隠れ宝塚のひとりごと

公演感想のページ



雪組TAKARAZUKA 1000days劇場公演
「浅茅が宿」/「ラヴィール」

「浅茅が宿」編

「ラヴィール」編へ

観劇日 98年11月28日
観劇時刻 午後3時30分の部
観劇場所 26列中央(C席)
特記事項 飛鳥裕・轟悠による初日挨拶あり


「浅茅が宿−成秋幻想−」

酒井 澄夫 脚本・演出


−雪組の現状を見せつけられた初日−


 ふと、思い立って、初日の1000daysに行ってみた。チケットは持っていないので、当日券かさばきを頼りにして。
 8時50分、有楽町に着いた僕は、1000days前の光景に唖然とした。初日だというのに、JRの京橋口から並んでいる人が見えない。劇場に近づいて、地下鉄の入り口に隠れているのがわかったが、一瞬、日程を間違えたのかもと思って帰りそうになった。
 初日なので、当日券は先着順ではなく抽選販売だったが、40枚のチケットに対して34人しか並んでいなかったため、9時の段階で並んだ人全員の当選が確定。購入順序を決めるための抽選は行われたが、初日とは思えないのんびりした空気が漂っていた。

 雪組の不振もついにここまで来たか。
 普通、初日には組長とトップスターからの初日挨拶があるのが通例だから、初日のチケットは千秋楽や新人公演に続く人気がある。当日券が朝9時からの抽選によって当選者に販売されるのも、多数のファンによる混乱を防ぐためである。
 ところが、今回の雪組公演の初日は、わずか34人しか並ばず、今の雪組のあまりの不人気ぶりを見せつけることになってしまった。このままでは、いずれ千秋楽すら当日券が買えるような事態に陥ってしまうのではないか。

 いくら何でも、最近の雪組は人気を落としすぎである。
 ともするとプラチナチケットになりかねない初日の券が労せずして買えたのは嬉しいけれど、同時に雪組のあまりの不人気ぶりが心配になってくる。


−様々な魅力が複合した好作品−


 このところ敬遠されがちの日本物であるが、僕としては捨てがたい魅力が感じられる。日本物でないと見られない美しさが、結構好きなのだ。「春櫻賦」もこの美しさで高い評価をしてしまったほどだ。
 今回の作品は、日本物独特の美しさに加えて、幻想世界の描写の美しさ、その他様々な魅力を同時に見せてくれた味わい深い好作品だった。
 まずはオープニングや勝四郎上洛の場面などで見られる華やかな舞。この美しさは今さらここに書くことではないかもしれない。ただただ息を飲むばかりである。
 僕が最も気に入ったのが、帰郷した勝四郎の夢の場面。幻想の中の勝四郎と宮木の絡みの美しさがたまらなかった。
 その一方で、この物語の鍵となる法師が登場する場面の妖しさもまた魅力的だった。こちらは専科の箙かおるの好演によるところが大きいが、このような専科生の存在は、まさに宝塚の至宝であろう。
 ストーリーはここまで悲劇にしなくてもよかろうにという気がしないでもないが、決して悪い物ではなかったと思う。


−それぞれ印象深いトップトリオ−


 今回は作品自体のよさの他、トップ3人がそれぞれ印象に残る物を見せてくれた。
 トップスターの轟悠の日本物での存在感。個人的には、「轟=日本物」という劇団の決めつけに、首を傾げている。しかし、こうやって轟の圧倒的存在感を目にすると、雪組で2公演続けて日本物が上演されるというのも頷ける話になってくる。
 トップ娘役の月影瞳は、「春櫻賦」からの成長ぶりが目につく。今回は2役への挑戦だったが、両役を上手く演じ分けていたし、どちらの役も「春櫻賦」よりも上手く演じていた。以前はトップというにはやや物足りないと言われたものだが、もはやそんなことは過去の話だ。雪組の歴史に残るようなトップ娘役も、夢ではなくなってきている。
 男役2番手の香寿たつきも、持ち前の役者ぶりを存分に発揮している。今回はどちらかというとショーの方に見せ場が多く、芝居ではインパクトの弱い役柄であったけれども、しっかりと見せるべき物を見せている。
 これだけ強力なトップがそろっていながら、雪組が不振というのは、宝塚の謎の一つである。


メールはこちらからどうぞ
公演感想(バックナンバー)の目次へ戻る
「隠れ宝塚のひとりごと」目次へ戻る (画像なしの目次)