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住友大阪セメント(5232)

 

3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  300円割れの押し目待ち、もしくは2月の第三四半期決算通過後
3ヶ月以内株価予想 285円〜350円

要点

・今期会社計画は達成可能と見られるものの、足元の円安、原料高に対して値上げが受け入れられることが前提に。
・テクニカル的には三角持ち合い上放れから、長期的には380円を目指す波動に。
・需給面は信用買い残の増加が気になるものの、まだ許容範囲内。
・同業他社比では割安感。
・成長市場であるインドにどうやって食い込めるか、セメント以外の柱を育てられるかが成長のカギ。


【企業概要】
住友系で国内セメントシェア3位。売上の8割がセメントであり、廃棄物再資源化では先行。電池関連としての切り口も。


【セメント業界を取り巻く環境】
             シェア
太平洋セメント      35%
宇部三菱セメント(非上場)33%
住友大阪セメント     21%

上位3社で約9割を占め、トクヤマの7%、麻生ラファージュセメント(非上場)の4%と続く。上位シェアが高く、寡占的な業界と言える。
※各社見通しベースのため上位5社で100%になってしまうが、実際は95%程度。

セメントの総出荷量は96年の9484万トンをピークに公共工事などの削減から減少傾向に。12年度は5470万トン程度になった見込み。震災特需から10年を底に国内需要は回復傾向にある。

世界のセメント需要は中国が約21.9億トンでダントツ。全世界で35億トンと言われるセメント需要の大半を吸収する。2013年には23.5億トンを越えるとの推測もあり、益々他国との差が開く格好。

2位はインドの2.6億トン、3位はアメリカの0.9億トン、日本は0.4億トンで4位。


【業績】
前期は増収増益。主力のセメント事業は公共事業が削減されたものの、都市部における民間住宅投資の増加により、国内外共に販売数量が前年を上回った。

今期は引き続き増収増益を見込む。復興特需から公共事業の増加が見込まれるため、特に国内の好調要因により増益幅が大きい格好に。好調な中間決算を受けて通期見通しも上方修正しており、下期に一段の積み上げを図る。

ただセメント製造に使用される炭や原油価格が上昇するため、足元1割近く進んだ急激な円安が原価を上昇させ利益圧迫要因。同社を含めたセメント業界の不安材料に。その分価格に転嫁できるかどうかが同業界の先行きを大きく左右する。

同社は他社に先駆けて昨年末に「13年4月出荷分から1トン1000〜1500円(約9〜14%)値上げする」と表明。他社も追随する動きと見られる。ただし最需要家のゼネコン各社の抵抗も強く、すんなり受け入れられるかどうかは不透明なところ。

またセメント需要に関しては来期までは復興需要を見込んで増える見込みがあるものの、再来期以降は不透明。海外もアメリカは住宅環境が改善してきた点に明るさが見られるものの、最需要国である中国の景気はピークアウト懸念が燻るため限定的。

今後の成長が見込めないプラズマディスプレイパネル用フィルターは生産を終了し、一方で成長が見込まれるリチウムイオン電池正極材の工場を建設。主力事業以外の選択と集中が進んでいるが、セメント事業以外をいかに育てていけるかが今後のカギを握る。


13年3月第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円

売上   165000
営業利益 10600
経常利益 10300
当期純益 5200


同社は例年第三四半期が年末ということもあり、最も営業利益の出やすい季節性要因がある。


有利子負債は1147億円で前期から15億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は88.9%
現預金は1147億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は96.7%で前期の91.7%から改善。

財務状況は良いとは言えないものの、全般的に業績回復傾向のため前期より改善。同業他社との比較でも財務状況は良い方。


フリーキャッシュフローは69.1億円の黒字。

前期より純粋に利益が増えた分、キャッシュフローは良くなった。


粗利率は21.7%で、前期の18.9%との比較では改善。
予想ROAは4.2%で、前期末の2.5%から改善。

今期の業績回復期待により、各利益率は改善。


ファイナンスに関しては目先行われる可能性は低い。ただし足元復興特需期待からセメント各社の株価が大きく上がってきており、経営陣に対する増資訴求力が上がっているのも事実。


【中間決算後の各アナリスト評価】
みずほ証券 投資判断「中立」 目標株価280円

会社の2ヶ年計画に新鮮味は無く、現状の株価には概ね織り込まれているものと見られる。


クレディスイス証券 投資判断「Neutral」 目標株価300円


アナリストの評価は概ね現値水準を妥当と見ているが、決算を受けて目標株価をそれぞれ引き上げている。昨今の新政権誕生に対する復興特需期待などが織り込まれた格好。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は2158.5億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は315億円であり、結果 EV/EBITDA倍率は6.9倍となる。同業他社の平均値がおよそ9.1倍と見立てられるが、それらを元に計算した理論株価は472円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。


【株価推移】
バブル崩壊以後は公共事業の削減傾向からセメント需要の減少と共に株価も右肩下がりに。08年のリーマンショックの際には109円にまで落ち込んだ。しかしその後は下値を切り上げ、11年の震災以後は復興特需を織り込む形で戻りを試す展開に。足元では07年以来5年ぶりの株価水準となっている。


【テクニカル】
長期的には震災以後の11年3月・8月・12月、12年5月の安値を結んで形成される下値支持線と、上値抵抗線となっていた270円辺りのラインで形成される三角持ち合いを選挙後の急騰で上放れ。三角持ち合いの値幅が約100円だったことから、今後新たに100円高の380円辺りを目指す上昇局面に入ったものと見られる。

短期的にもMACD、パラボリックが暗転したことで、目先300円前半でのもみ合いが続きそうではあるが、日柄調整一巡後は再度上昇が見込まれる。一目均衡表では三役好転の形が継続しており、ストキャスも好転。目先大きく下押しすることは無さそう。週足ではボリンジャーバンドなどに過熱感もあるが、基本は下値切り上げ型の形状に。

目先25日線を支持線として、再度短期上昇トレンド回帰が期待される。ただし好調と見られる決算の空振りや値上げ要求の不成立などが表面化し、上方推進力を失う場合、横ばいの期間が長引くことになりそうである。


【需給】
長期的に株価が切り上がっていることで需給はあらかた改善されてきた印象。特に震災時の乱高下による大商いで売り一巡感が出ていることから、随分上値のしこりも解消されているのではないか。

ただ足元では復興特需に対する短期資金の思惑から、信用買い残が積み上がり傾向に。10月以降は特に拡大基調にあり、直近では約270万株の買い残。日々の出来高では十分こなせる範囲内ではあるものの、今後の上値重石要因になってくるであろう。

昨今の株価上昇の要因はこれら短期資金のものであると見られ、今後これらの売り圧力をこなして商いを膨らませられるかどうかに注目。震災後の11年6月には1250万株程度にまで膨らんだ水準が以後の上値を抑えた経緯があったため、まだ余地があるとは言え、今後の積み上がり動向には注意が必要である。


【同業他社比較】
同社の予想PERは22.1倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は6.1%、予想ROEは4.6%
配当利回りは1.6%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


太平洋セメント(5233)
セメントで国内首位。売上に占めるセメント事業の割合は6割。アメリカ、アジアなど海外進出にも積極的。傘下にデイ・シイ(5234)。

予想PERは29.9倍、PBRは1.8倍
今期予想営業利益率は5.4%、予想ROEは5.1%
有利子負債比率は293.7%
予想配当利回りは1.7%

株式価値的にも同社に比べて割高であり、財務状態は前期に比べて改善されたとは言えまだ悪い。ROEはやや高いが利益率も低いため、更なる増資懸念も考慮すると、同社に優位性があると言える。


宇部三菱セメント(非上場)
国内セメントでは太平洋セメントと双璧。宇部興産(4208)と三菱マテリアル(5711)で生産されたセメントを販売。

今期予想営業利益率は9.9%

利益率は同社に比べて高い。それ以外のデータが非開示のため参考。


トクヤマ(4043)
塩ビの国内最大手。国内セメントシェアは4位ながら売上に占める割合は24%と小さい。

今期は赤字見通し。PBRは0.3倍
今期予想営業利益率は1.2%
有利子負債比率は77.5%
配当は無配

セメント事業の利益率は5.1%であり、他社と比べて遜色ない印象。PBRには割安感が強いが、それ以外は特段割安感は感じられない。


同業他社との比較では総じて同社に割安感がある印象。


【課題】
日本のセメント業界は、環境や省エネルギー技術については強いものの、効率化が進んでいないという点で一段のコスト削減余地がある。成熟産業となった中で世界のセメント会社と戦っていくためには、一段の淘汰・業界再編も必要であろう。

ただし、世界的に見ても寡占化している業界であるため(上位6社で18%を占める)、独占禁止法などがネックになりそうである。

成長市場では人口世界2位のインドの成長余力が大きい。需要が伸びているとはいえ未だ中国の1/8程度の需要しかない。また年産100万トン規模の工場はインド全体の1/5程度に過ぎず、供給力も足りない。ここにいかに食い込んでいけるかが日本のセメント業界の将来を左右する。

そのためにはインドとの政治的な結びつきに一層期待すると共に、各社積極的にインド進出を進めなければならない。セメントは重量物であり、物流コストが製造コストに次いで高くつくため、輸出ではなく直接現地に工場を構える必要があろう。

現在インドへ進出している海外メーカーはわずか7社ということで、日本の環境技術を活かした強みで入り込む余地は十分にあると言えるだろう(日本のメーカーは進出していない)。セメント需要の過半が見込まれている住宅向けに、住宅メーカーと共同で進出するというのも一案である。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

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