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<6th Stage> 合同演奏        指揮:小高 秀一

     男声合唱組曲 「富士山」           作詩:草野心平  作曲:多田武彦


1  作品第壹

2  作品第肆

3  作品第拾陸

4  作品第拾捌

5  作品第貳拾壹

 

 男声合唱レパートリーの定番といわれているほど、今だ絶大な人気を保ち続けている「富士山」。昭和31年に作曲されたこの曲は、多田氏にとって、処女作「柳河風俗詩」に次ぐ2番目の作品である。多田氏特有の抒情性の他に、雄大さ、力強さが感じられるが、これは草野心平の詩の持つ、極大から極小に及ぶ壮大な宇宙的感覚、地上のあらゆる卑小なものに対する徹底的な反逆と、激烈な怒り、華麗な色彩感覚といったものによるところが大きい。

 多田氏は「富士山」について「歌い手の声域を気にし過ぎない、スケールの大きいダイナミックな男声合唱組曲を作ってみた」と述べている。おじさん軍団のYARO会にとっては肉体的かつ技術的に相当な困難さを伴う曲である。詩のもつ時空的ひろがりや宇宙的感覚をどう表現できるか。乞うご期待である。

 

1 作品第壹(さくひん だいいち)
 美しい日本の象徴である富士山の麓に、地上の生けとし生ける物すべてが集まって歌う讃歌。静の持つ多様な色彩に応じて、様々な和音が展開する。

2 作品第肆(さくひん だいし)
 雄軍な富士山の実在を描写した男性的なタッチが多い草野心平の詩の中で、これは珍しく幼き日の回想を叙情的に描いている。春の光が漏れる中、うまごやしの花環の円の中に見い出した富士の姿。美しく懐しい幼き日の春。

3 作品第拾陸(さくひん だいじゅうろく)
 消えゆく夕日に金色に彩られた一点の雲。その下に広がる山脈から、ひときわ高く黒富士の姿。そこに私たちは厳粛な祈りの姿を見る。
 <存在を超えた無限なもの><存在に還える無限なもの>

4 作品第拾捌(さくひん だいじゅうはち)
 紅色の狼火のような豊旗雲の下。黄銅色の大存在。自然界を圧倒し君臨する富士の勇姿。

5 作品第貳拾壹(さくひん だいにじゅういち)
 広大な関東平野を越えて、平野すれすれの絶端に富士を望むことは、峻厳な北アルプスの峰々を征服した男たちにのみ許される特権であった。大驟雨は、今、平野に、山脈に、誇り高い男たちの肩に降りそそぎ、地上のあらゆる卑小な泥濁を洗い流してゆく。

 


    
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