られる。ギャンブル依存症対策強化も盛り込まれており、既存の依存症患者の大部分がパチンコ・パチスロである現状を鑑みても業界環境は厳しくなることが予想される。

マニラカジノの成否はフィリピンと中国の関係次第。地域的には元来自然災害が多く、シーズン次第で売上に大きなバラツキが生じると見られる。ドゥテルテ大統領の観光支援策がどの程度実を結ぶかにも因り、現段階では不透明要因が大きい。


【総合評価】
業績は思いの外好調も、足元の急速な円安が重石に。国内市場の飽和感から海外やカジノといった新規事業に乗り出す方向性は好感触で、実際にイベント的に国内IR法も成立し「オカダ マニラ」も開業。ただその分、材料的には「知ったら終い」感が出やすく「ここから」の買い材料に乏しい。

次のイベントは来年2月〜6月の間に決着が付くと見られるWynn Resortsとの係争であるが、こちらは既に劣勢と見られており、どういった結果が出ても結審すれば出尽くし感から安心感が強まるものと見る。

チャート面は良好と言えるが、他社との比較では割高感は否めない。これらを総合して投資判断は「中立」とした。特に株式市場の地合い悪化が発生して今の勢いに手痛い逆撃を浴びるようであれば、既に目先の好材料が出尽くしたことで浮上のきっかけを掴み辛くなる。本格上昇はWynn社とのいざこざが決着した後と見たい。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

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