ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

ご挨拶| 筆者紹介| Blog| 各種サービスのお申込| 過去のパフォーマンス| 銘柄レポート| FAQ| 掲載すべき事項|


ダイト(4577)

 

12年7月15日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  年初来安値を更新後、もしくは8月中旬頃
3ヶ月以内株価予想 900円〜1100円


要点

・売上は安定的で、政府主導の下ジェネリック拡大策も追い風ではあるが、一方で競争激化で利益率の低下が見込まれる。
・テクニカル的にも需給的にも1100円には大きな壁。目先は長期下落トレンドが継続の見込み。
・収益基盤の多様化を図ること、株主層の拡大が課題。


【企業概要】
医薬品の原薬製造販売や、製剤の製造受託。健康食品の製造も。原薬は医薬品の原料であるため、9割の国内メーカーと取引があり、特許との関連により顧客はジェネリック(後発)医薬品メーカーが中心。製剤は主に大手医薬品メーカーから受託。国内外の品質基準をクリアする生産体制を持ち、原薬から製剤までの一貫製造ができる希少企業。


【業績】
前期は売上利益共に過去最高を更新。主力の製剤事業において、国内大手医薬品メーカーからの製造受託が堅調に推移。原薬も着実に伸ばし、売上増による原価率の低減効果から利益も大幅に伸びた。

今期は増収減益。ジェネリック医薬品市場の拡大が見込まれる一方で、大手メーカーの内製化進展により受託が減少。医薬品業界の競争激化や薬価改定によって利益率が圧迫。製造設備の拡充に伴う減価償却費や研究開発費の増加などのコストアップ増も響く。前期は10円増配としたものの、今期は5円減配の見込み。

今年初めにもインドや韓国の医薬品メーカーと提携した他、医薬品中間体などを製造販売する中国企業を子会社化するなどアジア地域への展開に積極的。更に包装品工場を新設し、中国でのジェネリック販売に乗り出す。社長交代を機に、今後は一段と海外展開に力を入れていく方針。ただこれらが業績に寄与してくるには、2年〜3年のタイムラグがある。

ジェネリック医薬品関連は売上の7割に相当し、政府主導によるジェネリック普及推進は追い風。4月の診療報酬改定で政府の後発薬の使用促進策が拡充され、一段の増産体制を敷いて工場稼働率を上げている。

ただし政府の青写真ほどはジェネリックの扱いが伸びておらず、2012年度末までに後発薬の普及率を30%まで高める目標に対し、11年9月時点で22・8%とまだ大きな開きがある。また海外勢の進出などで他のジェネリックメーカー同様競争激化。

従ってジェネリックは以前までの成長期待から、実体面の再評価への過渡期にあると言える。元々ディフェンシブ性の強い業態であり、不況下には強いものの、勢いある成長は望み辛い。特に原薬メーカーである同社は、その希少性のメリットがある反面、国内のジェネリックシフトだけでは取り扱いの伸びを増やすのにも限界がある。

また原薬の素となる原油などが現状安くなっているのは追い風であるが、昨今商品市況への投機マネー流入に対する警戒感が強まり、短期急騰のリスクがある。その場合はコスト増要因になるため、同社にとってはマイナス要因として働いてくる。


13年5月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   7050
営業利益 650
税前利益 640
当期純益 380


特に季節性要因はなく、また業態的にも安定的であることから、概ね通期の1/4程度の進捗を見せそう。会社計画はやや保守的であるものの、減益見通しを回避するのは難しそうである。


有利子負債は103億円で前期から1.8億円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は89.5%
現預金は15.7億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は116.1%で前年の116.8%とほぼ横ばい。

前年に比べて財務体質は若干悪化しているものの、有利子負債比率も低く、まだ財務的な余裕はある。


フリーキャッシュフローは1.6億円の黒字

前の期より利益が増え、売掛金の増加を抑えたたことで営業キャッシュフローが増加。投資も抑制したことで、前期の赤字から脱却した。


粗利率は20.8%で、前の期の18.7%から改善。
予想ROAは7.9%で、前期の8.6%から悪化見込み。

今期は利益減を覚悟してのROA低下。売上が伸びることで、粗利を一段と改善していきたい。


ファイナンスに関しては借入の余地も未だ大きいことから、基本は行われないものと思われる。


【株価推移】
10年3月に2部上場し、直後はジェネリック関連株が値を上げていたこともあって、順調に高値追い。しかし間もなくブームがピークアウトし、株価は最高値の1/3程度にまで落ち込んだ。

その後は切り返しを見せ、東証1部上場を決めると高値に再接近。ただ一部上場後間もなく、株主数不足のため早速2部戻りの猶予期間を設定されると、断続的な売りが続く流れに。今年3月末の戻りで何とか解消できたものの、その反動や立会外分売の実施による需給の緩和で再度下落が続いているところ。

直近では先日の決算で成長鈍化見込みが示され急落。上値の重い展開が続いている。


【テクニカル】
長期的には上場来安値606円→昨年4月の戻り高値1599円の半値押し水準に当たる1100円辺りを昨年11月以降の支持線として推移してきた。しかし5月に明確に割り込んでしまったため、6月の戻り局面でも超えられず。また1116円で5月に6万株の立会外分売を実施していることで、需給面でも1100円ラインは上値が重い水準に。

昨年5月、9月、今年1月、5月の高値を結ぶ上値抵抗線(※3月末以降に出来高を伴って上放れかけたものの、上述の2部転落回避のための買い支えが主因であり、作為的な値動きのため無視が適当)と、昨年11月及び今年6月の安値を結ぶ下値抵抗線がパラレルに引けるため、大筋はこの上下線に挟まれる中での緩やかな下降トレンドにあると見られる。

先週の決算が上値抵抗線を抜けるチャンスだったが、ジェネリック拡大に対する期待値が既に十分高かった分、今期見通しに対する失望が膨らみ、下値切り下げ相場は継続中の様相。

日足では各移動平均線を下回っており、下値の目処は6/4に付けた年初来安値925円のみ。1000円という心理的な節目に過度な抵抗力は期待できず、割ってくるのは時間の問題と思われる。

MACDやパラボリックは暗転。一目均衡表の雲下限、また遅行線が実線に下支えされる現値水準で、目先かろうじてキープされている状態。ストキャスは安値で好転していることから、一旦は戻りを試す段階になるが、1100円に近づくにつれ買い一巡感が出てきて、再度値を下げそうな雰囲気。

週足でも各指標の悪さが認識されるため、短期的な戻り一巡後は、再度下落トレンドが続いていくものと思われる。例年本決算発表以後8月中旬にかけて弱含む点も考慮すると、今年もそれに沿った流れが出るものと思われる。


【需給】
昨年4月以降株価の緩やかな下落トレンドが続いているため、上値のしこりは相当程度意識される状態。直近でも出来高を増やした3月末〜4月上旬にかけて、作為的な株価吊り上げが見られ、その分のしこりが相当意識される状況。その後5月に1116円で6万株の立会外分売を実施したことも、需給を緩めている。

価格帯では1100円〜1300円の出来高が大きく、この水準を上抜けるには時間かきっかけのいずれかが必要。信用買い残は差し引き78000株程度であり、5月に1100円を割り込んで以来の高水準。日々の出来高の平均が1万株程度であることから、返済売り圧力は大きくのしかかってくる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは6.7倍。PBRは0.8倍
今期予想営業利益率は8.6%、予想ROEは12.0%
配当利回りは2.4%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


シミックHD(2309)
新薬の臨床試験受託業務(CRO)ではトップクラス。医薬品受託製造(CMO)と医薬品営業受託(CSO)とで3本柱体制。アジアに拠点も備え、買収に積極的。

予想PERは9.6倍、PBRは1.2倍
今期予想営業利益率は8.3%、予想ROEは12.6%
有利子負債比率は62.8%
予想配当利回りは2.5%

利益率やROEといった収益性の指標、利回りは同社とほぼ同程度。財務面や収益性の多様化などから同社に比べて安心感がある分、株式的には買われてPERやPBRは高くなっている印象。


アールテックウエノ(4573)
医薬品の研究開発、製造販売。緑内障・高眼圧治療薬レスキュラ点眼液と便秘薬アミティーザの受託製造で売上を半分ずつ占める。

武田薬品(4502)との係争中のため会社計画は非開示であることから、四季報予想を元にした予想PERは10.7倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は26.9%、予想ROEは9.4%
有利子負債は0で無借金
予想配当利回りは3.6%

業態が重なる部分が小さく、また裁判の結果次第で利益見通しが変わってくるために参考。財務体質は良く、利回りは高いため買い安心感はある。その分PBRなどでは高めに買われている印象。


森下仁丹(4524)
健康食品の製造販売や、独自のカプセル技術を用いた医薬品カプセルの製造受託。

予想PERは18.2倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は5.0%、予想ROEは5.6%
有利子負債比率は11.1%
予想配当利回りは2.0%

やはり業態が重なる部分が小さく参考。財務体質は良いが、その他の面では同社に劣る印象。株式の流動性も薄いが、独自のカプセル技術が様々な用途に用いられることにより、材料性がある。


明確な類似上場企業は無いが、株式的には概ね割安な印象を受ける。株式としての流動性が薄く、利回りもそれ程高くは無いため、割安に放置されているのは概ね致し方無いとも。


【課題】
原薬の製造販売は独自ノウハウがあって強みがあり、競合を寄せ付けない優位性があると思われる。しかしながら既に9割程度のメーカーとの販売網があることで、収益の安定化は見込めるものの、逆に一段の拡大は難しいとも言える。

また受託製造事業は大手メーカーの自主生産の流れが出てきており、今後国内外を含めた営業力の強化が課題になってくる。片方で自社開発品を拡大し、安定的な工場稼働率の維持を図れるような体制を整えておきたい。

株式的には業種的に地味であり、投資家層が薄い。立会外分売などで個人株主の数は増やしたものの、株主優待の創設などで一段のファン層獲得を狙っていきたい。また外国人持ち株比率なども少ないことから、IRを充実させることで安定株主確保の動きを探っていきたい。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

お問い合せ radi.res@gmail.com  北陸財務局長(金商)第23号 Copyright (C) radish-research. All Rights Reserved.