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花組TAKARAZUKA 1000days劇場公演
「夜明けの序曲」

植田 紳爾  作・監修
酒井 澄夫  演  出
三木 章雄  演  出
観劇日  99年4月4日
観劇時刻  午前11時の部
観劇場所  22列中央(B席)

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−大劇場よりは入っている?−


 思いの外に客が入っている……。そんな印象を感じた。確かに空席は多い。C席など半分近く空席であるし、B席も下手寄りや両サイドの空席が目立った。今回観劇した22列のセンターも、開演20分前に購入した当日券である。
 しかしA席は満席だし、B席もセンターは9割以上入っている。当日券もA・B席は悪くない売れ行きだった。少なくとも、1月15日の大劇場よりは客入りがよかった。
 今回の大不振で花組ファンはすっかり元気をなくしてしまったが、案外将来を悲観する必要はないのかもしれない。


−「植田芝居」についてきた花組生−


 これがあの「夜明けの序曲」か。一度大劇場で見た作品であるけれども、その時と出来が全く違う。しかも、大劇場と比べていい方に違っていた。
 大劇場で見たときは、「植田マジック」に感心しつつも、「ザッツ・レビュー」とあまり変わらぬ舞台だと感じたものだった。ところが、今回見てみると、植田作品なのに結構楽しめた。結構な好作品にすら見えた。毎度感じる植田作品への不満を感じる回数が、今回はかなり少なかった。
 感心させられたのが、花組生が一生懸命に植田理事長の脚本について行こうとしている姿だった。
 大劇場で見たときは、あまりに生徒と脚本が噛み合っていないのに愕然とさせられたものだった。植田理事長の、昭和57年の脚本が、今の宝塚には古くさくて、生徒がついて行けていないのが目に見え、もう少し時代と生徒に合わせた書き直しはできなかったものかと不満を感じさせられた。
 その時感じた僕の不満はあくまでも演出サイドへのものであった。生徒にこれを要求するのは、酷だと感じたからである。
 ところが、この不満に対して応えてくれたのが、花組生だった。今回の舞台を見てみると、花組生の植田脚本についていこうとしている努力のあとが感じられた。きっと、大劇場の時からその努力をしてきたのだろうが、1000daysに来てそれが見事に実を結んだように見受けられた。
 そんな努力の成果が、今回の「夜明けの序曲」の出来をよいものにしていた。あの植田作品独特の「泣かせ所」をしっかりと演じていたのは好感が持てる。
 花組って、こんなにもすごかったのか。好作品に生まれ変わった「夜明けの序曲」を見ながら僕は感じていた。
 植田理事長には言いたいことは山ほどあるけど、今回はもう文句を言うのはやめよう。それがどんなに当たり前のことではあっても、花組生の努力と熱演に水をさしてしまう。
 やっぱり花組は捨てられない。たとえこの組に特定の好きな生徒がいなくても、他組に贔屓の生徒を持っていても、花組はいつまでも応援していこうという思いを改めさせられた。


−改めて愛華・大鳥コンビを見てみると−


 「ほさちショック」からもだいぶ立ち直り、素直に愛華みれ・大鳥れいのトップコンビを見られるようになった。
 愛華はどちらかというと3枚目役で定評があったけれども(「ハウ・トゥー・サクシード」のバドや「SPEAKEASY」のジョナサン・ピーチャムなど)、今回の川上音二郎も好感の持てる見せ方をしていた。旧来の日本人の殻を破りたくてもなかなか破れない、そんな音二郎の苦しみが非常によく伝わってきた。
 相手役の大鳥れいはお披露目にしてはかなり出来過ぎていないかと思うほど堂々としている。最近のトップ娘役にはない圧倒的存在感が伝わってくる。
 2人の相性は文句なしにいい。何しろ、大鳥は音楽学校を受ける前からの愛華ファン。それだけに大鳥の愛華への息の合わせ方は絶妙である。この相性の良さで、新しい花組を作り上げていってほしいものである。


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