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 ■2008.12.09(tue)
 
  對星庵

  少しばたばたするとついついこの日記から遠ざかってしまいます。
  そろそろブログ形式に変えた方がいいですね。
  この1ヶ月もいろいろありましたが、先週土曜夜から姫路の建築家大西忠良さんに誘われて、
  姫路山中の小さな集落にある對星庵と名づけられた古民家でのセミナーに参加してきました。
  (セミナーといっても、いわゆる飲み会ですが)
  オーナーが自力で数年かけて改修された古民家は、○○市○○字空の下という嘘みたいな住所にあります。
  この冬1番の寒さの中、山の上から見る星空は、まさしく満天の星。
  震えながらも少しの時間、プラネタリュウムのような星空に見とれてしまいました。
  「空の下」という地名に納得です。
  セミナーは約15人の参加で、ソレッテ大阪メンバーの山隈直人さんと富山でご活躍されている濱田修さん、
  2人の建築家のお話をお聞きしました。
  山隈さんとは普段からわりと話すことも多いのですが、改めて作品を見せてもらい新たな発見もありました。
  (山隈さんとは鍋を食べながら、薬味の重要さの話になり薬味派なるものを結成!)
  富山の濱田さんは、高山や金沢などに見られる「格子」を概念化して美しいデザインを展開されています。
  地域性(気候、風土、文化、経済・・・)をデザインすることの大きな意味と大変さを考えさせられました。
  日曜に打合せがあったので夜中に帰路につき、朝4時半に帰宅しました。
  こんな学生みたいなことしたら後が大変な歳になってきていることを体は正直に教えてくれます。
  しかしさぶかったあー。


 ■2008.11.02(sun)
 
  ゼミ旅行2008 C

  YSの敷地調査を終えて高知へ向けて出発し、11時過ぎに高知到着。
  Y先生ゼミの高知出身のMさんと合流して、市内の
日曜市に出かけました。
  Mさんは、市場の仮設性を卒業設計のテーマとしています。
  高知市では街路市が300年以上も前から続いており、日曜だけではなく、火木金曜に開かれています。
  日曜市は、売り物と一緒に軽トラで運んできた細い鉄の支柱とテントで作られた店が約500件建ち並び
  その長さは1.3kmにも及びます。
  ある時間(曜日)限定で、仮設で造られるお祭り的な状況は、非常に興味深いものでした。
  そこでは地元の野菜、果物を中心にお茶、天ぷら、お寿司などさまざまなものが売られています。
  普段から阪神百貨店の地下食品売り場をうろうろしている僕にとっては
  日曜市のあり方と同時にそこで売られている物も興味深く、1.4kmを1往復した後は
  両手がいっぱいになるほどいろんなものを買ってしまっていました。
  心地良いヒューマンなスケール感と仮設性、地元の人の手作り感をまたまた楽しんでしまいました。
  

     
   
    地元の人と観光客で賑わいのある市           高知城まで「追手筋」に並ぶ市

     
    
細い鉄パイプとテントで簡単に建てられる           テントの受け材には竹も使用

     
   
    Mさんのおじさんが作る炭を売るお店         高知の新鮮な野菜が並ぶ。かなり安い

  お昼過ぎに香北町の
アンパンマンミュージアムへ。ここは4度目なので学生が見学している間に
  ミュージアム前の芝生広場で、Y先生と日曜市で買ったミョウガなど高知の野菜寿司、小鯵の寿司で
  おいしい昼ごはんをいただきました。
  その後、高知市内の沢田マンションを昨年に引き続き見学させてもらい、
  夕食をとって大阪に戻ってきたのは夜10時頃でした。
  今年は、約1100kmを1泊2日で巡り、全工程のほとんどをゼミ生のST君が運転してくれました。
  ST君お疲れ様でした。
  初めてのエコカー(プリウス)は、思った以上に燃費が良くガソリン代がかなり助かりました。
  

 ■2008.10.23(thu)
 
  ゼミ旅行2008 B

  夕方、広島から松山へ車を走らせ夜8時半に松山到着し、Y先生のゼミと合流しました。
  遅い晩御飯を食べながら、お互いの見学の報告と明日の予定の確認をしました。
  明日は、朝5時起きでうちのゼミ生YSさんの卒業設計の敷地調査です。
  今回のゼミ旅行は、彼女の敷地調査を目的のひとつとしています。一緒に晩御飯を食べてから、
  ご両親が迎えに来られて彼女だけ実家に帰りました。

  翌朝5時半にホテルのロビーでゼミ生のST君と待ち合わせして、
  まだ暗い中を2人で駅まで歩き、近くの駅から伊予鉄の2両の始発に乗りました。
  YSは、実家近くの駅から乗車し一緒に卒業設計の場所である梅津寺(ばいしんじ)駅に向かう予定です。
  いくつかの駅を通り過ぎて彼女が乗ってくる駅に着き、何人かの乗客が乗り込んできましたが、
  その中にYSの姿がありません。
  「あれー?乗って来ませんでしたねー」「直接、車で送って行ってもらったんかなあ?」と
  ST君と顔を見合わせました。
  彼女の敷地は、駅を降りると目の前が海というシチュエーションにあるため、
  電車の中から海がどのように見えるか、今回それを一緒に見ようとういうことでしたが、
  本人不在のまま電車は走っていきます。
  電車からの眺めを写真に撮らないといけないと思い、運転席越しにカメラを構えました。
  乗っていた他の人からは間違い無く、乗り鉄(鉄道乗車マニア)と思われています。
  ST君は、そんな僕を知らんぷり。
  ここらへんで「何でこんなことせなあかんねん!」と思い出しましたが、
  そんなことはお構いなしに電車は走り、写真を一生懸命撮っている自分が情けないやら、腹が立つやら・・・
  しかもこの日は、僕の誕生日。どうなっとんねーん!(髭男爵)
  写真をバシバシ撮って、梅津寺駅に到着。電車を降りると目の前に夜明け前の瀬戸内海。
  海からの風は少し冷たく、本当に気持ちいい〜。はずでした。
  
  車で向かっていたY先生ゼミと合流し、事情を説明して平謝り。
  せっかくお付き合いしていただいたのに申し訳ないです。
  到着してからも、YSには全く連絡がとれず、もしかして何かあったのかと少し心配になってきました。
  彼女がいなくても、環境をチェックしておかないとと思い、写真を撮りながらあちこち廻ります。
  駅のホームでは、海をバックに入ってきた電車を撮影。
  今度は、どう見ても撮り鉄(鉄道写真マニア)です。
  電車の運転手さんには笑顔で手を振っていただくサービスまでしていただいて・・・。
  結局、お母さんの車で送ってもらったYSが現れたのは、待ち合わせから1時間以上たってからでした。
  しかも、寝坊だって。信じられへ〜ん。
  これでしょうもない卒業設計やったら、おっちゃんは倒れますから。
  この朝の出来事で、一生忘れられない誕生日となりました。


     
   
      運転席越しに乗り鉄の1枚               目の前が海の小さな駅

     
   
  正面が駅。瀬戸内の穏やかな波が打ち寄せる    この駅は、ドラマ東京ラブストーリーの最終回ロケ地 


 ■2008.10.11(sat)
 
  ゼミ旅行2008 A

  宮島の参道で、広島風お好み焼きと焼きカキのランチをいただき、広島市内へ移動して
  広島市西消防署(2000年 設計:山本理顕)へ。
  消防署という公共建築を市民や地域に開いていくプログラムを大胆に表現した建築です。
  竣工当時に訪れて以来2度目でしたが、竣工当時の印象とは全く違って見えました。
  当時本当に新鮮に見えた建築がすでに今のデザインではないかなという印象を持ちました。
  ひとつは、公共建築を開くというプログラムが社会の中で
  意識としては当たり前になったということだと思います。
  プログラム自体も施設を開放して消防士の訓練を見せるという2項対立的なプログラムから
  もう少し細かなプログラムを立てて、さまざまなな方向性や場所性を与えていくようなことが
  現在では要求されているように思います。
  もうひとつは、その表現がプログラムに対してダイレクトすぎることではないでしょうか。
  

     
     
ガラスルーバーに覆われた透け透け外観          道路側の半外部廊下

         
      
1階からの見上げ                      吹抜

  続いて、広島平和記念資料館(1955年 設計:丹下健三)と平和記念公園へ。
  広島という都市が復興するために、国家・都市・市民という大きな枠組みの中で
  建築が力となって躍動していていた時代にしかできない建築です。
  丹下さんのピロティは、都市や市民をデザインしたということが本当によくわかる部分です。
  資料館から原爆ドームまでをゆっくり歩き、広島の歴史の重さを受け止めながら
  市民の憩いの場ともなっている市民公園という懐の深さ(公共性)を考えさせられました。

     
   
   公園のゲートとしても機能する資料館           原爆ドームへまっすぐ延びる軸線

     
   
        資料館下のピロティ              3次元に曲がる力強い柱

  移動中、移転が決まっている広島市民球場の前を通りましたが、そのロケーションに驚きました。
  広島市の中心部のビル街に球場が溶け込んでいます。大阪で言うなら梅田に球場があるイメージです。
  
  夕方、世界平和記念聖堂(1954年 設計:村野藤吾)の見学へ。ここも2度目です。
  学生が見学予約をしてくれていたので、案内の方が待ってくれていました。
  ここでの見所はやはり素材の扱いや部分のデザインです。
  日干し煉瓦、目地、タイル、階段、手摺、天井、照明、窓・・・
  案内の方の後で「いやぁ〜」「うわぁ〜」「いいですねえ〜」と学生をほったからして楽しみました。
  一気にテンションが上りました。


         
     
鳥居を意識したという門                 外壁と開口部

     
   
        鐘楼に上がる途中階                鐘楼から広島市内を見る

         
   
大聖堂を支えるフライングバットレス              うねる村野階段

     
   
       床タイルパターン。美しい!               地下の小聖堂
 
  今日の見学テーマは、
  厳島神社=環境、広島市西消防署=プログラム、平和記念公園=都市、世界平和記念聖堂=部分 でした。
  ゼミ旅行は、いつも学生の卒業設計のきっかけになればと思っています。
  4つのテーマのどこかに学生が引っかかってくれればいいのですが・・・
  
  環境・プログラム・都市・部分。
  個人的には、残るものと消費されるものがはっきりと見えたような気がします。


 ■2008.10.09(thu)
 
  ゼミ旅行2008 @

  今年のゼミは、過去5年で一番人数が少なく学生2人(男女各1人)です。
  周りの状況や各ゼミでのネットワーク的な活動を考えての人数設定ですが、
  例年とは違う少人数は、フットワークも軽く、あちこち回っています。
  ゼミ旅行2008は、広島→松山→高知を巡ってきました。
  
  朝6時に大阪を車(初のエコカー、プリウス)で出発し、厳島神社を目指します。
  厳島神社は過去にも訪れていますが、干潮時ばかりです。
  今回の満潮時間は午前8時頃(しかも大潮)ということで、少し期待をしながら車を走らせました。
  宮島に向かうフェリーに乗ったのが10時少し前、約10分弱で宮島に到着しました。
  早足で観光客をどんどん追い抜いていくと、海の中に大鳥居が見えてきました。
  「も、もしかして〜」とテンションが上り、右に大鳥居を見ながら少し小走りに。
  見えてきた厳島神社の足元は、潮が今引いたばかりの潮溜まりがあちこちに。
  「鳥居までかー、おしい!」今回も残念ながら海の上に浮かぶ神社は見れませんでした。ガックシ!

  厳島神社のすばらしさは、やはり建築と環境との関係です。
  潮の満ち引きによりその表情が変わることはもちろんですが、
  宮島の山を背景に社殿から大鳥居、海へ続く壮大なランドスケープデザインは圧巻です。
  庭(環境)との関係、透け、空間の広がりや留め、形式(平面計画や素材の使い方)など
  日本建築の要素が大きな環境と一体となって展開されるダイナミックさは、国内唯一の建築だと思います。
  それにしてもこの配置計画(配置図)は本当に美しいです。

     
    
  おしい!潮溜まりはあるのだが・・・               連続する朱の柱

     
          
拝殿                        回廊

     
     
    建物の間に海が入り込む          巡る回廊/朱色に塗られていない能舞台が見える

     
    
       海から見る社殿                 こちらは海に浮かぶ大鳥居


 ■2008.10.01(wed)
 
  20世紀少年とポニョ

  映画「
20世紀少年」と「ポニョ」を見ました。
  「20世紀少年」は浦沢直樹の漫画を映画化したものです。
  そこに描かれている時代は、まさしく僕が生きてきた時代。
  小学校4年生の時の大阪万博は、今も鮮烈な記憶としてあります。
  今から思うと建築と言えるものを初めて知ったように思います。
  漫画では、その時代にタイムスリップしてしまうほどリアルなイメージを持つことができます。
  僕ら世代には、浦沢直樹のペンで描かれたこのリアルさが
  ひとつの時代の終焉というメッセージを語る上での大きな要素になっていると思います。
  映画では、残念なことにこの部分が希薄なため、どこか薄っぺらい印象を受けました。
  (おそらく若い人の印象は違うでしょう)
  「ポニョ」は、映像で綴られた絵本でした。
  CGを一切使用せず、人の手で丁寧に描かれたた映像は、
  日本古来の自然と人間の関係を描き出すことに成功していると思いました。

  同じようなことを今年の
ヴェネチア・ビエンナーレの日本館の展示でも感じました。
  細い鉄とガラス、植物からなる温室と真っ白な空間の壁一面に建築家石上純也が描いた非常に細かな鉛筆画。
  さりげないアプローチの温室部分のディテールからは、現代テクノロジーの先端技術が垣間見られ、
  鉛筆で手描きされたさまざまなグリーンハウスのドローイングからは、
  今までにない繊細な関係性が読み取れます。
  漫画「20世紀少年」、「ポニョ」、「日本館」の表現そのものが現代的な意味性を持ち
  それが手描きという極めてローテクな手法によって生み出されていることが
  非常に興味深いことだと思いました。

2008.07-09 PAGE TOP HOME