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         e-Tax に思う




 確定申告を始めて、25年以上になる。当時も今も、大した収入ではないが、毎年、確定申告をしている。若いころ、ある企業から依頼された仕事を手伝って、20万円の報酬を得た。給与以外の所得にあたる。しかし、長年、給与所得だけの生活をしていたから、確定申告とは何かもよく知らず、20万円についても、申告が必要なことすら知らなかった。むろん、税務署には、支払い側の企業から報告が届いており、その年の5月だったか、6月だったか。きっちり、税務署から呼び出しを受けた。窓口に行くと、税務署の担当者は親切だったが、みょうに冷ややかだったことも記憶している。指示された通りに修正申告をしていると、「必要経費があるのではないですか・・・」と聞かれた。特に思い当たることもなかったので、無いと言ったら、そのまま無言で、書類をもって背を向けた。必要経費が何か、その時は知らなかったが、適当に何か言えばよかったのか・・・と、その冷ややかな女性の後ろ姿から学ぶことができた。

 数年前から、e-Taxというインターネットを使っての確定申告ができるようになった。昨年から、それに挑戦しようとしているが、今年も自力では、申告書を作成できなかった。定年退職後の今は、現職時代のように多忙ではないが、ついつい税務申告書の作成を後回しにしてしまい、締め切りが近づいてから、あわててe-Taxのホームページを開いて読み始める。そうすると、市役所で証明書が必要とか、カードリーダーの購入が必要だとか書いてあって、なんだか、やたらめんどくさい手続きにうんざりしてしまう。e-Taxでの申告を難しくしているのは、ホームページの説明が分かりにくいからである。もう少し、上手な申告書の書式が出来ないものか。分かっている人には簡単であっても、初めてみる人にはとても分かりづらい。言い方を変えると、千差万別の納税者の誰にでも当てはまるように作られているので、選択肢が多すぎて、どれを選べばよいのか分からない。専門用語の定義(意味)や、経理のシステムが分からないので、パソコン上で開いたページを行ったり、戻ったり。同じところをぐるぐる回りながら疲れてしまう。素人に、確定申告をe-Taxを使ってやりなさいと勧めるのであれば、経理や税務処理の分からない人にも使えるように、e-Taxの書式を作成するべきである。そんな当たり前のことが何故できないのかと思う。

 40年も昔の話だが、アメリカの大学に留学(有給)していた頃、毎年、確定申告をしていた。最初の年は、何もわからなかったので、日本から留学していた先輩に教えてもらったが、2年目からは、自力で申請ができ、数百ドルの還付金を受け取ることができた。申告書の書式がシンプルで、外国人である私にも、何をどこに書き入れればよいか迷うことはなかった。それに比べて、わが国の税務申告書のなんと複雑なことか。いったん書式の内容が理解できた人には、現在の書式でも複雑ではないかもしれない。多分そうだろう。しかし、ここで言わんとすることは、そんな理解をしなくても、申請ができるようにして欲しいということ。「はい」と「いいえ」で進むなら、経理を知らなくても税金が払える。e-Taxで申告ができる。毎年、3月の10日過ぎ、税務署に、連日、数百人が並ぶ事態は避けられると思う。並ぶ方もしんどいが、並ばれる税務署もしんどいのではないか。税金を取り立てる一方、税務署もやたら税金を無駄に使っているように思える。


 エピローグ
 結局、ことしも税務署に行って、大勢の人と一緒に数時間並び、半日をかけて、税務署の担当者に助けてもらいながら申告を済ませた。税務署のパソコンを使いながらも、いちいち、聞かなくては申告ができなかった。去年も同じようにやったのだが、一年もたてば忘れている。そのたびに、いちいち納税者に勉強を強要しないでほしい。「はい」か「いいえ」で必要な数字さえ打ち込めば、納税ができるようにe-Taxのシステムを改善するべきである。


 誰が詠んだ川柳か 『税務署に 行く道いつも 向かい風

 

                                               2015年3月21日



【管理人よりひと言】
 島﨑弘幸さんは、この<なんやかや>コーナーにたびたび寄稿していただいている常連さんです。油脂、脂質、界面活性剤などを研究する日本油化学会の学会長も歴任された方です。
 以前は医科大学に在籍していましたが、
2000年に新設された人間総合科学大学(埼玉県)に、その後健康栄養学科が認可された際、教授として招聘され立ち上げに貢献されました。
 現在はリタイアされていますが、後進の指導などでご活躍されています。





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