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サンクチュアリ
−− 10 −−
雪が降る。
雪が積もる。
そして、雪は解けてゆく。
「……過ぎて欲しくない時間ほど早く過ぎていくわね」
リョウを前にして、ロビンが呟いた。二人しかいない、深夜のリビングは静かすぎて、かすかな溜め息すらも響きわたるようだ。
「そうだね。……レイは? コウの姿も見えないようだけど?」
ロビンの言葉にうなずきながら、リョウが訊いた。ロビンは、リビングのドアを指さす。
「部屋よ。コウも一緒にいる。……先週の術後レポートを作ってるはずなんだけど…結果はあまりよくないみたい。これまでの結果と、大きく変わるところはないわ。…レイも、手術をする度に不機嫌になっていくし」
「どんな結果が出てるんだ?」
「…肺だけを手術した場合、心筋炎か、ひどくなると心筋梗塞を起こすわ。それを起こさなかったとしても、虚弱体質になるのは免れない。肺と心臓の両方を同時に手術した場合は、生き残るのは一割。残りの九割は……三日以内に死亡。 ウィードでは、臓器の移植実験をするのに、ヒヒを使ってるんだけど…循環器系は、人間と変わらないはずよ」
それを聞いたリョウが、考えつつ、口を開いた。
「原因は分からないのかい?」
ロビンが肩をすくめる。
「わかっていれば、あたしは今頃こんなとこにいないわ。今、研究所では別のチームの人たちが、原因をつかむのに必死のはずよ。原因とその対処法がわかれば、あたしたち開発チームの出番なんだけど」
「焦っちゃいけないと言いたいけど…時間をかければ、問題が解決するってわけでもないからね」
「そうね。それに……無駄に時間をかけるわけにはいかないわ。もう三月よ? レイに手伝ってもらってから、四ヶ月も経ってるわ。レイも焦ってる…誰だって焦るわ。人工肺の精度も、移植技術も完璧に近いはずよ? なのに…」
溜め息をついて首を振るロビンを見ながら、リョウも同じような表情で答える。
「医者をやってきて…人の命を左右し得る職業で……時々、痛感することがある。最後の最後で、俺たちの力の及ばない何か……大きな力っていうか、意志を感じることがあるよ。あるいは神とでも呼ばれるものなのかも知れないけど…。それを言い訳にしたくはないし、それにすがりたいわけでもない。だけど…人間の力じゃどうしても手の届かない領域は確かにあるし、人間がやっちゃいけないこともある。いい意味でも悪い意味でも、大きな流れは決まってるのかも知れない。たとえば、回復不可能な患者が…もちろん医者の努力もあるけど、不思議な回復力を見せることもあるし、逆に、理論上は一分の隙もなくて、処置と技術も完璧だと思えたのに、上手くいかないときもある」
「……それはあたしもわかるけど……でも、あきらめるのは、精一杯やったあとよ。自分の限界を超えてでも、最後までやってからよ。今は、自分のすることを信じるだけ。」
そう言いきった、ロビンの深い青の瞳を見つめて、リョウがふと、笑みを漏らした。
「その通りだな。…すまなかった。許してくれ、少し気弱になってたみたいだ。……今日の午前中、レイの検査をしてて、さっきまでその結果を見ていたものだから」
「何か……あるの?」
訊かれて、リョウが溜め息をつく。
「 本当なら、そろそろ仕事のペースを落として欲しい。いや、もっと正直に言うなら、やめて欲しい。君に言うべきことじゃないのはわかってるが……もう限界のはずなんだ。肺の有効活動量が、四〇パーセント以下にまで落ちてる。そのせいで、心臓にも負担がかかってる。そろそろ、肝臓にも障害が出てくるだろう。今すぐにでも入院してもらいたいぐらいだ。実際、倒れないのが不思議だよ。でも……でも、言えないんだ。今のあいつは、精神力だけで保(も)ってるようなものだ。そんなあいつに…もうやめろとは……」
それを聞いたロビンが、泣き笑いの表情を見せた。
「それは…あたしにも言えないわ。何も言えない…限界を超えても頑張ってる人に、もっと頑張れなんて言えないし、今の状況を考えれば、もうやめてなんて言えないものね。それに…今レイが仕事をやめれば、それは可能性が極端に下がることを意味してるわ。レイを助けるために…レイを休ませてあげられないなんて…矛盾した話よね」
うなずいて、リョウも同じような表情を返した。
「…ねえ、ロビン? 呼吸することを意識したことがあるかい?」
「え?」
「ないよね。普通の人間はみんなそうだ。俺だって。呼吸することは…無意識のうちにやってる。息をしていることは、生きているってことだ。呼吸停止そのものは死の定義じゃないが、普通の生活をしている以上は、誰も呼吸を意識したりなんかしない。…けど、レイは意識せざるを得ないんだ。息を吸って、肺を満たした空気が、自らを窒息させないうちに、吐き出す。そして、次の息を吸う。限界ぎりぎりの肺で、あいつは意識させられる。息を吸うこと、それを吐くこと。呼吸の度にだよ? ……つらくないわけがない」
そう言ってリョウは、重い息を吐き出した。
その頃、レイはコンピューターを前に、考え込んでいた。
「レイ、こっちのプリントアウトが終わったけど……レイ?」
返事のないレイに、コウが近づいた。
「レイ?」
「え? あ、ああ…そこに置いといてくれ」
ようやくコウの存在に気がついたレイが顔を上げる。コウが微笑んだ。
「考え込んでたみたいだね。どう? 結論はでた?」
「ああ。結論というか…原因は見えてきたと思う。結局は、肺が精巧過ぎるんだ。肺の活動量に、心臓のほうがついていけなくなる。健康な実験体ですらだ。肺の移植を必要とするような患者に使ったら……考えたくもない結果になるだろうな」
「じゃあ、心臓を一緒に移植すると?」
「肺の活動は一段と、性能を発揮するさ。常に大量の酸素吸入をしながら、生活するようなものだ。酸素は必要なものだが、多すぎると多酸素症を引き起こす。それまで、適切な量の酸素の供給に、もしくは必要最低限の酸素にしか慣れていなかった肉体はそれに耐えられない。それで、先週の手術の時は、血管を細いものに変えてみたんだが……もともとは、人工肺の機能は、その肉体に必要なサイズに対応したものだ。ただ血管を細くしただけでは、酸素の供給が不十分なことになる。通常の状態ならともかく、手術後の、体力が低下しているときには命取りになる」
レイの説明を聞いて、コウが首をかしげた。
「じゃあ…どうすれば?」
「多分、血圧を……つまり、心臓は人工のものを使って、その能力が最初は十分に発揮できないものとして、だんだんと、体力の回復につれて心臓の能力も上げていければいいんだが…。術後は酸素吸入を十分にやることと…あとは、心臓や肺の能力を段階的に操作することが出来ればな…」
コンピューターのディスプレイを前に、レイが肩をすくめる。
「それって何とか出来そうなの?」
「可能性のありそうな方法はある」
「ロビンには言った?」
「いいや、まだシミュレーション中だ。結果がでれば、あいつにも教えるが…今回のシミュレーションは俺のデータを元にしてるから、実験は出来ない。俺と同じ状態の実験体なんかいるはずもないからな」
自嘲気味に溜め息をつくレイに、コウが微笑みかける。
「そろそろ一休みしない? 本当はもう休んだ方がいいんだろうけど…そんな気はないんだろう? リビングで、ロビンたちと一緒にお茶にしようよ」
「ああ…そうだな。コウは…いや、おまえたちは…もうやめろとは言わないんだな」
椅子から立ち上がりながら、レイが微笑む。コウが肩をすくめた。
「言って聞くような君じゃないだろう? 言いたいのはやまやまだけどね」
その返事にレイが笑った。
「それもそうだ」
ここ何週間かで、一段とレイの動作は重くなった。話す声も、ひどくゆっくりと、囁くようになった。そう思いながら、それでも決して口には出さずに、コウはレイを見つめていた。細くなった肩を見て、ふと考える。レイの背中はこんなに頼りないものだったろうか、と。いつもは見上げるほどの長身が、なぜかとても小さく見えた。
頼ってくれ、と。そう言ったのは自分だと…今更ながらに思い返す。もっと自分に甘えて欲しいと。自分はレイを支えるつもりで、自分が知っているという事実をレイに告げた。そうすれば、レイは何かから解放されると思ったから。たくさんのものを背負っている、その背中から、ひとつでもいい、何かを減らせるならば。
…だが、実際にそれは減らせたのだろうか。自分は最後まで知らないふりをしていたほうが、レイにとっては救いだったのではないだろうか。…考えても仕方がないとはわかっている。時間は決して戻せない。すでに自分はレイに告げてしまった。その言葉を取り戻せるわけもない。
なのに、考えずにはいられない。はたして、どちらがよかったのかと。
部屋のドアに向かいながら、ふとレイが立ち止まる。ノブに掛けた手はそのままに、レイはすぐ後ろのコウを振り返った。たった今までめぐらせていた考えを見透かされたような気がして、一瞬、目を逸らしたくなる。が、それをこらえて、コウは顔を上げた。
「……どうしたの、レイ?」
その瞳を見つめて、レイがゆっくりと口を開く。
「本当によかったのか…?」
そう…聞きたいのは自分のほうだ、とコウは思った。だが、今更、問えるはずもない。自分がそれを問うのは卑怯だ。
何気なさを装って、コウは微笑んだ。
「…何が?」
コウに聞き返されて、思い直したようにレイは首を振った。
「いや…何でもない」
あらためてコウに背中を向けながらも、レイはノブに掛けた手を動かそうとはしなかった。
「……レイ?」
「コウ……信じるか? 今ここで俺が…今までのは嘘だと……全部、嘘だったと言ったら、おまえはそれを信じるか?」
背中を向けたまま、レイが尋ねる。その肩に、そっと手をのせて、コウが囁いた。
「レイ……」
そのささやきを遮るように、レイが振り返って微笑む。
「いや、何でもないんだ。気にしないでくれ。どちらにしろ……今更、だよな」
「レイ! 僕は…いや…君は…」
コウは聞けなかった。その言葉の続きを口にすることはできなかった。
君はそれでよかったのか、とは。そうして気づかされる。自分が、レイに謝ろうとしていたことに。自分が、知っているとレイに告げたこと。それが間違いだったとは思わない。だが、正しいことだっただろうか? 思いやることと紙一重の自己満足だったのではないだろうか、と。
その言葉に、かすかな微笑みを保ったまま見つめ続けるレイの視線を感じながら、コウは首を振った。
「ごめん…僕も、何でもない」
信じるか、とレイは訊いた。信じると言えば彼は救われるのだろうか。それとも信じるわけがないと笑ってみせれば良かったのだろうか。どうすれば、彼をこれ以上傷つけずにすむのだろう。どう言えば、彼は救われるのだろう。ゆっくりと…じっくりと考えれば、あるいは答えは出るかもしれない。だが、そんな時間はおそらく残されていないはずだ。…今だ。今、答えを見つけたいんだ。なのに…時間は足りない。残された時間はあまりにも少ない。
覚悟、と呼べるものなど出来てやしない。それでも、時間が残り少ないことだけは認めている。コウはそんな自分にひどく嫌気がさした。恋人としては愛せない、だが誰よりも身近な兄弟であり友人だと。かけがえのない人間だと。そう思っている。なのに、その彼を救う言葉すら見つけられず、自分はただ望んでいる。…時が止まればいいと。そして同時に、早く過ぎればいいと。
レイはコウを見つめたままだった。それを感じて、コウはうつむいたまま、顔を上げることができなかった。
「…コウ……?」
「レイ、僕は…もっと…君を愛せれば良かったんだ」
「コウ、そんなことは…」
「ねえ? 僕は君が好きだよ、とても。でも、ああ、うまく言えないな…。大学で言語学なんかやってるくせにね。どれだけの国の言葉を研究したって、大切な言葉を探せないんじゃ役に立たないよね? …レイ、僕はさ、もっと…君の望む形で、そばにいてあげることができれば、もっと二人とも…」
途切れがちなコウの言葉を、その肩に手を置くことでそっと遮って、レイが口を開いた。
「言っただろう? 何も言わなくていいんだ。わかってるから。人は努力して誰かを愛するものじゃない。……コウ、俺は答えが欲しいわけじゃない。ただ…俺は、おまえが幸せであればそれで…。コウ? 俺はおまえのそばにいてもいいのか? もし、それを…」
今度は逆に、コウがレイの言葉を遮る。勢いよく首を振って、言った。
「そんな…! それは僕が聞こうと思っていたことだよ! 僕は…レイが望むものをあげられないんだ。なのに…君は…僕は、君のそばにいるのが嬉しい。僕のために生きようとしてくれているのが、たまらなく嬉しいんだ。けど…もし…もしも、君が…」
その先は言葉にならずに、コウが口をつぐんだ。その額にそっと口づけてレイが微笑む。
「コウ。そう思ってくれているだけで、俺は嬉しくなれるんだ。知ってたか? おまえはいつでも俺に大事な物を与えてくれている。俺が望む以上の物を。俺がまだ死ねないと思ったのは、おまえを悲しませたくないからだ。だけど、それより以上に思ったのは、おまえのそばにもっといたいと…俺がそう思ったからだ。だからさ…だから……死なないよ、俺は」
返す言葉を見つけられないまま、コウはそっと唇を噛んだ。
…ならば……時が止まればいい。いっそこのまま。
どうすれば、彼は救われるのか…そう考えることそのものが、傲慢なのかもしれない。言葉のひとつやふたつで救えるほど、浅いものだとも思えない。ただ……それでも、何かが彼の救いになるなら…それがもしも自分の存在なら…。
そうして、願わずにはいられない。時が止まることを。
翌朝、ウィード・バイオテックに向かう車の中で、助手席の窓を見ながら、レイが溜め息をついた。それを見たロビンが、運転を続けながら声をかける。
「どうしたの? …最近、疲れてるみたいね。あまり……具合が良くない?」
「……そうじゃないと言えば…嘘になるな。だが、それはいいんだ。どちらにしろ、じっとしていられるわけじゃない。それはリョウも納得してる」
「もう少しよ。 そう、信じてる」
前を見つめたまま、そう言ったロビンを見て、レイがかすかに微笑んだ。が、またすぐに溜め息をつく。窓の外を流れる景色に目をやりながら、静かに口を開いた。
「俺は今でも…こうなった今でもまだ、迷ってる」
「何を? 今はもう迷ってる暇なんかないわよ?」
「コウに…嘘をついたほうがよかったんじゃないかと思って…」
それを聞いたロビンがスピードを落とす。
「ごめんなさい……あたしが…」
「勘違いするな。責めてるんじゃない。……あのとき…コウに詰め寄られても…全て知ってると言われても、俺が認めちゃいけなかったんだ。そんなのは全部、嘘だと…そう言えばよかったんだ。コウが何を言っても、何をしても、違うと……俺自身が否定していればよかったんだ。それでも…俺はそうしなかった。コウに言われた瞬間、頭の中が真っ白になった。そして、その片隅で考えていた。これで、演技をしなくてもすむと…。あの一瞬、俺は逃げようとした。そして、その隙を見逃すようなコウじゃない。あの一瞬で、コウは全てが事実だと気がついてしまった」
相変わらず、窓の外に目を向けたまま、半ば独り言のようにレイが呟く。
「レイ……あたしが…」
「違う。これは俺の問題なんだ。コウが知ってても知らなくても、俺が否定しなきゃいけなかった。……コウの気持ちを考えるなら、伝えることは決して間違ってはいないと思う。それでも…俺は強い人間なんかじゃないから…あきらめの気持ちが消しきれない。コウにこのままずるずると甘えて…いつか全てをあきらめてくじけてしまいそうな気がして…。 なあ? 何もかもあきらめるってのは、すごく魅力的だな」
「 甘えるのはいいけど、くじけるのは駄目よ」
再び、スピードを上げながら、ロビンが微笑む。それを見て、レイが苦笑した。
「…まったく、おまえもコウと同じだ」
「あら、何が?」
「切り替えが早いって言ってるんだ」
「いいことだと思うわ、それ。 ところで、今日は午後からカーリアのほうにいくのよね?」
ウィード・バイオテックの駐車場に車を乗り入れながら、ロビンが尋ねた。レイがうなずく。
「ああ。車はこのままおまえが使え」
「でも、あなたの車よ?」
「今の俺に、運転する体力はない。研究所内を歩くだけでも、休憩が必要なくらいなのに、街なかで車を運転なんか出来るか。タクシーを使って、夕方そのまま家に戻る」
無表情にそう告げて、レイは車を降りた。少し寂しげにうなずいて、ロビンもその後を追う。
午後、陽がかすかに傾き始めた頃、レイはリョウのオフィスの扉を開けた。
「すまない、少し遅くなった」
「渋滞にひっかかったんだろう、この時間じゃ? いいさ、今日はおまえが最後の患者だ。終わったら、おまえを家まで送って、そのまま大学のほうにいくことにしてある」
言いながら、リョウは腰掛けていた椅子から立ち上がって、近くにあるソファへ移動した。その正面に腰を下ろすレイを見守りながら、静かに口を開く。
「 どうだ、具合は? …って昨日も聞いたんだったな」
苦笑するリョウに微笑みかけながら、レイが首を振ってみせる。
「…聞かなくてもわかってるだろう?」
「ああ。 今、診察室のほうに酸素吸入の用意をさせてるよ」
ドア一枚隔てた隣の部屋を、親指で指し示しながら、リョウが言った。それにうなずいていたレイが、ふと窓の外に目をやる。
「こうやって…一度腰を下ろすと、二度と立ち上がれないような気がして、怖くなる。歩いたり…ドアを開けたり……もちろんこうやって話すことさえも、無意識にやっていたことが、意外と重労働なんだとあらためて思い知らされた。…呼吸でさえもな。実際、今の俺には、少しでも呼吸が乱れれば、それを自力で整えることは出来ない」
そう言ったレイの微笑みが、何かをあきらめたように見えて、思わずリョウは目をそらした。
「レイ…おまえが……つまり、昨日の夜、ロビンと話してて……いや、なんでもない。気にしないでくれ…俺が言おうとしたことは意味のないことだ」
「 可能性は…ゼロじゃない。それだけで十分だ」
囁くようなレイの言葉に、リョウが顔を上げる。その視線をとらえて、もう一度レイが囁いた。
「…そうだろう? それに、俺はおまえたちを信じてる」
「信じてる? …俺の何を……?」
わずかに口元を歪めたリョウに、レイが微笑む。
「おまえの…医者としての全てを」
「自分の患者を休ませることもできない医者を? 本当なら…今のおまえは歩くことさえも苦痛なはずだ。これが、他の人間なら…俺は迷わずICUに放り込む。立って、歩いて…仕事をして……そんな自殺行為みたいなこと、絶対にさせやしないのにな…」
「俺もだよ」
そう言って、レイが笑みを浮かべる。それにつられて、かすかに微笑んだリョウに、レイがもう一度言った。
「おまえは間違ってないさ。……俺ほどにはな」
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