圓山記念日本工藝美術館はジャワ島中部にある世界最大の貴重な仏教遺跡・世界文化遺産「ボロブドゥル」を、大正年間に日本に初めて紹介し、その研究で世界的に知られた、故井尻進(号・圓山)の遺徳を偲び、晩年の一時を寓居した姫路の地に、圓山の没後25周年・生誕100年を記念して、平成3年秋、新築開館されました。
 圓山は研究を通じて、当時輝いていたヨーロッパ近代精神が席捲した後の世界の行く末を、あまりにも早くから予見し、深く案じ続けました。いまヨーロッパ中心の思想は崩壊し、多様な民族文化の貴重さが問われる時代を迎えました。しかし現実にはなお、近代化の仕組みのなかで、民族的な文化の伝承・継承は困難さを増しています。失われてはならない貴重な技と心が、日ごとに身辺から急速に消滅してゆきつつあります。
 当館では圓山の志を受け継ぎ、この近代化の潮流をなんとか乗越えて、世界ではすでに失われた多くの魅力的な宝物が、日本には不思議にも豊富に継承集積され生きているという素晴らしき国となるよう尽力するとともに、あらゆる事業を通じて、伝承文化の尊さと「跡継ぎ」の問題の重要性をアピールし、人々の関心を喚起し続けながら、そのような仕組みの構築に努めてゆきたいと念願しています。















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