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道楽探偵の夢のような一日
「はぁい? どなた? ……シギ…じゃないよね?」 和己の部屋よりも、悠の部屋のほうが玄関に近い。そのことを今まで意識したことはなかった。だが今、和己はこの間取り及び部屋割りを心底呪った。 自分とゼンが玄関にたどり着く前に、悠がその扉を開けようとしていたのである。不用心にも、相手を確かめようともせずに、チェーンとロックを外している。 「…悠っ! そのドア開けるなっ!」 叫んだ和己の声が、悠に認識されるよりも一瞬早く。 「……え?」 きょとんと振り向いた悠の指先はすでにドアノブをまわしていた。 引き開けられた扉。その先で待っていたの は、和己とゼンにとっては、何だか見覚えのある人相。四つほどの険悪な顔。そして、こちらは悠にも見覚えがある、よく言えば無邪気、的確な表現をするなら脳天気な美女。 「ただいま戻りました。…なんだか…この方々に声をかけられてしまって…」 困っているのと照れているのの、中間ほどの笑顔でシギが言う。状況に合わせるのならば、慌てているのと怯えているのを足すぐらいのほうがいいとは思えるのだが。 「……え? あれ? ……シギ?」 事態の認識に戸惑っている悠の腕を、ドアの外にいた男の一人が捕らえた。 「……え?」 「この…馬鹿っ!」 あっさりと捕らえられ、かつナイフまで突きつけられてしまった甥に和己が思わず毒づく。悠の隣で同じような状況に陥っているシギにも溜め息をついてみせる。 「……おまえもおまえだよ。逃げりゃよかったじゃねえか…」 和己の呟きに、シギは首を傾げる。 「ですが…この扉の前で声をかけられてしまったものですから。お客さまがこんなに増えるとわかっていれば、お夕食は七人分でしたのに…。材料が足りません……」 至極残念そうにシギが呟く。そんな彼女に苛立ったように、シギの後ろにいた男が声をあげる。 「てめえら! 少しは緊張感ってものを大事にしろよっ!」 彼の言葉ももっともである。なぜなら、彼はスーパーの袋を片手に下げたままのシギの首に手を回し、なおかつ、幅広のサバイバルナイフをその首に当てていたのだから。せっかくそこまで用意したのに、捕まえてる当人がまったく怯えていないというのも、気の毒な話である。 だが、その男の期待に悠は申し分なく応えていた。 「うわぁっ! ねぇ! 和兄ぃ〜〜っ! 助けてよっ! ねぇ、どうしてっ!? どうして僕がこんな目に遭うのさっ! いやだよぉ〜っ! まだ死にたくないよぉ〜っ! 和兄ぃ〜っ!!」 「……てめえはもう少し静かにしとけよ」 悠を捕らえている男がうんざりと呟く。 「…まあまあ。とりあえず…お話し合いと行こうじゃないか」 一番後ろにいた男が前に進みでた。昼間に会ったときも、偉そうな態度をとっていた、リーダー格と目される人物である。その男は和己をにらみつけながら、言葉を継いだ。 「俺たちゃ、紳士だ。例のファイルを完全に抹消できて、ついでにあんたたちもそのことを忘れてくれるってんなら、命まではとらねえよ。ああ、誤解しないでくれよ。今、この男たちが拳銃じゃなくってナイフを使ってるのは、接近戦ならそのほうが有利だからだ。もちろん、こういうものだって持ってるぜ?」 上着の内側から、拳銃をちらりとのぞかせる。思ったよりも小さなそれは、妙に黒光りしていて、現実感を失わせる。 (なんだか…安っぽいヤクザ映画みたいだよなぁ…) 和己は、危なくそう口に出しかけたが、心のなかでの呟きに留めておく。そのほうがよさそうな気がしたからだ。 「…で? 返事を聞かせてもらおうか? 答えにくいってんなら、このねえちゃんの顔をちっとばかり傷つければ、答えやすくなるかもしれねえけどな? それとも、こっちのガキにするか?」 「いやだぁーーっ!」 リーダー格の男が言った言葉に、悠がいちいち反応している。 その脅し文句(多分)も、『安っぽいヤクザ映画』を再び彷彿とさせたが、和己はそれも心の中に収めておく。 (…ああ、俺って温厚っつーか、心広いよな。相手の気持ちを考えて、言動を差し控えるところなんて、俺ってオトナかも) 冷静に考えれば、『オトナ』であって然るべき年齢と社会的立場なのだが、そのあたりは棚に上げておくことにした。そして、リーダー格の男に尋ねてみる。 「いや、忘れろってんなら忘れるし、ファイルだって渡してもいいよ。…っつーか、俺、そのファイルにまだ目を通してねえんだよな。だから、忘れるっても、最初から覚えてねえんだけど、リーダー?」 「…いい答えだな。…俺はリーダーって名前じゃねえんだが…ま、いいか。じゃあ、善田のほうはどうなんだ? このにいちゃんと同じ答えが言えるかな?」 聞き慣れない名前を耳にして、和己が聞き返そうとした瞬間、和己の横でゼンが返事をした。 「い…いや、オレは…」 「…あーーっ!」 和己がいきなり何かを思い出したような声をあげる。その声量と唐突さに一、二歩後ずさりながら、ゼンが訊いた。 「和己? なんだ?」 「なーんだ! 善田っておまえの本名か! いや、俺、ずっと不思議だったんだよ。ゼンって名前の略なのか、名字の略なのか。それとも、全く関係ない、ただの通り名なのか。…ああ、長年の疑問が氷塊した。よかった」 「……それを言うなら、オレだって、和己のフルネーム初めて知ったよ。深津ってんだな。オレは善田俊行ってんだ」 つい先ほどまでは落ち着きをなくしていたゼンも、シギと和己のペースに引き込まれつつある。それに引き込まれずに、自分のペースをひたすらに保っているのは悠だ。 「ちょっとぉ〜〜っ! 二人とも! もっと真面目にやってよぉ〜〜っ! 僕の身にもなってよぉ〜〜っ!」 泣き声じみてきた悠の叫びで、リーダー(そう呼ぶことに決めた)も、軌道修正を試みる。 「おいおい…自己紹介して、親交を深めるのは大変に結構なんだがな? できれば、こっちが片づいてからにしてくれねえか? 片づいて、まだおまえらが生きていたら、な?」 効果の薄い脅しにしか思えなかったが、とりあえず従っておいたほうが損はなさそうだ、と和己は判断した。ゼンが持ち込んだ例のデータも、自分にはあまり興味がない。何より、それが何のデータなのかも知らないのだから、それと引き替えに命をどうこうという話になるのは、正直、馬鹿らしかった。 どうやら、隣ではゼンも同じ判断を下したらしい。 「いや…オレは、あのデータを何かに使おうとか…そういうつもりはなかったんだぜ? ただ、あんたたちがしつこく脅してきたり、いろいろ仕掛けてくるから、さぞかし大事なデータなんだろうと思って…。そんで…あんたたちに何かされたら嫌だから、保険でもかけておこうと思って和己に送っただけで…。オレだって、あのデータがそんなに大切だなんて気づかなくて…ただ暇潰しにいろいろなとこハッキングしたら偶然拾っただけで…」 「ああ、そういうことはよくあることだよな」 「暇潰しに、偶然…というのなら、いたしかたございませんわねぇ」 和己とシギが無責任に同意する。が、どうやら、緊張感を維持したかったらしいリーダーには、その呑気さは気に入らなかったようだ。そして、それどころではない悠にとっても。 「やめてよぉっ! みんなどうしてそう…真剣味がないんだよっ!?」 「てめえら…自分の状況ってもんが分かってねえらしいな?」 その言葉とほぼ同時に、シギをナイフで脅していた(と言っても効果はなかったが)男がナイフを握る手に力を込めた。 「このねえちゃんの顔にでけえ傷つけてやろうか? ああっ!?」 だが、シギは意に介さない。隣で悠は思わず肩をすくめたというのに。 「あのぉ…お肉を冷蔵庫にいれたいので、少しだけ失礼いたしますね。ああ、きちんと戻ってまいりますから」 無造作に、シギが動き出す。全く予想外のその行動に、男は反応できなかった。つまりは、硬直した。結果、シギの首筋に押しつけていたナイフの刃が、そこに食い込む。どうやら、ナイフの手入れは行き届いていたらしく、さしたる抵抗もなく、その刃はシギの首筋を切り裂いた。 「……う…うわぁっっ!」 悲鳴を上げたのは、ナイフを握っていた当人である。その後ろにいた残り二人の仲間と、捕らえられている悠も同様に凍り付いている。ゼンとリーダーには、その光景は理解できていない。ただ、惚けることしか出来なかった。 平静でいたのは、シギと和己の二人だけだった。 「……あら? いやですねぇ…傷が…」 ぱっくりと口を開いた、幅一〇センチほどの傷。通常ならば、頸動脈のある位置である。人間なら、今頃はあたりが血の海になってるだろう。が、シギの傷口からは何も出てこない。いや…かすかに、半透明のジェル状の物質が傷口のまわりに付着している。 シギが無事なのを見定めてすぐ、和己は悠を捕らえている男に視線を向けた。 悠ともども凍り付いたままの男の手にはナイフが握られている。だが、今行動を起こすだけの気力はその男にはないだろう。 それを見てとって、素早く行動に出る。 男がナイフを持っている手首を、左手で掴んでそのままひねり上げる。その隙に、右手で悠の腕を捕らえた。そのままその体を強引に引く。 「…え?」 聞こえたのは悠の声だ。返事はせずに、悠と男の間にできた隙間に無理矢理、体をねじこんだ。その際に、邪魔になった悠の体を、掴んだままの右手で引き倒す。悠が膝をつきかけたところで、その尻を蹴飛ばした。 「あいたっ!」 悠の悲鳴は気にも留めず、男の手からナイフをもぎ取った。その勢いのまま、男の鳩尾に蹴りを叩き込む。 「……この…野郎ぉっ!」 シギの、何というか不可思議な現象を目にして、凍り付いていた男たちが、今の和己の行動で一斉に我に返った。 「か、和兄っ!」 「うるせぇっ! とっとと中に入れよ、馬鹿!」 何かを言おうとした悠を制して、再び蹴り飛ばす。そして、先刻の蹴りで足元に倒れている男の喉元を踏みつける。ぐえ、とうめいてその男が動かなくなった。が、まだ他に三人いる。 和己の周りでは、色めき立った男たちが手に手にナイフやら拳銃やらをかまえている。 (さてと…とりあえずあの馬鹿の安全は一応確保したけど…この先を考えてなかったよなぁ…。こいつらの言葉通りにしたところで、本当に無事に済むかどうかはわからねえ。と思って悠の無事だけは確保したけど…ん〜…早まったかな? ま、なるようになるさ) 「威勢のいいあんちゃんだな。人質助けてヒーロー気取りか? 泣かせるじゃねえか」 リーダーの言葉に、ふと和己が真剣な顔を見せる。 (……この台詞…どっかで聞いたよな。どこだっけ? ……水戸黄門? いや、時代劇でヒーローって言葉は使わねえだろうな。…サスペンス系の二時間ドラマ? ああ…こういうの、いらつくよな。思い出せねえや) 「痛い目みたくなきゃ、とっととそのナイフ捨てることだな。例のファイルさえ渡してくれりゃ、こっちもこれ以上の手出しはしねえよ」 そのナイフ…と言われて初めて、和己は自分が男から奪ったナイフを手にしていることに気が付いた。 「あ、そっか。……馬っ鹿じゃん、俺。持ってるんだったら、さっき蹴ったり踏んだりしないでこれ使えばよかったのにな」 「……和己さん? どうかなさいまして?」 そこへいきなり脳天気な声。シギである。三人の男たちに武器を突きつけられて囲まれている和己のところへ、いとも無造作に近づいてきた。 「ゼンさんも悠さんも、止まったままなんですけど…」 シギの言葉通り、先刻から、ゼンと悠の動きは止まったままである。ゼンは、シギが首筋を裂かれても、血ひとつ流さない事実に驚愕したまま、そして悠は叔父に救われたはいいが、この先何をどうしていいのかわからないまま。 近づいてきたシギに何か言おうと和己が振り向いた時、周りの男たちが先に騒ぎ出した。 「て…てめぇっ! 近づいてくんなよ! …っていうか、なんで無事なんだよっ!」 和己のすぐ横にいた男が叫ぶ。そして、一歩遅れてリーダーも叫ぶ。 「てめえっ! ナニモンだっ!?」 そして、先刻、シギの首を切り裂いた部下に向かって確認する。 「おまえ…さっき、切ったよな? すっぱりさっくり切ったよな?」 聞かれて、その男は無言で首を縦に振った。がくがくと、まるで震えているかのように。 「じゃ…じゃあ、なんでこの女…なんで…血とか出ないんだっ!?」 ──ロボットだから。単純、かつ明快なその答えを危うく和己は口に出しかけた。が、寸前で思いとどまる。そうして、代わりに口から出たのは溜め息だった。 (…シギがロボットっつーのは…言わないほうがいいような…っていうか、言っても信じてもらえなくって、馬鹿にされてると思ったあいつらが逆上しそうな…) そう考えてはみたものの、じゃあ他に言い訳のしようがあるのかと言えば、そんなものあるわけもなく。 「ああ……どうしよっかな…」 とりあえず、呟く。 玄関では、ゼンと悠がフリーズしたまま。そして自分の周りでは三人の男たちがシギに驚愕したまま。そしてシギはとぼけたまま。多分、今現在で一番まともな精神状況でいるのは自分なんだろうな、となんとなく思う。 一人二人なら…と見回しかけて気づく。 (三人いるって事実よりも、あいつが拳銃持ってるってのがネックだよな。ナイフくらいならともかく、さすがに飛び道具は……。でも一般人相手にいきなり発砲はしねえかな?しかもこんなごく普通のマンションの中で。……いっちょギャンブルに出てみるか) 拳銃をかまえたままのリーダーが、更に言い募る。 「こら! 何とか言いやがれ!」 「…はい? 何か…御用ですか?」 打ち合わせをしたわけでもないが、シギが先に振り向いた。いつものように小首を傾げて。そして、傾げたせいで、首の傷はより一層はっきりと見えていた。 それを目にしたリーダーの動きが一瞬止まる。それを待って、和己がリーダーの手首に手刀を叩き込む。 「シギ! 拾え!」 リーダーの手から落ちた拳銃が床にたどり着く前に、シギがそれを受け取る。 「まぁ…何ですの、これ?」 「あ! 馬鹿! 返しやがれっ!」 拳銃を奪い返そうと動くリーダーの腹に膝蹴りを食らわせて、和己が振り返った。 「シギ! レーザー使っていいぞ!」 「あら、本当ですか?」 にこやかにそう言って、シギも振り向いた。残り二人がいる方向に。 リーダーがやられたことで、頭に血が上っていたらしい残り二人が、足を踏み出す前に、その足元に鮮やかな光が走る。廊下の床、古びたリノリウムが、鼻をつく異臭が立ちのぼり、じゅわっという音が妙に生々しく響く。 当たってはいない。だが、その動きを止めさせるには充分だった。 二人の男がその場にへたり込む。そして、その一連の動きを見ていたリーダーも。 「なんだ…もうちょっと苦労するかと思ったんだけど…」 和己が苦笑する。 「あら…みなさん……いったい、どうしたんでしょうねぇ」 のほほんと小首を傾げるシギ。その首筋にはぱっくりと傷が開いている。現実味というものを一切拒否しているそれをのぞき込んで、和己が尋ねた。 「…なあ、それ…その、傷口から出てる透明なの…何だ?」 「ああ、外皮を着用する際の緩衝ジェルです。適度な湿度を保つのと、防水剤の役割も同時に果たしますけど。触っても平気ですよ?」 「ふうん…あ、ねばねばしてる」 律儀にも和己は触って確認している。 「接着剤がわりとかにはならねえの?」 指先で軽く糸を引くそれを不思議そうに見つめながら、和己が尋ねた。それを聞いてシギが首を振る。 「ええ。緩衝材ですからねぇ…。この傷、どうしましょう?」 「どうしましょう…って…俺にわかるわけねえじゃねえか。どうしたらいいんだ? ガムテープとか瞬間接着剤なら部屋にあるけど。それとも、絆創膏とか包帯とかすりゃ、自然にくっつくのか?」 当然の疑問を和己が口にする。シギは首を傾げて、小さく溜め息をついた。 「こんな時…マスターがいてくれれば、何でも分かるんですけどねぇ…」 「マスターって?」 「私を作った人です。顔とか名前とかは知りませんけど。私もロボットの端くれである以上は、マスターがいるはずなんですけど」 その直後である。またしても、必要な予備知識を与えられないまま、その現象は起こった。 シギの背後に、一筋の光が走った。男たちがへたり込んでいたせいで、そこには空間がある。ちょうどその空間に、床から天井へとまっすぐに白い光がきらめいた。 再び、理解を超える怪現象かと、シギと和己以外の全員が身構える。 「シギ…また何かやったのか?」 和己がぽつりと呟く。シギは首を振った。 「いいえ、心当たりはございませんが?」 「んじゃ、その光は…」 何だ、と聞こうとした。が、言葉の続きは発せられなかった。 和己の…というか、そこにいる全員の視界に入ったものは、およそ理解しがたい光景だった。 床と天井を結んでいた白い光の直線は、一瞬輝きを増すと、いきなりそこから指が出現したのである。まるで内側から押し開こうとしているかのような指が。 そして、その指は予測されたとおりの動きをした。つまり、なかから押し開いたのである。押し開いたものは、多分『空間』だろう。そうとしか思えない。なぜならそこには何も無かったのだから。 『空間』をまるで、ゴムかウレタンのように扱ったその指の持ち主は、人間一人が通れるほどまで、空間を押し開いたあと、いきなり頭部を出現させた。 肩にかかるくらいの真っ直ぐな金髪。シギと同じ真っ青な瞳。そして、シギと同じように脳天気な表情。シギとは違って、男性であるようだが、醸し出す“のほほん”な雰囲気はシギと瓜二つである。 突然の訪問者は、何もない空間から唐突に首だけを生やして、きょろきょろと辺りを見回した。そして、シギを見つけると、にっこりと笑う。 「やあ、こんなとこにいたのか。探したよ」 流暢な日本語でそう言って、次には意味不明な言葉で付け足した。 「○□×○△☆♪」 それを聞いたシギが振り返る。 「あ……」 「………あ?」 とりあえず、理解のできないものは、認識の外に避難させておくことにした和己が、シギに問い返す。他の人間は、未だにショックから立ち直れないでいた。 「あ…マスター……ですか?」 シギの言葉に、金髪の男がにっこりとうなずいた。 「ああ、そうだ。ちょっと…あ、よいしょっと」 空間の隙間を乗り越えて、男はこちら側へとやってきた。空間の壁を支えていた手を離すと、何もなかったように、空間は閉じていく。
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