観劇記録のページ
花組 宝塚大劇場・TAKRAZUKA 1000days劇場公演
「あさきゆめみし」/「ザ・ビューティーズ」
「あさきゆめみし」編
観劇日 | 2000年4月8日(大劇場) | |
観劇時刻 | 午前11時の部 | 午後3時の部 |
観劇場所 | 1階22列上手(A席) | 1階22列中央(A席) |
観劇日 | 2000年7月22日(東京) | 2000年8月13日(東京) |
観劇時刻 | 午後3時30分の部 | 午後3時30分の部 |
観劇場所 | 26列中央(C席) | 27列上手壁際(D席) |
源氏物語 あさきゆめみし
大和 和紀 原作
草野 旦 脚本・演出
「源氏物語」というと、高校の古典の時間にあまりの難解さに頭を抱えたことを思い出す。大学受験の時も源氏物語だけはだめで、問題文に源氏物語が使われるだけで、国語の模試の点が下がったものだ。何年か前、橋本治氏が「窯変 源氏物語」と題した現代語訳版を出したが、これも難しすぎて挫折。「源氏物語」にはいい思い出が残っていない。
しかし、大和和紀氏の漫画を草野旦氏が脚本化させた今回の源氏物語、これは比較的わかりやすくて好感が持てた。大元の原作の難解さゆえに、4回観劇してやっとわかったような場面も結構あるのだが、それでも難解さを少なくしようという姿勢は十分に感じられた。
今回の舞台は、「刻の霊」の存在が大きい。
大和和紀氏の漫画にも存在しない、宝塚版だけのキャラクターを作り、これに狂言回しの役割を与える。これは今回の脚本での最大の成功点だと思う。刻の霊が説明してくれたおかげで、背景がよくわかった場面がいくつあったことか。
しかも、この刻の霊が春野寿美礼というのもまたうまい配役。春野寿美礼は花組の中でも特に大きな存在感をもっているから、自然と見ている側の注目が行く。それによって狂言回しの台詞が、見る側により届きやすくなっていた。
また、春野寿美礼も狂言回しとしての刻の霊の役割を理解した演技を見せてくれて好感が持てた。存在だけでも十分に刻の霊ができそうだが、その存在を超えるものを見せてくれた。これが刻の霊への注目度を強くしてくれて、狂言回しの言葉を通してのストーリーの理解に、大きな効果を与えてくれた。
ただし、草野氏にひとつだけ苦言をいわせてもらえば、「エリザベート」の影響の濃さが気にかかった。刻の霊はどう見ても「エリザベート」のトートを模したキャラクターだ。紫の上が死ぬ場面で自分のことを「この世での持ち時間を決める存在」だと語るが、これが何よりトートを思い出させる台詞。さらに刻の響に至っては、どう見ても「エリザベート」の黒天使たちだ。このあたりは吹き出しそうになった。もう少し、「エリザベート」の色を薄くできなかったものか。
またビジュアル面での魅力が大きい。
まずは愛華みれ。光源氏のためのトップではないかと思ってしまうほどに似合っている。匠ひびきの金髪巻毛は、最初は妙に見えるけれども、舞台ではやはり不思議な美しさを感じさせるものがある。もちろん他の生徒たちも、源氏物語の世界らしい美しさを見せている。
場面で言えば、やはり最後であろうか。白い布の敷き詰められた大階段を光源氏と紫の上が登っていく、この場面の美しさは格別のものがある。かなり宗教的な場面ではあるが、それだけに、美しさには十分な気が配られていてビジュアル的に迫るものを感じさせてくれる。
元が元だけに、娘役の場面が多いというのも、娘役ファンには嬉しかった。若手男役を売りにしている花組だが、最近は若手から中堅の娘役も成長している。それだけに、娘役を楽しむのには言い作品だった。
「紫の上と明石の上」の場面がとりわけ気に入った。明石の上は本来男役の生徒が演じていたけれども、娘役二人の歌での掛け合いの迫力、両者の確執が解けていく過程の描写、非常に魅力的な要素が多かった。
この作品は奥が深い。どれだけの場面に好感を持ち、魅力を感じたであろうか。結局、東西の通常配役公演ばかり4回しか観劇できなかったのだが、できれば役替わりを含めてもう少し見たかった。
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