ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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フリービット


14年4月29日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  25日線近辺で拾うか、日本通信(9424)が再度騰勢を強める場面で。
3ヶ月以内株価予想 1200円〜2000円


要点

・固定回線の契約減少や子会社の不正会計問題の影響で業績の伸びは低調。また足元でサービスを開始した「freebit mobile」の販促費が嵩むことで、コスト面での重石に。
・短期的には先般急騰した分の整理売りが続きそうではあるものの、テクニカル的には三角持ち合い上放れや下値の各種抵抗線から、下値抵抗力はありそうな場面。
・同業他社との比較では既に株価がMVNO関連として買われたことなどで割高な印象。
・DTIの売却や上場などで切り離しを考えるべき。


【企業概要】
総合的なネットインフラ提供。子会社のDTIが提供するISP(インターネットサービスプロバイダー)では業界7位。その他子会社にネット広告代理店のフルスピード(2159)。東証マザーズコア指数採用銘柄。

MVNO(仮想移動体通信業者)で昨年11月より「freebit mobile」を展開、スマホキャリアを目指す。中国最大規模のデジタルコンシューマー機器メーカーaigo(日本総代理権を取得)の端末を用いた格安スマホで、初心者・高齢者中心に操作性の向上を狙った「PandA」がウリ。福岡で先行試験販売を行っていたが、5月から全国展開。


【業績】
前期は減収ながらも営業増益。ただ負ののれん償却が終了したことや、貸付金などに対する引当金の計上によって最終赤字に転落した。


今期も減収ながら増益を見込む。子会社ベッコアメ・インターネットの不正会計による処理で10億円の減収を見込んでいるが、それ影響を差し引けば既存事業は全般的にしっかりと推移している。

第三四半期時点では主力のブロードバンドインフラ事業は固定回線の契約減少などで苦戦する一方、MVNO契約者数が増加することで増収。また格安スマホなどのB2C事業が急成長を見せ、フルスピードを中心とするアドテクノロジーインフラ事業も利益率が急激に改善。これら主力事業の好調がその他の事業の苦戦を十分補っている。

売上の9割がストック型(契約積み上げ型)であるため、業績には安定感がある。固定回線は他社も含めて減少傾向はやむなしであるものの、MVNO市場に関しては15年度末には2392万回線、6250億円になるとされ、年平均成長率はそれぞれ32.1%、20.5%と見込まれている。割安な価格とサービスで個人利用が増えるのは勿論、M2M(機器間通信)向けの法人需要も出てくると期待されており、高成長が望める市場である。

中期計画では2期後の16年4月期に売上260億、営業利益率10%を目指す。MVNOやネット広告などに注力し、成長を持続させる。また特許を積極的に取得し、着実に足元を固めながら進んでいる印象。
http://www.patentresult.co.jp/news/2013/12/emergingmarket03.html

現在佐賀県唐津市と連携し、高齢者の見守りシステムの実証実験も行っている。方向としては「高齢者向け」を睨み、飽和状態にある国内スマホシェアのニッチな部分を掘り起こす。


14年4月期予想(ラディッシュ・リサーチ)単位:百万円
売上   20500
営業利益 1100
経常利益 1000
当期純益 150


売上は前期並を見込む。ただ最終四半期において「freebit mobile」の販促コストが嵩むことで営業利益ベースでは未達懸念も残る。


有利子負債は56.4億円で前期から5.8億円減少。
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は94.3%
現預金は46.4億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は118.6%で前期の136.1%から悪化。

財務体質は悪くはないものの、際だって良いわけではない印象。有利子負債は減っているものの、短期借入金が増加したことで、流動比率は悪化。


フリーキャッシュフローは中間期時点で3.5億円の黒字

前期に引き当てた債務保証損失引当金58億円の支払いが今期行われたことで、営業CFは減少。一方、投資が減って貸付金の回収が成されたことから投資CFが黒字化し、前期よりフリーCFは改善した。


粗利益率は38.6%で、前期の35.6%から改善。
予想ROAは四季報予想で5.9%で、前期の2.7%からは改善見込み。

主力事業が堅調に推移していることで、ベッコアメの不正によるマイナス分を補っているところ。


ファイナンスに関しては「freebit mobile」の全国展開に合わせて出店費や広告宣伝費などが必要なことから、一定程度の可能性はあると見るべき。東証1部市場替えなどとセットで実施か。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は301億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は25億円であり、結果EV/EBITDA倍率は11.8倍となる。同業他社の平均値はおよそ6.5倍と見立てられ、それらを元に計算した理論株価は762円となり、現状の株価は事業価値分析上は割高と捉えられる。


【株価推移】
07年に上場してからリーマンショックの際も新興企業の勢いのまま高値圏を維持できたが、その後は5年近くじり安の展開が続く格好に。ただ昨年11月に新規事業発表会で「freebit mobile」構想を打ち出すと急激に動意付き、一気に上場来高値を更新する流れに。足元ではその反動から調整が進んで1000円を割りこんだが、巷で格安スマホの認知が高まってきたことで、再度動意付く流れに。


【テクニカル】
今年に入ってからは1000円や200日線を下値に踏みとどまっており、逆三尊を形成の流れ。また各月の高値を結ぶ上値抵抗線とで形成される三角持ち合いも4/16の大陽線で上放れてきたことで、トレンド転換を示唆。

ただし未だ75日線は下落が続いていることで完全な反発局面に入ったとは言い切れない状況。短期的には14日の安値980円と23日高値1818円の半値押し水準である1400円や25日線で下げ止まりが確認できるかどうか。もしここで反発できないようであれば、更に一ヶ月程度の調整を要する雰囲気。

一目均衡表でも実線、遅行線共に雲の中に入り込んでいることから、それぞれ雲下限において一定の抵抗力が感じられるところ。ストキャスも割安感が出ており、短期的な反発局面のタイミングにはある印象。


【需給】
中期的には昨年12月高値以降下落が続いており、需給は悪い形。ただ上述のように三角持ち合いを上放れてきたことで、売り一巡感は出ている展開に。一方短期的には1500円以上での出来高が大きく膨らんでしまったことで、この水準のしこりの日柄整理も必要とされる段階。戻り局面では戻り待ちの売りをこなすだけの買いエネルギーを必要とするだろう。

信用買い残は差し引き約187万株で、2月の水準にまで再度悪化傾向に。ただ日々の出来高に比べると返済売り圧力はそれ程でも無い感じ。

なお、実力的には東証1部指定替えが可能な状態にあり、先述の通り資金調達が必要な場面で申請してくる可能性はある。


【同業他社比較】
同社の予想PERは278.5倍。PBRは4.8倍
今期予想営業利益率は6.0%、予想ROEは1.7%
配当利回りは0.5%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


IIJ(3774)
NTT(9432)系でネット接続大手。MVNOの提供やビッグデータの取り扱いも。社長に前財務事務次官の勝氏。

予想PERは23.2倍、PBRは1.9倍
前期予想営業利益率は5.3%、予想ROEは8.0%
有利子負債比率は32.2%
配当利回りは0.9%

利益率も同水準で、全般的には同社に比べて割安感が強い。


ニフティ(3828)
ネット接続大手。富士通(6702)系だが、売却を検討されている。MVNOの提供も。

予想PERは11.5倍、PBRは1.1倍
今期予想営業利益率は6.7%、予想ROEは9.2%
無借金経営
配当利回りは2.8%

同業他社の中では一番経営安定性があり利益率も高い。ただ富士通の売却先が決まるまでは不安定さが残る印象。


エキサイト(3754)
ポータルサイト「excite」運営。広告料が主力だがプロバイダー業も。

予想PERは22.2倍、PBRは1.0倍
前期予想営業利益率は4.7%、予想ROEは4.5%
無借金経営
配当利回りは1.7%

この中では小規模業者であることから利益率は低め。


日本通信(9424)
MVNO業者のパイオニア。

予想PERは72.6倍、PBRは21.1倍
前期予想営業利益率は15.5%、予想ROEは26.4%
有利子負債比率は52.3%
配当は無配

事業領域的に重なっている部分が少ないので参考程度に。iPhoneのSIMフリー版発売からにわかにMVNOに脚光が集まるようになり、利益率は尻上がりに良くなってきている。株式市場的には同社と連想感が強い銘柄のうちの一つ。


他社との比較では足元MVNOの取り扱いで大きく買われた経緯もあって、全般的に割高感が強い印象。


【課題】
ISP業界全体の売上高は足元で3.2%の減少し、1.6%減だった前回に続き2年連続のマイナスで、減少幅も大きくなった。スマホのテザリングやWi-Fiルーターなどモバイル端末を使う通信サービスに押され、新規加入者の獲得が難しくなっている。それに伴い価格競争が激化し悪循環に陥っている。特に足元ではNiftyやBIGLOBEと言った大手ISPでさえ売却が親会社によって進められている。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1404/28/news019.html

同社もやはり同分野の事業に関しては他社への譲渡、もしくは逆に他社からの買収・統合による規模の拡大などを押し進める必要がある。そのためにはDTIの上場なども選択肢の一つとして考えても良さそうだ。

また利益率、ROEの向上に努めたい。足元で子会社の不正問題が足かせになっている部分を差し引いても、新興企業の中で利益率が低い状況である。中期経営計画では2期後の営業利益率10%を掲げるが、やや時間がかかり過ぎでは無いか。早急に利益率を高め、更に事業展開を進めないと、格安スマホ業界もあっという間にレッドオーシャン市場化してしまうだろう。


【総合評価】
業績的な面で捉えると利益率が低く、既にMVNO関連として大きくはやされた場面があったことからも、株価の割高感は拭えない印象。ただし株式的にはまだまだ成長の余地のある面白いテーマであることや株価変動率の高さから、短期筋や個人投資家などには人気の銘柄と言え、材料次第で再度上値を取りに行ける面白さがある。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。

 

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