木と少年のエスキース

木にもたれて少年は待っている

固い樹皮だが背中をゆるめて

すぐれた熱性の装置をさましながら

掠めた言葉に世界が追いつくのを


木はまたしても

時を占有するのに疲れている

朽ちたがる言葉の列をなだめなければ

永遠もつまらない


だから少年は畏れを知らず

わずかひと息の言葉で

ことごとく封印する

木はきっと語らずにはいられない

果実のあわただしく熟れる光沢を

夢の 整然と旅の始まる澪を


少年のくちびる熱く

沈黙はどんな真実にも拮抗する


夕暮れが廃疾をかき集めて帰ると

風は木々の饒舌をほどいてゆく

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