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星組東京宝塚劇場公演
花の業平 / サザンクロス・レビュー2
観劇日時 | 2001年12月23日 午前11時の部 |
観劇場所 | 1階6列下手 (S席) |
花の業平
〜忍ぶの乱れ〜
柴田 侑宏 作
尾上 菊之丞 演出・振付
トップスターとして舞台に立つ香寿たつきの姿に、何とも感慨深いものを感じずにじはいられなかった。
ファン歴5年とわずかであるとはいえ、ここまでの経緯は話に聞いてきているし、実際に2度目の花組以降のこともほとんど見てきている。雪組と花組の往復、制度改革に伴う新専科入り……。トップスターとしては、異例の長い道のりではなかったであろうか。そんなことを考えながら舞台を見ていると、本当に感慨深くなってくる。
そしてもう一人、感慨深さを感じさせられたのが、トップ娘役の渚あき。前任の星奈優里よりも学年が上だけに、トップになるまでの道のりは長いものだった。このまま花組の別格娘役として定着してしまいそうな雰囲気があっただけに、やはり感慨深いものがあった。
そんな二人の舞台には、円熟した魅力が感じられた。
香寿たつきの演技はさすが。「いぶし銀の魅力」と言われることがよくあるが、それも頷ける。そして渚あきも、別格娘役の経験が長いだけに、的確な演技で見せてくれるものがあった。
この作品は、稔幸・星奈優里コンビの大劇場も見ているが、作品の出来は非常にいいと改めて思った。
脚本にも、柴田作品の魅力が存分に溢れている。ストーリーの破綻はないし、トップコンビの絡みは存分に楽しませてくれるし。
ただ、テーマの一つになっている権力至上主義への批判に関しては、もう少し和らげてもよかったのではと感じるものがある。大劇場の時以上に、劇団や理事長閥への批判の意味がはっきりと目について、時々現実に引き戻されることが何度かあった。
柴田氏の現体制を批判したい心情は理解できるのだが……。
開演1分前にテーマ曲のイントロが流れ、客席から手拍子が起こる。トップスターの開演アナウンスとともに場内が暗くなり、そして舞台が明るくなると、そこはカルナバルの世界。
4年前の花組バージョンと同じ始まり方が嬉しい。
プロローグが終わると、前半から中詰めまではすべて脚本書き換え。新たな「南十字星の輝く風景」を楽しませてくれた。蚊に翻弄される姿に吹き出したり、青年と蓮の絡みの妖しさを満喫したり。
中詰めの「真夏のクリスマス」が気に入った。クリスマスの彩りの、夏向けの衣装がビジュアル的に楽しい。そして、この衣装でのクリスマスソングのメドレーは、ひと味違ったクリスマスの雰囲気を楽しませてくれた。
再演にあたって、既存の場面半分、新しい場面半分の作りだったが、今回の再演でも見たいと思っていた場面が残っていたのが嬉しかった。
特に、後半の「パタゴニア」から「カルナバル幻想」。ここは花組バージョンではとりわけ好きだった場面。「ウエストサイド・ストーリー」のパクリであることは明らかなのだが、単なるパクリでなく、草野氏らしく物語を発展させている点が気に入っている。
「ウエストサイド・ストーリー」と違って、ノニーノとファニータ(トニーとマリアに相当)は揃って死んでしまう。しかし、すぐに生まれ変わり、そして南十字星の対をなす星になるという展開は、夢があって非常にいい。
もっとも、後半は花組バージョンと変わっていないというわけで、ふと思い出してしまったことがあった。
4年前の「失われた楽園」/「サザンクロス・レビュー」といえば、花組前トップ娘役、千ほさちのお披露目だった。そして、以前は千ほさちのファンだった僕にとっては、千ほさちにのめり込むきっかけとなった公演だった。
当時のことを思い出したとき、少ししんみりとせずにはいられなかった。
少しばかり、昔のことを思い出したりもしたけれども、ショーが終わったときの満足度は非常に高かった。
やはり「サザンクロス・レビュー」は傑作だ。
大劇場の「夢は世界を翔けめぐる」から、個人的には少し評価の下がっていた草野氏だが、今回の公演では、再び見直してしまうものがあった。
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