ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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ケネディクス(4321)

 


3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  当面なし
3ヶ月以内株価予想 8000円〜12000円(ただし緩やかな下落トレンドであるため、あくまで戻り局面があったとしても上限は12000円という意味合い)

要点

・不動産市況は引き続き先行きが見通し辛く、まずは世界的な景況感の底打ちが見られない限り、事業環境の厳しさが続きそう。ただ投資家の意欲は高い様子。
・足下で年初来安値を更新し1万円割れ。底が見えにくい。
・同業他社の中では安定的な運営を行っているが、今は業界全体が暗い印象。各社共に増収増益の実績を出して、払拭する必要がある。
・アジアマネーを取り込むために、アジアマーケットにREITを上場すべき。


【企業概要】
不動産ファンド運営主力。アセットマネジメント事業(不動産コンサルタント)及び不動産投資・賃貸事業から成る。オフィスビル投資に強み。三井系列に親密。昨年は伊藤忠(8001)と資本業務提携し、信用力を獲得。


【同社の関わる国内上場REIT】 
日本ロジスティックファンド投資法人(8967)
三井物産(8031)などと共同スポンサーで、物流施設に特化。

ケネディクス不動産投資法人(8972)
首都圏の中規模オフィスビルを中心とした投資。


【業績】
前期は減収減益。バランスシートのスリム化に向けて損失を計上したことから、3期連続の最終赤字となった。

今期は減収増益の見通し。中間期時点では資産圧縮に努めた結果、最終黒字転換となっている。ただ会社計画に対する営業利益進捗率は46%に止まり、確かに震災の影響をモロに受けた時期の数字としては健闘しているものの、引き続き震災後の不動産市況低迷により事業環境には厳しさが残る中で大幅な回復は見込み辛い。

受託資産残高(AUM)は上場以来一貫した増加が続いていたが、今中間期時点では前期比初の減少で1.05兆円に。リーマンショック以上の落ち込みが見られ、今期目標の1.2兆円は足下の海外市場の混乱もあって達成は困難か。先日発表された公示地価は下落が止まらずに、バブル崩壊以後20年連続の下落と、不動産環境に明るさはなかなか見えてこない。

同社が得意とするオフィスビルも、震災・円高による産業の空洞化・ジャパンパッシングなどの中では、空室率を小さくするのも相当骨が折れそうだ。震災の影響で逆に新築物件に需要が集まるという追い風の面もあるが、影響は極めて一時的・限定的であろう。

足下では不動産投資に対する投資家の意欲は旺盛で、特に中国人投資家が日本の不動産の担い手として存在感を強めつつあった。中国では個人が直接土地を保有することはできないため、海外の現物不動産に対するニーズが強いからだ。しかしその中国の景気減速懸念が強まってきたことで、中国マネーも先細り感が強くなってきている。

なお昨日の日経には「韓国の年金基金が日本の不動産への投資を目的とした1000億円規模のファンド運用」という記事もあり、一部のアジア人投資家には、安値に叩かれた日本の不動産は魅力的に映っているのかも知れない。

しかし足下の円高局面でその動きも限定的と見るべきだろう。韓国は最近になってウォン安に対する国民生活への影響から、自国通貨安是正の動きもあり、自国通貨高を考えれば海外資産価値の目減りに繋がる。そしてこの動きは次第に他の新興国にも広がりを見せそうだ。よって、この動きが波及してくるとは考え辛い。

継続されている日銀によるJ-REITの買い上げは、REITを含めた不動産の需給的な下支え要因になるが、景気低迷は根本的な部分での成長性に関わり、先行きの景況感に神経質に成らざるを得ない。


11年12月第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   15900
営業利益 5600
経常利益 2800
当期純益 1500


震災後の不動産市況の落ち着きが業績の底上げ要因ではあるが、一方で前期未計上で今期に期ズレとなったオーストラリアのチャレンジャー社と共同で商業ファンドを組成するという話が、今期も欧州危機の一段の悪化により更に立ち消えとなるリスクが大きく、その際は見通しの下押し要因にも成りかねない。それらプラスマイナスの要因から、第三四半期は概ね会社計画に沿った形で様子見としている。

有利子負債は1150億円で前期比86億円の減少。現預金は110億円で有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は190.0%で、同業他社比では低い方。流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は167%と財務状況はまあまあ。

フリーキャッシュフローは前期データでは64.1億円の黒字。社債の償還予定は今期18.6億円、来期23.9億円とキャッシュフローの範囲内で返済可能であり、過去2年連続で公募が行われたこともあって、当面のファイナンスはないと見て良いのではないか。


【株価推移】
05年12月に付けた上場来高値から、リーマンショックや足下の欧州不安などを背景にした不動産市況の大幅な悪化から、右肩下がりの症状が続き未だ抜け出せないでいる。09年2月に上場来安値5030円を付け、株価は1/100近くまで下落した。

その後も度重なる増資を繰り返して株価反騰の目を摘むと、東日本大震災などもあって、益々苦境に。直近では再度1万円を割り込んで年初来安値を更新してきた。

なお業種的にも、また直接的にもREIT運営を行っていることもあって、東証REIT指数と連動性が高い。


【テクニカル】
震災後も不動産市況に対する先行き懸念から株価はジリ安基調だったが、6月下旬以降は12000円割れレベルを下値に、何とか踏みとどまりが見られた。しかし今月6日にそのラインを割り込んでしまったことで、底値が見えなくなる状態に。

14日の急落場面では心理的節目1万円で踏み止まったかに見えたが、木曜の下落で割り込むと、いよいよ底が見えなくなってきた。

MACD、ストキャス、パラボリック、新値足といったそれぞれのトレンドを示す指標も下落継続を示している。一目均衡表でも三役暗転の形となっており、ボリンジャーバンドも−2σを割り込んで、幅を拡大させながらの下落継続の見通しに。週足も全く同じ状況である。

まず短期的な底値は75日線との乖離が30%を超える範囲で見ておきたい。昨年以降からの値動きを見ても、震災などの暴落局面時でさえ30%までが限界であり、その後も4・5月で同様のラインが節目になってきたことがわかる。

ただし75日線は下り坂であることから、例えば現在のレベルにおいては9400円がそれに匹敵し、結果木曜は引けの水準で9500円を回復してきたが、日を追う毎にレベルが50円程度ずつ切り下がっていくので、この水準が下げ止まりに寄与するかどうかはまた別の話である。


【需給】
2年連続の公募により、株式総数は2年前の3倍以上に膨れあがっており、昨年の公募価格14855円には相当なしこりが残っている格好。余程大きく業績を好転させないと、当面上値を追うことは考え辛い。

信用買い残に関しては6月以降少しずつ減ってはいるものの、未だ9万株強の水準で高止まり。日々の出来高に比べれば消化可能なレベルではあるが、上値を抑える要因には違いない。

日証金では08年の急落以後ずっと売り禁の状態になっており、実質的に空売りのできない銘柄となっていることもあって、なかなか売り一巡感が出てこない。空売りが入り辛いために下落は緩やかになっても上昇時の勢いが出ず、結果需給がいつまでたっても好転しない悪循環となっている。

なお、直近の株価推移では6月下旬〜7月上旬にかけて、また8月上旬時点においても出来高を伴いながら12000円レベルを死守してきた。しかし足下ではそこを割り込んでしまったために、今度は一転12000円以上での上値が重い状況となっている。

その上の水準に位置する大量の公募株の堆積を考慮しても、12000円を突破するのは容易ではない。


【同業他社比較】
同社の予想PERは11.0倍、PBRは0.4倍。予想ROEは3.3%となっている。同業他社はどういう状況だろうか。


いちごGHD(2337)
旧アセットマネージャーズHDでいちごトラストの傘下に。不動産ファンドの組成・運用を柱。

予想PERは16.2倍、PBRは0.9倍。予想ROEは5.1%。有利子負債比率は235.0%。

最近では後述のファンドCGからの子会社譲り受け、業務提携もあって、やや思惑含み先行の過剰な買われ方をしたこともあり、株式的な価値では割高な形となっている。成長率は高くなっているものの、有利子負債も大きく、リスクは高めの印象。


ファンドCG(3266)
不動産ファンドの組成・運用を柱。ただ不動産投信子会社はいちごGHDへ売却。いちごGHDの他、中国の投資会社フォーチュンリンクなどとも業務提携し、アジアでの投資事業にも積極的。継続疑義注記あり。

予想PERは133倍、PBRは3.5倍。予想ROEは−2.6%。有利子負債比率は664.0%。

超低位株から一気に仕手化し、震災後6円→221円まで4ヶ月で約37倍となった直近の話題株。ただ足下では祭りも終了し、本来あるべきポジションに戻りつつある。従って現水準でも同社に比べて圧倒的な割高株である。


グラウンド・ファイナンシャル・アドバイザリー(8783)
不動産流動化や証券化などの投資助言に特化。継続疑義注記あり。先般時価総額の上場廃止基準をクリアしたものの、引き続き時価総額は3億円前後で推移しており低空飛行。

予想PERは30.0倍、PBRは0.4倍。予想ROEは1.5%。アドバイザリーのみのため無借金経営。

投資助言だけの割にはPBRが低い点は割安感もある。ただし株式の流動性が少なく不出来の日も多いため、株式価値が割安になるのは当然でもある。


かつては数多上場していた同業他社も破綻やMBOなどによって今は数が急減。数少ない中でも比較すると、同業他社に比べてしっかりとした経営をして割安な印象。ただ業界全体に負の印象が累積しており、それぞれ増収増益をしっかりと実現できるまで、まともな評価は得られ辛いのではないか。


【課題】
海外投資家の取り込み。今は同社の私募ファンドへの投資家の国別内訳は、日米だけで8割となっているが、低いアジア人比率を上げていく施策が必要だろう。アジアでアピールしていくのは勿論のこと、アジア市場に同社のREITを上場させて、アジアマネーの取り込みを図るべきである。

一方で同社株式に関しては、外国人持ち株比率が過半を超えており、かなり偏重の気がある。背景には上述のような公募の実施が外国人投資家向けに行われたこともあるが、足下のような外国人投資家の売り越し局面では大きなリスクになってくる。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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