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燦キャピタルマネージメント(2134)

 

3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング  もし株価が4万円を超えてきたら。
3ヶ月以内株価予想 2.9万円〜5万円(ただし株価が4万円を再度超えてくる可能性は低いため、実質的には上限は4万円)

要点

・ここまでの株価上昇要因となっていたOEC構想の選定に漏れ、買い材料が喪失してしまった。業績の下方修正リスクが大きい。
・テクニカル的に下値目処は33000円で抵抗線が多数確認できるものの、需給面で考えると上値が重く、反発力は限定的。上昇には材料が必要。
・同業他社比でもまだ割高感が残る。
・業務の拡大には力のある印象。財務体質さえ改善させることができれば大きく飛躍する可能性を感じる。不動産以外の投資、海外展開に期待。


【企業概要】
西日本中心の不動産投資業が主力。買収したアパレルのエスシステム社を通じて台湾大手コングロマリットやダイドーリミテッド(3205)と業務提携。


【業績】
前期は減収減益。不動産環境の悪化から資産売却などが先延ばしになったことにより、上場来初の赤字転落となった。

今期は増収増益で黒字転換の見込みながらも無配に。売上の1/4は賃料収入となっており、安定性の確保に努めている。また今期から連結子会社のホテル事業において、売上と費用を総額表示する形を取ったことから嵩上げ。ただ影響度合いは1割弱でそれを差し引いても前期より回復の見込み。

足下では北九州の開発と、衣料ブランド「Xmiss」などを手がけるエスシステムの株式を取得し、それぞれ注力。ただビッグプロジェクトとして期待の高かった「万博記念公園南側ゾーン活性化事業者(以下OEC構想)」の選定に漏れてしまい、今後の会社計画に狂いが生じてきた。

元々事故で閉園となったエキスポランド跡地に米映画大手「パラマウント・ピクチャーズ」のテーマパーク建設が期待され、USJと合わせて2大テーマパークによる地域活性化が橋下知事(現大阪市長)の肝入りでもあった。

同社子会社がそれに携わることでほぼ確定的と見られていたものの、子会社社長が橋下知事の元後援会員で、立案段階から橋下氏関与が問題視された経緯もあり頓挫。ライバルの三井不動産(8801)に奪われ、複合レジャー・ショッピング施設が開発される予定に。政治的に振り回される形となった。


12年3月第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   1100
営業利益 −110
経常利益 −160
当期純益 −150

(※会社IRに諸々問い合わせてみたものの残念ながら一切返答が無いため、今回の予想には大きなブレが生じる可能性があります)

同社は最終四半期に売上が細る傾向があるため、第三四半期までの投資成果が勝負の分かれ目であるが、通期見通しでは前期比をわずかに上回る程度での着地か。OEC構想から外れたことで会社計画に狂いが生じ、大きな下方修正が行われる可能性がある。

なおダイドーリミテッドにエスシステムの株式を一部譲渡し、共同保有とすると発表したことで、仮に売却益3000万円を計上。ただ、今回の業績未達懸念から多少譲歩して早急にとりまとめた感も拭い去れない印象。


有利子負債は49.5億円で前期比1.4億円の増加。
現預金は2.1億円。
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は299%。
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は66.2%。

財務状況は悪い印象。

フリーキャッシュフローは1.5億円の赤字。
売掛金や棚卸し資産の増加などで営業キャッシュフローベースで赤字となっており、資金繰りはカツカツ。無論片方で同社の利益の源泉である投資の手を緩めるわけにもいかず、急速な改善は見込めそうにない。

ファイナンスに関しては余程大きく魅力的な投資案件が出てこない限り、目先3ヶ月程度は心配はなさそう。ただここ1年で9億円分の借り換えが必要になってくることから、決して余裕は無い。一定のリスクはある。


【株価推移】
06年の上場2日目に最高値を付けてから、株価はリーマンショックの影響もあって、08年10月には1/35の値まで急落。ただしその間も赤字転落とはならず、その後は分割なども追い風に戻り歩調。

特に直近では大阪W選に橋下氏が勝利したことで、今回のOEC構想に対する期待感が一段と高まり、また突然湧き起こった大阪銘柄ブームの地合にも乗って、破竹の勢いで上昇。わずか3ヶ月で4倍化し、07年5月以来の戻り高値を回復した。

ところが結果OEC構想から外されたことにより、アテが外れた格好で足下急落となっている。


【テクニカル】
直近の乱高下でテクニカル指標にはかなりのブレが見られる。比較的ダマシの少ないMACDは暗転しており、他のトレンド系シグナルであるパラボリック、新値足も暗転中。トレンドは下向きにあると言える。

一目均衡表では雲上限に支えられる形で下げ渋っているものの、来週からは雲が薄く切り上がっているところに突入→下抜けはほぼ避けられそうにない。遅行線も実線を下回っており、均衡表による抵抗力は間もなく切れる見込み。

ボリンジャーバンドでは+2σから−2σまでの調整を一気にこなしたことで下げ止まりも演出できたが、ここからまたバンドが拡がりを見せることで、下値の抵抗力は徐々になくなっていくものと思われる。

目先は14、15日に付けた安値35100円を割り込むことで、ダラダラとした下げ過程が続くと予想。一方下値には200日線や52週線、8/9安値と9/29安値を結んだ下値抵抗線、更に週足の一目均衡表では雲と遅行線の位置関係でそれぞれ33000円辺りに抵抗力があるので、その辺りでの下げ止まりも期待できる。

ただ上値は75日線などが上値抵抗線になり、また後述のような需給要因から反発力は弱いと見る。逆にもし何らかのきっかけで4万円を超えてくる場面があれば瞬間的に窓埋めとなる5万円タッチも十分考えられるものの、確率は低いと見るべきだろう。


【需給】
需給の状態は悪い。8月以降の上昇局面においてかなり好転していた需給が一変したため、上値は一気に重くなった印象。短期的には急落から全株一致で寄り付いた14日の寄り付き時点で2000株程度のしこりが出来ており、上値を重くしている。

信用買い残はだいぶ投げ売りが済んだものの、まだ1500株以上は残っているものと推察され、平常時500株程度の出来高ではなかなか買い転換も難しいだろう。株式的な「旬」も過ぎたことで、商いが次第に細ってくる形でジリ安の展開になっていくものと見られる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは19.3倍、PBRは1.3倍。
予想ROEは6.6%、営業利益率は20.0%。
同業他社はどういう状況だろうか。


ケネディクス(4321)
不動産ファンド運営主力。アセットマネジメント事業(不動産コンサルタント)及び不動産投資・賃貸事業から成る。オフィスビル投資に強み。上場不動産投資では国内トップで、売上は同社の12倍程度。

予想PERは13.4倍、PBRは0.4倍。
予想ROEは3.3%。
営業利益率は34.7%。
有利子負債比率は186%。

PER、PBRといったところでは同社に比べて割安。営業利益率も高く、財務状況もマシ。同社に比べて割安感のある印象。


いちごGHD(2337)
旧アセットマネージャーズHDでいちごトラストの傘下に。不動産ファンドの組成・運用を柱。上場不動産投資では国内2位。売上は同社の9倍規模。

予想PERは16.1倍、PBRは0.8倍。
予想ROEは5.0%。
営業利益率は6.1%。
有利子負債比率は192%。

ケネディクスよりは割高なものの、それでも同社に比べるとまだまだ割安な感じ。


ファンドCG(3266)
不動産投資が主力だが縮小傾向。他社との事業提携に積極的で、アジアでの投資事業にも注力。継続疑義注記あり。

今期赤字見通しで、PBRは2.5倍。
予想ROEは−2.0%。
有利子負債比率は474%。

同業他社の中では最も業績・財務状況共に悪い。そのため株価も低位安定を続けており、50円割れも時間の問題か。


同業他社との比較の中では東証1部銘柄に比べて割高に買われている印象。特に直前までOEC構想に対する期待感でかなり買われていたこともあり、割高感が未だ強い上に、業績見通しが引き下げられることになれば一段と割高感が強くなる恐れもある。

ちなみに配当に関しては各社共に無配であり、現在の不動産投資業の環境の悪さを如実に物語っている。



【課題】
まずは財務面に安定性を持たせることが先決。不動産業界は事業環境が悪く、銀行の融資も受け辛い環境にある。一方で業界大手のケネディクスなどでも有利子負債比率は高いが、営業利益率は高く、安定感がある。

対して同社は規模が小さいため、財務面で劣る部分があるのは当然として、一段と賃料収入などの比率を高め、投資案件を慎重に選別すべきである。事業の安定性を外に示せなければ、融資には一段高い金利コストが必要となってくるであろう。

株式市場から退出を迫られる同業他社が多い中で、同社はここまで比較的安定的な利益を計上してきた。業績を伸ばす力は認められるので、あとはリスク管理を適切に行うことで投資成功事例を増やし、金融機関の信頼を積み上げていくことが必要だろう。

今回のエスシステム社への投資のように、直接不動産には関係の無い分野に手を広げていく方向が今は理解が得られやすいのではないか。エス社を通じて提携先に拡がりが持てたことも、新たな展開への道筋が開けてきた。

同時に水面下では海外展開への布石などは打っておきたい。提携した台湾のRUENTEXなどを足がかりにして、現在の円高・世界的な割安感からアジアで有望な投資案件などを見付けていきたい。海外での成功事例を作れば、展開力を一気に加速できるものと思われる。

最後に筆者としては投げかけたIRの質問に対して、応答が無いという同社の姿勢にも難があると感じる。同社は投資を生業としている以上、不透明でブレの大きい要素も強いために、株主に対して一段の開示義務を負うべきである。

都合の悪い情報も適宜開示すべきだろう。秘匿情報は仕方ないとして、せめて「精査中であり答えられない」くらいの返答も得られなかったのが非常に残念である。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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