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新日本理化(4406)

 



2012年1月15日現在
3ヶ月以内投資判断 「売り」
買いのタイミング  強いて言えば現在
3ヶ月以内株価予想 500円〜950円

※ご存じのように、この銘柄は現在仕手株の中心として位置付けられている銘柄で、筋の思惑次第で株価はいくらでも動きようがあります。今回はリクエストがありましたので、他の銘柄と同じような形で評価させていただきましたが、株価推移などの見通しはいかようにも変化する可能性があることはご承知置きください。


要点

・大物仕手筋により大相場形成中。株価推移は仕手筋に握られており、株価推移はあくまで思惑含み。
・業績は円高の逆風を跳ね返して増収増益を継続できる見込み。
・他社比では圧倒的に割高な印象。成長性もずば抜けて高いわけでもなく、その他の経営指標も見劣り。株高を肯定する材料はファンダメンタルズには見出し辛い。
・安定大株主の確保が必要。


【企業概要】
石化製品の機能性樹脂原料製造。またオレオケミカル(油脂化学)の総合メーカーとして世界屈指の技術力を誇る。樹脂添加剤、水素化技術に独自性。国内と海外の売上比率は1:1で、海外ではアジア地域の売上が6割を越える。


【仕手化の経緯】
大物仕手筋「般若の会代表 加藤あきら」氏が手がけているとされているサイト「時々の鐘の音」http://www.kanenone.com/index.html
にて昨年11月1日に今回のターゲットは
・LED関連 
・信用売残が多い 
・5円復配 
・200円台
の銘柄とされ、該当銘柄が同社ではないかと思われると急騰。約6年半ぶりに更新されたことによって、にわかに市場がざわめき、周辺銘柄も巻き込んで大証株ブームを作り上げた。

何故大証銘柄か、というところに市場の解釈が交錯したが、一部では「東証と大証の合併によって、時価総額の比較的大きい同社のような大証単独銘柄にTOPIXへの組入れ期待が高まるため」「外国人投資家の比率が小さいから、売り圧力が無い」というような説明がなされた。

しかしそれだけで株価が何倍にもなるような説得力は無い。最も有力なのは、東証の新取引システム「アローヘッド」よりも処理速度が遅く、アルゴリズム取引の影響を排除しやすい大証の銘柄に狙いを付けた、という説が有力である。

その後17日の更新で銘柄名こそ明らかにしないものの、時系列的な記載によってターゲットとした銘柄が同社であることを事実上追認。直近で更新された12/29付けのHPでは「1月24日以降には上値が軽くなって意外と簡単に930円の高値を抜いてくる」と記載され、思惑を呼んでいる。


【業績】
前期は増収増益で黒字転換。油脂製品が新興国需要の増大で拡大し、その他主力の石化製品などでも増収を確保。コスト削減によって利益も確保できた。

今期も増収増益の見込み。中間期時点では、引き続き円高が重くのしかかってくる中で震災の影響から国内販売が伸び悩み、主力の石化セグメントが減収。しかし販売価格改定などによってその他のセグメントの売上が伸びたことから、増収増益を確保している。

しかし営業利益進捗率は36.8%と、会社計画達成には下期の巻き返しが必要である。下期は主要顧客の自動車産業の復調や、復興需要なども期待できることから上半期以上の数字は期待できる印象。

一方で足下で上昇している原油価格は気がかりである。石油原料の価格が安定しないとその分コスト増となり、利益圧迫要因となる。


12年3月期第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   23300
営業利益 830
経常利益 970
当期純益 890


売上ベースでは会社計画に到達しないような印象ではあるが、利益面では計画水準を確保できそう。特に中国の金融緩和方針への転換によって中国の成長期待が再度高まっていることから、顧客メーカーの需要増を通じて同社の商品も需要増加が見込まれる。一方で引き続き為替や原油価格の影響に神経質な展開が続きそう。

有利子負債は88.7億円で前期から3.4億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は75.7%
現預金は16.0億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は157.9%

財務状態は良いとまでは言えないものの、改善傾向にはある。

フリーキャッシュフローは8000万円の黒字。棚卸し資産の増加や買掛金の減少により、営業キャッシュフローは前期比2億円減少。

ファイナンスの可能性はあまり無さそう。過去20年以上行われておらず、さしあたって急を要する資金需要も無さそうである。ただ今回の仕手化による株高で誘発される可能性も0とは言えない。


【株価推移】
89年に上場来高値を付けて以降長期下落トレンドが続き、昨年の震災直後には数十年ぶりの安値66円まで下落した。その後、今回の仕手化によって株価は9ヶ月で14倍超となる930円を付け、96年以来15年ぶりの高値水準を一気に回復。正に歴史的な乱高下を見せている。


【テクニカル】
※仕手株であり、テクニカル的な分析は意味を持たないと思われるため割愛させていただきます。


【需給】
需給は極めて良好と言える。足下の株価水準が10数年ぶりの高水準であることから、上値にしこりは無い。また何より昨年11月以降の上昇局面で、一日辺りの平均売買高が一気に300万株程度にまで急増。回転が効いている状態と言える。

直近では昨年12/14の安値710円を下値に横ばいからやや切り上がりの状態が続いており、850円以上の価格帯出来高のしこりもほとんどほぐれた格好。

ただし空売りが禁止となっており、また信用買いにも増し担保規制がかかっていることから、商いには盛り上がりの欠ける状態に。信用取引が制限されているのであれば、ここから先の盛り上がりにはその分時間をかける必要があり、元々同社の原動力であった短期資金がどこまでついてきてくれるのかは甚だ微妙である。

特に今回、「時々の鐘の音」HP上で具体的に上昇するとされる日付が指定されている以上、一般的に考えて先回りで買いが入るのは当然であり、逆に1/24以降買い上げる理由は誰にも見あたらない。強いて言えば般若の会の矜持に賭ける、という一点のみである。

いずれにせよ、本尊が去った後は需給が一気に暗転することは今更言うまでも無い。氏が公式的に最後に同HPで提示していた丸山製作所(6316)の場合は05年5月以降に商いが細ると、わずか2ヶ月で半値水準にまで下落した。従って、同社も半値水準になる覚悟はしておくべきであろう。

なお四季報によると浮動株比率が7.3%の銘柄であるため、需給の逼迫しやすい銘柄と考えられがちであるが、浮動株比率はあくまで「1単位以上50単位未満の株主が所有している株式数の割合」であり、その定義からいけば、まず1位株主となっている大証金の分5.5%は加算して考える必要がある。

加えて、同社の場合は外国、投信、特定株、そして浮動株をそれぞれ加えた割合が60.9%にしかならず、それ以外の割合が40%近くあることを考えると、実際の浮動株はもっと大きい数字になっていると想定される点には注意が必要である。


【同業他社比較】
同社の予想PERは32.0倍。PBRは2.7倍
今期予想営業利益率は3.4%、予想ROEは8.5%
予想配当利回りは0.6%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


日油(4403)
油脂化学で最大手。食用油脂を中心に、工業用・化成品なども。風車用潤滑油も手がけ、風力発電関連の側面もある。同社の大株主にも名前を連ねる。

予想PERは10.3倍、PBRは0.8倍
予想営業利益率は6.0%、予想ROEは8.1%
有利子負債比率は22.7%
予想配当利回りは2.3%

事業規模が同社に比べて大きい分有利子負債比率も小さく、配当利回りも高いが株式価値的に同社の1/3程度の評価。


三洋化成(4471)
機能化学品が主力。界面活性剤や高吸水性樹脂など。豊田通商(8015)と東レ(3402)が大株主。同社と同じく京都本社。

予想PERは10.4倍、PBRは0.6倍
予想営業利益率は5.4%、予想ROEは6.5%
有利子負債比率は15.2%
予想配当利回りは3.0%

やはり同社に比べて事業規模が大きく有利子負債が小さい。配当利回りも高いが株式価値的には1/4程度の評価。


日本ユピカ(7891)
高機能性樹脂を取り扱い、ニッチな分野を開拓。三菱ガス化学と東洋紡(3101)の合弁。

予想PERは15.7倍、PBRは0.2倍
予想営業利益率は1.9%、予想ROEは1.5%
有利子負債比率は6.9%
予想配当利回りは2.4%

PBRなどは同業他社の中で最も割安に放置されているが、JASDAQ市場で流動性も低いため致し方無し。有利子負債は小さいものの利益率も小さいので、他社比では概ね妥当な評価。総じて同社よりは割安。


やはり同業他社に比べると、足下の仕手化により極端な割高の状態に。ただ同じ化学を取り扱う会社でも、同社と商品が重なる部分はそれぞれ限られており、例えば同社の得意とする可塑剤を扱う会社との比較は難しい。完全な同業他社比較が出来ているかというと微妙なところでもある。

それでも東証1部の化学セクターの平均ではPERで11.1倍、PBRは0.7倍であり、上述の他社はこの数字と極端な乖離は確認できない。一方で同社は大きく上離れており、一般的に考えても割高感は拭い去れない。

またROEは高いが、有利子負債比率や配当利回りなどを見ても特に他社との優位性が見られず、現在の株高水準をファンダメンタルズ的に肯定する材料は見あたらない印象である。強いて言えば復配というインパクトが強かったということも言えるが、やや強引な解釈であろう。


【課題】
原材料の安定確保ができるかどうか。足下ではイラン情勢の緊迫化により、原油価格がまた高くなってきている。円高により調達価格を抑えることができたとしても、今度は海外向けの販売が落ち込む要因になるため、円高も歓迎できない。他社のように商社との結びつきを一段と高め、安定確保に努めるべきである。

また株主構成もやや不安定である。直近の仕手化によって筆頭株主が大証金になっている点は一過性のものとしても、他社は大手総合化学メーカーや商社が筆頭株主であるのに対し、同社には比率5%以下の大株主しかおらず心許ない。

独立系であるという自由度も尊重すべきであるが、例えば一段の海外展開などを睨んで外資との資本・業務提携という選択肢も視野に入れていきたい。ただし、それには現在の株価の盛り上がりが逆に障害であり、一段落するまでは他社も同社に対して接触し辛いであろう。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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