ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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日本マニュファクチャリング(2162)

 

3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  1月中旬以降に44000円を割る場面があればベスト。
3ヶ月以内株価予想 4.1万円〜5万円(5万円を抜けるきっかけがあれば最大8万円まで)

要点

・業績は買収効果もあって順調に拡大継続。いち早く中国・ベトナムでの派遣許可を取得したことで、日本の産業空洞化の恩恵が大きい。
・株式需給面は悪く、テクニカル的にも上値が重い。理論株価でも割高。
・同業他社比では成長力が高い一方で、配当利回りは小さい。
・B/Sは買収などの拡大策で財務面で苦しく。早期に安定化させないと、投資家は次の一手を期待し辛い。


【企業概要】
製造派遣から請負にも注力。買収を通じて一気に業容を拡大。製造業の円高対策で産業空洞化が進む中、中国・ベトナムなどアジアでの製造派遣に積極的。


【業績】
前期は大幅な増収増益。子会社化した志摩電子が大きく寄与しているものの、その分を差し引いても従前の主力事業が伸びを見せ、増収増益を確保できた。

今期も大幅な増収増益で上場来最高益更新見込み。新たに買収したTKRの連結効果が上乗せされる分は大きいものの、中間期時点では営業減益に。震災やタイの洪水被害で各事業の売上が計画比を下回り、販管費が増えたことが主因。

下期はこれら天災によるマイナス分からの戻りが期待され、実際に同業他社の月次発表資料などを見ても、11月の稼働率が前四半期比4ポイント程度上昇し、95%越えで08年以来の高水準に。人員の積極採用も伺え、同社も同程度の改善が予想される。

また今期からフル寄与となる志摩電子の売上が落ち込んだものの、TKR(志摩電子の後工程担当)との経営統合でワンストップサービスの提供が可能に。グループ内での相乗効果から、一段の売上確保が期待される。

なお中国では労務派遣許認可を得ている唯一の日系企業。今期3500万円の中国での人材サービス売上を、14年には85億円にまで拡大できると鼻息が荒い。円高は今後の同社にとって追い風とも言え、製造業の海外移転により事業環境は良好と言える。

12年3月第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   21500
営業利益 430
経常利益 400
当期純益 1150


タイ洪水被害による顧客企業の減産などから計画はつまづいてしまったものの、上述のように下期以降の回復に力をこめる。それでも会社計画は未達の公算が高そうだが、未達幅は最小限に抑えられそう。むしろ翌期以降の急回復に期待ができる環境に。

有利子負債は76.7億円で前期比59.6億円の増加。買収費用と手元流動性の確保で短期借入金が増加。
現預金は43.5億円。短期借入により前期比約30億円増加。
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は230.7%。
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は124.2%。

財務状況は悪化し、自己資本比率も前期比9.7%悪化の16.1%に。ただ積極的な攻めの投資の結果であり一定量の増加は許容されるだろう。

フリーキャッシュフローは1.7億円の黒字。
最終益の大部分は負ののれん代12億円計上分であり、営業キャッシュフローベースでは赤字。

ファイナンスに関しては当面無さそう。立て続けに企業買収を行っており、ここから一段のM&Aは現在のところ予定されていない様子。さしあたり手元流動性も借入で確保されているため、緊急的な資金需要は乏しい。また筆頭株主が投資ファンドであることから、安易な増資も認められないだろう。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は84.5億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は7.9億円であり、結果EV/EBITDA倍率は10.7倍となる。同業他社の平均値がおよそ6.8倍と見立てられるが、それらを元に計算した理論株価は19152円となり、現状の株価は事業価値分析上は割高と捉えられる。


【株価推移】
07年の上場直後はリーマンショックのあおりを受けて株価が下落。一時1/20の水準にまで下落した。業績も悪化し、09年3月期は最終赤字に転落。

しかしそこから市況・業績の回復に合わせて同社の株価も回復。今年の1月に中国で製造派遣事業に参入すると伝わると動意付き、3週間足らずで株価は6倍強の水準まで達し、上場来高値を更新。その後は調整が続いている。


【テクニカル】
中期的には今年2月以降下落トレンドの最中にある。今月5日には中期経営計画の発表からストップ高を付ける場面があったものの、75日線に頭を抑えられる形でトレンド転換までには至らなかった。

特に5万円は心理的節目で、9月下旬から11月中旬にかけての下値抵抗線だったが、11月下旬に割り込むと今度は一転上値の抵抗線として機能する格好に。目先丁度75日線もその水準まで下がってくることから、5万円には一段と強い抵抗力が存在する形になりそうだ。

またMACDやパラボリックといったトレンド系シグナルも下落継続を示していることから、目先は緩やかな下落が続くものと見る。週足で見ても同じ様子で、各移動平均線を下回ってしまっている。

日足の一目均衡表を見ても雲が切り下がってきており、遅行線も実線に沿った形での下落に。ただし3日後には11/21の大きめの陰線部分に達することから、ここで実線を上回ってくる公算が高く、少しは上値が軽くなりそう。

目先地合の好転やファンダメンタルなどが意識されることによって、4万円を割り込むことは想定し辛い。一方で上放れるための材料にも乏しく、既に中期経営計画が出されている以上、第三四半期決算や上方修正が出たとしても反応は限定的だろう。

目先数週間は緩やかな下落が想定されるものの、75日線が切り下がってくるところで好地合などを背景にもし5万円を突破できれば、上値余地は一気に拡がってくるだろう。その場合、2/8及び7/27終値を結んで形成される上値抵抗線に接する最大8.2万円辺りまで上昇する可能性がある。


【需給】
需給は悪い。2/9の年初来高値から約半年後の信用期日通過に当たる7/27に出来高を伴って戻り高値を付け、そこで上値にしこりを残したことで一段需給が悪化。

信用買い残も6500株以上残っており、4月の5分割後で最も多い水準となっている。日々の出来高が1000株にも満たない中では重苦しい。一方、1月下旬頃には再度7月高値からの期日通過が意識されることで、上値は軽くなってくる可能性がある。


【同業他社比較】
同社の予想PERは5.1倍、PBRは1.4倍
予想ROEは30.3%、営業利益率は2.1%
配当利回りは0.6%
同業他社はどういう状況だろうか。


ワールドインテック(2429)
製造派遣・業務請負が主力で北九州地盤。その他にも携帯ショップへの人材派遣や不動産も。売上規模は同社と同水準。

予想PERは17.3倍、PBRは0.7倍
予想ROEは4.1%
営業利益率は1.3%
有利子負債比率は178%
配当利回りは2.4%

不動産業が足を引っ張り、営業利益率などの数字は同社に比べて悪い。成長性、PERなどの比較では同社の方に分があり、PBRや配当利回りで見る割安感もあまり魅力的に感じられない。


アウトソーシング(2427)
工場製造への人材派遣・請負主力で東海・関東が地盤。介護やIT分野にも。売上は同社と同水準。

予想PERは23.4倍、PBRは1.3倍
予想ROEは6.2%
営業利益率は1.6%
有利子負債比率は85.0%
配当利回りは2.7%

主要顧客の減産が響き利益率は同社に比べて悪い。株式的にも割高であり、財務状況や配当利回りでは勝っているものの、材料視できる程ではない。


アルプス技研(4641)
機械・電気・電子分野での技術者派遣・請負。売上は同社の半分程度。

予想PERは11.8倍、PBRは1.0倍
予想ROEは8.3%
営業利益率は4.8%
有利子負債比率は7.7%
配当利回りは4.2%

財務状態は良好で配当利回りも高い。東証1部銘柄ということで、比較他社の中では最も時価総額も大きく流動性がある。ただ成長性の面では同社に劣る印象。


トラスト・テック(2154)
技術者派遣・請負が主力。自動車・半導体業が主要顧客。元セガ社長の中山隼雄氏が筆頭株主。売上は同社の半分程度。

予想PERは8.1倍、PBRは1.3倍
予想ROEは16.4%
営業利益率は4.7%
有利子負債比率は0で無借金
配当利回りは6.5%

営業利益率は高いが、同社の場合は決算期が6月であることから、今期営業利益に震災直後の最悪期が含まれていない点は留意すべき。ただその分を差し引いても同社に次ぐ成長力があり、株式的な価値にも割安感。

なお配当利回りが随分高く、6月末一括のため5月頃から人気化する傾向にあるものの、流動性が低いところが難点。


同業他社と比べると、買収効果もあって同社の成長性の高さがずば抜けている。PBRが若干高くなっているが、成長期待を考慮すれば十分許容できる範囲。いち早く海外展開に注力したことで、今後アジアでの売上増加にも期待感がある。

ただ業界的には配当利回りが高い中で、株主への利益還元を犠牲にして成長性を確保している点に特徴があると言える。相対的に財務面での弱さも浮かび上がってくる。


【課題】
筆頭株主の投資ファンドの存在は気がかり。年初の高騰時にも売却してこなかったため、当面売ってくることもないだろうが、当然売却が最終目的になってこよう。需給悪化要因に繋がる恐れがある。

将来的には中国やシンガポールに上場するという計画があり、その際に売出す腹づもりか。一方でファンドが大株主であるということで、株価に対する意識が強く有る点はメリットとも言える。

また早く増配の目処を付けるべきではあるが、まず当面は財政基盤をしっかり固め、志摩電子、TKRとの統合効果を早期に発現させることが重要。財務基盤が確立できなければ、次の一手にも期待し辛い。

中国の景気減速に懸念は残るものの、人件費高騰が進めばその分中国に軸足を置く同社の人材サービス事業には追い風にもなる。一方で中国という国に対する政治的・治安的・その他のリスクが高まれば、企業は他の地域への進出に目を向けてしまう人材流動化リスクがある。

それに対応できるよう、絶えずアジアのその他諸地域に対する進出の見方を崩さず、一段のグローバル化に適用できるような体勢を整えておくべきである。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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