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ダイワボウHD(3107)

 

12年2月19日現在
3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  一ヶ月程度の横ばい確認後か、190円を超えてから
3ヶ月以内株価予想 180円〜210円(ただし材料発現次第で上値ブレイクの可能性)


要点

・業績は好調。会社計画は保守的であり、通期業績は上方修正期待含み。
・株価推移はイベント次第。需給面では上値にしこりが見られ、足下はイベント特需も一巡し、沈静化傾向にある。
・他社比では有利子負債の大きさ、利益率の低さが目に付く。
・主力のIT事業の利益率を高める施策をとるべき。


【企業概要】
紡績中堅。ただし売上の約85%は子会社のダイワボウ情報システムを中心としたITインフラ流通事業が占めており、実質的には紡績のウエイトは1割程度。また、オーエム製作所を完全子会社化し、工作機械の分野へと裾野を拡げる。


【同社が受けやすい市場テーマ】
インフルエンザ、花粉症・・・予防用マスクからの連想買いが目立つ。ただインフルエンザに関しては直近のピークは過ぎたとされ、また花粉飛散量は例年より少ないと言われている。そもそもマスクの同社の売上に占める割合は極めて小さく、業績寄与度は小さい。

火力発電・・・子会社のオーエム製作所は、ガスタービンシャフトの加工に使われる立旋盤の世界トップメーカー。以前、野村證券がレポートで「火力発電におけるタービン需要の増加に伴って立旋盤の需要が伸びる可能性」を指摘。ただしこちらも業績的な寄与は極めて軽微。


【業績】
前期は増収及び営業増益。主力のIT事業の売上は微増に止まるも、販売効率の向上などによって利益率が改善。最終利益は震災による特損などによって小幅減益。

今期は連結子会社化したオーエム製作所が寄与することもあり増収増益を見込む。7日に出した第三四半期決算では最終利益は既に計画を達成しているものの、上方修正は無し。

主力のITインフラ流通事業は法人によるIT投資抑制の動きを受けて、売上の伸びは小幅に止まった。タブレット型PCの販売で攻勢をかけたい構え。ただし足下では各社のIT投資意欲が戻ってきており、事業環境は改善しつつある。

機能材は復興需要で、また工作機械は海外展開を積極化することでそれぞれ伸長。一方で繊維事業の方は綿価格の上昇によるコストアップが逆風。海外でも競争激化により、損失が拡大している。


12年3月期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   486000
営業利益 8350
税前利益 7600
当期純益 4300


IT企業の季節要因として、最終四半期に売上、利益が積み上がりやすい。また、同社は比較的業績を保守的に見積もる傾向がある。

今期は第三四半期まで会社計画に対して例年とほぼ同程度の進捗度合いであることから、やはり会社計画は上回る公算が大きい。なお震災被害の保険金受け取りにより、特別利益が5億円分嵩上げされている格好。

来期は減価償却費が落ち着く一方でその剥落分もあり、最終利益は減益になる見込み。


有利子負債は545.3億円で前期から52.9億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は133.8%
現預金は117.1億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は118.4%

有利子負債比率は紡績事業として見た場合でもやや多い印象。流動比率も低めで、あまり財務体質が良いとは言えない。

フリーキャッシュフローも前期9.7億円の赤字。

オーエム製作所買収のために42億円近く費やしたことで、投資支出が増えた。今期も設備投資を積極的に行う分、黒字幅は圧縮される見込み。

ファイナンスに関しては09年末に大型の増資が行われ、また以後は利益も伸びて借入金は順調に減らせているため、目先追加で行われる可能性は低そう。ただしある程度ほとぼりも冷めており、M&Aなどによる一段の多角化が企図されれば、再度行われる可能性はある。


【株価推移】
09年3月にダイワボウ情報システムを完全子会社化からとそれ以前では業容も大きく変化しているため、それ以後について考察。

子会社化以降は斜陽産業である繊維業界からの脱却が好感され、株価は一時500円台まで急騰。しかしその後、公募増資の実施を受けて再度元の株価水準に戻ると、概ね200円前後での株価推移が続く。時々インフルエンザが流行ると、関連株として突発高をするクセを持つ。


【テクニカル】
昨年6/9、9/26、12/29の安値を結んだ下値支持線(8/9はトラッキングエラーと考える)と、5/12、9/5、及び今年の1/30の高値をそれぞれ結んだ上値抵抗線に沿って、パラレルな上昇相場が続いている。

素直に見ればこのまま上昇相場が続いていきそうな形にはなっているものの、1/30の高値陰線が1/26に続いて出来高を伴ったものとなっており、トレンド転換を示している可能性が高い。

MACDやパラボリックは売り転換の流れに。一目均衡表では丁度雲が実線、遅行線共に支えてくれる形となっており、まずは現値水準での下支えが期待できる。

ただそこを割り込むと、75日線はここまでの経緯では特に下値支持ともなっていないことから頼りない。上述した下値支持線及び200日線が位置する178円前後を割り込むようならば、下値支持線を形成する各安値のポイントで下げ止まるかどうかを確認してから投資する必要がある。

週足でもストキャスが暗転していることから、目先一ヶ月程度は横ばい推移が見込まれる。地合の良さも手伝って強含む期待感はあるが、インフル拡大などの材料が無ければ、取り立てて買われるような雰囲気も無い。


【需給】
1/26にはインフル関連で、1/30は日経に「セシウム防ぐマスクを生産」と報道されたことで材料性から急騰し陰線。上値に大きめのしこりを残しており、短期的な需給バランスは崩れてしまっている格好。

信用買い残は足下で差し引き850万株程度の買い残が残っているものと見込まれ、昨年7月以降少しずつ増えてきている格好である。ただしそのうち600万株程度の買い残に関しては、ヒストリカル的に常時存在するため、取り立てて意識する必要はなさそう。

株価が低位なこともあって、材料が出た際には短期資金が集中しやすい。その分値動きも激しくなるが、瞬間的な上昇に止まりやすく、立て続けに材料が囃されない限り相場の持続性は乏しい。

浮動株比率も46.6%と高いことから、平時の値幅は非常に限られたものになりやすい。一方で足下では低位株投信の設定が好評で活発化してきていることから、先々も新規設定が相次げば投信の買い需要も期待できる。

なお09年末に行われた4000万株近い公募増資に関しては、公募価格187円を以後概ね上回って推移していることから、今更影響はないものと思われる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは12.9倍。PBRは0.9倍
今期予想営業利益率は1.5%、予想ROEは6.3%
配当利回りは2.2%。
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


シキボウ(3109)
紡績では老舗。機能材や電子プリント基板製造、ゴルフ場運営なども行う。インフルエンザ関連で同社と共に反応することが多い。

予想PERは13.9倍、PBRは0.5倍
今期予想営業利益率は5.8%、予想ROEは3.5%
有利子負債比率は117.6%
予想配当利回りは1.7%

PBRで割安感。不動産業で利益をあげていることで利益率は同社を上回るものの、ROEは低め。財務面でも同社よりはマシな状況。


大塚商会(4768)
独立系OA機器販売商社。SI主力だが、オフィス通販「たのめーる」も育ってきている。

予想PERは13.3倍、PBRは1.6倍
今期予想営業利益率は4.9%、予想ROEは11.6%
有利子負債比率は6.4%
予想配当利回りは2.5%

12月決算。株式価値的には同社に比べてやや割高感があるものの、利益率やROE、配当利回りなどで同社を上回る。有利子負債はOA販売中心のため小さく、実質無借金。


兼松エレクストロニクス(8096)
兼松(8020)傘下のITベンダー。SIも。IBM製品の取り扱いを軸に、金融向けに強み。

予想PERは9.4倍、PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は9.5%、予想ROEは7.6%
無借金経営
予想配当利回りは4.9%

全ての指標面において同社を上回っている格好。特に配当利回りは5%近く、株式的には割安感が強い。親会社によるTOB期待も持たれる。


菱友システムズ(4685)
三菱重工系。情報処理、ソフト開発、機器販売の3本柱。原発向け解析業務に先行き不透明感から、宇宙事業へ注力。

予想PERは19.1倍、PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は1.8%、予想ROEは4.8%
無借金経営
予想配当利回りは1.9%

PERやROEでは同社に劣るも、その他の面では優位性。ただしJASDAQ市場であるため、流動性に難あり。こちらも親会社によるTOB期待もある。


紡績、IT機器販売、システムインテグレーター、工作機械と様々な業種が絡み合っている分、他社との比較が難しいものの、残念ながらどの事業も利益率が低い。特に主力のIT事業の利益率は改善してきているとはいえ、未だ1%台前半に止まっている点が致命的。

IT系事業は有利子負債が0に近く、またPBRも高くなりがちである。ただ紡績、工作機械どの業界との比較でも同社の有利子負債比率は高めであり、総じて財務体質は悪い印象。

総合的には、他社比では概ね妥当かやや割高といった感触である。


【課題】
まず繊維産業全体としては成熟産業の典型とも言える。従って各社共に危機感を抱き、収益拡大策のため非繊維事業へのシフトに注力し、中核の業態が既に変貌しているグループが多い。

同社に関しては既に各方面に手を広げていることから、今後はこれらの産業をいかに有機的に結びつけていくかが課題である。事業の偏りを減らすことで業績の安定化には一定の効果があるものの、各事業共に接点が薄いため非効率に陥りやすい。各分野毎において、他社との提携が必須であろう。

同社に関しては特に財務体質と利益率の改善が命題である。繊維部門の黒字化を果たして、弱点を補いたい。それには海外の安価な製品に対抗しうる高付加価値品の開発、拡販が不可欠である。

また主力のIT事業の利益率を少しでも高めることができれば、売上が大きい分一気に利幅を改善することができる。同業他社比で見ても改善の余地はまだまだ大きいといえ、顧客のIT投資意欲が足下改善しつつある中で、一段と利益率を高める施策をとっていきたい。

株主構成に関しては、海外比率や機関投資家比率が小さい印象。よりIRを積極化することで、安定株主を創出していくべきだろう。


※来週は確定申告でバタバタするため、レポートの作成はお休み致します。予めご了承ください。なお、リクエストは随時受け付けております。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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