廊下

迷走を続ける台風が北上に転じていた


廃校の軋む廊下を歩くと

朽ち果てたざわめきが匂う

ことばと数式 意欲と消沈の教室

先を争ってなだれた昼休みの喧騒


まるで放縦と不逞の火種だったぼくら

濡れてするどい代用教員の声は

ぼくらをどれほどよく押しとどめたか

あなたが教壇を動くとき

うつむいた花の振る舞いは

きらめく予兆を垣間見せて

通り過ぎた記憶のように心は騒いだ


思い描くことができる

放課後の人気ない廊下の奥で

狼狽をひるがえしたあなたと


あなたが村の男と遁走した翌日

嵐のあとのうなだれた竹林の姿を


あざやかな疾走を始めたあなたは

いつか退屈な初老を歩いているが

喚声をあげて廊下を走り抜けたぼくと

目ざとく歩み寄っていさめたあなたと


ぼくらは装備を解いてどこへ萎えていったか

あのまだ暑い西日の廊下から