隠れ宝塚のひとりごと
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花組宝塚大劇場公演
「SPEAKEASY」/「スナイパー」
−「SPEAKEASY」編−
観劇日 | 6月6日 | |
観劇時間 | 午前11時の部、及び午後3時の部の2回 | |
観劇場所 | 午前11時の部 午後3時の部 |
1階後方左側(A席) 1階中程右側(A席) |
特記事項 | 午前11時の部 午後3時の部 |
星組生徒観劇。 宝塚友の会貸切公演。 終演後磯野千尋、真矢みきによる挨拶あり。 |
SPEAKEASY −風の街の純情な悪党たち−
(原作:ジョン・ゲイ「The Beggar's Opera」)
谷 正純 脚本・演出
−谷作品とは思えぬほどの傑作−
谷正純氏といえば、植田理事長に次いで評判の悪い脚本家だった。今回の公演も、「谷作品じゃ期待できない」という前評判が花組ファンの間を支配していた。個人的には、あまり谷氏には悪い印象は持っていないが、それでも雪組「春櫻賦」のあまりにブッとんだ展開を見た後では、それも仕方ないかなという思いがあった。
ところが、谷氏はファンのあまりよくない前評判を見事に覆す傑作を出してくれた。「三文オペラ」をリメイクし、禁酒法時代のシカゴを舞台とした非常に楽しめるミュージカルに仕立ててくれた。
笑いあり、風刺あり、ドラマあり、しかも真矢みきと花組を存分に堪能できる作りにもなっている。真矢みきのサヨナラ公演にふさわしい傑作である。これなら谷氏も捨てたものではない。
これだけの作品が作れるのだから、「植田化している」などという不名誉な評価をもらうことのないようにして下さいと、谷氏にはお願いしたくなってくる。
−明るいサヨナラ公演−
この作品で感じられたのは、谷氏、スタッフ、花組生徒の共通した思いである。真矢みきのサヨナラ公演を明るいものにしたい、退団していく真矢みきを笑顔で送り出したい。
一言で言えば、笑顔で終わる明るいサヨナラ公演。
「SPEAKEASY」の良さは何と言っても、携わる者全てがこの共通した思いのもとに一つになっていたことであろう。これが強力なまとまりを作り、谷氏のすばらしい脚本をさらにいいものにしてくれた。
おかげで、ファンとしても、淋しさを感じるはずのトップスターのサヨナラ公演で、非常に楽しい思いをさせていただくことができた。しかも、最初と最後にはファンも手拍子によって「SPEAKEASY」に参加することができ、さらに楽しさは倍増。まさに明るいサヨナラ公演だ(スナイパーで崩されてしまうとはいえ……)。
楽しませてもらった観客の一人として、谷氏から生徒まで、「SPEAKEASY」に携わった全ての人々の努力を讃えたい。
−1000daysのための演出か−
幸いにも2回観劇して、2回とも1階席で見ることができた。かなり後ろだったり、壁際だったりとあまりいい場所ではなかったが、それでも2階で見るよりもよかった。
2回目は1−8扉に近いところで観劇。真矢の登場は残念ながら反対側の1−1扉からだったけれども、客席に降りてくる生徒たちを存分に楽しめた。特に最後の方は、3列くらい前にある扉から生徒が出入りしてくれて、思いがけない距離から見る生徒の姿に酔いしれてしまった。
東京公演を意識した演出なのだろうか。何しろ1000days劇場は全て1階席。全ての観客が真矢の登場もエンディングも楽しめる。東京公演でもっと盛り上がることはすでに約束されているようなものだ。できることなら来てほしくない真矢の最後の舞台であるが、1000daysでの盛り上がりは想像するだけでわくわくしてくる。
−格好いい娘役−
さて、花組となるとやはり千ほさちの話題は抜かすわけには行かない (^^;
今回も退団していく真矢を引き立てつつも、自身も非常に輝いていた。美しさ、可愛らしさだけでなく格好よさも見せてくれたし、前回の公演からの成長もまた見せてくれた。
まず、娘役なのに非常に格好よかった。今回はスーツ姿での登場が多かったが、これが男役のような格好よさだった。娘役に対して「格好いい」という印象は少し変かもしれない。しかし、千ほさちは格好いいと思わせるものを確かに漂わせていた。
それにしても、こうなってくるとほんの少しでいいから男装での演技を見てみたいものである(ただし、「スナイパー」での変装のような趣味の悪い男装だけは御免被りたい)。非常に似合いそうだ。
また、歌での成長を非常に感じさせられた。「ザッツ・レビュー」に比べて非常にうまくなっている。銀橋ソロと、エトワールで鍛えられたからであろうか。努力家の千だけに、「ザッツ・レビュー」は結構苦しんでいる様子がうかがえたものだが、今回はその成果が見事に開花している。
トップ娘役お披露目の「失われた楽園」から1年と3か月をへて、「大型娘役」の地位に非常に近づいてきた。改めて、ほさちファンになってよかったと感じさせられたものである。
−娘役の頑張り−
この作品に不可欠なのが娘役たちである。主人公の相手以外にも、主人公の周りの女性たちが物語を作っている。
中でも大活躍だったのが、詩乃優花と渚あきであろう。
詩乃は孤独な情婦の揺れる心境をうまく見せてくれた。これが退団公演だというのが惜しくなるほどである。
渚は結婚を迫るために妊婦を装い、すみれコードに抵触しそうな言葉を絶叫しながら千と激しいケンカを展開する。道化役かつ汚れ役に近いものがあるが、キャリアのある娘役らしい堂々とした演技を見せてくれた。
この二人の男役に負けない頑張りと活躍にも、拍手を送りたいものである。
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