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ジャパンマテリアル(6055)

 

12年5月13日現在
3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  6月以降
3ヶ月以内株価予想 2250円〜2600円


要点

・保守サービスなど積み上げ型の事業構造であることから、事業環境の悪い中でもある程度の売上が確保できる点は強み。
・決算にサプライズが無く、足下の地合の悪さなどもあり、戻りのきっかけが掴めないところ。まずは底打ち確認の必要がある一方、目先の戻りも限定的。
・同業他社比では割安感が強い。利回りなどを考慮すると下値余地は小さいものの、需給的に売り圧力がまだ続きそう。
・特定の企業依存度が高い。海外進出などを含めて、新規顧客開拓に力を入れるべき。


【企業概要】
半導体・液晶工場向けなどを中心に、ガス供給システム装置製造及び保守管理業務を請け負う。三重本社で昨年末東証2部にIPO。主要顧客は東芝(6502)、栗田工業(6370)で、売上の依存度はそれぞれ44%、20%。


【業績】
前期は増収増益。スマホやタブレット端末の好調から顧客企業の設備投資が活発で、主力のエレクトロニクス関連事業が大きく伸びた。

今期も引き続きスマホなどの好調で、顧客企業の保守・管理事業が堅調に推移することにより、設備投資費用などをこなし小幅ながらも増収増益を予想。売上高は100億円乗せを狙う。

半導体・液晶それぞれ価格下落傾向が続いており、この分野での新規顧客獲得は難しそうだ。一方、保守サービスなど積み上げ型の事業構造であることから、外部環境の悪い中でもある程度の売上が確保できる点は強み。

2次電池向けは伸び余地もありそうだが、まだ取引先のウエイトとしては小さい。今期はこの辺りの営業力が、業績拡大のカギを握る印象。

グラフィックスソリューション事業は成長性の見込める分野であるが、売上に占める割合は1割程度とまだ小さい。会社側も力を入れている分野であるが、第二の柱として育つまでは、まだしばらく時間がかかりそうだ。


13年3月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   2300
営業利益 285
経常利益 290
当期純益 175


売上は積み上げ型のものが主で、会社計画と大きく乖離するような収益構造ではなさそう。一方、第一四半期も引き続き半導体・液晶業界に復調が見られないことから、上ブレも期待し辛いものと思われる。なお業界的に下期に収益が偏る季節要因がある様子。


有利子負債は0.6億円で前期から0.4億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は0.9%
現預金は20.7億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は366.8%で前年の306.4%よりは改善。

財務体質は上場間もないこともあって極めて良好。実質無借金。


フリーキャッシュフローは7.6億円の赤字

前の期に比べて売掛金や法人税支払いの増加により、営業キャッシュフローは減少。


粗利率は25.7%で、前の期の27.0%との比較では悪化。
予想ROAは15.4%で、前期の14.7%から増加。

粗利は悪化したものの、今期は改善の予定。それによってROAも改善の見込み。


ファイナンスに関してはIPO直後であり、財務体質も良く現金保有残も豊富。当面は無いと見るべき。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は46.4億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は15.0億円であり、結果EV/EBITDA倍率は3.1倍となる。同業他社の平均値はおよそ5.3倍と見立てられ、それらを元に計算した理論株価は3736円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。


【株価推移】
公開価格を割り込んでのスタートとなったこともあり、上場後しばらくは横ばいで落ち着いた推移であったが、3月にネットの掲示板で話題のミハイル・ジョウダン氏が関わっているとの憶測から仕手化。しかし真偽の程が定かではなく、結局その後は元の水準に戻ってきている。


【テクニカル】
3月に大相場となった後に急速な調整を挟み、一度75日線から再反転を試みるも失敗。足下ではその75日線を割り込んでしまった。上場してからここまで97営業日の株価平均が2558円であるが、その水準も下回っている格好に。

MACDやパラボリック、一目均衡表、拡大が続くボリンジャーバンド−2σと、どれを見ても下落トレンド継続のサイン。下値の目処は上場以後3月急騰前まで抵抗線として意識されてきた2400円が一つ挙げられ、5月10日もそこを意識した値動きに。

ただ11日の決算は失望を招くものと見て、月曜にはこの水準を下回ってくるものと予想。すると、今度は上値の抵抗線として考えなければならず、上場来安値2247円が最後の砦か。

一方で今期予想配当を10円引き上げ、利回りが4%近くに高まった。そのため無下に下落していくこともなさそうではあるが、現段階で中間配当の設定は無いため、利回りベースでの下支えは当面説得力に欠ける感じ。

従って、まずは2250円までの間で底を見極めたい。底打ちが確認されれば次は戻りの目処であるが、25日線と75日線、また3/28及び4/24の高値を結ぶ上値抵抗線の存在を考慮すると、決算による反転が未遂と考えられる今、2600円程度が限界点であると考えられる。


【需給】
既に一度公開価格2650円は大きく上回ったため、IPO取得者による売り圧力はほとんど無いものと思われる。特に出資者にVCもおらず、ストックオプションの設定も無い。大株主は会社役員や取引先などで占められているため、6月中旬以降ロックアップが切れても売り圧力が強まるような印象は無い。

それでも3月の急騰場面で上値に余計な多くのしこりを残して下落していることで、需給は悪い。信用買い残も20万株近く溜まり、上場来の最高水準を保ったままとなっている。出来高の平均が4万株であることを考慮すると、捌くには難儀しそう。急増してから日も浅いため、上値を重くする最大の要因となっている。


【同業他社比較】
同社の予想PERは7.7倍。PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は13.9%
配当利回りは3.9%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


大陽日酸(4091)
工業用ガスで国内首位。三菱化学やJFE(5411)が大株主。半導体などの電子材料向けでは世界3位。シェールガス関連としての位置付けも。

予想PERは11.4倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は6.7%、予想ROAは5.0%
有利子負債比率は116.0%
予想配当利回りは2.4%

各指標面において同社に劣る形に。規模のメリットで売上は大きいが、今期は減益予想で業界環境の厳しさが伺える。


エア・ウォーター(4088)
産業用ガスで2位。住友金属(5405)系で大阪本社。北海道では青果物卸のトミイチを買収し、非ガス事業の拡充を図る。

本決算発表は今週のため、四季報予想ベースで予想PERは9.5倍、PBRは1.1倍
今期予想営業利益率は6.7%、予想ROAは8.4%
有利子負債比率は68.7%
予想配当利回りは2.3%

こちらも各指標面において同社に劣る形。やはりガス事業での苦戦が伺える内容。


関東電化工業(4047)
古河系で半導体、液晶用ガスに強み。世界トップクラスのフッ素ガス製造能力を保有。6日に渋川工場において火災発生。

本決算発表は今週のため、四季報予想ベースで予想PERは44.8倍、PBRは0.8倍
今期予想営業利益率は1.4%、予想ROAは0.6%
有利子負債比率は126.6%
予想配当利回りは2.6%

償却費がかさむことで利益率が最も低く、財務状況もイマイチ。今期以降も液晶向けガスは底ばいを見込み、業界環境は厳しいまま。


野村マイクロ・サイエンス(6254)
半導体・液晶向け超純水装置の大手。北興化学(4992)が母体。アジア市場開拓に力を入れており、サムスン向けが多い。

本決算発表は今週のため、四季報予想ベースで予想PERは22.2倍、PBRは0.4倍
今期予想営業利益率は2.9%、予想ROAは1.6%
有利子負債比率は40.5%
予想配当利回りは3.1%

利益率は低いものの、小型株であり他社比でPBRの低さや配当利回りの高さで優位性。財務体質も良好。


同業他社との比較では利益率も高く、財務体質も良好。配当利回りも高く、総合的に割安感が強い。


【課題】
グラフィックスソリューション事業をしっかりとした柱として育て、事業リスク分散を図りたいところ。しかし前期決算において、同事業は減収減益。医療システム用の高画質なボードやデジタルサイネージなど、今後面白そうな分野を手がけているだけに、この事業の伸びに期待したい。

売上の過半が特定の企業(東芝、栗田工業)に偏り過ぎている点はリスクか。同社は技術集団であり、営業力に欠ける印象がある。アジア地域以外の海外進出などにも力を入れて、新規顧客の開拓を急がなければならない。

株主還元には積極的なところは好印象。特に利回りは高いため、機関投資家にもっとアピールすることができれば、需給は一気に好転する可能性がある。大口投資家に向けたIRにも注力したいところ。上場間もない今がその好機と思われる。

主力のエレクトロニクス関連事業の事業環境が悪く、今期も改善見込みの薄いが、その裏返しとして業界上位2社がスケールメリット拡大に向けてM&Aに積極的である。となれば、規模の小さい同社は十分買収対象に成り得そう。

もしそのような運びとなれば、財務体質なども良いことから、上述の理論株価算出並に有利な条件が提示される可能性がありそうだ。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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