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高齢者にも優しい社会作りとは

 

今まで約3年近く老人ホームに入っていた父が「そろそろホームから出てくれないか」と言われました。病院を退院後ずっとお世話になっていたのですが「遂に来るべき時が来てしまった」という感じで、私と母は少なからずショックを受けました。と言うのも、脳の手術をしてからリハビリを続けている父はまだまだ一人でトイレにも行けないし、介護度が3の容態なので、父にしてみれば家に帰れるのは良いけれど、家族にしてみれば負担が尋常ではありません。

この辺りなかなか難しい問題ですが、現実的には結局年老いた私の母一人が全て父の世話をすることになります。老人ホームの側にも入居希望者が多く、その中で3年も置いてもらえてたのは異例中の異例でした。毎日母が世話をしに行って、少しでも職員さんの負担をかけないようにしていたから向こうも配慮してくれていたのだとは思うのですが、それでもこちらのワガママを言えばせめて父が一人でトイレに行けるようになるまでは置いて欲しかったのです。

本当に少しずつですが父は回復しています。手術後は完全な寝たきりだったのにベッドで身体を動かせるようになり、身体を起こせるようになり、歩行器を使って立ち上がれるようになり、何とか歩けるようにまでなりました。ただ介助は必要で、身体の調子が悪い時はなかなか立ち上がる事もできません。それでもここまで来るのに3年かかりました。

正直この先リハビリを続けてもこれ以上回復するかどうかはわかりません。それでも家族はそれを信じないとやっていけないというか、父も何を楽しみに生きているのかわからなくなってくるでしょう。

そんなわけで急遽翌月には退去して欲しいと言われ、私と母との緊急家族会議が始まりました。まず父が出てくるのであれば、少なくとも家をバリアフリー化しなければなりません。しかし今の実家は正直古く、築何十年も経っているものですから、このまま直すのもどうかという話になりました。

というのは今私が住んでいる家は伯母さんの借り家なのですが、もう一件前の家も伯母さん所有で今は空き家になっているのです。そこは大きくて比較的新しい家です。ですから、いっそそこを借りて改装させてもらってはどうか、という話が出ました。であれば家も隣同士になり、何かあった時に私が行き易いです。また家全体も少し大きいですから、廊下なども広くバリアフリーにも適しています。

いきなりふって湧いた父の帰宅に我々は悩み、一つの大きな決断を迫られる事になったのでした。

 

個人的には母が新しく家を借りてくれた方がうちからも近くなるし何かと安心です。もういっそ今の家を売るなり壊すなりしたらどうか、と。しかも伯母さんの家は父が子供の頃を過ごした生家であるし、隣が大きな公園になっているから老後の養生という観点からも良い。伯母さんも空き家を持て余しているようだし、皆にとって都合が良いのではないか、と。姉もその方が良いと賛成していました。

それで色々考えたのですが、新しく家を借りるとなるとやっぱり毎月家賃を払わないといけないし、そもそも今の家を売りに出したところで売れるような感じもありません。そして何より母は「今の地域に友達がいっぱいいるから、引っ越したくない」とのことでした。年をとってからの環境の変化は大変で、ボケのきっかけにもなる。そう言われると何とも言えず、結局今の家をそのままバリアフリー化する事になりました。

ただ父が出てくる日も近いので、早急に工事にかからないといけません。母は早速知り合いに勧められた大工さんに頼んで、工事の見積もりを取りました。まず玄関の段差をなくして坂にする、玄関や廊下に手すりをつける、廊下の段差を無くしてすべらないような材質に変える、トイレの壁を壊して広げて車イスでも入れるようにする・・・

合計100万円也。やっぱり結構かかります。最早うちの両親の収入は年金だけで、貯金も父の保険が下りてきた分の取り崩し。しかも死亡保険の先払い的な感じでしたから、実質これから先の収入はほとんど見込めません。苦しい台所事情の中で、お金が出ていく話ばっかり。私も事業が軌道に乗るまでは正直お金を出す余裕もありません。

一応バリアフリーの助成金が20万円介護保険から出ます。ただ利用者負担が1割という事で、差し引き18万円の助成になります。そして詳しく調べると別枠で地方自治体からも助成金が出るとのことでした。こちらは地方によって色々と条件も違うのですが、年金のみでほとんど収入の無いうちの両親のような世帯には、富山の場合は改修費用の実質負担分の2/3が助成されるということでした。これは有り難い。

双方共に事前申請が必要ということで、必要書類を書き込んで写真などを貼付したりし、大工さんやケアマネージャーの助けを借りて申請を出しました。というわけで、何とか半分程度の負担で済むということで、それならと早速工事にかかるのでした。

 

ところで今回身に染みて感じたことは情報力って大事だなということです。というのも、今回助成金が受けられるというのは介護保険の18万円の話までは知っていましたが、それを申請した後に念のためネットで色々調べて初めて地方自治体にもあるという事がわかりました。しかも事前申請が必要だということですから、工事が始まってから気付いていたら遅かったです(ちなみに何故事前申請が必要かというと、工事前と工事後の状態を申請しないといけないからです)。

この気付くか気付かないかの差で今回の場合40万円違ってきたのです。正直私はネットとかで調べる力があるのでギリギリ気付いたから良かったのですが、老人二人で生活しているようなケースではまず調べようがないでしょう。同じような境遇の人が身近に居たのなら教えてもらえるかも知れませんが、普通わかりません。

今回申請した市の職員さんに聞いてみたところ、この2/3の助成については年に10数件の申請があるという事でした。しかし正直こんな老人ばかりの世帯が増えている昨今で10数件って少ないと思いません?確かに条件が細かく色々あって、該当世帯が少ないというのもあるでしょう。しかし多分こういう制度があることも知らずにスルーしているところが大部分だと思います。

特に今回の18万円の助成と2/3の助成は両方同じ市に出すものでも担当が別々だという事で、別々に申請しなければなりません。担当の人が余程気の利く人でない限り「こういうのもありますけど申請しましたか?」とは言わないそうです。事実私たちの場合も18万の申請時点ではスルーされましたし。実際にこの辺りはあまり私こういう表現は使いたくないのですがやはり縦割り行政のお役所仕事だなーと思います。

しかも申請書に添付する住民票とか非課税証明書とか、諸々発行手数料が取られて1000円近くかかるのです。この辺りもあなたのところがやっている制度を利用するのに、一々一つずつ手続して、利用料まで取られるのってどーなの?とも思ったりしました。

 

それで職員さんに「こういう制度ってどうやって皆気付いているんですか?」と伺ったところ「普通は施設のケアマネージャーさんが代理で全てやってくれる。あなたのように直接来られる人は珍しい」と言われました。そりゃ制度の存在自体知らなかったら普通直接来ないでしょう。

そして不幸な事にうちの父の施設のケアマネージャーさんはそこまで教えてくれませんでした。それはこの制度について知らなかったか、もしくは知っていても条件が各世帯毎によって違うから該当しないと思ったのか。結果、私が気付かなかったら大損していました。

私は「他にも何か高齢者支援制度があるんじゃないですか?」と聞いてみましたら、やっぱり色々ありました。例えば介護度が高い高齢者のみの世帯には年間数万円の補助が出たり、紙おむつ代が月に数千円分支給されたり。これらも全てケアマネージャーさんも教えてくれませんでした。私は怪我の功名とばかりに色々申請書を貰いました。

今回の一件を通じてもやっぱり自分の身は自分で守る時代だなーとつくづく感じました。そしてそれには間違いなく情報力が必要です。一般的に弱者は情報力が無く、そして情報力が無ければ弱者はいつまでたっても弱者のまま。情報格差は経済格差に繋がります。

 

ですから私は「こういう制度についてもっと周知しないといけない。私だって見落としかけたのに、普通高齢者の人達は気付かないでしょ?せめてこっちの申請をしたらこういう制度もありますけどこちらの申請はお済みですか?くらいは言って欲しい。この件は市の広報にも強く言っておいて欲しい」とやや感情的に訴えました。

一応フォローしておくと対応してくれた市の職員さんは非常に優しい感じの方で、そんな私の抗議にも「おっしゃる通りです」と平身低頭で応じていただきました。個々の職員さんはしっかりやっていると思いますが、組織としての努力が足りないのでしょうね。私は公務員の削減とか過度な税金の無駄遣い削減は別に必要無いとか思っています。むしろこれからの更なる高齢独居社会に向けて行政サービスの充実こそに重点を置くべきだと思います。

 

そんな役所への事前申請も無事終わり、いよいよ実家のバリアフリー工事開始となりました。工事自体は一週間程度で終了し、家の中の様子はガラリと変わりました何より段差が無くなった事で、父のみならず、我々自身も少し家の中の感覚が変わりました。

というのも、例えば今まで部屋から廊下に出る時は少しだけ段差があったのですが、何十年も住んでいたわけですから、身体が無意識にその段差に対応していたのです。なのでその微妙な段差が無くなった事に対して足がまだ対応しておらず「おっと」というような感じで、健常者の我々が逆につまづくような違和感を感じます。このわずかな変化が、足の不自由な父にとってみれば大きな障害だったという事に今更ながら気付かされました。

他にもスライド式の部屋の戸のレールを車イスでも通れるように出っ張りの小さなものに変えたり、トイレに手すりが付いて父が自分である程度身体を支えられるようになったり。細かいところではトイレットペーパーの位置を高くして、父が屈まなくても取れるようになったりしました。ただ結局まだ父は自分ではお尻を拭く事ができないんですけど。

玄関にも手すりが付きました。これで父が自分で家に上がれるようになります。ただ今回一つトラブルがありまして、最初に付けてもらった手すりと、父が実際に使い易い手すりのイメージとが異なっている、とケアマネージャーからの指摘がありまして、結局一旦全て外して別の形で付け直す事になったのです追加で5万円かかりました。これらは当初の見積もりと異なるという事で助成金の対象とはなりません

正直大工さんもあまりバリアフリー工事に関しては経験がなかったようで、その辺りの機微がわからなかったようなのです。またケアマネージャーさんも事前に細かく大工さんに伝えてくれれば良かったのに、この辺り連携不足でした。やっぱり注意すべきでした

なのでもしこれからバリアフリー工事を考えているという方は、HPなどでバリアフリー工事に詳しい業者さんを調べて、そういった方にお願いすると良いと思います。更に同じ市の地元の業者さんがベストだと思います。

例えば前回まで話した助成金についても、そういう専門の業者の方がアドバイスをくれます。同じ地域の業者さんであれば、そういう地域の助成金などについても詳しいですから。そもそも今回私が自分で助成金の事についてネットで調べた際にも、一番最初にヒットしたのが地元の業者さんでした。

今回お願いした大工さんは良い人でしたけど、やっぱりその後工事のやり直しになった事は色々と手間暇のかかる出来事でした。母は急いでいた事もあって簡単に業者さんを選んでしまったのですが、もう少し事前に調べて対応していれば、もっと話がスムーズだったと思います。繰り返し情報力が重要だと痛感しました

そして急ピッチで終了した工事が終わり、父が遂に正式に家に戻ってきました。実に3年ぶりのことでした。ネットで立ち上がり補助のバネが付いたイスも購入し、少しでも父に自分で動いてもらって母一人でも介助できるようになったはずです。

しかし現状はなかなか大変で。結局世話したがりの母は父にあまり自分で何でもさせようとはしません。立ち上がる時も父を持ち抱えたりしているので「全身痛い」とくどいています。最近では母がやや足を引きずるように歩いて、何だか痛々しい老々介護になっています

今まであまり聞かれなかった母の愚痴も聞くようになりました。「お父さん食べるのが遅い」「何でも細かく小さく料理を作らないといけないから料理が大変だし美味しくない」「夜中に何度も起こされるから寝不足」等々。それを父の前で言うものですから、母の気持ちも十分わかるけれども、父の何とも言えない表情を観ていると何だか切なくなります

父も内心すまないと思っているのでしょうけれど、自分ではどうしようにもできない辛さ。以前「老人ホームが自分の家」と言っていたのも、強ち本気なのかも知れません。身体が不自由という事は、支える者の気持ちもすり減らしてしまい、肉体的にも精神的にも苦痛な状況なのです。

ただ勿論母は父が憎くて仕方ないわけではありません。
「この前お父さんが左足【く】の字型になったまま頑張って歩いている姿を見て泣きそうになった」と言っていました。

脳の手術の影響で、左足をまっすぐ伸ばす事ができない父は、右足とほとんど力の入らない左足とで何とか歩いています。それは3年間リハビリを続けていてもほとんど回復しませんでした。

それでも何とか歩こうとする父の頑張りに、母も励まされているようでもあります。今の父の身体は今更どうしようにも無い起きてしまった事故の「結果」ですが「これから」について希望を持てるかどうかは各々の気持ち次第だと思いました。

 

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