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星組宝塚大劇場公演
花の業平 / 夢は世界を翔けめぐる
観劇日時 | 2001年1月14日 午後3時の部 |
観劇場所 | 1階26列中央 (A席) |
花の業平
〜忍ぶの乱れ〜
柴田 侑宏 作
尾上 菊之丞 演出・振付
さすが柴田氏と唸らされた。ファン心理をよく考えた脚本作りをしている。
とにかく嬉しかったのが、稔幸と星奈優里の絡みの多さ。これでもかと言わんばかりにトップコンビを絡ませてくれた。稔幸トップ就任以来、トップコンビの絡みが淡泊すぎる作品ばかりだった星組。トップコンビの同時退団の前に、一度は濃厚に絡んでほしいと他組ファンの僕さえも思っていたほどだったが、この脚本は、見事にそれに応えてくれるものだった。ちょっとアダルトな雰囲気も漂う星組トップコンビの絡み。これを存分に楽しませてくれたことが何よりも嬉しい。
新専科生のファンや新専科制度に抵抗のあるファンへの気配りが見られたのも好感が持てる。香寿たつきの基経と、絵麻緒ゆうの梅若、この2人の作品中での位置づけを同等にして、ダブル2番手として扱っている。また唐突な下克上などもしていない。他組からの新専科生をうまく使いながらも、新専科制度によるひずみをできるだけ出さないようにする配慮が見られた。僕も新専科制度にはかなり疑問を感じていただけに、このような配慮には救われるものを感じた。
そして、これだけのことをしながらも、破綻がなく、観客の心を打つ脚本が書けている点は、高く評価したい。話の筋も、業平と高子の哀しみも何もかもがストレートに伝わってきて、改めて柴田氏の脚本家としての手腕の高さを実感させられた。
ところで、この作品は、柴田氏の今の宝塚へのメッセージなのであろうか。
権力を盾に、自分の考えに合わぬものは濡れ衣を着せてでも弾圧し、そして、思い通りの政治を行っていこうとする藤原一門。これにオーバーラップしたのが、植田理事長だった。藤原良房が門下の者ばかり重用するのは、理事長が愛弟子の谷氏を重用するのに似ているし、藤原良房が自分に合わないものを弾圧していく様もまた……。そしてさらに、権力を掌中に収めて、物事を自分の思い通りに動かそうとする様も、理事長のやり方に似ている。
そして、物語のテーマの一つが権力至上主義への批判。藤原良房を悪役に仕立てることで、柴田氏は権力至上主義を批判している。これはそのまま、今の植田ワンマン体制への批判に通じるものを感じさせられる。
劇団内では、反植田派の一角とされる柴田氏。その柴田氏の「宝塚よ!!これでいいのか!!」という声が聞こえるような気がしたが、気のせいだろうか……。
ここまで新専科制度の弊害が出るとは思わなかった。中詰め以降はずっと放心状態の観劇だった。
新専科生が4人出ることが前提として作られた脚本は、確かに新専科生をうまく使うことはできている。新専科生たちの舞台は、かなり楽しめる作品になっている。しかし、作品の作り方が、「始めに新専科生ありき」になってしまってはいないであろうか。テーマよりも核となる新専科生を重視して作った場面が多いのが、気になった。
だがそれ以上に放心させられたことがある。新専科生ばかり前に出しすぎた結果、星組の組子たちが犠牲になっていたことだ。新専科生の数が多いから、どの場面も新専科生が中心になり、星組の組子はその引き立て役ばかり。これで星組公演といえるのだろうか。
確かに、新専科生は各組のトップスターに続く位置にいる生徒だから、重用されるのはしかるべきこととは思う。だが、そのために組子の存在意義が薄れるのはいかがなものか。
たとえ制度が変わろうとも、組制度あってこその宝塚である。いきなり、それを否定するような作品を見させられたのは、新専科制度に抵抗のある僕には、平穏に見られないショーだった。
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