2月24日から3月4日まで高岡市美術館で行われる「松原秀典原画展」に行ってきました「エヴァンゲリオン」の原画や「ああっ女神さまっ」「サクラ大戦」などのキャラクターデザインを担当されている氏の、地元凱旋の展覧会でした。
氏の母校である高岡工芸高校の隣の美術館で行われ、初日から3日間は氏のトークショー(解説)があるとのこと。実は私はそれぞれの作品をあまりよく知らないのですが、自分が全く持ち合わせていない感性を持っているプロの話で、何らか良い刺激があるのではないかと思って行きました。私なんて絵がド下手で、美術の成績も5段階中お情けの2だったので
平日の方が空いているだろうと思い、午後の部に行ってみました。すると入り口付近ではコスプレ姉ちゃんがグッズ販売していましたここでグッズを買うと、後で氏のサインをもらえるのだとのこと
中に入ると既に結構な人が集まっており、皆思い思いに作品を鑑賞していました男の方が多いのかな、と思ったら、実際には女性の方がわずかに多かったような印象です。授業が終わった高校生から20代くらいの若者やら。
私のような四捨五入したら40になるおっさんは最年長かなー・・・と思っていたら、上は70近いじいちゃんばあちゃんも物見遊山で来ていました何となく富山らしい風景でもあります
美術館の中には、およそ今までこの美術館史上飾られたことがないであろうアニメの原画がズラリと並んでいました。中にはやや際どい感じの絵もあり、個人的にはちょっと気恥ずかしさを感じつつ、一通り眺めていましたしかしこういうサブカル的な文化が今や日本が誇る強力な芸術であり産業でもあります。美術館に並ぶのも今では頷ける話でしょう。
アニメ作成の工程などはあまり詳しくは知らないのですが、最初に四方から見たキャラクターの線画を作成し、そのキャラクターのマスターを作ってしまうようです
例えば「ああっ女神さま」は漫画が既に藤島康介氏によって描かれているわけですが、それをアニメにするにはそのまま漫画をダイレクトにアニメ化するわけではなく、間に松原氏のような原画制作を挟んで、それで漫画では描かれない「動いた場合のキャラクターのディティール」が決められるようです。ふんふん、なるほどー
アニメ制作の流れに関しては、詳しくはこちらを参照
http://www.depth-of-field.jp/main/vol006/focus/03_page02.php
それで美術館の構成としては、氏の原画と、それが実際のアニメになったら、というような形で並べて展示してありました。その他、氏が着色まで手がけたイラストがズラリ。
その原画には色々一言メモみたいなことが書いてありました。例えば「水に濡れているから髪の毛が張り付く」とか「服のシワが多い方がやさぐれた感じが出る」とか。へー、ほー、なるほどー、と思いながら見ていました
中には「もっとアホっぽくした方が良い?」とか「露出は多くエロイ感じ」とか書いてあったりおいおい、こんなのを美術館に並べて大丈夫なんか?と思いましたが、そこにいつものようにキュレーターの方が居るのに何か違和感を感じて、個人的には面白かったです
そんな事を考えていると、松原氏が登場される段になり、拍手の中で氏が迎え入れられました。なんだかんだで、いつの間にやら100人以上の人が集まってきていました。
氏は私より丁度10歳年上の46歳とのことですが、見た目はもっと若く感じましたクリエイターらしくそんなにベラベラとしゃべるような感じでも無いのですが、淀みなく流暢に話されていました。
そして一つ一つの作品について解説。その都度100人以上の観客がぞろぞろと連なって動きます作品の前で氏が女性の司会者から質問を受けるような感じで進められていました。
個人的に一番印象に残ったのは「絵が上手くなるコツなどはあるんですか?」という質問に対して「コツがあるなら教えて欲しい。25年以上この仕事をやっていて、その間絵を描かなかった日は合計一ヶ月程度しかないくらい書き続けているが、未だに絵を描くスピードが上がるわけでもなく、25年前と比べて上手くなったという実感も無い。むしろ25年前の方が上手いんじゃないかとすら思う」とおっしゃられていた事。
それを聞いて「やっぱりプロは現状に満足しないし、言うことに重みがあるなー」と感じていました。その他「実は公務員になりたかった」「しかしやりたいことをやらずに後悔するのは嫌だった」など、ファンからの質問に関しては終始笑顔を交えながら回答されていました
帰りにはサイン会ということで、100人中90人くらいのファンがズラリと行列を作って順番待ちものすごい人気です私は少数派で、トークショーも終わったので帰ろう、と思ったら、誰も帰る人がいなくてちょっととまどいました
南無三で出口の方に向かうと、並んでいるファンからの視線が「えっ、こいつ帰るの?」的な感じで、非常に痛く感じましたが、男らしく(?)後ろは振り返らずに出てきました私が出ると、最年長のおじいちゃんも後からついて出てきました
とにもかくにも、なかなか富山では有名人やらその道のプロフェッショナルの話を聞く機会が無いものですから、良い刺激になりました。また何かこういう機会があれば参加してみたいと思います
ちなみに高岡市美術館の前に「まじま」という駄菓子屋があり、そこでは十段ソフトという10回とぐろを巻いた巨大なソフトが150円という低価格で売られていますが、夏場はいつも行列が出来ています。折角ここまできたので、寒いけれど食べて帰ろう・・・と思ったら「今の時期やってません」と言われました。当然ですね(完)