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「男声合唱プロジェクトYARO会」・・・熱き想いの結晶

実行委員長 塚本地方
(ドンキホーテ男声合唱団団長)

 本日はご来場いただきありがとうございます。
 おとうさんコーラスの発祥の地である埼玉県で活躍している私たち5団体は、それぞれ4年から19年の歴史を持った合唱団で、得意とするレパートリーも色々ですが、男声合唱団の幅の広さ、奥行きの深さにどっぷりと浸かっている小規模合唱団という点で共通しています。おとうさんコーラス大会など埼玉県合唱連盟主催の催し物で出会うたびに、まず自分たちが「機会あらばもっと大人数でハモりたい」というごく純粋な気持ちから始まり、「男声合唱の魅力をもっと多くの皆さんにも味わってもらいたい」と夢が膨らんで、昨年10月の実行委員会発足を経て、無事今日の日を迎えることができました。この間、各団の実行委員の皆さんの実現に向けてのパワーと連携は素晴らしいものでした。特に根拠地も離れていて、それぞれ仕事も忙しいのにここまで纏め上げてこられたのは、委員の皆さんのIT活用能力が素晴らしく、企画提案から原稿、校正に至るまで、これを駆使することができたからと感心しました。(多い時には1日10数回のメールが飛び交っていました。)

 本日のプログラムでは、まず第1部は各団の「競演」により、日本民謡、古典イタリア歌曲、男声合唱組曲、ポップス系ポピュラー曲、Sea Shantyと男声合唱の色々なジャンルの広がりを、第2部では90人規模の「共演」により、荘厳な「富士山」の様々な情景を味わっていただき、大人の男声の醍醐味と合唱宇宙の拡がりを感じていただけたら幸いです。

 



第1回YARO会演奏会に寄せて

埼玉県合唱連盟理事長 宮寺 勇

 心から歌と酒?を愛するみなさん、このたびはコンサート開催、誠におめでとうございます。
 おとうさんコーラス大会がきっかけになったかどうかは分かりませんが、このような演奏会ができたことはとても嬉しいですね。女声合唱が圧倒的に多い中で,男声合唱のみなさんの存在は、日本中の注目の的になりましょう。

 ところで、「ウィーン男声合唱団」という名を聞いたことがある人も多いかと思いますが、あのヨハン・シュトラウスが「美しき青きドナウ」をこの男声合唱団に献呈しています。そして今でも歌い続けています。何と素晴らしいことではありませんか。この名曲は男声合唱のために書かれていたのですね。みなさんも、この演奏会を機に、永く歌いつづけられる名曲を生んで下さい。

男声合唱を愛する一人として

 



二人の大先輩からの薫陶

作曲家 多田武彦

 私は1930年の大阪生まれ。戦後独学で作曲を始めた。旧制大阪高校を経て京都大学に進み、男声合唱団で歌ったり指揮者を務めたりした。清水脩先生(故人)作曲の組曲「月光とピエロ」を歌ったのを機に、清水先生のお話を聴く機会が増えた。作曲上の技法よりも「名曲を徹底分析して、その作曲家の秘法を盗め」とか「歌曲や合唱曲を作曲する時は、詩自体に音楽のある詩を厳選し、これに寄り添うように作曲しろ」などの教示が多かった。卒業後は、サラリーマンになった。作曲も止めようかと思ったが、清水先生から、「日曜作家」を勧められた。

 清水先生に最初に見てもらったのが、1954年に作った組曲「柳河風俗詩」。しかし先生の批評は厳しく「もっと力強い男声合唱を書け!」だった。こうして、1956年に作曲したのが組曲「富士山」である。

 もう一人は、この「富士山」の詩人、草野心平先生(故人)。「富士山」を作曲した時には、草野先生にお会いする機会がなかった。1968年に、組曲「北斗の海」の標題を頂いたあと、所沢市秋津のご自宅を退出する時、犬の散歩かたがた、駅の途中まで見送ってくださった。

 私が辺りの武蔵野の風情を讃えると、先生は、それには答えようとされず、路傍に咲く雑草の花を見るように勧められた。そして、「このように誰にも見られないような雑草の花でも、それだけをつぶさに観察しているといつしか、武蔵野の風情は消えて、この花の持つ風情や魂を感じ取ることが出来る。欠けた茶碗に描かれた葦の葉一枚にも詩情を感じることが大切。」と話された。森羅万象一つ一つの特質を大切にせよとの教示であった。

♯          ♭          ♪ 

 演奏会のご成功と、各位の益々のご活躍を心からお祈りする。

 



YARO会を指揮するにあたり

指揮者 小高秀一

 埼玉県内の小グループの男声合唱団が集まってジョイントコンサートをしようという話を聞いたときは嬉しかった。各合唱団共に熱心な活動はしているのですが人数は増えない、練習にも集まれない合唱団であることは知っていました。「頑張れよ」「潰れないでくれよ」という思いを持っていました。今回のジョイントコンサートでお互いに刺激しあい、情報交換し協力しあって、より発展していくことを願っています。

 縁あって合同練習の指揮をすることになりました。意欲的なメンバーが揃っていて圧倒されそうですが自分なりの音楽作りをし、少しでも男声合唱の醍醐味を表現出来たらと思っています。「夢見るような春の富士」「のどかな野から眺める富士」「尊厳のある大いなる黒富士」「黄銅色の中にうかぶ紅色の富士」「雨雲の上の夕映えの富士・大驟雨」。心に響く草野心平の詩です。多田作品の中でもスケールが大きく、デリケートな難易度の高い曲です。挑戦するつもりで指揮をします。よろしくお願いします。