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花組 宝塚大劇場公演

ファントム

観劇日時 2006年7月8日
15時の部
2006年7月9日
11時の部


ファントム

アーサー・コピット 脚本
モーリー・イェストン 作詞・作曲
青鹿 宏二 翻訳
中村 一徳 潤色・演出


 この作品は花組が初見。宙組での上演時には、観劇していない。
 花組で上演されると聞いたとき、「宙組版も観ておけばよかった」と後悔したものだった。宙組版も観劇していれば、両方の対比とかもできて、面白かったであろう。
 大作は再演される可能性が高い。好きな組以外でも、1回は観劇しておいた方がいい。それを思い知らされた。もっとも、大作ほど東京ではチケット難になって観劇が難しいのだが……。

 オペラ座の地下に棲む怪人の物語。そんなイメージを持って観劇してみたら、結構違っていた。実際は、ファントム=エリックを巡る人間ドラマ。周りの人たちはもちろん、エリック自身も人間の感情を持っている。そして、様々な人間の感情というものが出てくる。そして、その様々な感情には、不思議な暖かみがある。
 不思議と言えばもう一つ。最後にファントムは命を落とすことになるのだが、なぜかこれが不幸な結末であるとも思えない。愛するクリスティーヌの腕の中で息絶えたことが、実はファントムにとって幸せだったのではなかろうかと考えていた。
 奥深いミュージカルだ。

 春野寿美礼のファントムがとてもいい。
 全身から哀愁を漂わせた演技。この哀愁は、ファントムが怪人ではなく、人間エリックであることの証明。
 そして、この哀愁が、ファントムの様々な感情を伝えてくれた。エリックの幼い頃から抱えている哀しみ。クリスティーヌへの深い愛。そのクリスティーヌを傷つけたカルロッタへの怒り……。様々な人間の感情を見せてくれた。
 トップスターとして、充実期に来ていることをよく感じさせてくれる。

 観劇前から気になって仕方がなかったのがクリスティーヌ。新トップ娘役の桜乃彩音というのは、ちょっと冒険ではないかと思った。十分な二番手経験があるなら安心できるけれども、抜擢系のトップ娘役だけに……。
 全体的には、思った以上に出来上がっている。今年1月に観劇した、「落陽のパレルモ」の新人公演に比べると、演技面などではかなり成長していた。舞台経験を積んでいけば、それなりのトップ娘役になれそうだ。
 ただ、やはり歌で不安が残っていた。かなり努力している気配が感じられて、多少は評価できる。しかし、クリスティーヌ役としては少し苦しい。

 キャリエールの彩吹真央は、ちょっと意外な配役に感じた。口髭姿を見慣れていないせいであろうか……。
 しかし、舞台は素晴らしい。エリックの父親としての暖かみが伝わってくる。二幕での、エリックとの掛け合いは名場面だった。
 もうすぐ花組からいなくなってしまうのが残念でならない。

 花組は、路線男役が一気に組替えで抜けていっている。その替わりに花組に来た真飛聖。すっかり花組になじんできた。次公演からは、花組の二番手格になるが、安心して観られそうだ。
 真飛聖演ずるフィリップは、クリスティーヌを巡ってエリックと三角関係になる。その三角関係の立場をうまく見せてくれる。二枚目の雰囲気もよかった。

 カルロッタの出雲綾のインパクトが強い。
 観る人によっては、ファントムよりもこちらの方が怖く見えるのではなかろうか。しかし、こういうインパクトの強い役には、出雲綾がよく似合うものだ。


 今回は大劇場では2回観劇している。しかし、作品の奥は深く、あと1回は観劇すればよかったと思った。
 見逃してしまった部分を、東京で発見できたらと思っている。


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