ダルマじょうしょうダルマ〜未来に繋げる株式投資〜

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福田組(1899)

 

3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  現在
3ヶ月以内株価予想 320円〜500円

要点

・業績は他の建設業と並んで見通しは悪い。復興需要も期待ほどは業績に影響しない公算。
・理論株価、同業他社との比較でも同社は割高の印象。ただし、これらは同社株を見る上でほとんど市場では考慮されておらず、今後も無視される公算が高い。
・テクニカル的には長期上昇トレンドの最中。需給面では好需給が続いており、上値追いの動きが継続していく公算が強いような印象。下押しも限定的か。特定筋の介入説に関しては否定的。
・国内需要を伸ばすのは限界。海外展開を仕掛けるにも、まずは専門性を持って同社のウリとする必要がある。


【企業概要】
新潟を地盤にして、地元では最大規模のゼネコン。全国の主要都市に展開。大株主には民主党小沢元代表の夫人も名を連ねる。

【キーワード】
震災、小沢一郎


【業績】
前期は減収減益。景気の先行き不透明感に対する民間設備投資の落ち込みや官公庁の公共事業が減少という、建設業共通の悩みから業績は悪化。ただし最終利益は構造改革費用などを積んで赤字となった前年から黒字転換を果たす。

今期も減収減益の見通し。引き続き国内景気の落ち込みにより建設需要の減少が響き、受注残高も減少。12日に更に今期見通しの下方修正を発表し、赤字転落の見通しとなった。中間期実績も各利益共に赤字を計上。引当金なども積み増しに迫られ、出口が見えてこない。

実際の業績の中身を見ても、売上に対する原価率が前期より一段と大きくなっており、売上規模の縮小は更なる利益率悪化の悪循環から抜け出せそうにない。特に主力の工事事業の粗利は6.3%と前期の8.8%から大きく悪化。

復興需要も株式市場で期待されるほど、同社の業績を押し上げるものにはなっていない。いや、むしろこれからだという声もあるが、裏付けは乏しい。事実、07年の中越沖地震の際も地元業者でありながら売上の伸びは2%に止まっている。何もなければ減少していたことであろうことを考えても、差し引きで7%程度の改善効果であり、市場で株価が大きく跳ね上がる分の説得力はない。

むしろ震災による一段の景気の冷え込みから、マイナス寄与の分が大きくなっている。いずれにせよ復興需要の増加分は来期以降の利益になることから、今期業績の大逆転は見込み辛い。


11年12月第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   70000
営業利益 −800
経常利益 −800
当期純益 −1400


最終四半期に多少季節的な要因があり、売上はそこである程度嵩上げされるものの、それでも営業赤字転落は避けられそうにない印象。

有利子負債は273.6億円で前期比53.5億円減少。現預金は205.1億円で有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は107%。準ゼネコンクラスでは高め。流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は98.6%と財務状況はやや悪い感じ。それでも有利子負債は順調に減少しており、改善傾向は顕著。

フリーキャッシュフローは137.7億円の黒字。ただし売掛債権の回収に対して買掛債務の増加などを主因に急激に大きくなっているだけであり、数字ほど内情が良いわけではない。数字上はファイナンスがあってもおかしくはないが、過去20年以上行われていない現状を考えると、早急に行われるような心配はない印象。


【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額−現預金+有利子負債)は239.9億円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は12億円であり、結果EV/EBITDA倍率は20.0倍となる。中堅ゼネコン規模の同業他社の平均値がおよそ7.7倍と見立てられるが、それらを元に計算した理論株価は55円となり、現状の株価は事業価値分析上は割高と捉えられる。


【株価推移】
建設業界はどこも90年のバブル以降は右肩下がりが続く。リーマンショック後の09年3月に上場来安値を付けるまで、長期的な下落トレンドは継続していた見られる。

04年10月に新潟中越地震が発生すると、株式市場は復興需要に対する期待から地元の建設会社をねらい打ち。同社と植木組(1867)が共に買われて仕手化すると、その後も07年7月に再び新潟を地震が襲った際に反応。すっかり「災害銘柄」という評価が定着した。

また10年8月には民主党の代表選に絡んで「小沢銘柄」として買われると仕手化。ほとんど業績よりも話題性が動力源である。

そのような経緯から当然今回の大震災でも復興関連銘柄として前面に取り上げられ、復興需要が話題に上るたびに買われている。足下は復興需要と代表選のミックスであり、今までにない強い買いエネルギーが同社株を押し上げている。


【テクニカル】
長期的なトレンドを月足で確認すると、09年に上場来安値を付けてから相場の戻りに応じて緩やかな上昇を演じてきたが、10年9月の代表選を契機とした大盛り上がりで大幅な株主の入れ替え(同月だけで発行済株式総数の倍の商いをこなしている)が行われたため、長期トレンドが転換したと見て取れる。

その後今年3月の震災で上値をブレイク。丁度代表選から半年の信用期日を経過したことも、この銘柄にとっては追い風となった。現在はやはり長期上昇トレンドの途上にあると言える。

17日に大成建設(1801)をはじめとする大手ゼネコン株がJPモルガンによる投資判断引き上げを受けて堅調に推移し、それを背景に建設株が軒並み高となると6/2、8/1の戻り高値を上回ってきた。それによって7月中旬以降の持ち合い水準からの上放れが鮮明化すると次第に上値追いの動きが強まる流れに。

MACDやDMI、パラボリックといったトレンドを見る指標は全て上昇継続を示唆しており、新値足は細かく12本連続陽線の流れ。ストキャスも高値で好転。その裏側では過熱感も当然出ており、ボリンジャーバンドは+2σに達したものの上昇が続いている。

この銘柄の特性上、身も蓋もない言い方をしてしまえばテクニカル的な見解はあまり役に立たないように思われる。少なくとも過熱感を見る指標はあまりアテにはならないのではないか。むしろその過熱が更なる株価押し上げ要因に働いている面がある。

市場では株価の上昇は代表選まで、つまり来週以降は出尽くしと見る筋が多く、金曜は高値で陰線を付けた。ただ一旦下押す場面があったとしても上昇トレンドは継続しそう。

為替が円安反転した場合に外需銘柄に注目が移ると相対的に内需銘柄が弱くなる懸念は残るが、既に業績の下方修正が出てしまったこと、また下記のように需給面の良さに因る部分が下げ幅も限定的にするものと見られる。


【需給】
上述のように長期的にも上昇トレンドの途上にあるといえ、需給は大きく改善されているため、下値切り上げ型の上昇継続が見込まれる。8/9に世界的な株価の暴落があっても75日線で踏みとどまれたこと、その後12日の下方修正を受けても寄安後に切り返してきたことがその証左である。

先週は新政権下での復興加速観測が持ち上がると、準大手ゼネコンが活気付く展開。それに民主党代表選が近づいて「小沢関連銘柄」の一面が加わり、より商いも膨らんできている。

信用倍率は売り買い共に厚みを増してきた結果1倍台で安定しており、6月以降改善傾向が続いている。一方日証金の方は7月中旬以降1倍割れの状態が継続しており、逆日歩も付く状況。この辺りは昨年9月の代表選時と酷似しており、以後の値動きの参考にできるものと考えられる。

加えて足下では特定筋の介入が噂されており、それが出来高を大きく膨らませているものと言われている。ただ個人的には小粒の買い主体の集合体であり、本尊などと言われるような中核筋は無いのではないかと見る。株価の上昇がそれをもっともらしく聞こえさせているだけではないか。

その場合、特定筋介入の場合と比べると株価の振幅は小さくなる。そしてトレンドも継続しやすい傾向にある。


【同業他社比較】
同社の予想PBRは0.7倍。配当利回りは0.8%となっている。同業他社はどういう状況だろうか。


植木組(1867)
新潟地盤の中堅建設。同社と同じく震災時に連想買いされる銘柄として、歩調を合わせる。
予想PBRは0.4倍。配当利回りは2.1%。有利子負債比率は38.0%。
それぞれの数字を見ると、同社に比べて割安な印象。


高松CG(1762)
関西基盤の中堅ゼネコン。傘下に青木あすなろ建設(1865)とみらい建設。
予想PBRは0.6倍。配当利回りは1.9%。有利子負債比率は2.5%。
負債が小さく、財務体質は良好。同社に比べて割安な印象。


銭高組(1811)
関西地盤の中堅ゼネコン。売上規模は同社とほぼ同水準。
予想PBRは0.3倍。無配。有利子負債比率は154%。
負債比率は高めだが、現預金は多く保有しており資金繰りには問題がなさそう。同社に比べて割安感。


奥村組(1833)
関西の中堅ゼネコン。売上規模は同社の1.5倍規模。
予想PBRは0.5倍。配当利回りは3.1%。有利子負債比率は11.9%。
それぞれの数字は同社に比べて良い印象。特に配当利回りは高め。


同業他社と比較すると、株価には割高感が残る。やはり足下の株価がイベントにより嵩上げされている結果である。


【課題】
まず建設業界の現状打開が最優先課題である。官民共に国内建設需要が着実に減少していく中で、新たな需要取り込みが必要である。国内に山ほどある建設業者の中でパイを奪い合っていくのは限界があり、奪い合うにしても規模の大きなところにシェアを奪われてしまうのがオチである。

海外進出は視野に入れなければいけない課題にあるとしても、同社特有の技術や強みがないと海外に進出しても地元業者とのバッティングで勝てないだろう。従って、山間地域で培われたトンネル掘削技術に特化して強化するなどの専門性を持ち合わせ、海外進出の下地を作らないといけないのではないか。

また、地方建設株は地銀との繋がりが強いが、強い地銀がパートナーかどうかも重要なポイント。同社の大株主でもある第四銀行(8324)は地銀の中では強い方であり、業績も緩やかに改善傾向。安定感があり、当面は問題なさそうである。

こういった有力地銀主導での業界再編の動きにも期待したい。地方の有力建設会社との合併を見込む場合、やはり貸手の金融機関の音頭は大きいものになってくる。銀行のバックアップ次第で海外展開の成否も変わってくるため、もし現行の支援体制に弱さを感じるのであれば、メインバンクの変更も重要な経営判断と言えよう。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

 

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