ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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きちり(3082)

 

3ヶ月以内投資判断 「売り」
買いのタイミング  現在(買うなら今しかないが、上昇は今週まで。現在の勢いのまま一旦は45万円を目指す流れになるものの、その後は下落へ。新規買いは今週限りの超短期に徹するべき)
3ヶ月以内株価予想 27万円〜45万円

要点

・業績は順調に拡大。財務面にやや不安が残るものの、成長をテコに吸収できる公算。
・現在の株価の急騰は完全な需給相場。時価総額が小さいため、短期資金が入ってくると急騰しやすい。過熱感が高いことから、一度買いの手が止めば、一気に株価が急落・調整のリスクが大きくなる。
・同業他社比では小型なだけに成長力は高いも、財務面が弱い。
・株主還元に難あり。株式市場にもっと目を向けるべき。


【企業概要】
関西地盤で女性向け居酒屋が主力。98年に前身組織を立ち上げてから10年足らずで上場に。店舗の積極展開で業容を拡大し続け、直近ではタニタと業務提携。話題の「タニタ食堂」を展開し、女性に対する訴求力を生み出す。

12月末まで自社株買いを実施中だが、10、11月は株価の上昇もあって実績は0。ちなみに名前の由来は三国志の曹操の幼名「吉利」より。


【業績】
前期は増収及び営業増益。震災による外食手控えを乗り越えて、成長持続に成功。多ブランドによる積極的な店舗展開で、シェアの拡大に成功した。

今期も大幅な増収増益見込み。先月は中間期及び通期利益の上方修正を発表。売上見通しは据え置いたものの、仕入れ・物流コストなどの費用を抑えることで一段の利益拡大を見込む。足下では特にハンバーグ店舗の「いしがまやハンバーグ」の展開に積極的。

あとは既存店の落ち込みをなるべく抑えつつ、いかに新規出店の資金を回していけるかがカギ。まだ業容拡大に専念すべきだろうが、それらが同時平行ができなくなると、一転成長が止まってしまう脆さも感じる。


11年12月中間期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   2950
営業利益 275
経常利益 300
当期純益 150


第二四半期は忘年会シーズンのかき入れ時。新店舗が現在のところ10−12月期で3店舗出店していることから、増収の確保は間違いなさそう。また節電意識の高まりや、規模のメリットによるコストの減少などを考えると、増益確保も問題は無いと思われる。ただ一方で極端な上ブレも見込めず、概ね会社の計画通りの範囲に落ち着くものと見られる。

有利子負債は11.0億円で前期比1.3億円の減少。現預金は3.4億円。有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は132%。流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は56.0%と財務状況は良いとは言えない。

フリーキャッシュフローは前期4300万円の黒字。稼ぎの範囲内で設備投資をし、借入金も返済が進んでいることから、基本的には無理無く業容を拡大できていると言える。ファイナンスに関しても、買収や極端な出店攻勢に転じるなど余程の方針転換が無い限り無いと思われるが、現在の株高が維持されれば誘因されるという可能性も捨てきれない。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は38.1億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は560億円であり、結果EV/EBITDA倍率は6.8倍となる。同業他社の平均値がおよそ4.7倍と見立てられるが、それらを元に計算した理論株価は236720円となり、現状の株価は事業価値分析上は割高と捉えられる。


【株価推移】
07年の上場2日目に付けた高値458000円から株価は下落の一途を辿り、リーマンショックによる不況から15ヶ月後の08年10月には36100円の最安値を付けた。実質的に公開価格152000円で購入した投資家以外は儲かっていない銘柄であったと言える。

その後は緩やかな回復を見せるも、低流動性の中で概ね6万円を挟んだ水準で安定。昨年11月頃から新興市場株高を受けて少しずつ上放れの動きを見せ、今年9月に9万円に乗せると一段と弾みがついた格好。

そして先月タニタとの業務提携及び業績予想の上方修正を発表すると、今までの鬱憤を晴らすかの如くに出来高を伴いつつ急騰を始めている。先週だけで株価は倍化し、上場来最高の上昇率を見せる。


【テクニカル】
直近の急騰では明らかに過熱感が生じている。MACDなどのトレンド系シグナルは上昇継続を示しており、一目均衡表やDMIなどの好転からトレンドの変化は読みとれない。

ただボリンジャーバンドは+3σすら突破し、大きな過熱感を生じている。また25日移動平均線乖離率も230%と桁違いの水準に。一般的にどんなに過熱感のある銘柄でも250%を越えると急速な調整を要求してくる。

上値の目処としては上場来高値の458000円、また心理的節目の50万円が見えてくるので、新規の買い材料が浮上してこない限りはその辺りが限界点になってくるものと思われる。


【需給】
需給面では明らかな好需給が続いており、足下の急騰はそれを主因とした相場展開であると言える。現在の38万円より上の価格帯を付けたのは上場直後の4営業日だけであり、滞在日数は薄い水準。

その4営業日の間の出来高が約3万株。それ以降の商いは全て37万円以下の水準でこなされており、その後の累計出来高が約12万株。であれば、公開時の公募株数を含めても4回転近くしている計算になるるため、ほとんど上場当時の水準で塩漬けとして持っている投資家はいないだろう。上値は真空地帯であると言って良い。

同社の時価総額の小ささ、流動性の少なさもボラティリティを高め、今この急騰を演出する材料。時価総額は現段階でも30億円程度であり、短期資金が入ってくるとすぐに値を上げ、それが新たな短期資金を呼び込む。

信用買い残も100株程度であり、現在の売買高がこなされている限りは無視して良さそう。一方、需給相場であるということは、需給が暗転した時の下落も大きいことの裏返しでもあり、特に同社のように空売りが入ってこない銘柄の場合、値動きは一方向に偏りやすい点に留意する必要がある。

従って、株価のイメージとしては今週まだ40万円台に入る勢いがあるものの、過熱感や上値達成感を背景に売りが出てくると、需給は一転して暗転し、適正株価水準である20万円台にまで急速な調整を入れる形が予想される。

一方で、もし新規の材料を背景にして50万円を抜けてくるのであれば、次の上昇ステージに入る可能性も秘めている。


【同業他社比較】
同社の予想PERは14.7倍、PBRは4.1倍。予想ROEは18.0%、営業利益率は6.3%。配当は無配となっている。同業他社はどういう状況だろうか。


ワタミ(7522)
居酒屋でトップ。介護や宅配弁当など、高齢者向けのビジネスにも展開し、ビジネスの幅を広げる。売上規模は同社の23倍。
予想PERは19.7倍、PBRは2.7倍。予想ROEは12.1%。営業利益率は5.6%。配当利回りは1.1%。優待有り。有利子負債比率は59.9%。

知名度の高さ、流動性の大きさ、配当や優待の存在などで同社を上回る。その分PERでは同社よりも割高に買われているが、PBRでは割安となっている。


三光マーケティングフーズ(2762)
女性ターゲットの居酒屋「月の雫」などを展開。その他牛丼店やうどん店など、酒類を提供しない外食分野にも注力。売上規模は同社の4.5倍程度。
予想PERは11.7倍、PBRは0.8倍。予想ROEは7.5%。営業利益率は9.4%。配当利回りは1.9%。優待有り。無借金。

ROE以外の項目において同社を上回る。財務面でも安心感があり、一段の成長余力を残す。


マルシェ(7524)
居酒屋「酔虎伝」などを展開。関西が地盤。九州や北京など、版図を拡大中。売上規模は同社の2.3倍程度。
予想PERは19.7倍、PBRは1.2倍。予想ROEは6.0%。営業利益率は3.7%。配当利回りは2.3%。優待有り。有利子負債比率は4.7%。

業績面ではやや苦戦が目立ち、月次動向などでも前年同月比マイナスが続く。財務面では安心感があるものの、利益率・成長率の面においては同社に劣る。


ダイヤモンドダイニング(3073)
一業態一店舗で独自色の強い居酒屋を展開。借入金をテコにダーツ・ビリヤードなどの遊技チェーン「BAGUS」買収で店舗数を拡大。売上規模は同社の4倍程度。
予想PERは6.0倍、PBRは0.9倍。予想ROEは12.3%。営業利益率は3.0%。配当利回りは2.5%。優待有り。有利子負債比率は247%。

強気の出店攻勢で攻めている。その分成長力はあるものの、利益率がまだ低い。各店舗毎の独自性を確保しつつ、いかに仕入れコストを共通化して減らせるかがカギ。直近同社の株価動向に触発される形で、ダイヤ社株も上放れの動きが出始めている。


同業他社に比べると、同社は小規模な点で現在積極攻勢に出られる素地があり、成長余力が大きい。その分多少の財務的なリスクを負いながら、業容を拡大していくのはポジション的には自然な選択であると捉えられる。

ただ他社は配当の実施や、株主優待の設置など株主還元にも積極的であるのに対し、同社は双方共に無い。若い女性をターゲットにした居酒屋であるため、あまり投資家に対する関心が無いのかも知れないが、その辺りはマイナス評価に映る。


【課題】
居酒屋業界全体の課題としては、消費者の内食嗜好、また若者のアルコール離れが気に掛かるところ。そのため、各社共に一般の外食産業や他業態に手を広げており、ビジネスリスクの分散を講じている。同社もハンバーグ店に力を入れており、今後も酒類提供以外の道を模索する必要がありそうだ。

同社は若い女性向けをコンセプトにしているところから、今回タニタと提携した点は心強い。一方で、消費者に飽きが来ないよう、様々なブランドを随時展開しなければならず、一段の独自色を高めていく努力を続けなければならない。

また当然ながら単に独自色を出すだけではなく、ノウハウの共通化などによるコスト削減も同時に行う必要があるだろう。そのジレンマを上手く解消しながら、不採算店のスクラップアンドビルドの決断にスピードを持って、店舗拡大を推し進めていかねばならない。

株式に関しては、上述のように株価に対する関心が薄いように思われる。例えばHPのIRを見ると決算短信でも必要最低限のことしか表記されておらず、情報提供力に乏しい。流動性が低いため、あまりIRに力をかけても仕方ないと考えているのかも知れない。

ただ、上場して終わりではなく、出資してくれる株主に還元する策を講じるべきである。配当はまだ先送るにしても、優待の設置や株式分割など、比較的コストをかけずに済む手法もまだまだ余地があり、特に流動性向上を目的として分割は積極的に検討すべき事項ではないか。逆にこれらの株主還元策が採られれば、株価は一段高する余地がある。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

 

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