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長谷工コーポレーション(1808)

 

12年3月4日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  3月の優先株強制償還実施後、もしくは終値ベースで63円以上になったところから少しずつ打診買い。
3ヶ月以内株価予想 55円〜75円


要点

・今期業績は未達懸念。来期も大幅な増収増益は見込み辛い。ただ足下マンション市況に底打ち感が出ていること、同社の最大の懸念材料である資本政策に出口を示し始めたことが期待材料。
・株価は65円・75円が壁として意識されるが、一方でその間は価格帯出来高が薄い地帯。
・需給は重いが、過剰流動性相場の発展期待で解消できる可能性も。
・マンションに偏り過ぎている事業リスクを分散するような方策を示していくべき。


【企業概要】
準大手ゼネコン。都市部のマンション建設では首位。


【業績】
前期は増収増益。住宅版エコポイントや贈与税の非課税枠拡大、また住宅ローン金利の低下などから住宅購入需要が回復した事が背景。

今期は増収減益を見込む。第三四半期時点でも増収減益であり、大型の案件が無かったことで前期比利益率が低下。またリーマンショック後に受注した低採算の工事増加が響いている。粗利益率は9.9%と、前年同期比で2%程度低下。

受注高は今期2800億円の見込みと、前期比を上ぶれる予定。第三四半期時点で前年同期比を上回っており、達成は十分可能と思われる。足元ではマンションのリフォームと高齢者住宅に注力している。


12年3月期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   501500
営業利益 21300
経常利益 16300
当期純益 7000


売上に関しては例年見通しは楽観的であり、今年も第三四半期までの進捗率が例年並みであることからも、未達の公算が高そう。利益面などでも会社計画を下回ってくるものと思われ、震災以後のマンション市況底打ちは、来期業績以降に発現してくると思われる。

来期以降の4カ年計画では管理・リフォームを中心とするサービス事業の割合を増やすことを掲げ、将来的には利益の1/3を同事業で稼ぎ出す目算(現状は15%弱程度)。そして16年3月期に経常利益300億を目指すとのこと(同40億程度)。

同時に優先株の期間前償還、早期復配実施を目標としている。その第一歩として、3月に優先株の一部1000万株を強制償還する予定。


有利子負債は2155.5億円で前期から44.9億円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は212.4%
現預金は951億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は158.3%

有利子負債比率は建設業界の中では平均的な水準。流動比率はそれなりにあり、財務体質はやや悪いという程度。

フリーキャッシュフローは186.6億円の黒字

売掛金の増加額を抑えられたことや貸倒引当金の減少幅が小さくなったことなどにより、営業キャッシュフローが改善。資金繰りに関しては問題無さそう。

ファイナンスに関しては優先株の償却を計画している程であるため、当面は行わないと見るのが当然であろう。


【第三四半期決算を受けてのアナリストの評価】

大和証券CM 投資判断「アウトパフォーム」 半年間の目標株価70円
優先株の希薄化リスク払拭を好感。

JPモルガン 投資判断「Overweight」 目標株価80円
マンション市況の回復や、優先株の買い戻しがそれ程困難ではないとわかったこと自体がポジティブ。

決算の内容そのものよりも、今回の4ヶ年計画で示された優先株の買い戻しによる資本政策を評価する声が大きい。


【株価推移】
過去最高益を更新した07年2月をピークに、その後2年で株価は498円→29円までほぼ一本調子で下落。経営不安説も囁かれる状態となったが、10年3月期以降の業績回復を反映して、落ち着きを取り戻す流れに。

足元は首都圏における不動産市況の改善を受けて建設業界にも明るさが見られるものの、継続力に関しては疑問符がちらつく。


【テクニカル】
欧州危機を通過して、株価は50円を挟んだ値動きで推移していたものの、地合の好転から徐々に上放れの動きに。各移動平均線を上抜けていることからも、下値は固い展開が続くものと期待できる。

緩やかな上昇から2月10日の急騰(4ヶ年計画の発表を好感)へと続き、本来はそのまま上放れの流れに移行するものと思われた。ところが昨年7月の戻り高値に上値を抑えられ、ほぼ急騰前の水準でのもみ合いへと戻っている。

結果、66円が一つの大きな壁となっているが、ここを上抜ければ昨年震災直後に75円からわずか3日で65円まで急落した水準。従って価格帯出来高が薄く、75円までの上昇は早いものと思われる。

一方週足で見た場合でも目先雲上限があり、更に遅行線も雲下限に達するのが65円であるから、まずはここを明確に上抜ける必要がある。その後、遅行線が雲上限に達するのがやはり75円程度であるから、65円・75円がそれぞれ壁として意識されるラインである。

現トレンドが継続している限り66円の突破は時間の問題とも思われるが、後述のように需給が悪いため、地合に支えられるだけでは時間がかかりそう。業績の上方修正などは上述のように期待し辛いため、次のイベント的な上放れのきっかけがあるとすれば、優先株償還実施の発表となりそう。その辺りから買い向かう方が、投資効率が良さそうだ。

従って、日足の終値ベースで高値を付ける63円を付けた頃から打診買い、その後66円の突破を明確に確認してから75円まで強気で攻める、という戦略が一番効果的に思われる。また実際に3月の優先株償還が確認されることで強含む動きが見られれば、そのタイミングで乗ることも可能である。


【需給】
まず短期的には2月10日の急騰場面で長い上ヒゲを形成し、その時に出来高を大きく増やしてしまったため、その分のしこりが上値を抑えている恰好に。

また、信用買い残も12月から相場の上昇にもかかわらず増えており、やはり上値を重くする一因に。差し引き6370万株の買い残は1000万株程度の日々の出来高では重荷である。

実際に10年4月の高値形成以後は絶えず3000万株以上の買い残が残っており、それが長期下落トレンドを簡単には転換させてくれない。この買い残の重石は先日までその多さが話題になったメガバンク株よりも比重が大きい。

ただ、足下は過剰流動性相場への発展期待感があり、事実メガバンク株は既に上放れの動きが出ている。復興特需を受ける建設株以外は全体的に出遅れ感が強く、ここからの買い妙味も期待できる業種ではある。

加えて毎年日経225入替に関して、採用候補として同社の名前が浮かんでくる。優先株解消の道筋が付けば、あるいは10月に合併で消える住金(5405)の代替候補として、先々注目を集める期待もできる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは10.2倍。PBRは1.6倍
今期予想営業利益率は4.4%、予想ROEは8.9%
配当は無配
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


大和ハウス工業(1925)
戸建て住宅大手。売上に占めるマンションの割合は1割に満たない程度であるが、リフォームなども規模が大きい分、同社と競合する部分が大きい。

予想PERは21.1倍、PBRは0.9倍
今期予想営業利益率は6.1%、予想ROEは4.6%
有利子負債比率は58.9%
予想配当利回りは2.4%

この中で最も時価総額が大きい超大型株。その分PERでは割高となっているが、PBR面で見た場合や財務体質の健全性などでは割安。利益率も高く、配当を出している点も強み。


三井住友建設(1821)
三井グループ。マンション建築は売上の3割程度と見られる。

予想PERは12.2倍、優先株の資本に占める割合が大きいため、一株当たりの純資産はマイナス
今期予想営業利益率は1.6%、予想ROEは8.6%
有利子負債比率は203%
配当は無配

株式価値や利益率など、ほとんどの指標で同社より割高。大和証券G(8601)系ファンドや、三井住友グループがバックについていることが強み。


大末建設(1814)
関西地盤でマンション建築メインだが、規模は同社の1/10程度。

今期は赤字見通しで、PBRは1.4倍
今期予想営業利益率は0.3%
有利子負債比率は338%
配当は無配

規模は小さいものの、事業構成の割合は同社に近い。ただ小さい分負債比率が大きく、株式価値や利益率などで比較しても、同社に比べて割高な印象。


鹿島建設(1812)
大手ゼネコン。大手の中では民間住宅建築も多い方だが、売上に占めるマンション建築の割合は1割にも満たないため参考。国内の公共工事が減る中で、海外に活路を見出せるのが大手の強み。

予想PERは29.4倍、PBRは1.0倍
今期予想営業利益率は2.1%、予想ROEは3.8%
有利子負債比率は242%
予想配当利回りは2.4%

各指標的には同社に比べて割高な印象も、やはり大型株で有配当銘柄なだけに買い安心感がある。


他社との比較では、同社の水準は概ね妥当かやや割安な印象。同社はマンション事業の比率が大きいため、民間のマンション購入意欲が高まるかどうかに業績を大きく左右される。



【課題】
事業環境は厳しい状態を認識せざるを得ない。民間の住宅は日本の人口構造などを考慮しても2015年にもピークアウトするという試算もあり、新規物件の受注は次第に難しくなっていくものと見る。既に住宅版エコポイント等による需要の先取り効果を享受した以上、国内景気・雇用の先行きが不透明な中で更なる需要は膨らみそうにない。

同社の受注高に占めるマンションの割合は9割に達し、その余波をモロに受けてしまう。それを回避するために、4ヶ年計画で見るように管理・リフォームを中心としたサービス事業に注力していくのも必要であるが、マンション以外の建設も手がけていくことで、事業リスクの分散を図りたい。

例えば高齢者住宅のノウハウを持つ企業との提携で、需要のある新分野を拡げていってはどうか。もしくは海外に活路を見出したいところではあるが、マンションという構造物は需要が都市部に限られるため、競争も激しい。日本の狭い土地を有効に活用するノウハウ、耐震技術など、同社の強みをアピールしていくことが必要だ。

利益率に関してはより高める余地がある。受注拡大を焦ることなく、採算性の良い案件を選別していくことも必要であろう。前期並の粗利10%は最低ラインである。

株式面においては何としてでも復配に目処を付けたい。配当が出せるようになって初めて株価100円超えも現実味を帯びてくるであろう。そのためには4ヶ年計画を着実にこなして、実績を投資家にきちんと示していく必要がある。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。

 

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