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免疫生物研究所(4570)

 

3ヶ月以内投資判断 「売り」
買いのタイミング  当面無し
3ヶ月以内株価予想 5000円

要点

・今期は上場来初の黒字化を見込む。しかし継続性には疑問符。
・株価の上昇により増資懸念が高まっている。ただし製薬会社に対する第三者割り当ての格好で決着するのであれば、むしろプラス材料になる可能性も。
・足下の株価には明らかな過熱感。金曜の出来高は過去最高水準であり、それが上ヒゲの長い陰線を形成したことで、株価は短期的には下落していく見込みが大きい。
・早期に医薬シーズライセンス事業へのシフトを実現し、経営基盤を固めなければならない。


【企業概要】
群馬に拠点を置くバイオベンチャー。研究試薬・抗体の製造販売を行う。トランスジェニック(2342)と業務提携を発表し、更に引き続き他社との連携強化を模索する。上場来赤字が続き疑義注記あり。


【研究領域】
アルツハイマー病、がん、炎症、糖尿病、循環器病、遺伝子組換えカイコによる抗体生産


【業績】
前期は赤字幅を縮小ながらも4期連続の赤字に。従前は実験動物の販売などで売上を立てていたが中間期で終了し、その剥落分を抗体、測定キットで補った。人件費の削減や業務の効率化を図ることで、上場以来初めて期初予想を上回る数字を実現。

今期は減収ながらも黒字転換を見込む。しかしバイオベンチャー故の見通しの立て辛さがあり、上場以来往々にして下方修正を繰り返している。今期も果たして無事期初予想を実現できるかどうかには不透明感が残る。

今期は研究開発費を削減することで黒字化を見込むが、おそらくは上場以来一度くらい黒字を出しておかないと方々にまずいという内情からの苦肉の動きと見る。一度黒字を出しておけば名目的には注記も外すことが可能となるため、子会社化・合併なども含めた経営上の選択肢が大きく拡がることになるのは間違いない。とりあえず今期は、というところで継続した黒字が定着する可能性は小さいと見る。

研究試薬は世界的に研究の多様化に対応する必要があるため、製品は多種類かつ一製品当たりの売上は限定的であるという特徴がある。競合他社との販売競争の激化もあって、価格低下に拍車がかかってきており、同分野での売上増加を見込むのは次第に厳しくなってきている。

ただし経営状態は少しずつ改善しているのは間違いない。上場からここまでで医薬関連事業の収入と言えばアステラス製薬(4503)との抗ヒトオステオポンチン抗体のマイルストーン収入しかなかったが、それも09年で終了してしまい、同社の先行きに暗い影を落としていた。

そこに最近のトランスジェックとの提携や、先日もアメリカBGM社とのガレクチン−3抗体の供給についての新規契約発表があり、同社の将来の収益構造の可能性に幅を持たせている。特にBGM社との契約は段階的に範囲が拡大してきており、取引に厚みが増してきている。

またトランス社とは社長を社外取締役として迎え、かなり深みのある提携関係とも言えそうだ。ただしこれらが直接的に業績に与える影響はまだ小さく、株価は期待感のみで盛り上がっている印象は拭えない。

一つだけ株価の上昇を肯定するものがあるとすれば、好材料と捉えられるIRが活発してきたこと自体が考えられる。上場来ほとんど負のIRしか出ず、株価も右肩下がりだった同社に前向きな動きが出てきたことは投資家に支持される要素だろう。


12年3月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   225
営業利益 −85
経常利益 −85
当期純益 −75



今までは第一四半期は通期見通しに対して比較的厳しいスタートとなってきたが、今回は見通しも今までよりは保守的であるため、売上に関しては概ね1/4の進捗率を守ったスタートになってくるものと見る。特に震災における影響がある業態でもなく、達成は難しくないだろうが、黒字転換は尚早と思われる。

有利子負債は1.2億円で前期から0.5億円増加。現預金は3.5億円で実質的な無借金。バイオベンチャーは体質上金融機関からの借入が難しく、私募ファンドやVCによる出資、同社のように上場による資金調達が主軸であるから、ほとんど借入の無い業界。有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)も5.7%。流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は690.7%と財務状態は良好。

フリーキャッシュフローは1.9億円の黒字。BGM社からのライセンス収入2億円のおかげで営業活動によるキャッシュフローは黒字化できたが、資産売却なども進めてキャッシュフローの確保に注力。助成金や金融機関からの借入もあり、手元流動性は確保できているところ。

一方でファイナンスの可能性は高いとみる。研究開発は引き続き莫大な予算を要するし、足下の株価の急騰が経営陣にとってはまたとない増資のチャンスに映るはずだ。上場以来一度も増資を行っていないことからも、実施に踏み切るハードルは低い。

ただ同社のようなバイオベンチャーの場合は、大手製薬会社に対する第三者割り当て増資になる見込みが高く、希薄化リスクは最小限に抑えられるのではないか。その場合は、将来大手製薬会社の連結子会社化も視野に入ってくる割り当てになる可能性もある。

大手製薬会社は相次ぐ主力薬品の特許切れに対応するため、国内外を問わずM&Aを加速しており、同社もその対象になる可能性がある。それにはまず業績を安定させて、買収側の株主を納得させられるような数字を作り出しておかねばならない。


【株価推移】
公開価格11000円を割り込んで初値1万円でスタートした同社は、バイオベンチャーの宿命とも言える右肩下がりの株価推移が続き、1年半で7.6%にまで下落。業績数字が上がらない中で反発のきっかけも見出し辛い状況が続いた。

しかし新型インフルエンザが猛威をふるうと、実際は研究分野とほとんど関連性が無いのに「免疫」という名前から買われるという株式市場の一種の特異性もあって、株価は急反発。一時3000円台を回復し、その後もたびたび世間に「インフル」という言葉が踊る度にマスク関連銘柄と歩調を合わせて上昇する場面がしばしば。

その後は震災後に安値をわずかに更新する750円の上場来安値をつけたが、4/19に新規中期経営計画の一年前倒し達成、4/26にはトランスジェックとの提携と好材料を連発し、ストップ高連発の確変に移行。今までの下落相場の鬱憤を晴らすかのような値動きになった。

それが一旦落ち着いた頃に25日線接触による需給の一巡感、新興市場バイオ株ブームが追い風となって連日のストップ高に。一時上場以来の一万円に急接近する場面も。そして再度25日線まで調整したところで、今度はBGM社との新規契約の材料が出て、足下再度年初来高値に接近する流れとなった。

元々流動性の薄い銘柄のため、株価の変化率は高く、実際の業績よりも思惑で動きやすい特性がある。


【テクニカル】
上昇トレンドに勢いはあるが、どうしても1万円という壁は高い。初値でもあり心理的節目でもある同ラインには6月7日、24日に抜け損ねた印象が強く残っている格好。更に1万円の上には公開価格11000円も控えているため、ここから買いが増えるとは考え辛い。

特に金曜の上ヒゲ陰線は商いも伴っており痛い。なお、金曜の出来高は上場来最高の水準である。新興バイオベンチャーブームも去ってしまったことから、ここから更に何らかの好材料が出ない限り、伸長は望めそうにない。

株価は4月から2ヶ月で10倍化し、短期的な過熱感は否めない。また急激に上値を取りに動いたことで、特に3000円〜6000円辺りまでの価格帯出来高が薄く、下方に窓が数え切れないほど開いていることからも、下方吸引力が強い状態にある。

25日線を一旦割り込むと75日線まで距離があるため、まず5月の戻り高値で心理的節目の5000円で下げ止まりを試すことになりそうだが、流動性の薄さ故に株価が一方通行になりやすいため、一気に割り込む懸念も強い。もし割り込んだ場合は200日線の手前で5月下旬のもみ合い水準である3000円がターゲットになってくる。


【需給】
信用買い残は6月で5万株に達し、過去最高の水準を記録。出来高は上述のように特に1万円近辺で膨らんでおり、需給の大きな重石要因となっている。市場環境も新興市場から外需大型株への資金シフトが顕著で、これらを突破するには何らかの好材料が必須と見られる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは251.5倍。PBRは2.5倍。今期予想営業利益率は1.1%、予想ROEは1.0%、同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。

トランスジェック(2342)
創薬のための遺伝子破壊マウスの作製、抗体の開発など。同社と業務提携し、相互補完を計る。
今期は赤字見通しでPBRは4.0倍。有利子負債は0。
同社との株価比較はPBRくらいしかできないが、やや強引に比較してみると同社の方が割安ということにもなる。


カイノス(4556)
臨床検査薬で中堅。検査用試薬に重点。
予想PERは10.6倍、PBRは0.4倍。予想営業利益率は4.6%、予想ROEは4.1%。有利子負債は16.5億円。
流動性の低さや震災による工場の被災によって株価は他社に比べて割安感が強い。


タカラバイオ(4974)
遺伝子研究用試薬では中国でトップシェア。安定した利益をあげて、バイオベンチャーでは優等生。海外展開にも積極的。
予想PERは78.3倍、PBRは1.4倍。予想営業利益率は5.6%、予想ROEは1.8%。有利子負債は4.1億円。
経常的な黒字体質、株式価値、成長性などを総合的に評価すると同社に比べて割安な印象。


医学生物学研究所(4557)
臨床検査薬・研究用試薬の製造販売。
予想PERは26.1倍、PBRは1.2倍。予想営業利益率は9.2%、予想ROEは4.6%。有利子負債は29.9億円。
前期こそ赤字だったが、配当も実施しており全体的には安定した経営状態。株式価値的に同社と比較しても割安感がある。


バイオベンチャーの株価は期待値で動きやすい性質があるため、あまり同業他社との比較は意味を持たないのかも知れない。それでも時価総額など様々な要素で比較してみると、足下の株価急騰の割には、同社の株価はそこまで極端に割高でもない印象。


【課題】
まずは黒字の確保。上述のように一度でも名目的な黒字を出すことはステークスホルダーに対しても顔が立つ。そのため合併や持ち分として同社を獲得しようという国内外の製薬会社にもアピールできる点で役に立つ。

以前まではTaconic社との提携解消における実験動物販売終了が同社にとって大きなリスク要因だったが、上手く自社独自の抗体製品およびキット製品の開発及び販売強化により乗り切ることができた。

ただし同分野での競争も激しくなり、利幅が薄くなる中で安穏とはしていられず、本来は一層の開発費を投じて、上場以来ずっと標榜している「医薬シーズライセンス事業へのシフト」を明確にしなければならない。研究用関連事業である程度のキャッシュフローを確保しながら、医薬シーズライセンス事業に資金を投じていく形を早く確立しなければ、事業的に次第に袋小路に入り込むことになってくる。

また授業員数が60名弱と少数だが、バイオベンチャーは何と言っても人的資源が最も貴重であると言える。前期にはそれでも人員削減を実施して赤字縮小を図ったが、実際はあまり望ましいリストラとは言えないのかも知れない。そういう意味でも同社の業態改革は時間的に余裕があるものではなく、経営基盤の安定化を急がなければならない。蚕を作り出すために解雇ではシャレにもならない。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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